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システム生物学における量子科学技術の役割

洋一 高草木, Yoichi Takakusagi

Published Dec 15, 2017• 0 citations
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Abstract

「量子科学」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか? ・シュレーディンガーや, 難解な方程式, 電子軌道図 ・放射線・エックス線などの電磁波や, 光レーザー・半導体 ・初の国産機登場で話題となっている量子コンピューター ・苦手意識と憂鬱感 などなど 近年の技術革新により,「量子の目」で生命を俯瞰することをめざした, 量子生命科学「Quantum Life Science」という新たな分野が幕を開けようとしています。国の戦略目標および研究開発目標として具体的に定められ, 現在その基礎研究が推進されています。量子センシング, 量子イメージング, 量子ドット, 量子素子, 量子情報処理・通信など, 量子 (Quantum) と名のついた最先端技術が次々に登場しつつあります。 磁場, 温度, 光, 電磁波などの外的環境要因による反応を, 生物個体局所あるいは全体として時間的, 空間的そして定量的に捉え, その静的・動的変化や応答を一つのシステムとして理解しようとするのが, システム生物学の大きな目標の一つです。前述の外的要因はいずれも量子の関係する物理量であり, これらによって生じる影響もまた, 量子技術によって観測されうる生体応答です。例えば, 渡り鳥の方角認知や細胞内の温度局在, 植物の光回復, 人間の思考の流動性など, 多くの生命活動に量子が関係し, それらを説明できると推測されています。これらを解明するための体系・手段として, 今まさに量子科学への大きな関心が寄せられています。 一方で, 量子技術を基盤とした新たな診断治療技術の臨床試験や産業応用も進展しつつあり, 量子科学の概念や関連技術の重要性は, 今後もますます高まっていくと予想されます。 本特別セミナーでは, ①量子生命科学の概略, ②代表的な量子科学技術, ③システムとしての生物と量子科学技術の接点を, 具体例を挙げながら説明し, システム生物学における量子科学技術の役割について触れたいと思います。また, 既存の概念や分野に捕らわれない柔軟性の大切さやこれらを修得するための秘訣についても, 演者の経験を踏まえつつお話しします。 多くの皆様のお越しをお待ちしております。

Related papers

Launch of Quantum Life Science

Shu Fujimaki, Ryuji Igarashi, Yoichi Takakusagi +10 more

量研では,新しい学術領域「量子生命科学」の確立を目指した活動を,国内外の研究者と共に精力的に進めている。量子生命科学とは,最先端の量子技術と量子科学の知見を総合的に利用し,従来不可能であった極微の空間・時間スケールあるいは超高感度での生体内部の観測や生体分子の計測,生命機能のモデリングなどを実現することにより,量子論・量子力学を基盤とした視点から生命全般の根本原理を明らかにすることを目標とし,その原理の産業応用も視野に入れた分野である。本稿では,平成31年4月に量研内に発足した「量子生命科学領域」における研究のアプローチを紹介する。

Journal of the Atomic Energy Society of Japan•Jan 1, 2019•0 citations

量子コンピュータの基礎と物理との接点(第62回物性若手夏の学校 講義)

啓祐 藤井

にある物理に関する新たな知見を得るための強力な実験的手段となるであろう.また,量子物質設計や量子化学 計算などのように潜在的に「量子」の言語で定義された問題を解く上で量子コンピュータが役に立つことは言うま でもなく,今後,機械学習などの一見量子とは関係のない分野においても量子コンピュータがその実現の困難性を 引いても余りあるような貢献をする可能性もある. 一方,情報や計算といった概念は,通常の物理系学部の学生はあまり触れてこなかったと思う.よって,一通り 慣れてしまうまでは,議論の展開が殺伐としていて(それが良いところでもあるのだが)物理とのつながりが感 じにくく思われるかもしれない.最近では,小さいサイズではあるが万能性がある真の量子コンピュータ(IBM quantum experience)がウェブ上で公開されており,誰でも(今のところ)無料で利用することができる.この テキストに書かれていることを自分でサーバー上の量子コンピュータを使って確認してみるのもよいであろう. 今回は,量子デバイスの物理には踏み込む余裕はないが,量子コンピュータの理論は,それを支える量子デバイ スの物理や実験技術の蓄積に支えられている(従来のコンピュータが固体物理学や半導体技術の蓄積によって支 えられているように) .量子コンピュータを実現するためには,超伝導量子ビットに代表されるような量子情報デ バイスの物理をよりよく理解し,それを制御するための技術も重要な鍵となってくる.実験に興味がある意欲的 な学生は,量子情報デバイスの物理にも挑戦してもらいたい. 《講義ノート》 物性研究・電子版 Vol. 6, No. 4, 064217(2017年11月号) * 1 内積とは,線型空間の任意の2つの元 |ψ⟩ と |ϕ⟩ と複素数 (|ψ⟩, |ϕ⟩) ∈ C に対応させたものである. * 2 完備性とは,コーシー列 ∥|ψ⟩n -|ϕ⟩m∥ → 0 が空間の元 |ψ⟩ に収束する ∥|ψ⟩n -

•Nov 1, 2017•0 citations

最先端の研究開発 量子科学技術研究開発機構 第 4 回 「量子生命科学」の発進

秀 藤巻, 龍治 五十嵐, 洋一 高草木 +23 more

量研では、新しい学術領域「量子生命科学」の確立を目指した活動を、国内外の研究者と共に精力的に進めている。量子生命科学とは、最先端の量子技術と量子科学の知見を総合的に利用し、従来不可能であった極微の空間・時間スケールあるいは超高感度での生体内部の観測や生体分子の計測、生命機能のモデリングなどを実現することにより、量子論・量子力学を基盤とした視点から生命全般の根本原理を明らかにすることを目標とし、その原理の産業応用も視野に入れた分野である。本稿では、平成 31 年 4 月に量研内に発足した「量子生命科学領域」におけるアプローチを紹介する。

•Jun 1, 2019•0 citations

最先端の研究開発 量子科学技術研究開発機構

Ryuji Igarashi

量研では,新しい学術領域「量子生命科学」の確立を目指した活動を,国内外の研究者と共に精力的に進めている。量子生命科学とは,最先端の量子技術と量子科学の知見を総合的に利用し,従来不可能であった極微の空間・時間スケールあるいは超高感度での生体内部の観測や生体分子の計測,生命機能のモデリングなどを実現することにより,量子論・量子力学を基盤とした視点から生命全般の根本原理を明らかにすることを目標とし,その原理の産業応用も視野に入れた分野である。本稿では,平成31年4月に量研内に発足した「量子生命科学領域」における研究のアプローチを紹介する。

•Jun 17, 2024•0 citations

量子ゆらぎが大きな系での量子ダイナミックスと緩和現象(第44回 物性若手夏の学校(1999年度),講義ノート)

精二 宮下

「 第4 4 回 物性若手夏の学校」 ( 1 9 9 9 年度 ) 量子 ゆ らぎが大 きな系での量子ダ イナ ミックス と緩和現象 東大・ 工・ 物工 宮下精二 最近 、興味 を持たれているナ ノスケール系での動的現象 を紹介 し、それ らを解析する 量子力学 、統計力学的方法 をいろいろ調べ 、それぞれの特徴 を議論する。また、量子ゆ ら ぎが大 きな系での外場-の応答の新 しい特徴 を考察する。 それぞれの解析 における数値計 算の具体的手法 について も触 れる。 1 I m t r o d u c t i o n 具体的な講義 は以下 に述べ る ような内容 を考 えてい る。( 1 ) 非平衡統計力 学の基礎 ,つ ま り線形応答理論や確率過程 について触 れ,量子 ダイナ ミッ クスが重要な役割 をす る現象 に関する統計力学的手法 をの紹介 を行 う。( 2 ) 量子効果がその緩和現象 に顕著 な役割 をす るナ ノスケール分子磁性の実験 の紹介 をす る。( 3 ) 量子ダイナ ミクスの大 きな特徴である非断熱遷移 によっ て生 じる典型的な現象 とその機構の説明 し,上のナ ノスケール分子磁性 に おける現象の説明 を試みる。 ( 4 ) 周期的変動 をす る外場 の もとでの興味深 い現象 として,系の固有振動や外場の高調波 な どではない非 自明な周期 を 持つ振動現象がある。 それをいわゆるF l o q u e t 演算子の固有状態の として 解析 も紹介す る。 2 非平衡統計力学 オンサーガーの相反定理,揺動散逸定理 な ど線形応答理論の一般論 と久保 公式や森公式の導出。その応用 として,最近我 々が行 っている電子 ス ピン 共鳴 ( E S R ) の直接数値解析の方法 【 1 】 を紹介す る。 また,確率過程 につい てはマルコフ過程 の一般論 とWi e n e r 過程 ( wh i t e -g a u s s i a nn o i s e )によるラ ンジェバ ン方程式, さらにそれ とのフォツカープ ランク方程式の関係等 と の説明 をす る。 熟浴 と接 している量子系の運動 を記述する方法 として量子マスター方程 式 ( 資料参照)と量子 ランジェヴァン方程式 ( 文献 [ 3 】 参照)の方法 を紹介す る。 ここでは mi c r oc a v i t yの中で原子系 と相互作用する光子系の非古典状 態の解析 [ 2

物性研究•Nov 20, 1999•0 citations

線形リスト探索に対する量子質問計算量の下界

裕太郎 酒井

近年,量子コンピュータに関する研究が盛んに進められている.量子コンピュータとは,量子を用いて状態を操作する,現行のコンピュータとは異なる動作方式のコンピュータである.量子とは電子や光子のようなミクロな世界の粒子である.量子は量子力学と呼ばれる物理法則に従うことが知られている.量子コンピュータは量子力学の持つ不思議な性質を利用することで,特定の問題に対し漸近的な改善が期待される量子アルゴリズムを構成することができる. ある問題を解くために最適なアルゴリズムの計算量を, N を入力サイズとしてT(N) としたとき,あるアルゴリズムはT(N) の上界を与える手続きである.一方でT(N) の下界を知ることもまた重要である.計算量の下界を示すことができればアルゴリズムの改良の限界を示すことが可能である.また,定量的な観点から問題の難しさを捉える指標にもなる.計算量下界の証明は量子コンピュータの計算能力の可能性と限界を理論的に知ることに繋がる重要な問題である[H˘S05]. 量子アルゴリズムに対する計算量下界の証明は様々な問題に対して行われている[MBT18, CJR21].例えば前述の非構造探索に対してはΩ(√N) の下界が知られており,Grover のアルゴリズムが漸近的に最適であることが分かっている[Amb02, BBC+01, Zha19].一方で,二分探索は量子計算を利用したとしても漸近的な改善が見られない例である.古典計算においてN 要素の整列された列に対する二分探索はO(logN) の時間計算量で動作する.これに対して量子計算を利用する二分探索はΩ(logN) 回のクエリが必要であることが分かっている[HNS02].このように,問題によって量子計算を利用したとしても漸近的な改善が見られない場合もある. 線形リストは基本的なデータ構造として広く用いられており,古典計算において探索にかかる時間計算量はN を要素数としてΘ(N) である.ここで,量子計算を用いた場合に計算量の上界を示す方法としては古典計算の模倣やアドレス空間全体をGrover のアルゴリズムで探索するなどが考えられるが,下界についての結果は知られていない. 本研究はアドレス空間のサイズをN,リスト長をℓ として,リスト探索を高い確率で成功させる任意の量子アルゴリズムは,量子クエリを少なくともmin(ℓ − 1,Ω(√N))回は必要であることをある仮定のもとで示した.また,末尾要素探索を高い確率で成功させる任意の量子アルゴリズムについても同様にmin(ℓ − 2,Ω(√N))回のクエリが少なくとも必要であることをある仮定のもとで示した.

•Mar 1, 2023•0 citations
「量子科学」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか? ・シュレーディンガーや, 難解な方程式, 電子軌道図 ・放射線・エックス線などの電磁波や, 光レーザー・半導体 ・初の国産機登場で話題となっている量子コンピューター ・苦手意識と憂鬱感 などなど 近年の技術革新により,「量子の目」で生命を俯瞰することをめざした, 量子生命科学「Quantum Life Science」という新たな分野が幕を開けようとしています。国の戦略目標および研究開発目標として具体的に定められ, 現在その基礎研究が推進されています。量子センシング, 量子イメージング, 量子ドット, 量子素子, 量子情報処理・通信など, 量子 (Quantum) と名のついた最先端技術が次々に登場しつつあります。 磁場, 温度, 光, 電磁波などの外的環境要因による反応を, 生物個体局所あるいは全体として時間的, 空間的そして定量的に捉え, その静的・動的変化や応答を一つのシステムとして理解しようとするのが, システム生物学の大きな目標の一つです。前述の外的要因はいずれも量子の関係する物理量であり, これらによって生じる影響もまた, 量子技術によって観測されうる生体応答です。例えば, 渡り鳥の方角認知や細胞内の温度局在, 植物の光回復, 人間の思考の流動性など, 多くの生命活動に量子が関係し, それらを説明できると推測されています。これらを解明するための体系・手段として, 今まさに量子科学への大きな関心が寄せられています。 一方で, 量子技術を基盤とした新たな診断治療技術の臨床試験や産業応用も進展しつつあり, 量子科学の概念や関連技術の重要性は, 今後もますます高まっていくと予想されます。 本特別セミナーでは, ①量子生命科学の概略, ②代表的な量子科学技術, ③システムとしての生物と量子科学技術の接点を, 具体例を挙げながら説明し, システム生物学における量子科学技術の役割について触れたいと思います。また, 既存の概念や分野に捕らわれない柔軟性の大切さやこれらを修得するための秘訣についても, 演者の経験を踏まえつつお話しします。 多くの皆様のお越しをお待ちしております。
量研では,新しい学術領域「量子生命科学」の確立を目指した活動を,国内外の研究者と共に精力的に進めている。量子生命科学とは,最先端の量子技術と量子科学の知見を総合的に利用し,従来不可能であった極微の空間・時間スケールあるいは超高感度での生体内部の観測や生体分子の計測,生命機能のモデリングなどを実現することにより,量子論・量子力学を基盤とした視点から生命全般の根本原理を明らかにすることを目標とし,その原理の産業応用も視野に入れた分野である。本稿では,平成31年4月に量研内に発足した「量子生命科学領域」における研究のアプローチを紹介する。
にある物理に関する新たな知見を得るための強力な実験的手段となるであろう.また,量子物質設計や量子化学 計算などのように潜在的に「量子」の言語で定義された問題を解く上で量子コンピュータが役に立つことは言うま でもなく,今後,機械学習などの一見量子とは関係のない分野においても量子コンピュータがその実現の困難性を 引いても余りあるような貢献をする可能性もある. 一方,情報や計算といった概念は,通常の物理系学部の学生はあまり触れてこなかったと思う.よって,一通り 慣れてしまうまでは,議論の展開が殺伐としていて(それが良いところでもあるのだが)物理とのつながりが感 じにくく思われるかもしれない.最近では,小さいサイズではあるが万能性がある真の量子コンピュータ(IBM quantum experience)がウェブ上で公開されており,誰でも(今のところ)無料で利用することができる.この テキストに書かれていることを自分でサーバー上の量子コンピュータを使って確認してみるのもよいであろう. 今回は,量子デバイスの物理には踏み込む余裕はないが,量子コンピュータの理論は,それを支える量子デバイ スの物理や実験技術の蓄積に支えられている(従来のコンピュータが固体物理学や半導体技術の蓄積によって支 えられているように) .量子コンピュータを実現するためには,超伝導量子ビットに代表されるような量子情報デ バイスの物理をよりよく理解し,それを制御するための技術も重要な鍵となってくる.実験に興味がある意欲的 な学生は,量子情報デバイスの物理にも挑戦してもらいたい. 《講義ノート》 物性研究・電子版 Vol. 6, No. 4, 064217(2017年11月号) * 1 内積とは,線型空間の任意の2つの元 |ψ⟩ と |ϕ⟩ と複素数 (|ψ⟩, |ϕ⟩) ∈ C に対応させたものである. * 2 完備性とは,コーシー列 ∥|ψ⟩n -|ϕ⟩m∥ → 0 が空間の元 |ψ⟩ に収束する ∥|ψ⟩n -
量研では、新しい学術領域「量子生命科学」の確立を目指した活動を、国内外の研究者と共に精力的に進めている。量子生命科学とは、最先端の量子技術と量子科学の知見を総合的に利用し、従来不可能であった極微の空間・時間スケールあるいは超高感度での生体内部の観測や生体分子の計測、生命機能のモデリングなどを実現することにより、量子論・量子力学を基盤とした視点から生命全般の根本原理を明らかにすることを目標とし、その原理の産業応用も視野に入れた分野である。本稿では、平成 31 年 4 月に量研内に発足した「量子生命科学領域」におけるアプローチを紹介する。
量研では,新しい学術領域「量子生命科学」の確立を目指した活動を,国内外の研究者と共に精力的に進めている。量子生命科学とは,最先端の量子技術と量子科学の知見を総合的に利用し,従来不可能であった極微の空間・時間スケールあるいは超高感度での生体内部の観測や生体分子の計測,生命機能のモデリングなどを実現することにより,量子論・量子力学を基盤とした視点から生命全般の根本原理を明らかにすることを目標とし,その原理の産業応用も視野に入れた分野である。本稿では,平成31年4月に量研内に発足した「量子生命科学領域」における研究のアプローチを紹介する。
「 第4 4 回 物性若手夏の学校」 ( 1 9 9 9 年度 ) 量子 ゆ らぎが大 きな系での量子ダ イナ ミックス と緩和現象 東大・ 工・ 物工 宮下精二 最近 、興味 を持たれているナ ノスケール系での動的現象 を紹介 し、それ らを解析する 量子力学 、統計力学的方法 をいろいろ調べ 、それぞれの特徴 を議論する。また、量子ゆ ら ぎが大 きな系での外場-の応答の新 しい特徴 を考察する。 それぞれの解析 における数値計 算の具体的手法 について も触 れる。 1 I m t r o d u c t i o n 具体的な講義 は以下 に述べ る ような内容 を考 えてい る。( 1 ) 非平衡統計力 学の基礎 ,つ ま り線形応答理論や確率過程 について触 れ,量子 ダイナ ミッ クスが重要な役割 をす る現象 に関する統計力学的手法 をの紹介 を行 う。( 2 ) 量子効果がその緩和現象 に顕著 な役割 をす るナ ノスケール分子磁性の実験 の紹介 をす る。( 3 ) 量子ダイナ ミクスの大 きな特徴である非断熱遷移 によっ て生 じる典型的な現象 とその機構の説明 し,上のナ ノスケール分子磁性 に おける現象の説明 を試みる。 ( 4 ) 周期的変動 をす る外場 の もとでの興味深 い現象 として,系の固有振動や外場の高調波 な どではない非 自明な周期 を 持つ振動現象がある。 それをいわゆるF l o q u e t 演算子の固有状態の として 解析 も紹介す る。 2 非平衡統計力学 オンサーガーの相反定理,揺動散逸定理 な ど線形応答理論の一般論 と久保 公式や森公式の導出。その応用 として,最近我 々が行 っている電子 ス ピン 共鳴 ( E S R ) の直接数値解析の方法 【 1 】 を紹介す る。 また,確率過程 につい てはマルコフ過程 の一般論 とWi e n e r 過程 ( wh i t e -g a u s s i a nn o i s e )によるラ ンジェバ ン方程式, さらにそれ とのフォツカープ ランク方程式の関係等 と の説明 をす る。 熟浴 と接 している量子系の運動 を記述する方法 として量子マスター方程 式 ( 資料参照)と量子 ランジェヴァン方程式 ( 文献 [ 3 】 参照)の方法 を紹介す る。 ここでは mi c r oc a v i t yの中で原子系 と相互作用する光子系の非古典状 態の解析 [ 2
近年,量子コンピュータに関する研究が盛んに進められている.量子コンピュータとは,量子を用いて状態を操作する,現行のコンピュータとは異なる動作方式のコンピュータである.量子とは電子や光子のようなミクロな世界の粒子である.量子は量子力学と呼ばれる物理法則に従うことが知られている.量子コンピュータは量子力学の持つ不思議な性質を利用することで,特定の問題に対し漸近的な改善が期待される量子アルゴリズムを構成することができる. ある問題を解くために最適なアルゴリズムの計算量を, N を入力サイズとしてT(N) としたとき,あるアルゴリズムはT(N) の上界を与える手続きである.一方でT(N) の下界を知ることもまた重要である.計算量の下界を示すことができればアルゴリズムの改良の限界を示すことが可能である.また,定量的な観点から問題の難しさを捉える指標にもなる.計算量下界の証明は量子コンピュータの計算能力の可能性と限界を理論的に知ることに繋がる重要な問題である[H˘S05]. 量子アルゴリズムに対する計算量下界の証明は様々な問題に対して行われている[MBT18, CJR21].例えば前述の非構造探索に対してはΩ(√N) の下界が知られており,Grover のアルゴリズムが漸近的に最適であることが分かっている[Amb02, BBC+01, Zha19].一方で,二分探索は量子計算を利用したとしても漸近的な改善が見られない例である.古典計算においてN 要素の整列された列に対する二分探索はO(logN) の時間計算量で動作する.これに対して量子計算を利用する二分探索はΩ(logN) 回のクエリが必要であることが分かっている[HNS02].このように,問題によって量子計算を利用したとしても漸近的な改善が見られない場合もある. 線形リストは基本的なデータ構造として広く用いられており,古典計算において探索にかかる時間計算量はN を要素数としてΘ(N) である.ここで,量子計算を用いた場合に計算量の上界を示す方法としては古典計算の模倣やアドレス空間全体をGrover のアルゴリズムで探索するなどが考えられるが,下界についての結果は知られていない. 本研究はアドレス空間のサイズをN,リスト長をℓ として,リスト探索を高い確率で成功させる任意の量子アルゴリズムは,量子クエリを少なくともmin(ℓ − 1,Ω(√N))回は必要であることをある仮定のもとで示した.また,末尾要素探索を高い確率で成功させる任意の量子アルゴリズムについても同様にmin(ℓ − 2,Ω(√N))回のクエリが少なくとも必要であることをある仮定のもとで示した.