光電流検出ダイヤモンド量子センサによる電池充放電電流計測の実証
重松 英, Naoya Morioka, 西川 哲理, 晃充 中園, 波多野雄治, 八尾肇, 森下 弘樹, 忍 小野田, 阿部 浩之, 丈志 大島, 金光義彦, 安田晋, 酒井忠司, 岩﨑 孝之, 波多野睦子, 水落憲和
Published Mar 17, 2026• 0 citations
Abstract
電気自動車の航続距離延長に向けて、蓄電池と電動機を結ぶバスバー電流を高精度に検出する代替技術が望まれている。先行研究ではダイヤモンド光検出NV量子センサの導入により電流検出感度を0.01A /Hz0.5に向上させ、かつ高いダイナミックレンジ動作によって航続距離の延長効果を示唆する成果が得られている[1]。一方で、更なる小型化やエレクトロニクスとの親和性のためにはダイヤモンドNVの量子状態を電気的に検出できることが望ましい。そこで、読み取り段階を電気的手法に代替した新たな光電流検出磁気共鳴法[2](PDMR法)に着目し、同手法を用いた直流電流検出を試みた。 実証実験では、電子線照射によりNVアンサンブルを形成したHPHTダイヤモンド基板上に櫛歯型検出電極を形成したデバイスを使用した。デバイスは検出対象となるバスバーに近接させた。永久磁石により基板鉛直方向に外部静磁場を印加したうえで532 nm波長レーザーとマイクロ波を照射し、電極間光電流はトランスインピーダンスアンプを介してロックイン検出した。レーザー照射パルスについてはAC磁場センシングにおいて高感度化効果をもたらした2段階強度化による最適化[3]を施した。周波数変調(FM)によるFM-PDMR信号のマイクロ波周波数依存性の波形は外部静磁場に重畳されるバスバー電流によるアンペール磁場により平行移動し、共鳴周波数ではFM-PDMR信号がバスバー電流に応じて鋭敏に変化する。バスバー電流に対する信号変化の係数を決定したうえで、FM-PDMR信号の標準偏差の測定時間依存性を評価した。その結果、本測定系の直流電流検出感度は0.22 A/Hz0.5と(図1)、ODMR法による先行技術での感度[1]まで1桁半に迫る検出感度が見積もられた。
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非平衡統計力学において,平衡(又は,定常)状態から十分離れた場合も扱える方法論を確立するということは,非常に重要な問題となっている。減衰理論における,時間たたみ込み形式(TC),時間非たたみ込み形式(TCL)の一般的な摂動展開公式,及び,不完全キュムラント,順序付キュムラントの系統的計算法としてのダイアグラム法は,この問題を解決する一つの有力な方法となっている。そこで,非線形非平衡系の本質的なものを含んだ最も簡単な系であるレーザー系を例にとってこの方法論について調べた。まず,微視的ハミルトニアンから出発し,TC及びTCL形式の減衰理論を使ってレーザー系の基礎方程式を導出し,Riskenが現象論的に導出した基礎方程式と比較した。その結果,TCL形式の減衰理論で導いたTCL型の方程式は,Riskenの方程式を含む一般的なものであり,量子論的効果による結合定数のくり込みが陽に現われていることが分かった。また,TC型の方程式に対するHaakeの近似は誤りであり,Riskenの方程式とは直接関係付けられないことが分かった。以上のことから,基礎方程式の段階で系の性質を調べようとする場合,TCL型の方程式の方が有力であると言える。次に,TCL型の基礎方程式を解いて光子数及び光子数のゆらぎの時間発展について調べた。その結果,現象論的な基礎方程式では記述できないような初期段階における特徴的な振舞も,微視的に導いた基礎方程式を使うと記述できることが分かり,微視的理論の重要性が再確認された。レーザー系の例からこの方法論の有効性が確かめられたわけだが,今後他の問題にも応用して非線形非平衡系を扱う一般的な枠組として発展させる必要がある。
•Oct 20, 1983•0 citations
S=1/2 Heisenberg梯子模型の密度行列繰り込み群による研究
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Haldaneが1983年に,反強磁性Heisenberg鎖の基底状態について整数スピンと半奇整数スピンとは定性的に異なり,半奇整数スピンでは励起にギャップがないが整数スピンではギャップ(Haldaneギャップ)が存在すると主張して以来,S=1反強磁性Heisenberg鎖は理論・実験両面で盛んに研究されてきた。交換相互作用J(>0)の2本のS=1/2反強磁性Heisenberg鎖を鎖間相互作用-λJでつないだS=1/2 Heisenberg梯子模型はS=1/2 (λ=0)とS=1(λ→∞)の反強磁性Heisenberg鎖のクロス・オーバーがみられるため,Haldane状態の理解に関連して興味が持たれている。特に無限小の鎖間相互作用でS=1のHaldaneギャップと本質的に同等なエネルギー・ギャップを持つ相(Haldane相)が実現されているかが調べられてきたが,プロジェクター・モンテカルロ法や厳密対角化を用いたこれまでの数値的な研究では系のサイズが小さすぎるため,無限系への外挿の際の誤差が大きく明確な結論が得られていない。一方,最近Whiteにより提案された密度行列繰り込み群の方法は大きな系の低励起状態を精度よく求められると期待されている。そこで,この方法によりギャップや相関長の臨界的性質を求めてみた。その結果,鎖間相互作用-λJが非常に小さい領域までHaldane相が続いており,鎖内に1軸性の異方性Δを入れ,これを等方点△=1より少し小さくしたときにも,強磁性的な鎖間相互作用が少しでも入ればHaldane相に転移するこどを示唆する結果を得た。転移はKosterlitz-Thouless的ではなく2次転移のようである。またλ=1のときのHaldane相と反強磁性相の間の相転移も調べ,転移点△_c≈1.15を得た。さらに,以上より推察される△-λの相図を提案した。
•Feb 20, 1998•0 citations
電気自動車の航続距離延長に向けて、蓄電池と電動機を結ぶバスバー電流を高精度に検出する代替技術が望まれている。先行研究ではダイヤモンド光検出NV量子センサの導入により電流検出感度を0.01A /Hz0.5に向上させ、かつ高いダイナミックレンジ動作によって航続距離の延長効果を示唆する成果が得られている[1]。一方で、更なる小型化やエレクトロニクスとの親和性のためにはダイヤモンドNVの量子状態を電気的に検出できることが望ましい。そこで、読み取り段階を電気的手法に代替した新たな光電流検出磁気共鳴法[2](PDMR法)に着目し、同手法を用いた直流電流検出を試みた。 実証実験では、電子線照射によりNVアンサンブルを形成したHPHTダイヤモンド基板上に櫛歯型検出電極を形成したデバイスを使用した。デバイスは検出対象となるバスバーに近接させた。永久磁石により基板鉛直方向に外部静磁場を印加したうえで532 nm波長レーザーとマイクロ波を照射し、電極間光電流はトランスインピーダンスアンプを介してロックイン検出した。レーザー照射パルスについてはAC磁場センシングにおいて高感度化効果をもたらした2段階強度化による最適化[3]を施した。周波数変調(FM)によるFM-PDMR信号のマイクロ波周波数依存性の波形は外部静磁場に重畳されるバスバー電流によるアンペール磁場により平行移動し、共鳴周波数ではFM-PDMR信号がバスバー電流に応じて鋭敏に変化する。バスバー電流に対する信号変化の係数を決定したうえで、FM-PDMR信号の標準偏差の測定時間依存性を評価した。その結果、本測定系の直流電流検出感度は0.22 A/Hz0.5と(図1)、ODMR法による先行技術での感度[1]まで1桁半に迫る検出感度が見積もられた。
近年、超伝導量子ビットに代表される光に直接結合しない量子デバイスを光量子系と接続するため、ダイヤモンド中の色中心をマイクロ波光子と光学光子の量子インターフェイスとして用いる試みが注目されている。マイクロ波光子は熱雑音の影響を強く受けるため、極低温下での動作を前提に、低いポンプ光強度での動作が重要となる。我々は、色中心をオプトメカニカル結晶中に配置する手法を提案し、理論計算により低ポンプ動作に向けて有望であることを示した。一方で、ダイヤモンドは圧電性を持たないため、機械モード励起に圧電材料を用いると、プロセスの複雑化や損失増加を招く可能性がある。そこで本研究では、圧電材料を用いずに静電力で機械モードの励起を試みた。実験では、SiN 光導波上のダイヤモンドナノフォトニック構造中の単一SnV中心を用いて、約 1.8 GHz の機械共鳴に対応する光学遷移のサイドバンドを観測した。さらに、2 経路同時のサイドバンド遷移によりマイクロ波と光の位相に依存した干渉が確認され、両者が機械モードを介して結合していることが示唆された。本成果は、ダイヤモンド色中心を用いた低雑音量子トランスデューサ実現に向けた基盤的ステップである。
ダイヤモンド中のNVセンターのマイナス荷電状態は2つの異なるスピン状態の間で蛍光強度に差を持つ(30%程度)。この特徴を使って、2つのスピン状態を重ねわせた時の蛍光強度によって外部場の検出をすることが可能である。また、その重ね合わせの保持時間(T2)は室温で最長であり、量子センサーへの応用研究が盛んに行われている。上述した蛍光強度の変化(蛍光コントラスト)をあげることは感度向上に大きく貢献する。一方で、コントラストを下げる要因であるNVセンターの中性荷電状態起因のバックラウンド蛍光が挙げられる。本研究では、NV-/NV0の比が材料の観点から何に律速しているかに着目した。結果として、ESR、PL分光を用いて、ダイヤモンド中の置換窒素濃度が荷電状態比の主な律速要因である実験結果を得た。
窒素空孔中心(NVセンター)を含む蛍光ナノダイヤモンド(FNDs)は、長いスピン緩和時間をはじめとする独自の量子特性を有しており、量子センシングや高感度な生体計測を可能にする。特に、NVセンターを有するナノダイヤモンドは、生体現象によって誘起される磁気・電気信号を検出できる量子バイオセンサとして有望な候補である。このような用途には、高い蛍光強度やスピンコヒーレンスのみならず、高い光検出磁気共鳴(ODMR)コントラスト、コロイド分散性、均一な粒径、および一貫した形態も求められる。 本研究では、高温(HT)照射および室温(RT)照射の2つの照射モードを用いて、電子線照射温度条件がNDsの蛍光強度、ODMRコントラスト、およびNVセンター濃度に与える影響と電子線量との相関を詳細に調査した。平均粒径50 nmのナノダイヤモンドに2 MeVの電子線をHT・RT各条件で照射し、それぞれの後処理を経てFNDsを合成した。HT照射では照射中の欠陥拡散が促進されてNVセンターが直接形成されるため照射後アニーリングが不要であるが、RT照射ではNVセンター形成のために従来の照射後アニーリングが必要である。両条件に同一の熱処理パラメータを適用した後、表面グラファイト層を除去するために空気酸化を施した。フォトルミネッセンス(PL)・電子スピン共鳴(ESR)・ODMR測定により蛍光強度・NV⁻濃度・dipコントラストをそれぞれ評価した結果、HT照射FNDsはRT照射と比べ蛍光強度およびODMRコントラストがともに約10%高いことが明らかとなった。これらの知見は、細胞システムにおける高感度・リアルタイムイメージングに代表される生体量子センシング用途向けの高機能FNDs作製において、HT照射が優位であることを裏付けるものであり、より高性能なFNDs実現に向けた最適照射条件の設計に重要な指針を与える。
非平衡統計力学において,平衡(又は,定常)状態から十分離れた場合も扱える方法論を確立するということは,非常に重要な問題となっている。減衰理論における,時間たたみ込み形式(TC),時間非たたみ込み形式(TCL)の一般的な摂動展開公式,及び,不完全キュムラント,順序付キュムラントの系統的計算法としてのダイアグラム法は,この問題を解決する一つの有力な方法となっている。そこで,非線形非平衡系の本質的なものを含んだ最も簡単な系であるレーザー系を例にとってこの方法論について調べた。まず,微視的ハミルトニアンから出発し,TC及びTCL形式の減衰理論を使ってレーザー系の基礎方程式を導出し,Riskenが現象論的に導出した基礎方程式と比較した。その結果,TCL形式の減衰理論で導いたTCL型の方程式は,Riskenの方程式を含む一般的なものであり,量子論的効果による結合定数のくり込みが陽に現われていることが分かった。また,TC型の方程式に対するHaakeの近似は誤りであり,Riskenの方程式とは直接関係付けられないことが分かった。以上のことから,基礎方程式の段階で系の性質を調べようとする場合,TCL型の方程式の方が有力であると言える。次に,TCL型の基礎方程式を解いて光子数及び光子数のゆらぎの時間発展について調べた。その結果,現象論的な基礎方程式では記述できないような初期段階における特徴的な振舞も,微視的に導いた基礎方程式を使うと記述できることが分かり,微視的理論の重要性が再確認された。レーザー系の例からこの方法論の有効性が確かめられたわけだが,今後他の問題にも応用して非線形非平衡系を扱う一般的な枠組として発展させる必要がある。
本研究では、超伝導量子コンピュータと光量子ネットワークを接続するためのダイヤモンド量子トランスデューサの開発を行った。量子情報を担うマイクロ波信号を長距離伝送に適した光信号へ変換することを目的とし、ダイヤモンドオプトメカニカル結晶(OMC)を用いたマイクロ波-フォノン-光変換方式を提案した。ダイヤモンドは広いバンドギャップを有し、発熱の少ない低雑音動作が期待できる。本研究では、マイクロ波共振器と光導波路を集積したチップを作製するとともに、NV中心と光共振器の結合による発光増強や、SiV中心を用いたマイクロ波駆動フォノン生成を実証した。これらの成果は、高効率かつ低雑音な量子周波数変換デバイスの実現に向けた重要な基盤技術となる。
Haldaneが1983年に,反強磁性Heisenberg鎖の基底状態について整数スピンと半奇整数スピンとは定性的に異なり,半奇整数スピンでは励起にギャップがないが整数スピンではギャップ(Haldaneギャップ)が存在すると主張して以来,S=1反強磁性Heisenberg鎖は理論・実験両面で盛んに研究されてきた。交換相互作用J(>0)の2本のS=1/2反強磁性Heisenberg鎖を鎖間相互作用-λJでつないだS=1/2 Heisenberg梯子模型はS=1/2 (λ=0)とS=1(λ→∞)の反強磁性Heisenberg鎖のクロス・オーバーがみられるため,Haldane状態の理解に関連して興味が持たれている。特に無限小の鎖間相互作用でS=1のHaldaneギャップと本質的に同等なエネルギー・ギャップを持つ相(Haldane相)が実現されているかが調べられてきたが,プロジェクター・モンテカルロ法や厳密対角化を用いたこれまでの数値的な研究では系のサイズが小さすぎるため,無限系への外挿の際の誤差が大きく明確な結論が得られていない。一方,最近Whiteにより提案された密度行列繰り込み群の方法は大きな系の低励起状態を精度よく求められると期待されている。そこで,この方法によりギャップや相関長の臨界的性質を求めてみた。その結果,鎖間相互作用-λJが非常に小さい領域までHaldane相が続いており,鎖内に1軸性の異方性Δを入れ,これを等方点△=1より少し小さくしたときにも,強磁性的な鎖間相互作用が少しでも入ればHaldane相に転移するこどを示唆する結果を得た。転移はKosterlitz-Thouless的ではなく2次転移のようである。またλ=1のときのHaldane相と反強磁性相の間の相転移も調べ,転移点△_c≈1.15を得た。さらに,以上より推察される△-λの相図を提案した。