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高い安定性 を 有する 高感度 ダイヤモンド 量子 磁力計

貝沼雄太, Naota Sekiguchi, 眞榮 力, 宮川 仁, Takashi Taniguchi, 寺地 徳之, hiroyuki abe, 忍 小野田, 丈志 大島, Mutsuko Hatano, Masaki Sekino, 岩﨑 孝之

Published Mar 17, 2025• 0 citations
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Abstract

ダイヤモンド中のNV中心 (nitrogen vacancy cent er) は室温 環境下で定量的に磁場を計測可能な高感度量子センサであり、生体磁場計測への応用が期待される。 生体磁場計測には高い磁場感度のみならず、長時間の安定性が必要である。しかし、高感度化の研究に比べると、高感度ダイヤモンド量子磁力計の安定性は報告例が少ない。本研究では、我々が生体磁場計測に向けて開発した高感度ダイヤモンド量子センサの 安定性を調査した。ダイヤモンド量子磁力計は三層の磁気シールドルーム内に設置し、長時間の継続的な計測を実施してアラン偏差を求めた。平均時間1秒におけるアラン偏差は磁場感度に対応し、 5.1 pTであった。平均時間1秒の前後ではホワイトノイズ中の傾き1/2の成分とは異なるノイズ 成分が確認できる。平均時間が長くなるとアラン偏差は減少し、平均時間約2000秒で106 fTに到達し、その後 は増加傾向を示した。これは長期変動するノイズ によるものと推察される。

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分子イオン注入によって形成した NV センター対の量子もつれ状態生成

木村 晃介, 小野田 忍, Wataru Kada +6 more

ダイヤモンド中のNVセンターは、高感度・高分解能な量子センサへの応用が期待されている。双極子結合したNVセンター対に量子もつれ状態を生成させてセンシングに応用できれば、さらなる高感度測定が実現できる。我々は、NVセンター対を効率的に形成する分子イオン注入法の開発を行ってきた。本発表では、分子イオン注入によって形成したNVセンター対に量子もつれ状態を生成し、その忠実度がどの程度あるか議論する。

•Sep 21, 2023•0 citations

木状相互通信パターンにおける秘密計算プロトコル

美歩 三宅

近年, 情報技術はさまざまな分野で使用されている. 特に企業では, 顧客や社会のニーズに応えるために人工知能などの先端技術や自社のデータの有効活用などが重要視されている. しかし, 顧客のパーソナルデータや企業の独自技術といった機密情報の利活用には, 情報漏洩や不正利用など安全面に課題がある. そこで, データを秘匿化したまま任意の計算が可能な秘密計算(secure multi-party computation, MPC) と呼ばれる暗号技術が注目されている. MPC とは, n人の入力x1, . . . , xn を持つパーティP₁, . . . , Pn が, 入力を秘匿したまま関数f(x1, . . . , xn) を共同計算する暗号技術である. MPC に関するほとんどの先行研究では, 全てのパーティが他の全てのパーティと通信できることが前提となっている. このようなプロトコルでは, プロトコルの実行中, 全てのパーティが常にオンラインである必要があり, これは現実的な設定ではない. 例えば, 無線通信では無線機器間の物理的距離によって直接通信ができない可能性がある. そのため, パーティ間の通信が制限されたMPC を考える必要がある. Halevi, Lindell, Pinkas はこの問題に対して, 全てのパーティが同時にオンラインであるという制約をなくしたプロトコルを提案した. また, Beimel らとGoldwasser らは, 各パーティが独立してメッセージをサーバへ送信し, サーバが関数の出力を計算するプロトコルを提案した. その後, Halevi らがこれらを一般化し, 相互通信パターン(interaction pattern)という概念を導入したMPC プロトコルを提案した. 相互通信パターンは, 各パーティが送信するメッセージの依存関係を表す有向非巡回グラフによって与えられる. 彼らのプロトコルは事前計算モデルであり, パーティ間で通信を行う前に, 各パーティに相関乱数 を与えることで任意の相互通信パターンを持つMPC プロトコルを実現している. また, 彼らは対称関数に対してチェーン型の相互通信パターンを持つ情報理論的に安全なプロトコルを提案している. このプロトコルでは, 相関乱数はn(n +1)²ビット, 総通信量は高々n(n +1)²ビットである. 本研究では, 対称関数に対応したアーベルプログラムに対するチェーン型と木状相互通信パターンを持つプロトコルを提案する. 提案プロトコルでは, 相関乱数はO(n log n) ビット, 総通信量はO(n log n) ビットである. アーベルプログラムとは, 入力はアーベル群G上の要素であり, 関数f : G → {0, 1}を用いてh(x1, . . . , xn) = f(Σi∈[n] xi) で表される関数である. 入力領域をG = Zn+1 とすることで, 対称関数が表現できる. 対称関数は出力が入力のハミング重みにのみ依存する関数であり, 具体的には, OR, AND, 多数決関数などの実用的な関数がある. また, 木状相互通信パターンを持つプロトコルは有用である. 通信ネットワーク上のルーティングは木構造となっている. そのため, 木状相互通信パターンを持つプロトコルを提案することで, パーティ間の通信が任意に制限されている通信ネットワーク上でのMPC を実現可能とする.

•Mar 1, 2023•0 citations

量子もつれNVセンターを用いた量子磁場センシングへの取り組み

木村 晃介, 小野田 忍, Wataru Kada +6 more

有機化合物イオン注入によって形成されたNVセンター対の量子もつれ状態生成と、量子もつれを用いた磁場センシングについて報告する。共鳴周波数の異なるNVセンター対を用いて、量子もつれ状態を生成し、その忠実度を評価した。忠実度の評価では、考案したパルスシーケンスを用いて量子トモグラフィを測定した。忠実度は0.76と計算され、もつれ状態の生成が確認できた。

•Dec 14, 2023•0 citations

超高位置精度の単一色中心形成に向けたレーザー冷却イオン源の開発

穂坂 綱一, 飯澤 正登実, 柏木 啓次 +13 more

ダイヤモンドなどの規則的な結晶格子中で、あるべき原子がない点欠陥(空孔: Vacancy; V)や、不純物原子での置換は、本来なら透明な結晶を着色させる要因になることから色中心とも呼ばれる。特にダイヤモンド中で、空孔(V)と窒素原子(N)が結合した複合欠陥であるNV中心は、単一欠陥での繰り返し計測が可能であり、常温、大気圧下で動作可能な、量子ビットや量子中継器、量子センサー素子として近年、注目を集めている。 NV中心生成法の一つにイオン注入がある。ダイヤモンド基板に数keV以上の窒素原子イオンを注入し熱処理を行うと、高エネルギーイオン注入で生成する多くの点欠陥(V)と、注入した窒素原子(N)が結合し、ビームサイズの領域内にNV中心が確率的に生成される。量子ビットや量子中継器等の量子性を利用した応用では、想定外の相互作用はコヒーレンスを劣化させるため、目的の領域内に単一の色中心のみが存在していることが望ましい。ビームサイズはマスク等で限定し、単純にイオン数を減らす確率的なイオン注入では、2イオンの同時注入が無いほどイオンを減らすと、大半が0イオンとなる。我々は、高い位置精度で単一色中心を決定論的に生成する方法として、イオントラップを利用したレーザー冷却イオン源を開発している。この方法では、単一イオンのみをイオントラップから射出し、100%注入する。また、mKレベルまでレーザー冷却したイオンを適切なレンズで収束させ、数nmの位置精度で注入する。 量子中継器の実現に向け、100nmオーダーの作り込んだダイヤモンド構造体に100nmの深さでの単一NV中心を配置するための、レーザ―冷却イオン源を開発している。レーザ―冷却によりトラップ中で静止させ形成するクーロン結晶から単一イオンを引き出し、+50kVの静電場により加速し、ダイヤモンド基板に注入する。1価のN+イオンの注入では50keVで、2価のN2+イオンでは100keVで注入される。 開発中のレーザー冷却イオン源の概要を図1(a)に示す。様々なイオンを冷却・注入するため、冷却が容易なCa+イオンを冷媒としてレーザー冷却する。外部イオン源で生成したN2+イオンをイオントラップに導入し、レーザー冷却Ca+イオンと共存させることで、直接はレーザー冷却されないN2+イオンもイオン間の相互作用により1mK程度まで冷却される(共同冷却)。+50kVに昇圧したトラップから射出されたN2+イオンは、静電レンズにより、加速・収束されながら、接地されたダイヤモンド基板に数十nmの位置精度で注入され、100nmの深さで停止する。イオン注入で生成した点欠陥(V)と、単一窒素原子(N)をレーザー加熱で熱処理し、形成した単一NV中心を共焦点顕微鏡で、その場観察する。NV中心が観察されない場合には、観測されるまで、点欠陥(V)を追加する。 最近、立ち上げ中のレーザー冷却イオン源実機で、Ca+のレーザ―冷却によるクーロン結晶の形成に成功した。

•Mar 28, 2024•0 citations

占有数表示(Fock表示)の演習問題 : 第2量子化の基礎を理解するために

Katsuyoshi Yamasaki

フェルミ粒子(フェルミオン(fermion))である電子1対の交換によって波動関数が逆符号になるという反対称性を表現するためにSlater行列式が有効であることは,物理化学や量子力学(化学)のテキストに必ず書かれている。しかし,物理化学や化学物理の最先端の研究現場では,通常の量子化学コースの講義では扱われない用語を用いて日夜研究が進められている。それらの用語のうち,重要な概念の1つが,生成演算子と消滅演算子の性質にもとづき,基底関数に対応する状態を占める数(占有数)を用いてボース粒子(ボソン(boson))やフェルミ粒子の他粒子系の物理量を表現する「第2量子化」(占有数表示)である。しかし,初学者の多くが「第1量子化すらちゃんと理解できていないのに第2量子化なんて・・」と考えてしまうことが多い 。これは,多くの基礎コースの量子論の講義では,圧倒的に「波動」が主役であり,「量子」論といいながら「粒子」らしさがほとんどないことが原因ではないだろうか。Schrodinger方程式という偏微分方程式を数学的に解く量子力学(=波動力学)側からだけでなく,占有数表示によって「量子」を「粒子」らしく扱う量子力学(=行列力学)側から量子論を眺めることで,「量子」の本質をより深く理解できるかもしれない。量子化学計算におけるコンピュータの役割は,Schrödinger方程式を解析的に解くことではなく,大きな基底関数系により生じる膨大な数の行列要素を計算し,巨大な行列を対角化することであるから,その原理は波動力学ではなく行列力学である。本書は, G. C. Schatz and M. A. Ratner Quantum Mechanics in Chemistry; Prentice-Hall: Englewood-Cliffs, NJ, 1993. (日本語版) 佐藤 伸,山下晃一 訳「大学院講義 反応量子化学 -時間依存系の理解のために-」化学同人 (1998年) の第6章「占有数表示」の中の数式,練習問題,章末問題のいくつかを対象として導出や解答を試み,占有数表示による取扱いを体験・習得するために書かれたMonographである。

•Jan 4, 2026•0 citations

占有数表示(Fock表示)の演習問題 : 第2量子化の基礎を理解するために

勝義 山崎, Katsuyoshi Yamasaki

フェルミ粒子(フェルミオン(fermion))である電子1対の交換によって波動関数が逆符号になるという反対称性を表現するためにSlater行列式が有効であることは,物理化学や量子力学(化学)のテキストに必ず書かれている。しかし,物理化学や化学物理の最先端の研究現場では,通常の量子化学コースの講義では扱われない用語を用いて日夜研究が進められている。それらの用語のうち,重要な概念の1つが,生成演算子と消滅演算子の性質にもとづき,基底関数に対応する状態を占める数(占有数)を用いてボース粒子(ボソン(boson))やフェルミ粒子の他粒子系の物理量を表現する「第2量子化」(占有数表示)である。しかし,初学者の多くが「第1量子化すらちゃんと理解できていないのに第2量子化なんて・・」と考えてしまうことが多い 。これは,多くの基礎コースの量子論の講義では,圧倒的に「波動」が主役であり,「量子」論といいながら「粒子」らしさがほとんどないことが原因ではないだろうか。Schrodinger方程式という偏微分方程式を数学的に解く量子力学(=波動力学)側からだけでなく,占有数表示によって「量子」を「粒子」らしく扱う量子力学(=行列力学)側から量子論を眺めることで,「量子」の本質をより深く理解できるかもしれない。量子化学計算におけるコンピュータの役割は,Schrödinger方程式を解析的に解くことではなく,大きな基底関数系により生じる膨大な数の行列要素を計算し,巨大な行列を対角化することであるから,その原理は波動力学ではなく行列力学である。本書は, G. C. Schatz and M. A. Ratner Quantum Mechanics in Chemistry; Prentice-Hall: Englewood-Cliffs, NJ, 1993. (日本語版) 佐藤 伸,山下晃一 訳「大学院講義 反応量子化学 -時間依存系の理解のために-」化学同人 (1998年) の第6章「占有数表示」の中の数式,練習問題,章末問題のいくつかを対象として導出や解答を試み,占有数表示による取扱いを体験・習得するために書かれたMonographである。

•Jan 4, 2026•0 citations
ダイヤモンド中のNV中心 (nitrogen vacancy cent er) は室温 環境下で定量的に磁場を計測可能な高感度量子センサであり、生体磁場計測への応用が期待される。 生体磁場計測には高い磁場感度のみならず、長時間の安定性が必要である。しかし、高感度化の研究に比べると、高感度ダイヤモンド量子磁力計の安定性は報告例が少ない。本研究では、我々が生体磁場計測に向けて開発した高感度ダイヤモンド量子センサの 安定性を調査した。ダイヤモンド量子磁力計は三層の磁気シールドルーム内に設置し、長時間の継続的な計測を実施してアラン偏差を求めた。平均時間1秒におけるアラン偏差は磁場感度に対応し、 5.1 pTであった。平均時間1秒の前後ではホワイトノイズ中の傾き1/2の成分とは異なるノイズ 成分が確認できる。平均時間が長くなるとアラン偏差は減少し、平均時間約2000秒で106 fTに到達し、その後 は増加傾向を示した。これは長期変動するノイズ によるものと推察される。
ダイヤモンド中のNVセンターは、高感度・高分解能な量子センサへの応用が期待されている。双極子結合したNVセンター対に量子もつれ状態を生成させてセンシングに応用できれば、さらなる高感度測定が実現できる。我々は、NVセンター対を効率的に形成する分子イオン注入法の開発を行ってきた。本発表では、分子イオン注入によって形成したNVセンター対に量子もつれ状態を生成し、その忠実度がどの程度あるか議論する。
近年, 情報技術はさまざまな分野で使用されている. 特に企業では, 顧客や社会のニーズに応えるために人工知能などの先端技術や自社のデータの有効活用などが重要視されている. しかし, 顧客のパーソナルデータや企業の独自技術といった機密情報の利活用には, 情報漏洩や不正利用など安全面に課題がある. そこで, データを秘匿化したまま任意の計算が可能な秘密計算(secure multi-party computation, MPC) と呼ばれる暗号技術が注目されている. MPC とは, n人の入力x1, . . . , xn を持つパーティP₁, . . . , Pn が, 入力を秘匿したまま関数f(x1, . . . , xn) を共同計算する暗号技術である. MPC に関するほとんどの先行研究では, 全てのパーティが他の全てのパーティと通信できることが前提となっている. このようなプロトコルでは, プロトコルの実行中, 全てのパーティが常にオンラインである必要があり, これは現実的な設定ではない. 例えば, 無線通信では無線機器間の物理的距離によって直接通信ができない可能性がある. そのため, パーティ間の通信が制限されたMPC を考える必要がある. Halevi, Lindell, Pinkas はこの問題に対して, 全てのパーティが同時にオンラインであるという制約をなくしたプロトコルを提案した. また, Beimel らとGoldwasser らは, 各パーティが独立してメッセージをサーバへ送信し, サーバが関数の出力を計算するプロトコルを提案した. その後, Halevi らがこれらを一般化し, 相互通信パターン(interaction pattern)という概念を導入したMPC プロトコルを提案した. 相互通信パターンは, 各パーティが送信するメッセージの依存関係を表す有向非巡回グラフによって与えられる. 彼らのプロトコルは事前計算モデルであり, パーティ間で通信を行う前に, 各パーティに相関乱数 を与えることで任意の相互通信パターンを持つMPC プロトコルを実現している. また, 彼らは対称関数に対してチェーン型の相互通信パターンを持つ情報理論的に安全なプロトコルを提案している. このプロトコルでは, 相関乱数はn(n +1)²ビット, 総通信量は高々n(n +1)²ビットである. 本研究では, 対称関数に対応したアーベルプログラムに対するチェーン型と木状相互通信パターンを持つプロトコルを提案する. 提案プロトコルでは, 相関乱数はO(n log n) ビット, 総通信量はO(n log n) ビットである. アーベルプログラムとは, 入力はアーベル群G上の要素であり, 関数f : G → {0, 1}を用いてh(x1, . . . , xn) = f(Σi∈[n] xi) で表される関数である. 入力領域をG = Zn+1 とすることで, 対称関数が表現できる. 対称関数は出力が入力のハミング重みにのみ依存する関数であり, 具体的には, OR, AND, 多数決関数などの実用的な関数がある. また, 木状相互通信パターンを持つプロトコルは有用である. 通信ネットワーク上のルーティングは木構造となっている. そのため, 木状相互通信パターンを持つプロトコルを提案することで, パーティ間の通信が任意に制限されている通信ネットワーク上でのMPC を実現可能とする.
有機化合物イオン注入によって形成されたNVセンター対の量子もつれ状態生成と、量子もつれを用いた磁場センシングについて報告する。共鳴周波数の異なるNVセンター対を用いて、量子もつれ状態を生成し、その忠実度を評価した。忠実度の評価では、考案したパルスシーケンスを用いて量子トモグラフィを測定した。忠実度は0.76と計算され、もつれ状態の生成が確認できた。
ダイヤモンドなどの規則的な結晶格子中で、あるべき原子がない点欠陥(空孔: Vacancy; V)や、不純物原子での置換は、本来なら透明な結晶を着色させる要因になることから色中心とも呼ばれる。特にダイヤモンド中で、空孔(V)と窒素原子(N)が結合した複合欠陥であるNV中心は、単一欠陥での繰り返し計測が可能であり、常温、大気圧下で動作可能な、量子ビットや量子中継器、量子センサー素子として近年、注目を集めている。 NV中心生成法の一つにイオン注入がある。ダイヤモンド基板に数keV以上の窒素原子イオンを注入し熱処理を行うと、高エネルギーイオン注入で生成する多くの点欠陥(V)と、注入した窒素原子(N)が結合し、ビームサイズの領域内にNV中心が確率的に生成される。量子ビットや量子中継器等の量子性を利用した応用では、想定外の相互作用はコヒーレンスを劣化させるため、目的の領域内に単一の色中心のみが存在していることが望ましい。ビームサイズはマスク等で限定し、単純にイオン数を減らす確率的なイオン注入では、2イオンの同時注入が無いほどイオンを減らすと、大半が0イオンとなる。我々は、高い位置精度で単一色中心を決定論的に生成する方法として、イオントラップを利用したレーザー冷却イオン源を開発している。この方法では、単一イオンのみをイオントラップから射出し、100%注入する。また、mKレベルまでレーザー冷却したイオンを適切なレンズで収束させ、数nmの位置精度で注入する。 量子中継器の実現に向け、100nmオーダーの作り込んだダイヤモンド構造体に100nmの深さでの単一NV中心を配置するための、レーザ―冷却イオン源を開発している。レーザ―冷却によりトラップ中で静止させ形成するクーロン結晶から単一イオンを引き出し、+50kVの静電場により加速し、ダイヤモンド基板に注入する。1価のN+イオンの注入では50keVで、2価のN2+イオンでは100keVで注入される。 開発中のレーザー冷却イオン源の概要を図1(a)に示す。様々なイオンを冷却・注入するため、冷却が容易なCa+イオンを冷媒としてレーザー冷却する。外部イオン源で生成したN2+イオンをイオントラップに導入し、レーザー冷却Ca+イオンと共存させることで、直接はレーザー冷却されないN2+イオンもイオン間の相互作用により1mK程度まで冷却される(共同冷却)。+50kVに昇圧したトラップから射出されたN2+イオンは、静電レンズにより、加速・収束されながら、接地されたダイヤモンド基板に数十nmの位置精度で注入され、100nmの深さで停止する。イオン注入で生成した点欠陥(V)と、単一窒素原子(N)をレーザー加熱で熱処理し、形成した単一NV中心を共焦点顕微鏡で、その場観察する。NV中心が観察されない場合には、観測されるまで、点欠陥(V)を追加する。 最近、立ち上げ中のレーザー冷却イオン源実機で、Ca+のレーザ―冷却によるクーロン結晶の形成に成功した。
フェルミ粒子(フェルミオン(fermion))である電子1対の交換によって波動関数が逆符号になるという反対称性を表現するためにSlater行列式が有効であることは,物理化学や量子力学(化学)のテキストに必ず書かれている。しかし,物理化学や化学物理の最先端の研究現場では,通常の量子化学コースの講義では扱われない用語を用いて日夜研究が進められている。それらの用語のうち,重要な概念の1つが,生成演算子と消滅演算子の性質にもとづき,基底関数に対応する状態を占める数(占有数)を用いてボース粒子(ボソン(boson))やフェルミ粒子の他粒子系の物理量を表現する「第2量子化」(占有数表示)である。しかし,初学者の多くが「第1量子化すらちゃんと理解できていないのに第2量子化なんて・・」と考えてしまうことが多い 。これは,多くの基礎コースの量子論の講義では,圧倒的に「波動」が主役であり,「量子」論といいながら「粒子」らしさがほとんどないことが原因ではないだろうか。Schrodinger方程式という偏微分方程式を数学的に解く量子力学(=波動力学)側からだけでなく,占有数表示によって「量子」を「粒子」らしく扱う量子力学(=行列力学)側から量子論を眺めることで,「量子」の本質をより深く理解できるかもしれない。量子化学計算におけるコンピュータの役割は,Schrödinger方程式を解析的に解くことではなく,大きな基底関数系により生じる膨大な数の行列要素を計算し,巨大な行列を対角化することであるから,その原理は波動力学ではなく行列力学である。本書は, G. C. Schatz and M. A. Ratner Quantum Mechanics in Chemistry; Prentice-Hall: Englewood-Cliffs, NJ, 1993. (日本語版) 佐藤 伸,山下晃一 訳「大学院講義 反応量子化学 -時間依存系の理解のために-」化学同人 (1998年) の第6章「占有数表示」の中の数式,練習問題,章末問題のいくつかを対象として導出や解答を試み,占有数表示による取扱いを体験・習得するために書かれたMonographである。
フェルミ粒子(フェルミオン(fermion))である電子1対の交換によって波動関数が逆符号になるという反対称性を表現するためにSlater行列式が有効であることは,物理化学や量子力学(化学)のテキストに必ず書かれている。しかし,物理化学や化学物理の最先端の研究現場では,通常の量子化学コースの講義では扱われない用語を用いて日夜研究が進められている。それらの用語のうち,重要な概念の1つが,生成演算子と消滅演算子の性質にもとづき,基底関数に対応する状態を占める数(占有数)を用いてボース粒子(ボソン(boson))やフェルミ粒子の他粒子系の物理量を表現する「第2量子化」(占有数表示)である。しかし,初学者の多くが「第1量子化すらちゃんと理解できていないのに第2量子化なんて・・」と考えてしまうことが多い 。これは,多くの基礎コースの量子論の講義では,圧倒的に「波動」が主役であり,「量子」論といいながら「粒子」らしさがほとんどないことが原因ではないだろうか。Schrodinger方程式という偏微分方程式を数学的に解く量子力学(=波動力学)側からだけでなく,占有数表示によって「量子」を「粒子」らしく扱う量子力学(=行列力学)側から量子論を眺めることで,「量子」の本質をより深く理解できるかもしれない。量子化学計算におけるコンピュータの役割は,Schrödinger方程式を解析的に解くことではなく,大きな基底関数系により生じる膨大な数の行列要素を計算し,巨大な行列を対角化することであるから,その原理は波動力学ではなく行列力学である。本書は, G. C. Schatz and M. A. Ratner Quantum Mechanics in Chemistry; Prentice-Hall: Englewood-Cliffs, NJ, 1993. (日本語版) 佐藤 伸,山下晃一 訳「大学院講義 反応量子化学 -時間依存系の理解のために-」化学同人 (1998年) の第6章「占有数表示」の中の数式,練習問題,章末問題のいくつかを対象として導出や解答を試み,占有数表示による取扱いを体験・習得するために書かれたMonographである。