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パルス励起によるCoherent Population Trapping原子発振器の特性改善に関する研究

Yuichiro YANO

Published Mar 25, 2015• 0 citations
OpenAlex

Abstract

Coherent Population Trapping(以下 CPT)共鳴を利用した原子発振器は,小型かつ省電力でありながら原子の遷移周波数を基準とするため高い周波数安定度を有することが特徴である.近年では,小型情報端末,センサーネットワーク,測位衛星,車載向けなど体積と消費電力が制限される機器への搭載に向けてCPT原子発振器の小型化,省電力化,高安定化の研究,開発が進められている.一般に,原子発振器には高い周波数安定度が要求され,安定度を高める方法として Double-Λ法 [6] やPush-Pull光ポンピング法 [7] など,種々提案されている [8].しかし,これまでの提案法は複雑な光学系と高い消費電力を要するため,小型原子発振器への適用は困難であった.そこで本研究は小型原子発振器に適用できる小型で低電力動作可能な改善法として,パルス励起に着目した.一般的に周波数安定度はアラン標準偏差で表される [9;10;11].原子発振器の場合には,安定度は平均化時間により短期と長期の2つに分類される [12].短期安定度は共鳴のS/N比とQ値の積で理論的性能が決まる [13].S/N比改善のためには高い光強度で励起する必要があるが,高い光強度はパワーブロードニングによるQ値低下を招くため,S/N比とQ値を同時に改善するのは難しい [14].長期安定度は,共鳴の測定条件が時間的に変化し,周波数が変動することで劣化する.周波数変動の支配的な要因はライトシフトであり,光学素子類の経年劣化により光強度変化が生じた際に周波数が変動する [15;16;17] したがって,周波数安定度を改善するためには,S/N比とQ値の向上とライトシフトの低減が求められる.近年,パルス励起による特性改善が注目されている [6;18;19;20;21].パルス励起は,ラムゼイ干渉を利用する方法で,パワーブロードニング抑制とライトシフト低減が可能となり,短期,長期ともに高い安定度が得られる [18].しかし,パルス励起で使用される音響光学変調器は体積と消費電力が大きく,小型原子発振器への適用は困難である.また,ライトシフトは長期安定度劣化の主要因であるが,その低減効果は実験による報告のみで,理論的解明は行われていなかった.それゆえ,最適な実験条件は明らかでなく,更なる長期安定度改善のため,ライトシフトの理論的な解明が望まれていた.そこで本研究は,小型原子発振器に適用できる小型で低電力動作可能な改善法として,パルス励起に関する研究を行った.パルス励起が小型かつ省電力動作可能なこと,提案する解析法によりライトシフトの振る舞いを定量的に解析可能なことを示した.本論文では,まず,パルス励起によるCPT共鳴の解析および実験からパワーブロードニング抑制効果とライトシフト低減効果を明らかにし,パルス励起の有効性を確認する.次に,小型で低消費電力な改善方法として透過型液晶を用いたパルス励起を提案し,共鳴特性が改善されることを示す.加えて,発振器の更なる省電力化を目指し,高次高調波による励起を検討し,RF回路の大幅な省電力化を図る.最後に,S/N比改善法として直交偏光子法を提案する.

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全光的手法によるダイヤモンド中の鉛-空孔センターのスピン特性評価

陳溢暘, 平井紅陽, ネオ ジー ゼン +7 more

ダイヤモンド中の鉛空孔センター(PbV)は10 K以上でも物理限界の自然幅を示すため、量子ネットワークへの応用が期待されている。しかし、PbVセンターのスピン特性は未だに解明されていない。本研究では、全光的な手法により、PbVセンターのスピン初期化・読み出し、スピンライフタイム(T1)およびCoherent population trapping (CPT)によるSpin dephasing time (T2*)の評価を行った結果ついて報告する。

•Sep 10, 2026•0 citations

量子コンピューティング技術の生命科学研究への応用可能性:現状と将来展望

八幡 憲明

近年、量子コンピューティング関連技術の研究開発が急ピッチで進められている。本講演ではその現状を概観すると共に、これを将来の生命科学研究、ひいては精神医学研究において活用する見通しについて検討を行う。まず、量子コンピュータで用いられる計算アルゴリズムをベースとして、内積計算や固有値分解などの基本的な線形代数演算、ないし主成分分析・正準相関分析を、古典コンピュータにおいても高速近似する量子インスパイアドアルゴリズム(量子着想アルゴリズム)を紹介する。通常手法による主成分分析・正準相関分析では、取り扱うデータの次元数Dの3乗に比例する計算時間を要するが、量子インスパイアドアルゴリズムを用いると計算時間が対数(log D)程度まで低減できる。従って、これまでは実現困難だった超高次元データの要約や特徴抽出に活用できる可能性が示されている。次に、量子コンピュータの開発状況と今後の活用が期待される分野を概観する。量子コンピュータはゲート方式とアニーリング方式に大別される。ゲート方式の方が高い汎用性が期待されるが、現段階で実現されているビット数は限定的であり、これを利用した生命科学研究は本格化するに至っていない。将来的に量子化学や創薬分野で見込まれている活用方法についてまとめる。一方、アニーリング方式の量子コンピュータや、この動作を古典コンピュータ上で模倣するイジングマシンについては実装化が進んでおり、有償での一般利用が可能となっている。その設計上の制約から適用できる問題は限定的であるものの、本講演では幾つかの実施例を、生命科学分野の研究にも応用可能と思われるものを織り交ぜつつ紹介する。

•Nov 6, 2023•0 citations

量子Blume-Emery-Griffths模型の解析(修士論文(2010年度))

Atsuki Osanai

本論文では,量子Blume-Emery-Griffiths(BEG)スピングラス模型の相転移について議論する。その目的は一次転移に対する,量子揺らぎとランダムネスの影響を明らかにすることにある。ここでは上記の課題を解明するために,平均場理論および実空間繰り込み群の方法を用いた解析を行う。BEG模型はS=1のIsing模型とも呼ばれ,平均場理論や実空間繰り込み群による解析から一次転移と二次転移の二種類の相転移が起きる模型として知られている。一次転移点では,複数の状態の共存状態が実現している。また,それらの状態間にはポテンシャル障壁が存在する。系が有限温度にある場合は,ポテンシャル障壁を熱揺らぎによって飛び越えることで一次転移が起きるが,低温領域ではこのような機構での相転移は起きない。その一方で,低温では量子揺らぎが有意となり,ポテンシャル障壁で隔てられた状態間をトンネル効果によって遷移することが可能となる。このような背景から,一次転移がある系に量子揺らぎを加えたときに,その一次転移がより強固なものになるか破壊されるかは非常に興味深い問題と言える。よって,一次転移が存在する模型の代表として,量子BEGスピングラス模型を扱うのである。このような系の定性的な性質を知るためには,無限次元の系を表す平均場理論が有効である。よって,まず平均場理論を用いた解析を行う。量子スピン系の解析の困難性の一つは,スピン演算子の非可換性にある。そこで,経路積分の方法を用いることで,d次元量子系を(d+1)次元古典系へと変換して解析を行う。+1次元の効果は量子揺らぎに由来するもので,秩序変数の虚時間依存性という形で現れる。その上で,まず秩序変数の虚時間依存性を無視するという静的近似を用いた解析を行う。次に,量子揺らぎの効果を適切に考慮するために,秩序変数の虚時間依存性を部分的に取り込んだ解析を行う。それらの結果の比較から,静的近似が相図上の特定の領域ではよい近似となっていることが明らかとなった。一般に,静的近似は低温では有効ではない。しかし,本論文の結果はそれが有効な例として非自明なものと言うことが出来る。また,量子揺らぎの加え方によって,一次転移に対する影響が異なることが明らかとなった。次に,有限次元系の性質を調べるために,±Jボンドランダムネスを加えた3次元横磁場BEGスピングラス模型を,実空間繰り込み群の方法を用いて解析する。量子系における繰り込み群を構成するために,本論文では切断近似を導入する。切断近似は半古典的な近似ということが出来,有限次元系の量子揺らぎを解析するための最も初等的な近似と言うことが出来る。本論文では,上記の手法を用いることで得られる相図を提示する。また,スケーリング指数の評価を行うことで,ランダム系に対しても転移の次数を特定する。これらの解析から,純粋系においては横磁場の下でも一次転移が存在することが明らかとなった。しかし,その一次転移はランダムネスの増加に伴い急激に破壊され,二次転移へと移行することが分かった。これより,有限次元において一次転移は横磁場に対しては安定であるが,ランダムネスに対しては不安定であると結論付けられる。

•Oct 5, 2011•0 citations

多次元振動分光スペクトルによる散逸性量子トンネル過程の理論的解析(修士論文(2004年度))

Akihito Ishizaki

散逸の影響を受ける量子トンネル過程は、物理学から化学そして生命現象に至るまで多くの分野において重要な役割を果たしており、これまでにも精力的に調べられてきた。しかし、その理論的取扱いや実験的観測の難しさが、多くの興味ある問題の解決を困難なものにしている。本研究では、有色ノイズを生む調和振動子熱浴と結合した1次元対称二連井戸ポテンシァル系を考察する。この系は、分光学的にも興味が持たれている凝縮相中のプロトン移動異性化反応を記述するモデルである。系と熱浴の相互作用としては、散逸(縦緩和と横緩和)を引き起こす従来の線形-線形結合だけでなく、周波数揺動による純粋位相緩和を誘起する非線形-線形結合をも考慮する。このような系に対して、久保の確率過程的Liouville方程式を拡張したGauss-Markov量子Fokker-Planck方程式を解き、双極子μ(Q^^^)の四体相関関数で定義される二次元赤外シグナルを計算した。その結果、入射レーザーパルスの位相整合条件で決まる特定の方向で観測される二次元赤外シグナルの非対角ピークから、トンネル分裂準位間の熱的励起・緩和過程が分離されて観測できることが示される。トンネル分裂準位という真に量子的な系に対する凝縮相の散逸効果を視覚的に捕らえることができるのである。また、従来の実験技術では測定が困難であった凝縮相中のプロトン移動反応の速度定数が、二次元赤外スペクトルからは簡単に評価できる可能性が示される。多次元振動分光法は、凝縮相化学反応の速度定数を測定する新しい技術であると言えよう。

Bussei Kenkyu•Nov 20, 2005•0 citations

駆動電流変調によるRamsey-CPT共鳴のライトシフト特性

ダイスケ ハラグチ, 大輔 原口

Coherent Population Trapping (CPT) 共鳴を利用した原子時計は、小型 ・低消費電力動作でありながら水晶振動子よりも高い周波数安定度を持ち、次世代の小型周波数基準として注目されている。周波数安定度を大幅に改善させる方法の一つに、レーザ光をパルス化し、 Ramsey CPT 共鳴を観測するパルス励起法がある。パルス励起法では共鳴線幅・コントラストの改善により短期安定度特性が向上するだけでなく、ライトシフト(レーザ光強度の変動による中心周波数のシフト)を抑制することから、長期安定度特性の改善も可能である。しかし、レーザ光のパルス化に音響光学変調装置 (AOM) を必要とすることから、超小型原子時計 (Chip Scale Atomic Clock; CSAC) への適用は困難とされてきた。本研究室では、レーザ光源である VCSEL の駆動電流をパルス化させることでパルス励起を行う手法を提案し、 Ramsey CPT 共鳴の観測に成功した。提案法では AOM を使用せず、 CSAC の装置構成をそのまま用いることができ、小型・低消費電力を保ちながら周波数安定度の向上が可能である。しかし、これまでの観測方法では観測時にレーザ波長の変動が生じることから、ライトシフトの計測が困難であり、長期安定度に関する考察を行う ことができなかった。本研究では、駆動電流変調により観測した Ramsey CPT 共鳴のライトシフト特性を評価することを目的とし、観測システムの改善を行った。これまでのサンプル・ホールド回路を用いたシステムでは、特定の波長の透過光量を取得することが困難であった。本研究では、デジタイザーを用いて吸収線のピーク値を取得できるよう観測システムを変更した。吸収線のピーク値が現れる波長は一定であるため、これにより特定の波長の透過光量を取得することができ、正確なライトシフトの計測ができる。加えて、実験装置の制御プログラ ムを改善した。これまでの制御プログラムでは、各種パラメータを変更するために、その都度プログラム自体の書き換えが必要であった。ライトシフト測定のためにレーザ光量を大幅に変化させた場合、ロックイン制御などのパラメータの変更が必要となる。そのため、各種パラメータの変更が容易となるような制御プログラムを新たに作成した。ライトシフトを求めるために必要な共鳴中心周波数は、測定データにカーブフィッティングを行い、近似曲線の最大値を求めることで算出した。これにより実測値から得た中心周波数と、各種設定値から算出した理論値を比 較することで、正確にライトシフトが測定できていることを確認できた。結果として、駆動電流変調によるパルス励起では、連続励起の場合と比較して 41 倍と大幅なライトシフト抑制が可能となることが明らかとなった。また、理論値との比較から、駆動電流変調によるパルス励起では、 AOM を用いたパルス励起でライトシフトを悪化させる要因であるレーザ入射から観測までの時間の影響をほとんど受けないということが分かった。このことから駆動電流変調により、長期安定度の大幅な改善が可能となる。本論文は全5章で構成されている。第1 章は序論 である。本研究における背景 を示し、目的を明らかにする。第2章は CPT共鳴 を利用した原子時計に関する内容である。 CPT共鳴の原理と周波数安定度の支配的要因について説明 し、さらに本研究で考察の対象となるライトシフトについて詳述する。第3章は VCSEL 駆動電流変調について述べる。 AOM を用いずに RamseyCPT 共鳴を観測するための原理と、実験装置構成を説明する。駆動電流変調ではレーザの出力波長が生じるため、波長変動の推定方法も説明する。またこれまでのサンプル・ホールド回路を用いた吸収線観測で生じる問題点について述べ、解決策として吸収線のピーク値を取得する吸収線観測方法を提案する。第4章は駆動電流変調による Ramsey CPT 共鳴の観測結果である。初めに新たな観測方法により得た吸収線から、短期安定度に寄与する共鳴線幅とコントラストを求め、連続励起による CPT 共鳴と比較し短期安定度の性能が改善されていることを確認する。続いてライトシフトの測定結果を示す。数値計算で求めた値と比較することで観測結果の有効性を確認し、駆動電流変調によりライトシフト特性が向上することを示す。第5章は結論である。実験により得られた知見をまとめ、本研究の有効性を確認し、今後の展望について述べる。

•Mar 25, 2019•0 citations

ボーズ粒子系における集団変数と内部変数について

Yasunori Igarashi, Kuniyoshi Chuma, Ryoji Suzuki

集団運動の方法による取り扱いは,強く相互作用し合っているポーズ粒子系の素励起の性質を知るうえで,大変示唆に富んだ物理的描像を提供してくれる。我々は近似的にではあるが,集団変数と互いに直交する正準共役な内部変数が存在することを見い出したので報告したい。集団変数と内部変数を用いることによって系のHamiltonianを,集団運動を記述する部分と内部運動を記述する部分へ分離することが可能となり,これまで取り扱いが困難であった内部運動を平易に取り扱うことができ,例えば,ボーズ粒子系ではk_sより小さな運動量を持ったSingle-Particle excitationは起こらないこと等が導き出される。本論文では集団変数と内部変数との直交性や分離の度合等についての議論を展開する。

•Aug 20, 1979•0 citations
Coherent Population Trapping(以下 CPT)共鳴を利用した原子発振器は,小型かつ省電力でありながら原子の遷移周波数を基準とするため高い周波数安定度を有することが特徴である.近年では,小型情報端末,センサーネットワーク,測位衛星,車載向けなど体積と消費電力が制限される機器への搭載に向けてCPT原子発振器の小型化,省電力化,高安定化の研究,開発が進められている.一般に,原子発振器には高い周波数安定度が要求され,安定度を高める方法として Double-Λ法 [6] やPush-Pull光ポンピング法 [7] など,種々提案されている [8].しかし,これまでの提案法は複雑な光学系と高い消費電力を要するため,小型原子発振器への適用は困難であった.そこで本研究は小型原子発振器に適用できる小型で低電力動作可能な改善法として,パルス励起に着目した.一般的に周波数安定度はアラン標準偏差で表される [9;10;11].原子発振器の場合には,安定度は平均化時間により短期と長期の2つに分類される [12].短期安定度は共鳴のS/N比とQ値の積で理論的性能が決まる [13].S/N比改善のためには高い光強度で励起する必要があるが,高い光強度はパワーブロードニングによるQ値低下を招くため,S/N比とQ値を同時に改善するのは難しい [14].長期安定度は,共鳴の測定条件が時間的に変化し,周波数が変動することで劣化する.周波数変動の支配的な要因はライトシフトであり,光学素子類の経年劣化により光強度変化が生じた際に周波数が変動する [15;16;17] したがって,周波数安定度を改善するためには,S/N比とQ値の向上とライトシフトの低減が求められる.近年,パルス励起による特性改善が注目されている [6;18;19;20;21].パルス励起は,ラムゼイ干渉を利用する方法で,パワーブロードニング抑制とライトシフト低減が可能となり,短期,長期ともに高い安定度が得られる [18].しかし,パルス励起で使用される音響光学変調器は体積と消費電力が大きく,小型原子発振器への適用は困難である.また,ライトシフトは長期安定度劣化の主要因であるが,その低減効果は実験による報告のみで,理論的解明は行われていなかった.それゆえ,最適な実験条件は明らかでなく,更なる長期安定度改善のため,ライトシフトの理論的な解明が望まれていた.そこで本研究は,小型原子発振器に適用できる小型で低電力動作可能な改善法として,パルス励起に関する研究を行った.パルス励起が小型かつ省電力動作可能なこと,提案する解析法によりライトシフトの振る舞いを定量的に解析可能なことを示した.本論文では,まず,パルス励起によるCPT共鳴の解析および実験からパワーブロードニング抑制効果とライトシフト低減効果を明らかにし,パルス励起の有効性を確認する.次に,小型で低消費電力な改善方法として透過型液晶を用いたパルス励起を提案し,共鳴特性が改善されることを示す.加えて,発振器の更なる省電力化を目指し,高次高調波による励起を検討し,RF回路の大幅な省電力化を図る.最後に,S/N比改善法として直交偏光子法を提案する.
ダイヤモンド中の鉛空孔センター(PbV)は10 K以上でも物理限界の自然幅を示すため、量子ネットワークへの応用が期待されている。しかし、PbVセンターのスピン特性は未だに解明されていない。本研究では、全光的な手法により、PbVセンターのスピン初期化・読み出し、スピンライフタイム(T1)およびCoherent population trapping (CPT)によるSpin dephasing time (T2*)の評価を行った結果ついて報告する。
近年、量子コンピューティング関連技術の研究開発が急ピッチで進められている。本講演ではその現状を概観すると共に、これを将来の生命科学研究、ひいては精神医学研究において活用する見通しについて検討を行う。まず、量子コンピュータで用いられる計算アルゴリズムをベースとして、内積計算や固有値分解などの基本的な線形代数演算、ないし主成分分析・正準相関分析を、古典コンピュータにおいても高速近似する量子インスパイアドアルゴリズム(量子着想アルゴリズム)を紹介する。通常手法による主成分分析・正準相関分析では、取り扱うデータの次元数Dの3乗に比例する計算時間を要するが、量子インスパイアドアルゴリズムを用いると計算時間が対数(log D)程度まで低減できる。従って、これまでは実現困難だった超高次元データの要約や特徴抽出に活用できる可能性が示されている。次に、量子コンピュータの開発状況と今後の活用が期待される分野を概観する。量子コンピュータはゲート方式とアニーリング方式に大別される。ゲート方式の方が高い汎用性が期待されるが、現段階で実現されているビット数は限定的であり、これを利用した生命科学研究は本格化するに至っていない。将来的に量子化学や創薬分野で見込まれている活用方法についてまとめる。一方、アニーリング方式の量子コンピュータや、この動作を古典コンピュータ上で模倣するイジングマシンについては実装化が進んでおり、有償での一般利用が可能となっている。その設計上の制約から適用できる問題は限定的であるものの、本講演では幾つかの実施例を、生命科学分野の研究にも応用可能と思われるものを織り交ぜつつ紹介する。
本論文では,量子Blume-Emery-Griffiths(BEG)スピングラス模型の相転移について議論する。その目的は一次転移に対する,量子揺らぎとランダムネスの影響を明らかにすることにある。ここでは上記の課題を解明するために,平均場理論および実空間繰り込み群の方法を用いた解析を行う。BEG模型はS=1のIsing模型とも呼ばれ,平均場理論や実空間繰り込み群による解析から一次転移と二次転移の二種類の相転移が起きる模型として知られている。一次転移点では,複数の状態の共存状態が実現している。また,それらの状態間にはポテンシャル障壁が存在する。系が有限温度にある場合は,ポテンシャル障壁を熱揺らぎによって飛び越えることで一次転移が起きるが,低温領域ではこのような機構での相転移は起きない。その一方で,低温では量子揺らぎが有意となり,ポテンシャル障壁で隔てられた状態間をトンネル効果によって遷移することが可能となる。このような背景から,一次転移がある系に量子揺らぎを加えたときに,その一次転移がより強固なものになるか破壊されるかは非常に興味深い問題と言える。よって,一次転移が存在する模型の代表として,量子BEGスピングラス模型を扱うのである。このような系の定性的な性質を知るためには,無限次元の系を表す平均場理論が有効である。よって,まず平均場理論を用いた解析を行う。量子スピン系の解析の困難性の一つは,スピン演算子の非可換性にある。そこで,経路積分の方法を用いることで,d次元量子系を(d+1)次元古典系へと変換して解析を行う。+1次元の効果は量子揺らぎに由来するもので,秩序変数の虚時間依存性という形で現れる。その上で,まず秩序変数の虚時間依存性を無視するという静的近似を用いた解析を行う。次に,量子揺らぎの効果を適切に考慮するために,秩序変数の虚時間依存性を部分的に取り込んだ解析を行う。それらの結果の比較から,静的近似が相図上の特定の領域ではよい近似となっていることが明らかとなった。一般に,静的近似は低温では有効ではない。しかし,本論文の結果はそれが有効な例として非自明なものと言うことが出来る。また,量子揺らぎの加え方によって,一次転移に対する影響が異なることが明らかとなった。次に,有限次元系の性質を調べるために,±Jボンドランダムネスを加えた3次元横磁場BEGスピングラス模型を,実空間繰り込み群の方法を用いて解析する。量子系における繰り込み群を構成するために,本論文では切断近似を導入する。切断近似は半古典的な近似ということが出来,有限次元系の量子揺らぎを解析するための最も初等的な近似と言うことが出来る。本論文では,上記の手法を用いることで得られる相図を提示する。また,スケーリング指数の評価を行うことで,ランダム系に対しても転移の次数を特定する。これらの解析から,純粋系においては横磁場の下でも一次転移が存在することが明らかとなった。しかし,その一次転移はランダムネスの増加に伴い急激に破壊され,二次転移へと移行することが分かった。これより,有限次元において一次転移は横磁場に対しては安定であるが,ランダムネスに対しては不安定であると結論付けられる。
散逸の影響を受ける量子トンネル過程は、物理学から化学そして生命現象に至るまで多くの分野において重要な役割を果たしており、これまでにも精力的に調べられてきた。しかし、その理論的取扱いや実験的観測の難しさが、多くの興味ある問題の解決を困難なものにしている。本研究では、有色ノイズを生む調和振動子熱浴と結合した1次元対称二連井戸ポテンシァル系を考察する。この系は、分光学的にも興味が持たれている凝縮相中のプロトン移動異性化反応を記述するモデルである。系と熱浴の相互作用としては、散逸(縦緩和と横緩和)を引き起こす従来の線形-線形結合だけでなく、周波数揺動による純粋位相緩和を誘起する非線形-線形結合をも考慮する。このような系に対して、久保の確率過程的Liouville方程式を拡張したGauss-Markov量子Fokker-Planck方程式を解き、双極子μ(Q^^^)の四体相関関数で定義される二次元赤外シグナルを計算した。その結果、入射レーザーパルスの位相整合条件で決まる特定の方向で観測される二次元赤外シグナルの非対角ピークから、トンネル分裂準位間の熱的励起・緩和過程が分離されて観測できることが示される。トンネル分裂準位という真に量子的な系に対する凝縮相の散逸効果を視覚的に捕らえることができるのである。また、従来の実験技術では測定が困難であった凝縮相中のプロトン移動反応の速度定数が、二次元赤外スペクトルからは簡単に評価できる可能性が示される。多次元振動分光法は、凝縮相化学反応の速度定数を測定する新しい技術であると言えよう。
Coherent Population Trapping (CPT) 共鳴を利用した原子時計は、小型 ・低消費電力動作でありながら水晶振動子よりも高い周波数安定度を持ち、次世代の小型周波数基準として注目されている。周波数安定度を大幅に改善させる方法の一つに、レーザ光をパルス化し、 Ramsey CPT 共鳴を観測するパルス励起法がある。パルス励起法では共鳴線幅・コントラストの改善により短期安定度特性が向上するだけでなく、ライトシフト(レーザ光強度の変動による中心周波数のシフト)を抑制することから、長期安定度特性の改善も可能である。しかし、レーザ光のパルス化に音響光学変調装置 (AOM) を必要とすることから、超小型原子時計 (Chip Scale Atomic Clock; CSAC) への適用は困難とされてきた。本研究室では、レーザ光源である VCSEL の駆動電流をパルス化させることでパルス励起を行う手法を提案し、 Ramsey CPT 共鳴の観測に成功した。提案法では AOM を使用せず、 CSAC の装置構成をそのまま用いることができ、小型・低消費電力を保ちながら周波数安定度の向上が可能である。しかし、これまでの観測方法では観測時にレーザ波長の変動が生じることから、ライトシフトの計測が困難であり、長期安定度に関する考察を行う ことができなかった。本研究では、駆動電流変調により観測した Ramsey CPT 共鳴のライトシフト特性を評価することを目的とし、観測システムの改善を行った。これまでのサンプル・ホールド回路を用いたシステムでは、特定の波長の透過光量を取得することが困難であった。本研究では、デジタイザーを用いて吸収線のピーク値を取得できるよう観測システムを変更した。吸収線のピーク値が現れる波長は一定であるため、これにより特定の波長の透過光量を取得することができ、正確なライトシフトの計測ができる。加えて、実験装置の制御プログラ ムを改善した。これまでの制御プログラムでは、各種パラメータを変更するために、その都度プログラム自体の書き換えが必要であった。ライトシフト測定のためにレーザ光量を大幅に変化させた場合、ロックイン制御などのパラメータの変更が必要となる。そのため、各種パラメータの変更が容易となるような制御プログラムを新たに作成した。ライトシフトを求めるために必要な共鳴中心周波数は、測定データにカーブフィッティングを行い、近似曲線の最大値を求めることで算出した。これにより実測値から得た中心周波数と、各種設定値から算出した理論値を比 較することで、正確にライトシフトが測定できていることを確認できた。結果として、駆動電流変調によるパルス励起では、連続励起の場合と比較して 41 倍と大幅なライトシフト抑制が可能となることが明らかとなった。また、理論値との比較から、駆動電流変調によるパルス励起では、 AOM を用いたパルス励起でライトシフトを悪化させる要因であるレーザ入射から観測までの時間の影響をほとんど受けないということが分かった。このことから駆動電流変調により、長期安定度の大幅な改善が可能となる。本論文は全5章で構成されている。第1 章は序論 である。本研究における背景 を示し、目的を明らかにする。第2章は CPT共鳴 を利用した原子時計に関する内容である。 CPT共鳴の原理と周波数安定度の支配的要因について説明 し、さらに本研究で考察の対象となるライトシフトについて詳述する。第3章は VCSEL 駆動電流変調について述べる。 AOM を用いずに RamseyCPT 共鳴を観測するための原理と、実験装置構成を説明する。駆動電流変調ではレーザの出力波長が生じるため、波長変動の推定方法も説明する。またこれまでのサンプル・ホールド回路を用いた吸収線観測で生じる問題点について述べ、解決策として吸収線のピーク値を取得する吸収線観測方法を提案する。第4章は駆動電流変調による Ramsey CPT 共鳴の観測結果である。初めに新たな観測方法により得た吸収線から、短期安定度に寄与する共鳴線幅とコントラストを求め、連続励起による CPT 共鳴と比較し短期安定度の性能が改善されていることを確認する。続いてライトシフトの測定結果を示す。数値計算で求めた値と比較することで観測結果の有効性を確認し、駆動電流変調によりライトシフト特性が向上することを示す。第5章は結論である。実験により得られた知見をまとめ、本研究の有効性を確認し、今後の展望について述べる。
集団運動の方法による取り扱いは,強く相互作用し合っているポーズ粒子系の素励起の性質を知るうえで,大変示唆に富んだ物理的描像を提供してくれる。我々は近似的にではあるが,集団変数と互いに直交する正準共役な内部変数が存在することを見い出したので報告したい。集団変数と内部変数を用いることによって系のHamiltonianを,集団運動を記述する部分と内部運動を記述する部分へ分離することが可能となり,これまで取り扱いが困難であった内部運動を平易に取り扱うことができ,例えば,ボーズ粒子系ではk_sより小さな運動量を持ったSingle-Particle excitationは起こらないこと等が導き出される。本論文では集団変数と内部変数との直交性や分離の度合等についての議論を展開する。