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多体量子流体力学における射影運動量力学の応力ゲージ不変性と商空間構造

Kawaguchi Masanori

Published Sep 29, 2026• 0 citations
Publisher

Abstract

本稿では、多粒子量子流体力学(Many-Particle Quantum Hydrodynamics: MPQHD)における応力テンソルの表現自由度と、Mori–Zwanzig射影演算子法によって得られる記憶核との関係を解析する。 特に、応力テンソルの表現を変更した場合に、射影された運動量力が不変となるための必要十分条件を示し、この条件に基づいて応力テンソルの同値関係を導入する。さらに、対応する商空間を構成し、第一同型定理を用いて、応力テンソルの同値類と射影力の像空間との関係を明らかにする。 また、Wyatt型およびKuzmenkov型の量子応力テンソルをこの枠組みで整理し、同一の射影運動量力を与える応力表現が、同一のMori–Zwanzig記憶核を生成することを示す。 さらに、Bohm–Madelung表示における多体量子ポテンシャル、量子力、量子応力と本理論との関係を明示し、 Bohm量子ポテンシャル → 量子応力 → 全応力 → 射影力 → 記憶核 という理論的接続を論じる。 本稿の中心的主張は、応力テンソルそのものではなく、Mori射影によって定義される同値類が輸送ダイナミクスにおける本質的対象であるという点にある。この枠組みは、一般化流体力学、非局所輸送、量子流体力学、Mori–Zwanzig記憶核、およびBohm型多体相関の研究に対する基礎的な数理構造を与える。 本稿はプレプリントであり、現時点では査読を受けていない。

DOI
10.5281/zenodo.23029101

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量子統計力学の可解模型 : 素励起、臨界現象、非平衡ダイナミクス (第59回物性若手夏の学校 : 講義)

哲生 出口

最近、孤立した量子多体系の非平衡ダイナミクスが活発に研究されている。特に、外部変数を急変化させた後の量子系の時間発展を、量子クエンチ (quantumquench) とよぶ。70年代に McCoy 達により可解系で量子クエンチが議論されたが、最近冷却原子系の実験等に刺激され、再び注目されている。孤立量子系のダイナミクスは、量子統計力学の基礎の視点からも興味深い。量子多体系の純粋状態を任意に与えると、ほとんどの場合、その状態に関する物理量の期待値は、平衡値に非常に近い値に近づくことが、最近再発見された。量子状態の典型性 (typicality) の視点である。さらに、与えられた純粋状態のユニタリな時間発展の中で、局所演算子の期待値は平衡状態のアンサンブル平均値に収束する、と予想されている。このときエントロピーは全く変化しないが、しかし、緩和のような振る舞いが見られる。3日間の講義では最初に、可積分量子系の例を紹介し、デルタ関数型ポテンシャルで相互作用する1次元ボース気体に対してベーテ仮設の方法を説明する。次に、ホール励起など典型的な素励起を詳しく解説する。さらに、低励起スペクトルでの系の振る舞いと CFT との対応の概略をスケッチする。量子多体問題の様々な手法が可積分量子系で具体的に実現される点が教育的であると思われる。さらに、代数的べ一テ仮設を説明し、スラブノブ公式など演算子の期待値や形状因子を求めるに役立つ定理を解説する。そして、1次元ボース気体やXXX鎖等での最近の結果を紹介する。

•Feb 1, 2015•0 citations

虚時間発展による水素原子の電子状態計算

Toru, YAGI, 雲兵 長嶋

Schrödinger 方程式の虚時間発展に対する行列積解法についての検討を行なった。理論的な基礎とした基底量子モンテカルロ(Basis Quanutum Monte Carlo, BQMC)法では,粒子の拡散を表す遷移確率と生成消滅に対応する分岐項の行列が具体的な形で与えられている。このBQMC 法に対して,モンテカルロ計算を行わず,行列の積を繰り返すという方法を用い,水素原子の基底状態エネルギーと波動関数を求めた。計算に用いるクーロン項のパラメータを最適化することで,高い精度でエネルギーを求めることができた。また,本手法で求めた波動関数を解析解と比較し,良い結果が得られることを確認した。特に,原子核上で尖点を持つ構造が得られた。

•Mar 30, 2021•0 citations

可逆な多体系ボーム力学からの粘性の創発― 横運動量拡散、量子揺動散逸関係、および流体力学極限 ―

Kawaguchi Masanori

本研究は、可逆な多体系量子力学から、不可逆に見える粘性および横運動量拡散がどのように創発し得るかを、Bohm力学、Rubin型bathモデル、一般化Langevin方程式、および流体力学極限を用いて検討したものである。 まず、閉じた少数粒子Bohm系、粒子数を増加させた系、および相互作用強度を増加させた系について横運動量自己相関を数値的に解析した。その結果、粒子数の増加や相互作用の強化だけでは、Navier–Stokes型の横運動量拡散に必要な Γ⊥(k) ∝ k² の関係は現れず、振動や再帰が残ることを確認した。 次に、resolvedな横運動量モードを、多数の未解像自由度からなるRubin型調和bathへ局所的に結合した可逆Hamiltonianを導入した。局所隣接差のFourier変換から λk = 4 sin²(k/2) が得られ、長波長極限では λk = k² + O(k⁴) となる。このモデルにおいて、bathのモード密度を増加させると、横運動量相関は指数減衰へ近づき、 Γ⊥(k) = νk² + O(k⁴) が数値的に得られることを確認した。これにより、 ν = lim(k→0) Γ⊥(k)/k² として動粘性係数を定義し、せん断粘性 ηshear = ρν へ接続できる。 さらに、量子化した二次Rubin Hamiltonianを純粋Gaussian状態として厳密に時間発展させ、Bohm軌道ensembleから得られる平均運動量応答が標準量子力学のresolved momentum responseと一致することを確認した。同一のspectral densityからmemory kernelと揺らぎ相関を構成し、量子fluctuation–dissipation relationおよびその高温における古典極限を数値的に検証した。また、平衡運動量自己相関とimpulse responseの一致を通じてOnsager回帰も確認した。 有限bathでは再帰が生じるが、bathモード数の増加に伴いhydrodynamicな指数減衰が成立する時間窓が拡大し、再帰時間が連続スペクトル極限で無限遠へ押し出されることを示した。全体系は可逆かつユニタリである一方、resolved subsystemのみを見ると、横運動量の情報が多数の未解像自由度へ分散し、有限観測時間では回収不能となることで、有効な散逸と粘性が現れる。 本研究は、Bohm量子ポテンシャルそのものを粘性と同一視するものではない。また、すべての実在流体における粘性の普遍的起源を証明するものでもない。むしろ、可逆な微視的Hamiltonian、多数の未解像モード、memory loss、連続スペクトル極限、および長波長極限を通じて、Navier–Stokes型横運動量拡散と粘性係数がどのように創発し得るかを、明示的かつ再現可能なモデルによって示すことを目的とする。

•Oct 2, 2026•0 citations

非平衡開放系における強相関物理

和樹 山本, Kazuki Yamamoto

極低温に冷却された原子集団(冷却原子系)による実験技術の発展は、系のパラメータの自在な制御に加え、散逸の制御や1原子レベルでの観測をも可能にした。例えば、Yb原子系において、光会合と呼ばれる技術を用いて粒子ロスを制御することが可能であり、開放系特有の非平衡相転移等が報告されている。また、観測によって量子系の情報を取り出す際、観測者は環境としての役割を果たし、観測の反作用は量子状態に無視できない変化を引き起こす。特に、冷却原子系のような極限の解像度の下での物理では観測による反作用の影響が顕著となる。 本セミナーではこのような背景から、量子開放系における多体物理を、非エルミート量子多体系[1]、リンドブラッド方程式のダイナミクスと非平衡定常状態[2]、連続測定下の量子多体物理[3]、の3つの観点から概観する。具体的には、超伝導、朝永Luttinger液体、量子多体局在といった典型的な強相関物理を取り扱う [1] K. Yamamoto et al., Phys. Rev. Lett. 123, 123601 (2019); Phys. Rev. B 105, 205125 (2022); Phys. Rev. B 107, 045110 (2023). [2] K. Yamamoto et al., Phys. Rev. Research 2, 043343 (2020); Phys. Rev. Lett. 127, 055301 (2021). [3] K. Yamamoto and R. Hamazaki, arXiv:2301.07290.

•Apr 1, 2023•0 citations

冷却原子気体の物理 (第59回物性若手夏の学校 : 集中ゼミ)

徹郎 二国

冷却原子気体は新しい物性物理の舞台として注目されており、これまでにBose-Einstein凝縮 (BEC) をはじめ様々な興味深い現象がこの系で観測されている。本講演の前半では中性原子気体の冷却方法やBose凝縮体の観測方法などの実験手段について簡単に解説し, Bose凝縮気体の超流動ダイナミクスに関連した話題をいくつか取り上げて紹介する。特に、回転する超流動原子気体における量子渦生成ダイナミクス、有限温度における第一、第二音波の伝播などについて紹介する予定である。講演の後半では冷却Fermi原子気体の超流動に関する話題を紹介する。この系ではFeshbach共鳴と呼ばれる機構を利用して原子間相互作用の強さと符号を制御することが出来る。この技術を利用して2004年には冷却Fermi原子気体における超流動状態が実現された。さらに、光格子 (レーザーの干渉を利用して作られる周期ポテンシャル) 中に原子気体を閉じ込めることも可能である。光格子は固体中の電子が感じる周期ポテンシャルを擬似的に再現することより、超伝導や磁性等の物性研究の重要な役割を担っている。近年では蜂の巣格子、籠目格子、Lieb格子といった特殊な幾何学的構造を持つ光格子を作ることが可能となった。これらの系ではディラックフェルミオン、フラットバンド等に由来した新奇な物性が期待される。

•Feb 1, 2015•0 citations

Next Generation Quantum Chemistry for Large Bio-Molecules

Hideo Sekino

巨大生体高分子への量子論の適用は新しい多体論を必要とするかもしれない。現存の量子化学的手法のそのままの形での拡張適用は理論的にも技術的にも破綻する可能性がある。生命科学に必要な精度を保障するにはシミュレーションにおける空間表現の問題が重要となる。次世代量子化学では半世紀以上にわたって使われているガウシアン基底を越える表現法が必要であろう。多重解像度多重ウェーブレット基底による分極率のような分子物性予測により、新しい効率の良い空間表現の試みを示した。また現在大規模量子化学計算の主流である密度汎関数法での物性算定の問題にも空間表現が関連している。

Journal of Computer Chemistry Japan•Jan 1, 2007•0 citations
本稿では、多粒子量子流体力学(Many-Particle Quantum Hydrodynamics: MPQHD)における応力テンソルの表現自由度と、Mori–Zwanzig射影演算子法によって得られる記憶核との関係を解析する。 特に、応力テンソルの表現を変更した場合に、射影された運動量力が不変となるための必要十分条件を示し、この条件に基づいて応力テンソルの同値関係を導入する。さらに、対応する商空間を構成し、第一同型定理を用いて、応力テンソルの同値類と射影力の像空間との関係を明らかにする。 また、Wyatt型およびKuzmenkov型の量子応力テンソルをこの枠組みで整理し、同一の射影運動量力を与える応力表現が、同一のMori–Zwanzig記憶核を生成することを示す。 さらに、Bohm–Madelung表示における多体量子ポテンシャル、量子力、量子応力と本理論との関係を明示し、 Bohm量子ポテンシャル → 量子応力 → 全応力 → 射影力 → 記憶核 という理論的接続を論じる。 本稿の中心的主張は、応力テンソルそのものではなく、Mori射影によって定義される同値類が輸送ダイナミクスにおける本質的対象であるという点にある。この枠組みは、一般化流体力学、非局所輸送、量子流体力学、Mori–Zwanzig記憶核、およびBohm型多体相関の研究に対する基礎的な数理構造を与える。 本稿はプレプリントであり、現時点では査読を受けていない。
最近、孤立した量子多体系の非平衡ダイナミクスが活発に研究されている。特に、外部変数を急変化させた後の量子系の時間発展を、量子クエンチ (quantumquench) とよぶ。70年代に McCoy 達により可解系で量子クエンチが議論されたが、最近冷却原子系の実験等に刺激され、再び注目されている。孤立量子系のダイナミクスは、量子統計力学の基礎の視点からも興味深い。量子多体系の純粋状態を任意に与えると、ほとんどの場合、その状態に関する物理量の期待値は、平衡値に非常に近い値に近づくことが、最近再発見された。量子状態の典型性 (typicality) の視点である。さらに、与えられた純粋状態のユニタリな時間発展の中で、局所演算子の期待値は平衡状態のアンサンブル平均値に収束する、と予想されている。このときエントロピーは全く変化しないが、しかし、緩和のような振る舞いが見られる。3日間の講義では最初に、可積分量子系の例を紹介し、デルタ関数型ポテンシャルで相互作用する1次元ボース気体に対してベーテ仮設の方法を説明する。次に、ホール励起など典型的な素励起を詳しく解説する。さらに、低励起スペクトルでの系の振る舞いと CFT との対応の概略をスケッチする。量子多体問題の様々な手法が可積分量子系で具体的に実現される点が教育的であると思われる。さらに、代数的べ一テ仮設を説明し、スラブノブ公式など演算子の期待値や形状因子を求めるに役立つ定理を解説する。そして、1次元ボース気体やXXX鎖等での最近の結果を紹介する。
Schrödinger 方程式の虚時間発展に対する行列積解法についての検討を行なった。理論的な基礎とした基底量子モンテカルロ(Basis Quanutum Monte Carlo, BQMC)法では,粒子の拡散を表す遷移確率と生成消滅に対応する分岐項の行列が具体的な形で与えられている。このBQMC 法に対して,モンテカルロ計算を行わず,行列の積を繰り返すという方法を用い,水素原子の基底状態エネルギーと波動関数を求めた。計算に用いるクーロン項のパラメータを最適化することで,高い精度でエネルギーを求めることができた。また,本手法で求めた波動関数を解析解と比較し,良い結果が得られることを確認した。特に,原子核上で尖点を持つ構造が得られた。
本研究は、可逆な多体系量子力学から、不可逆に見える粘性および横運動量拡散がどのように創発し得るかを、Bohm力学、Rubin型bathモデル、一般化Langevin方程式、および流体力学極限を用いて検討したものである。 まず、閉じた少数粒子Bohm系、粒子数を増加させた系、および相互作用強度を増加させた系について横運動量自己相関を数値的に解析した。その結果、粒子数の増加や相互作用の強化だけでは、Navier–Stokes型の横運動量拡散に必要な Γ⊥(k) ∝ k² の関係は現れず、振動や再帰が残ることを確認した。 次に、resolvedな横運動量モードを、多数の未解像自由度からなるRubin型調和bathへ局所的に結合した可逆Hamiltonianを導入した。局所隣接差のFourier変換から λk = 4 sin²(k/2) が得られ、長波長極限では λk = k² + O(k⁴) となる。このモデルにおいて、bathのモード密度を増加させると、横運動量相関は指数減衰へ近づき、 Γ⊥(k) = νk² + O(k⁴) が数値的に得られることを確認した。これにより、 ν = lim(k→0) Γ⊥(k)/k² として動粘性係数を定義し、せん断粘性 ηshear = ρν へ接続できる。 さらに、量子化した二次Rubin Hamiltonianを純粋Gaussian状態として厳密に時間発展させ、Bohm軌道ensembleから得られる平均運動量応答が標準量子力学のresolved momentum responseと一致することを確認した。同一のspectral densityからmemory kernelと揺らぎ相関を構成し、量子fluctuation–dissipation relationおよびその高温における古典極限を数値的に検証した。また、平衡運動量自己相関とimpulse responseの一致を通じてOnsager回帰も確認した。 有限bathでは再帰が生じるが、bathモード数の増加に伴いhydrodynamicな指数減衰が成立する時間窓が拡大し、再帰時間が連続スペクトル極限で無限遠へ押し出されることを示した。全体系は可逆かつユニタリである一方、resolved subsystemのみを見ると、横運動量の情報が多数の未解像自由度へ分散し、有限観測時間では回収不能となることで、有効な散逸と粘性が現れる。 本研究は、Bohm量子ポテンシャルそのものを粘性と同一視するものではない。また、すべての実在流体における粘性の普遍的起源を証明するものでもない。むしろ、可逆な微視的Hamiltonian、多数の未解像モード、memory loss、連続スペクトル極限、および長波長極限を通じて、Navier–Stokes型横運動量拡散と粘性係数がどのように創発し得るかを、明示的かつ再現可能なモデルによって示すことを目的とする。
極低温に冷却された原子集団(冷却原子系)による実験技術の発展は、系のパラメータの自在な制御に加え、散逸の制御や1原子レベルでの観測をも可能にした。例えば、Yb原子系において、光会合と呼ばれる技術を用いて粒子ロスを制御することが可能であり、開放系特有の非平衡相転移等が報告されている。また、観測によって量子系の情報を取り出す際、観測者は環境としての役割を果たし、観測の反作用は量子状態に無視できない変化を引き起こす。特に、冷却原子系のような極限の解像度の下での物理では観測による反作用の影響が顕著となる。 本セミナーではこのような背景から、量子開放系における多体物理を、非エルミート量子多体系[1]、リンドブラッド方程式のダイナミクスと非平衡定常状態[2]、連続測定下の量子多体物理[3]、の3つの観点から概観する。具体的には、超伝導、朝永Luttinger液体、量子多体局在といった典型的な強相関物理を取り扱う [1] K. Yamamoto et al., Phys. Rev. Lett. 123, 123601 (2019); Phys. Rev. B 105, 205125 (2022); Phys. Rev. B 107, 045110 (2023). [2] K. Yamamoto et al., Phys. Rev. Research 2, 043343 (2020); Phys. Rev. Lett. 127, 055301 (2021). [3] K. Yamamoto and R. Hamazaki, arXiv:2301.07290.
冷却原子気体は新しい物性物理の舞台として注目されており、これまでにBose-Einstein凝縮 (BEC) をはじめ様々な興味深い現象がこの系で観測されている。本講演の前半では中性原子気体の冷却方法やBose凝縮体の観測方法などの実験手段について簡単に解説し, Bose凝縮気体の超流動ダイナミクスに関連した話題をいくつか取り上げて紹介する。特に、回転する超流動原子気体における量子渦生成ダイナミクス、有限温度における第一、第二音波の伝播などについて紹介する予定である。講演の後半では冷却Fermi原子気体の超流動に関する話題を紹介する。この系ではFeshbach共鳴と呼ばれる機構を利用して原子間相互作用の強さと符号を制御することが出来る。この技術を利用して2004年には冷却Fermi原子気体における超流動状態が実現された。さらに、光格子 (レーザーの干渉を利用して作られる周期ポテンシャル) 中に原子気体を閉じ込めることも可能である。光格子は固体中の電子が感じる周期ポテンシャルを擬似的に再現することより、超伝導や磁性等の物性研究の重要な役割を担っている。近年では蜂の巣格子、籠目格子、Lieb格子といった特殊な幾何学的構造を持つ光格子を作ることが可能となった。これらの系ではディラックフェルミオン、フラットバンド等に由来した新奇な物性が期待される。
巨大生体高分子への量子論の適用は新しい多体論を必要とするかもしれない。現存の量子化学的手法のそのままの形での拡張適用は理論的にも技術的にも破綻する可能性がある。生命科学に必要な精度を保障するにはシミュレーションにおける空間表現の問題が重要となる。次世代量子化学では半世紀以上にわたって使われているガウシアン基底を越える表現法が必要であろう。多重解像度多重ウェーブレット基底による分極率のような分子物性予測により、新しい効率の良い空間表現の試みを示した。また現在大規模量子化学計算の主流である密度汎関数法での物性算定の問題にも空間表現が関連している。