物性研究 6 9 -5( 1 9 9 8 -2 ) S-1 / 2H e i s e n b e r g梯子模型の 密度行列繰 り込み群 に よる研 究* 筑波大学物理学研究科 成 島 毅I ( 1 9 9 7年 1 1月2 5日受理) Ab s t r a c t Ha ld a neが 1 9 8 3年に,反強磁性 He i s e n b e r g銀の基底状態 について整数ス ピンと半奇整 数ス ピンとは定性的に異な り,半奇整数ス ピンでは励起 にギャップがないが整数ス ピンで はギャップ ( Ha l d a n eギャップ) が存在すると主張 して以来,∫ ≡1反強磁性 He i s e n b e r g鎖 は理論 ・ 実験両面で盛んに研究 されてきた。 交換相互作用 J ( >0 ) の 2 本の β-1 / 2反強磁性 He i s e n b e r g鎖 を鎖間相互作用 一入 Jで つないだ S=1 / 2He i s e n b e r g梯子模型は S=1 / 2( 入= 0 )と S= ・ 1( A-∞)の反強磁性 He i S e n b e r g鎖のクロス ・オーバーがみ られるため,Ha ld a n e 状態の理解 に関連 して興味が 持たれている。特に無限小の鎖間相互作用で ∫=1の Ha l d a n eギャップ と本質的に同等な エネルギー ・ギャップを持つ相 ( Ha l d a n e 相) が実現 されているかが調べ られて きたが,プ ロジェクター ・ モ ンテカルロ法や厳密対角化 を用いたこれまでの数値的な研究では系のサ イズが小 さす ぎるため,無限系への外挿の際の琴差が大 きく明確 な結論が得 られていない。 一方,最近 Wl l i t eにより提案 された密度行列繰 り込み群の方法は大 きな系の低励起状態 を 精度 よく求め られると期待 されている。そこで,この方法によ りギャップや相関長の臨界 的性質 を求めてみた。 その結果,銀閣相互作用 一入 Jが非常 に小 さい領域 まで Ha l d a n e 相が続いてお り,鎖内 に 1 軸性の異方牲 △ を入れ,これを等方点 △=1より少 し小 さ くしたときにも,強磁性 的な銀閣相互作用が少 しで も入れば Ha l d a n e 相 に転移することを示唆する結果 を得た。転 移は Ko s t e r l i t z -Th o u l e s s 的ではな く2次転移の ようである。また 入=1の ときの Ha ld a n e 相 と反強磁性相の間の相転移 も調べ,転移点 △ C 符 1 . 1 5を得 た.さらに,以上 よ り推察 さ れる △一入の相図を提案 した。 ・ 1 9 9 4 年度 修士論文 I 1 9 9 5 年 4月 より花王株式会社 包材 ・ 加工技術研究所
物性研究 6 9 -5( 1 9 9 8 -2 ) S-1 / 2H e i s e n b e r g梯子模型の 密度行列繰 り込み群 に よる研 究* 筑波大学物理学研究科 成 島 毅I ( 1 9 9 7年 1 1月2 5日受理) Ab s t r a c t Ha ld a neが 1 9 8 3年に,反強磁性 He i s e n b e r g銀の基底状態 について整数ス ピンと半奇整 数ス ピンとは定性的に異な り,半奇整数ス ピンでは励起 にギャップがないが整数ス ピンで はギャップ ( Ha l d a n eギャップ) が存在すると主張 して以来,∫ ≡1反強磁性 He i s e n b e r g鎖 は理論 ・ 実験両面で盛んに研究 されてきた。 交換相互作用 J ( >0 ) の 2 本の β-1 / 2反強磁性 He i s e n b e r g鎖 を鎖間相互作用 一入 Jで つないだ S=1 / 2He i s e n b e r g梯子模型は S=1 / 2( 入= 0 )と S= ・ 1( A-∞)の反強磁性 He i S e n b e r g鎖のクロス ・オーバーがみ られるため,Ha ld a n e 状態の理解 に関連 して興味が 持たれている。特に無限小の鎖間相互作用で ∫=1の Ha l d a n eギャップ と本質的に同等な エネルギー ・ギャップを持つ相 ( Ha l d a n e 相) が実現 されているかが調べ られて きたが,プ ロジェクター ・ モ ンテカルロ法や厳密対角化 を用いたこれまでの数値的な研究では系のサ イズが小 さす ぎるため,無限系への外挿の際の琴差が大 きく明確 な結論が得 られていない。 一方,最近 Wl l i t eにより提案 された密度行列繰 り込み群の方法は大 きな系の低励起状態 を 精度 よく求め られると期待 されている。そこで,この方法によ りギャップや相関長の臨界 的性質 を求めてみた。 その結果,銀閣相互作用 一入 Jが非常 に小 さい領域 まで Ha l d a n e 相が続いてお り,鎖内 に 1 軸性の異方牲 △ を入れ,これを等方点 △=1より少 し小 さ くしたときにも,強磁性 的な銀閣相互作用が少 しで も入れば Ha l d a n e 相 に転移することを示唆する結果 を得た。転 移は Ko s t e r l i t z -Th o u l e s s 的ではな く2次転移の ようである。また 入=1の ときの Ha ld a n e 相 と反強磁性相の間の相転移 も調べ,転移点 △ C 符 1 . 1 5を得 た.さらに,以上 よ り推察 さ れる △一入の相図を提案 した。 ・ 1 9 9 4 年度 修士論文 I 1 9 9 5 年 4月 より花王株式会社 包材 ・ 加工技術研究所
東京 工業大学 大学院理工学研 究科 岡本 清美1 九州大学 理学部 北揮 充弘2 最近,量子ス ピン鎖における磁化 曲線の量子化プラ ト ーが盛んに研究 されている [ 1 -1 2 ] ・量子化 プラ ト ーが現れ る必要条件は Os h i k a wa -Ya ma n a k a -A用e c k[ 6 ]によって得 られていて,状態の周期 を r 2 , ,ス ピンの大きさを S,1スピンあた りの平均磁化 を m とす るとき n ( S-( m , ) ) -i n t e g e r I = である.これ は必要条件 であるので,実際にプラ ト ーが出現す るか どうかはハ ミル トアンに含 まれ るパ ラメー ターに依存 し,個々に調べなけれ ばな らない.プラ トー の出現消失の間の転移 は,Ok a mo t o[ 2 ] によって指摘 されたように Be r e z i n s k i i -Ko s t e r l i t z -Th o u l e s s( BKT) 型 に なっていて,転移点を数値計算データか ら検 出す るのはなかなか難 しい.本研究では,数 値的対角化デー タから転移点を精密に決定す る方法を確 立 し,具体的に 5 -1 / 2t r i me r -
1 】 二個 の S-1 / 2ス ピンと二個 の S-1ス ピンが交互 に並 んだ量子ス ピン鎖の基底状態 【 共同 研究者: 引原俊哉 ( 神戸大 自然科学) , 鏑木誠 ( 神戸大 国際文化) , 西野友年 ( 神戸大理) , 宮下精 二 ( 東大工) , H. -∫ .Mi k e s k a( I T P , U山Ⅴ .Ha n n o v e r ) ] 1 9 8 3年 におけ るハ ルデ ン仮説1 ) の提唱及 びそれ に関連 したその後 の多 くの数値 的, 解析 的, 実験的研究 を契機 として, 近年, 低次元量子 ス ピン系 の量子非磁性基底状態 におけ る相転移 の 問題が盛 んに研究 されている.このような量子非磁性基底状態 における相転移 を理解す る上で, Aae c k -Ke n n e d y -L i e b -T a s a k i 2 ) によって導入 された V a l e n c e -Bo n d -S o l i d( VBS )措像, 即 ち, 量 子非磁性状態 にある各相が シンダ レットペア ( ス ピン一重項)の敷 き詰め方' の違い3 ) によって 理解で きる とい う考 え方 は, 非常 に重要である.この措像 に対す る, 格子が作 り出す ミクロな空 間的構造の果たす役割は大 きく, 実際, 各種のフラス トレー ト系, ボ ンド交代系, 梯子格子系, デ イ ブ リー ト系等 で起 こる興味 ある相転移が数多 く議論 されている.例 えば, 一般 の大 きさ S をも つ量子 ス ピンか らなるボ ンド交代鎖 において, ボ ンド交代パ ラメータ 6の値 ( f 6 r ≦1 )を変化 さ せ るとき, 2
「 第4 4 回 物性若手夏の学校」 ( 1 9 9 9 年度 ) 量子 ゆ らぎが大 きな系での量子ダ イナ ミックス と緩和現象 東大・ 工・ 物工 宮下精二 最近 、興味 を持たれているナ ノスケール系での動的現象 を紹介 し、それ らを解析する 量子力学 、統計力学的方法 をいろいろ調べ 、それぞれの特徴 を議論する。また、量子ゆ ら ぎが大 きな系での外場-の応答の新 しい特徴 を考察する。 それぞれの解析 における数値計 算の具体的手法 について も触 れる。 1 I m t r o d u c t i o n 具体的な講義 は以下 に述べ る ような内容 を考 えてい る。( 1 ) 非平衡統計力 学の基礎 ,つ ま り線形応答理論や確率過程 について触 れ,量子 ダイナ ミッ クスが重要な役割 をす る現象 に関する統計力学的手法 をの紹介 を行 う。( 2 ) 量子効果がその緩和現象 に顕著 な役割 をす るナ ノスケール分子磁性の実験 の紹介 をす る。( 3 ) 量子ダイナ ミクスの大 きな特徴である非断熱遷移 によっ て生 じる典型的な現象 とその機構の説明 し,上のナ ノスケール分子磁性 に おける現象の説明 を試みる。 ( 4 ) 周期的変動 をす る外場 の もとでの興味深 い現象 として,系の固有振動や外場の高調波 な どではない非 自明な周期 を 持つ振動現象がある。 それをいわゆるF l o q u e t 演算子の固有状態の として 解析 も紹介す る。 2 非平衡統計力学 オンサーガーの相反定理,揺動散逸定理 な ど線形応答理論の一般論 と久保 公式や森公式の導出。その応用 として,最近我 々が行 っている電子 ス ピン 共鳴 ( E S R ) の直接数値解析の方法 【 1 】 を紹介す る。 また,確率過程 につい てはマルコフ過程 の一般論 とWi e n e r 過程 ( wh i t e -g a u s s i a nn o i s e )によるラ ンジェバ ン方程式, さらにそれ とのフォツカープ ランク方程式の関係等 と の説明 をす る。 熟浴 と接 している量子系の運動 を記述する方法 として量子マスター方程 式 ( 資料参照)と量子 ランジェヴァン方程式 ( 文献 [ 3 】 参照)の方法 を紹介す る。 ここでは mi c r oc a v i t yの中で原子系 と相互作用する光子系の非古典状 態の解析 [ 2
強相 関電子系の最 も基本的な模型であるHu b b a r d 模型 とAn d e r s o n 模 型の性質について概観 し,第 2章で動的分子場理論について説明す る。第 3章では,動的分子場理論を越える 最近の試みについて紹介す る。 第 1 章 Hu b b a r d模型 とAn d e r s o n模型 1 . 1 Hu b b a r d模型 1 . 1 . 1 Hu b b a rd模 型 の Ha r t r e e -F o c k近似 Hu b b a1 ・ 5 ) k k 「 第4 8 回 物性 若手夏 の学校 ( 2 0 0 3 年度) 」 と計算 され る。すなわ ち,状態密度は,無摂動の状態密度がシフ トしただけのものにな ってい る。常磁性状態で,サ イ ト当 りの電子数 n-( n T ) +( n l ) が 0<n<2 であれば,金属 となる.Ha rt r e㌣ F o c k 近似では,強磁性が出現す る条件は,T-0では Up ( 0 ) >1となる。ただ し,p ( 0 ) はフェル ミ面での状 態密度であるOこの理論を有限温度に拡張して,F e や Ni に適用 し,バン ド計算か ら得 られ た状態密度を用いると,実験 に比べて高すぎ る転移温度が得 られ て しま う。この理 由は,H a r t r e e -F o c k 近似では上向きスピンと下向きスピンの電子 の運動を独立な もの として取 り扱 ってお り,反対向きスピンの電子同士が避 け合 う効果を取 りこんでいないために,常 磁性状態のエネルギーを高 く見積 もって しまっているためである。 1 . 1 .2 Hu b b a-妄 r e t -I(l n q潮 , n -q T ] I l n q "i , , n-q ⊥ 】 , -妄 no ( q , W,強磁性が発生す る。 この条件は Ha r t r e e -F o c k 近似 と同じである。 1 . 1 .3 Hu b b a r d模 型 の 2次摂動による自己エネルギー 電子間に相互作用がある場合,波数 k,スピンUの電子の運動を記述す るGr e e n関数は,以下の よ うに定義 され る: ・
量子ホワイ トノイズの数学的基礎 名古屋大学大学院 多元数理科学研究科 尾 畑 伸 明 はじめに 圭子系の " 雑音" は, 量子光学や散逸量子系の研究 など理論物理か ら応用工学 にわたる分 野で盛 んに研究 されて きた ( 例 えば 【 2 日 5 日 2 1 1やそこに引用 されている文献) .一方で,この 1 0年来, Ac c a r d i達の一連の報告集 【 1 1 , Hu d s o n -P a r t h a S a r a t h yによる量子確率微分 方程式の基礎づけ 【 1 1 】 ,Me y e rl 1 2 1や P a r t h a s a r a t h yl 2 0 1による量子確率過程の教科書, Oh y a ・ -P e t zの量子エ ン トロピー理論 【 1 9 】などを通 して数学者の関心 も高 まって きている・ なかで も F o c k空間上の量子確率過程は, 減衰過程のノイズ項のモデルなどに現れ, 数学的 にも興味深い研究対象 となっている.量子確率論の起源は, 量子力学における波動関数の確 率解釈や位置 と運動量の不確定性 などにある.したがって,数学的定式化 として Hi l b e r t空 間上の作用素環論が広 く用い られ, 実際,それは強力 な手段 を提供 している.ただし, 物理 的に興味のある作用素はしば しば非有界作用素 となるので, 情況 に応 じて理希 を工夫す る 必要がある.その意味で,確率解析 といわれている " 無限変数" の超関数論のアイデ アを導 入す ることは一つの研究方向ではなかろうか.この論文では, ホワイ トノイズ解析 ( 飛田解析)と呼ばれている確率解析の方法 を量子確 率過程の研究に導入 し, 理論 を再構成す るとい う最近の試みの一端 を紹介す る.ホワイトノ イズ解析は, その著 しい特徴 ( a ) 通常は確率超過程 として扱 われているホワイ トノイズを, 各時点毎にガウス空間上の 超関数が対応するような超関数空間内の連続 な ( 実際は C∞一 級) 流れ として定式化 し ていること; ( b ) 通常は作用素借超関数 として敵 われている生成 ・ 消滅作用素 を, 各点毎 に意味のある 連続作用素 として定式化 していること; を生か して, 古典的確率過程の問題 に応用 されて きた 【 1 0 1 .-万で,ホワイ トノイズ解析の 超関数論的側面か らの研究は F o c k空間上の作用素理革へ と進展 している ( 理論 の詳細 は 【 1 3 日 1 4 1 ; 概略は 【 1 5 1など) .したがって,これまで古典論に終始 して きたホワイ トノイズ解 析 を, 作用素 レベルに引 き上げ ることによって, 各点毎の生成 ・ 消滅作用素を基本的な量子 確率過程 とす る理論が構築で きるはずである.また,この観点は物理学に現れる量子確率微分方程式 ( 【 2 日5 1など)の基礎づけにも有効であると思われる.むろん, 量子確率過程 を議論す るにあたって, ホワイトノイズ解析 は唯一の選択肢ではな い し,この論文で提起す るアプ ローチ 自体 も発展途上 にある.ただ,これまでの ところ, 量 子確率論 の研究 に超関数論的なアイデ アはそれほ ど積極的には現れていないので, 本論 は 「 第 3回 『 非平衡系 の統計物理』 シンポジウム」 ( その 1 ) 確率解析の非可換版 を構成す る上でたた き台 ともなるだろ う.まだ関連す る論文 も少 ない が, 【 1 5 日1 6 1 , 【 1 7 日1 8 】も参照 されたい. 1 ホワイ トノイズ解析 と f bc k空間上の作用素論 この報告では, .Ge l f a n dの三つ組 E-S ( R) ⊂H-L 2 ( A , d t ) ⊂F -S ' ( I R ) ( 1 . 1 ) に基礎 にして話 を進める.ここでR は, 後で議論す る量子確率 " 過程" の時間軸 に相当す る. ただ し,この章で述べ る主要 な結果のためには E として急減少関数の空間 S ( A)をとる必 然性 もなければ, R上の関数空間にこだわる必要 もない.実際,Rをかなり一般の位相空間 ( t o p o l o g i C a ls p a c e )にとりかえて理論 を構成す ることがで き, その方が応用上 も有利である [ 1 3 ] .このことについては,この論文の最後( § 3 .3 .5 ) で少 し触 れる.なお, ( 1 . 1 )に現れている 3つの空間はいずれも実空間である.H の実内積 と E'×E上 の標準双線形形式は, 整合 しているので同 じ記号 ( ・ , ・ )で表す.またH とその複素化 Hcの ノルムを同 じ記号 日 。で表す ( 添字 Oは後の都合 による) .さて,E昌×Ec上の標準複素双 線形形式は, H の実内積 を拡張 した