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量子統計力学の可解模型 : 素励起、臨界現象、非平衡ダイナミクス (第59回物性若手夏の学校 : 講義)

哲生 出口

Published Feb 1, 2015• 0 citations
Publisher

Abstract

最近、孤立した量子多体系の非平衡ダイナミクスが活発に研究されている。特に、外部変数を急変化させた後の量子系の時間発展を、量子クエンチ (quantumquench) とよぶ。70年代に McCoy 達により可解系で量子クエンチが議論されたが、最近冷却原子系の実験等に刺激され、再び注目されている。孤立量子系のダイナミクスは、量子統計力学の基礎の視点からも興味深い。量子多体系の純粋状態を任意に与えると、ほとんどの場合、その状態に関する物理量の期待値は、平衡値に非常に近い値に近づくことが、最近再発見された。量子状態の典型性 (typicality) の視点である。さらに、与えられた純粋状態のユニタリな時間発展の中で、局所演算子の期待値は平衡状態のアンサンブル平均値に収束する、と予想されている。このときエントロピーは全く変化しないが、しかし、緩和のような振る舞いが見られる。3日間の講義では最初に、可積分量子系の例を紹介し、デルタ関数型ポテンシャルで相互作用する1次元ボース気体に対してベーテ仮設の方法を説明する。次に、ホール励起など典型的な素励起を詳しく解説する。さらに、低励起スペクトルでの系の振る舞いと CFT との対応の概略をスケッチする。量子多体問題の様々な手法が可積分量子系で具体的に実現される点が教育的であると思われる。さらに、代数的べ一テ仮設を説明し、スラブノブ公式など演算子の期待値や形状因子を求めるに役立つ定理を解説する。そして、1次元ボース気体やXXX鎖等での最近の結果を紹介する。

DOI
10.14989/194306

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多電子系の遍歴・局在・秩序化(第51回 物性若手夏の学校(2006年度))

Yoshio Kuramoto

単独の電子は,質量・電荷・スピンで特徴付けられ,その性質は定量的によくわかっている。しかし,このような電子が多数集まると,非常に豊かで思いがけない性質を示す。固体中に凝縮した電子が示す超伝導,強磁性,分数量子ホール効果などはその例である。単独の電子の固有状態は,自由空間では平面波であるが,多数の電子の固有状態は必ずしも平面波ではない。すなわち斥力相互作用が強いと,平面波状態は不安定になり,多数の電子は自発的に局在する。この状態は,電子の結晶とみなせる。それでは逆に,平面波状態(フェルミ液体状態)は電子間の相互作用があっても生き残れるか,と問うこともできる。実はこの答えは単純ではない。その際,系の次元性が本質的に重要になる。この講義では,量子多体系としての電子系が示す興味ある性質を理解するために,単純な例から出発して重要な基本概念を説明する。特に,近藤効果,朝永・ラッティンジャー流体,モット絶縁体,動的有効場などを直感的に理解できるようにしたい。また,できるだけ最近の実験結果を含む新しい例題を選んで,量子多体系に関する最先端研究の現状がわかるようにしたい。

•Feb 20, 2007•0 citations

強相関電子系の物理(第55回物性若手夏の学校(2010年度),講義ノート)

Norio Kawakami

近年、凝縮系物理で注目を集めている強相関電子系について、いくつかの例を取り上げて入門的な講義を行う。まず、強相関電子系における豊富な物理について説明した後、量子揺らぎの最も大きい「1次元電子系」の話題から始める。1次元系の普遍的性質を記述する「朝永ラッティンジャー液体」を臨界現象という観点からながめてみると、多様性の中に潜む「美くしさ」が自然に浮きあがる。カーボンナノチューブや量子細線への応用も紹介する。次に、多体効果の典型例である局所的な電子相関「近藤効果」について概説する。近藤効果は古くから研究されているが、最近でも重い電子系や量子ドット系など、広い分野で精力的に研究が展開されている。いたるところに顔を出す、とびきり重要な概念である。近藤効果には電子相関のエッセンスが凝縮されており、実験の人もぜひマスターしたい必須アイテムである。最後に「モット転移」の話をする。特に、強相関現象の解明には欠かせない動的平均場理論を紹介する。電子相関効果を扱うことは一般に難しいが、「局所的な相関効果を正確に扱おう」というアプローチが動的平均場のエッセンスである。「平均場なのにダイナミクスが扱えるの?」という疑問にも答えたい。

•Jan 5, 2011•0 citations

孤立量子系の緩和の時間スケールについての理論的研究

Takashi Mori

時間反転対称性を持つミクロな力学法則からどのように熱平衡状態への緩和のような不可逆な現象が生じるかを説明することは理論物理学の大きな問題の一つである。近年、外界から孤立した量子系が熱平衡状態に緩和するための条件について理解が進んできたが、実際の物理系が熱平衡状態に緩和するまでにどの程度の時間がかかるかについては依然として難しい問題である。孤立量子系の熱平衡化の時間スケールの問題について理解を深めるため、孤立系に人工的に弱い散逸を加えた開放量子系の解析を行ない、その散逸ダイナミクスを記述するリンドブラディアンのスペクトルギャップの解析を行なった。理論的な予想によれば、スペクトルギャップは熱力学的極限において不連続性を示し、熱力学的極限の後に散逸を弱くする極限をとることによって、孤立量子系の熱平衡化に必要な緩和時間が定量的にわかるというものである。特に、着目系に粒子数一定などの保存量がある場合に、この予想が正しいことを確認した。さらに、このようなスペクトルギャップの不連続性を数学的にうまく利用することによって、開放量子系のダイナミクスを記述するリンドブラッド方程式の微視的導出が可能となることを明らかにし、プレプリントを公開した。 また、以上の理論的進展について、日本物理学会年次大会のシンポジウムで招待講演を行なった。 It is one of the most challenging problems in theoretical physics to elucidate how irreversible phenomena like the relaxation to thermal equilibrium arises from reversible microscopic law. In recent years, some progress has been made on our understanding of the condition under which a quantum system that is isolated from the surrounding environment relaxes towards thermal equilibrium. However, it is still a hard problem to evaluate how long time it takes for the system to thermalize. To get insights on the problem of timescale of thermalization in isolated quantum systems, we investigate an open quantum system, where artificial weak dissipation is introduced to the given isolated system. In particular, I focus on the spectral gap of the Lindbladian, which is the generator of the dissipative dynamics of such a system. According to the theoretical conjecture, the spectral gap shows discontinuity in the thermodynamic limit, and one can obtain the relaxation time by considering the double limit where the weak-dissipation limit is taken after the thermodynamic limit. I have confirmed that this conjecture is true when there are some conserved quantities like the number of particles. Moreover, I have shown that the discontinuity of the spectral gap allows us to microscopically derive the Lindblad equation, which is a fundamental equation describing the dynamics of open quantum systems, and this result is reported in the preprint. I also gave an invited talk on the above theoretical progress in the JPS annual meeting.

•Jan 1, 2024•0 citations

非平衡の量子力学の量子トンネリング : 不安定系への応用(第3回『非平衡系の統計物理』シンポジウム(その1),研究会報告)

Masahiro Morikawa

この論文では,ある条件のもとに量子力学を古典統計力学で近似し,それを用いて実時間で量子トンネル現象を調べる.初めに,外界と結合した量子力学系において散逸の果たす役割をみる;拡散項はエントロピーを常に増大させるが摩擦項は反対にエントロピーを減少させる.これから,漸近的にエントロピー変化が無いパラメターを選べる.すると同時に,エネルギーもまた変化しないことが解る.さらに,量子力学的2点相関関数(の実部)がうまく再現されることを示す.この系をFokker-Planck方程式で記述し,これを涌き出し-吸い込みの境界条件のもとに鞍点法で解く.まず環境系の結合しない量子力学の場合の簡単なモデルについて解いて,これをよく知られたインスタントンの方法の結果と比べる.さらに実際に散逸がある時に,摩擦項は遷移確率を減少させるが,拡散項はそれを増加させる事を議論していく.

•Apr 20, 1996•0 citations

古典力学的手法による原子・分子の探求(修士論文(1993年度))

知幸 山本

この研究で扱うような原子・分子の古典モデルの歴史は1920年代にまで遡る。その発端は、Bohrの水素原子のモデルでは成立した量子古典対応がヘリウムでは成立しないことだった。量子論の前夜の事件であるが、それは今なお未解決の部分を多く含む問題なのである。量子と古典の間の深い溝は、その両者が異質なものであるということである。しかし、同じ自然に対する複数の記述方法である以上、それらの適用範囲が広がるにつれ交錯する分野が現われるのは必然である。その領域においては、何らかの橋渡しが出来ていなければならない。だがそれはそれぞれに関する深い知識がなければ構築できない類のものである。量子カオスという研究分野はおもにその橋渡しを追求するが、この研究はむしろ古典系側の基盤を探るものである。古典系に話を限っても、ヘリウム原子ですら三体問題であり、カオス的な性質を持つハミルトン系(保存力学系)である。運動を決定する積分が足りないために、系の運動を統一的に記述することは未だなされていない。ハミルトン系の相空間の構造は非常に複雑であるので、高い解像度で観察する必要がある。つまり、これらの系における困難とは、広大な初期条件空間をくまなく探索しなければならないということなのである。そうしてはじめて量子系との対応を議論できるようになる。そのような作業の結果としてこの研究で見出されたことは、1)カオス的な軌道は全て原子から無限遠へ飛び出す(イオン化を起こす)、2)相空間には非自明なトーラスが埋め込まれている、3)カオスとトーラスの織りなす非常に複雑な構造が見出されたことである。また、それらを応用して原子や分子の古典力学的な表現を探求している。原子や分子のモデルを、クーロン力によって相互作用する独立した粒子のシステムとして扱う場合、ほとんど単純化をせずに相空間を広汎に調べた研究というものはあまり例がない。そして、その結果として幾つか重要と思われる知見が得られている。単純化したモデルにおいて量子古典対応を研究した例は非常に多いが、それでだけでは量子古典対応などの問題の未解決な点をあらわにすることは出来ないのではないかと考えられる。なお、この論文内での約束事は次の通りである。1)軌道の初期条件で、とくに記していない変数はその配置で決まっているか、そうでなければ0である。2)先に刊行されている論文[1]との用語の統一を図るため、トーラスの名称などはとくに英語で記した。3)物性研究版では、本文と図の一部が省略されている。

Bussei Kenkyu•Jul 20, 1994•0 citations

量子相認識に向けた量子畳み込みニューラルネットワークのチャネル注意機構の提案

Gekko Budiutama, 大門 俊介, 西 紘史 +3 more

量子畳み込みニューラルネットワーク(QCNNs)は、量子コンピュータ上での機械学習アルゴリ ズムとして有望なアプローチの一つである[1]。QCNNsは量子位相認識といった様々な学習タスク で成功を収めており[2]、勾配消失問題に耐性があるため、トレーニングが容易である。しかし、 QCNNsの実用性を向上させるためには、トレーニングコストの削減と性能の向上が不可欠である。 本研究では、QCNNsに向けたチャネル注意機構を提案する[3]。このチャネル注意機構では、従 来のQCNNsで破棄される量子ビットを測定することにより出力状態のチャネルを生成し、各チャ ネルに重要性を示す重みパラメータが割り当てられる(図 a)。基底状態から量子相を予測する 量子相認識タスクにおいて、チャネル注意機構を導入したQCNNと従来のQCNNを比較した。 その結果、チャネル注意機構を導入した QCNN は、正しい状態の確率を高め、予測結果を理想 的な解に近づけた(図 b)。さらに、チャネル注意機構は QCNN の訓練エポック数を大幅に削減 し、訓練コストを抑えることができた。また、QCNN−古典ニューラルネットワークの従来のハイ ブリッドモデルに比較した結果、 チャネル注意機構を導入した QCNN はより少ないパラメータ かつ高精度で量子相を認識する ことができた。したがって、提案 したチャネル注意機構は QCNNs の実用性、汎用性、および使いや すさを向上する高効率かつ低コ ストな手法である。

•Mar 25, 2024•0 citations
最近、孤立した量子多体系の非平衡ダイナミクスが活発に研究されている。特に、外部変数を急変化させた後の量子系の時間発展を、量子クエンチ (quantumquench) とよぶ。70年代に McCoy 達により可解系で量子クエンチが議論されたが、最近冷却原子系の実験等に刺激され、再び注目されている。孤立量子系のダイナミクスは、量子統計力学の基礎の視点からも興味深い。量子多体系の純粋状態を任意に与えると、ほとんどの場合、その状態に関する物理量の期待値は、平衡値に非常に近い値に近づくことが、最近再発見された。量子状態の典型性 (typicality) の視点である。さらに、与えられた純粋状態のユニタリな時間発展の中で、局所演算子の期待値は平衡状態のアンサンブル平均値に収束する、と予想されている。このときエントロピーは全く変化しないが、しかし、緩和のような振る舞いが見られる。3日間の講義では最初に、可積分量子系の例を紹介し、デルタ関数型ポテンシャルで相互作用する1次元ボース気体に対してベーテ仮設の方法を説明する。次に、ホール励起など典型的な素励起を詳しく解説する。さらに、低励起スペクトルでの系の振る舞いと CFT との対応の概略をスケッチする。量子多体問題の様々な手法が可積分量子系で具体的に実現される点が教育的であると思われる。さらに、代数的べ一テ仮設を説明し、スラブノブ公式など演算子の期待値や形状因子を求めるに役立つ定理を解説する。そして、1次元ボース気体やXXX鎖等での最近の結果を紹介する。
単独の電子は,質量・電荷・スピンで特徴付けられ,その性質は定量的によくわかっている。しかし,このような電子が多数集まると,非常に豊かで思いがけない性質を示す。固体中に凝縮した電子が示す超伝導,強磁性,分数量子ホール効果などはその例である。単独の電子の固有状態は,自由空間では平面波であるが,多数の電子の固有状態は必ずしも平面波ではない。すなわち斥力相互作用が強いと,平面波状態は不安定になり,多数の電子は自発的に局在する。この状態は,電子の結晶とみなせる。それでは逆に,平面波状態(フェルミ液体状態)は電子間の相互作用があっても生き残れるか,と問うこともできる。実はこの答えは単純ではない。その際,系の次元性が本質的に重要になる。この講義では,量子多体系としての電子系が示す興味ある性質を理解するために,単純な例から出発して重要な基本概念を説明する。特に,近藤効果,朝永・ラッティンジャー流体,モット絶縁体,動的有効場などを直感的に理解できるようにしたい。また,できるだけ最近の実験結果を含む新しい例題を選んで,量子多体系に関する最先端研究の現状がわかるようにしたい。
近年、凝縮系物理で注目を集めている強相関電子系について、いくつかの例を取り上げて入門的な講義を行う。まず、強相関電子系における豊富な物理について説明した後、量子揺らぎの最も大きい「1次元電子系」の話題から始める。1次元系の普遍的性質を記述する「朝永ラッティンジャー液体」を臨界現象という観点からながめてみると、多様性の中に潜む「美くしさ」が自然に浮きあがる。カーボンナノチューブや量子細線への応用も紹介する。次に、多体効果の典型例である局所的な電子相関「近藤効果」について概説する。近藤効果は古くから研究されているが、最近でも重い電子系や量子ドット系など、広い分野で精力的に研究が展開されている。いたるところに顔を出す、とびきり重要な概念である。近藤効果には電子相関のエッセンスが凝縮されており、実験の人もぜひマスターしたい必須アイテムである。最後に「モット転移」の話をする。特に、強相関現象の解明には欠かせない動的平均場理論を紹介する。電子相関効果を扱うことは一般に難しいが、「局所的な相関効果を正確に扱おう」というアプローチが動的平均場のエッセンスである。「平均場なのにダイナミクスが扱えるの?」という疑問にも答えたい。
時間反転対称性を持つミクロな力学法則からどのように熱平衡状態への緩和のような不可逆な現象が生じるかを説明することは理論物理学の大きな問題の一つである。近年、外界から孤立した量子系が熱平衡状態に緩和するための条件について理解が進んできたが、実際の物理系が熱平衡状態に緩和するまでにどの程度の時間がかかるかについては依然として難しい問題である。孤立量子系の熱平衡化の時間スケールの問題について理解を深めるため、孤立系に人工的に弱い散逸を加えた開放量子系の解析を行ない、その散逸ダイナミクスを記述するリンドブラディアンのスペクトルギャップの解析を行なった。理論的な予想によれば、スペクトルギャップは熱力学的極限において不連続性を示し、熱力学的極限の後に散逸を弱くする極限をとることによって、孤立量子系の熱平衡化に必要な緩和時間が定量的にわかるというものである。特に、着目系に粒子数一定などの保存量がある場合に、この予想が正しいことを確認した。さらに、このようなスペクトルギャップの不連続性を数学的にうまく利用することによって、開放量子系のダイナミクスを記述するリンドブラッド方程式の微視的導出が可能となることを明らかにし、プレプリントを公開した。 また、以上の理論的進展について、日本物理学会年次大会のシンポジウムで招待講演を行なった。 It is one of the most challenging problems in theoretical physics to elucidate how irreversible phenomena like the relaxation to thermal equilibrium arises from reversible microscopic law. In recent years, some progress has been made on our understanding of the condition under which a quantum system that is isolated from the surrounding environment relaxes towards thermal equilibrium. However, it is still a hard problem to evaluate how long time it takes for the system to thermalize. To get insights on the problem of timescale of thermalization in isolated quantum systems, we investigate an open quantum system, where artificial weak dissipation is introduced to the given isolated system. In particular, I focus on the spectral gap of the Lindbladian, which is the generator of the dissipative dynamics of such a system. According to the theoretical conjecture, the spectral gap shows discontinuity in the thermodynamic limit, and one can obtain the relaxation time by considering the double limit where the weak-dissipation limit is taken after the thermodynamic limit. I have confirmed that this conjecture is true when there are some conserved quantities like the number of particles. Moreover, I have shown that the discontinuity of the spectral gap allows us to microscopically derive the Lindblad equation, which is a fundamental equation describing the dynamics of open quantum systems, and this result is reported in the preprint. I also gave an invited talk on the above theoretical progress in the JPS annual meeting.
この論文では,ある条件のもとに量子力学を古典統計力学で近似し,それを用いて実時間で量子トンネル現象を調べる.初めに,外界と結合した量子力学系において散逸の果たす役割をみる;拡散項はエントロピーを常に増大させるが摩擦項は反対にエントロピーを減少させる.これから,漸近的にエントロピー変化が無いパラメターを選べる.すると同時に,エネルギーもまた変化しないことが解る.さらに,量子力学的2点相関関数(の実部)がうまく再現されることを示す.この系をFokker-Planck方程式で記述し,これを涌き出し-吸い込みの境界条件のもとに鞍点法で解く.まず環境系の結合しない量子力学の場合の簡単なモデルについて解いて,これをよく知られたインスタントンの方法の結果と比べる.さらに実際に散逸がある時に,摩擦項は遷移確率を減少させるが,拡散項はそれを増加させる事を議論していく.
この研究で扱うような原子・分子の古典モデルの歴史は1920年代にまで遡る。その発端は、Bohrの水素原子のモデルでは成立した量子古典対応がヘリウムでは成立しないことだった。量子論の前夜の事件であるが、それは今なお未解決の部分を多く含む問題なのである。量子と古典の間の深い溝は、その両者が異質なものであるということである。しかし、同じ自然に対する複数の記述方法である以上、それらの適用範囲が広がるにつれ交錯する分野が現われるのは必然である。その領域においては、何らかの橋渡しが出来ていなければならない。だがそれはそれぞれに関する深い知識がなければ構築できない類のものである。量子カオスという研究分野はおもにその橋渡しを追求するが、この研究はむしろ古典系側の基盤を探るものである。古典系に話を限っても、ヘリウム原子ですら三体問題であり、カオス的な性質を持つハミルトン系(保存力学系)である。運動を決定する積分が足りないために、系の運動を統一的に記述することは未だなされていない。ハミルトン系の相空間の構造は非常に複雑であるので、高い解像度で観察する必要がある。つまり、これらの系における困難とは、広大な初期条件空間をくまなく探索しなければならないということなのである。そうしてはじめて量子系との対応を議論できるようになる。そのような作業の結果としてこの研究で見出されたことは、1)カオス的な軌道は全て原子から無限遠へ飛び出す(イオン化を起こす)、2)相空間には非自明なトーラスが埋め込まれている、3)カオスとトーラスの織りなす非常に複雑な構造が見出されたことである。また、それらを応用して原子や分子の古典力学的な表現を探求している。原子や分子のモデルを、クーロン力によって相互作用する独立した粒子のシステムとして扱う場合、ほとんど単純化をせずに相空間を広汎に調べた研究というものはあまり例がない。そして、その結果として幾つか重要と思われる知見が得られている。単純化したモデルにおいて量子古典対応を研究した例は非常に多いが、それでだけでは量子古典対応などの問題の未解決な点をあらわにすることは出来ないのではないかと考えられる。なお、この論文内での約束事は次の通りである。1)軌道の初期条件で、とくに記していない変数はその配置で決まっているか、そうでなければ0である。2)先に刊行されている論文[1]との用語の統一を図るため、トーラスの名称などはとくに英語で記した。3)物性研究版では、本文と図の一部が省略されている。
量子畳み込みニューラルネットワーク(QCNNs)は、量子コンピュータ上での機械学習アルゴリ ズムとして有望なアプローチの一つである[1]。QCNNsは量子位相認識といった様々な学習タスク で成功を収めており[2]、勾配消失問題に耐性があるため、トレーニングが容易である。しかし、 QCNNsの実用性を向上させるためには、トレーニングコストの削減と性能の向上が不可欠である。 本研究では、QCNNsに向けたチャネル注意機構を提案する[3]。このチャネル注意機構では、従 来のQCNNsで破棄される量子ビットを測定することにより出力状態のチャネルを生成し、各チャ ネルに重要性を示す重みパラメータが割り当てられる(図 a)。基底状態から量子相を予測する 量子相認識タスクにおいて、チャネル注意機構を導入したQCNNと従来のQCNNを比較した。 その結果、チャネル注意機構を導入した QCNN は、正しい状態の確率を高め、予測結果を理想 的な解に近づけた(図 b)。さらに、チャネル注意機構は QCNN の訓練エポック数を大幅に削減 し、訓練コストを抑えることができた。また、QCNN−古典ニューラルネットワークの従来のハイ ブリッドモデルに比較した結果、 チャネル注意機構を導入した QCNN はより少ないパラメータ かつ高精度で量子相を認識する ことができた。したがって、提案 したチャネル注意機構は QCNNs の実用性、汎用性、および使いや すさを向上する高効率かつ低コ ストな手法である。