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GaAs中の窒素原子対による単一等電子トラップからの非古典光発生に関する研究

Kengo Takamiya, 健吾 高宮

Published Jan 1, 2014• 0 citations
Publisher

Abstract

量子情報技術分野において重要な役割を担う単一光子発生源への応用のために単一量子ドット,GaP中の等電子トラップやダイヤモンド中のNV中心などに対して様々な研究が行われている。GaAs中の窒素原子対による等電子トラップからの発光は、発光線幅が狭いことや、窒素原子対の配列に対応した発光エネルギー値が再現性良く得られることなどから単一光子源への応用が大いに期待されている。しかし、窒素δドープGaAs中の単一等電子トラップによる発光は発光強度が弱いことや、発光ピークが二つに分裂しそれぞれが直交する直線偏光であることなど、単一光子源に不向きな特性も報告されている。そこで本論文では単一光子発生源の実現に向けてGaAs中の窒素原子対による単一等電子トラップからの非古典光(単一光子や量子もつれ光子対)の特性の改善を目的として、窒素δドープGaAs(001)試料、窒素δドープGaAs(110)試料や窒素δドープGaAs/AlGaAs試料中の単一等電子トラップからの発光特性評価を行った。 窒素δドープGaAs、窒素δドープGaAs/AlGaAsヘテロ構造は有機金属気相エピタキシー法を用いて作製した。δドーピングは、Ga源の供給を5秒間止めて成長中断を行っている間にN原子を供給し作製を行った。単一等電子トラップによる発光を観測する為に顕微フォトルミネッセンス測定、発光特性評価を行うために顕微フォトルミネッセンス励起分光測定、時間分解フォトルミネッセンス測定を行った。 窒素δドープGaAs(001)中の単一等電子トラップによる発光の励起強度依存性から発光再結合確率を求めた。等電子トラップの種類によって発光再結合確率1/τが異なることがわかった。GaAs中の等電子トラップによる発光では高エネルギー側の発光ほど発光再結合確率が高い傾向にあることがわかった。 窒素δドープGaAs/AlGaAs中の単一等電子トラップからの発光特性評価を行ったところ、発光ピークが単峰でランダム偏光の発光を得ることができた。また、窒素δドープGaAs中の単一等電子トラップによる発光と比べると等電子トラップへのキャリアの供給効率が約8倍程度向上した。これらの特性はAlGaAs層を用いることにより、窒素混入によって生じる面内歪の異方性を解消し、さらにバンドギャップの大きいAlGaAs層が障壁層となってキャリアの閉じ込め効果が生じることで供給効率を上げることに成功したために得られたと考えられる。 窒素δドープGaAs(110)から同時に観測される二つの発光(X発光、XX発光)に対して励起強度依存性を測定したところ、励起強度の増加に対してX発光は線形に、XX発光は二乗の関係で発光強度が増加した。また二次元マッピングを測定したところX、XX発光それぞれ同じ場所からの局所的な発光で、発光中心が同じであることを確認した。これらの結果からX発光が励起子、XX発光が励起子分子による発光であることがわかった。本論文で初めてGaAs中の単一等電子トラップから励起子分子発光の観測に成功した。さらに、励起子、励起子分子発光に対して偏光特性を調べた結果、量子暗号通信に用いるのに適したランダム偏光であることが観測された。 GaAs中の単一等電子トラップからの発光に対してフォトルミネッセンス励起(PLE)分光測定を行った。励起子分子発光に対するPLEスペクトルではGaAs自由励起子より4meV程度高エネルギー側に2つの鋭い吸収ピークがあることがわかった。また、励起子発光に対するPLEスペクトルでは励起子分子発光で観測された2つの鋭い吸収ピークと同じ位置ではPLEスペクトルが下に凸になることがわかった。これは励起子分子発光が共鳴吸収により増大することでキャリアが励起子分子発光に選択的に寄与してしまい励起子発光が下がったためと考えられる。 窒素δドープGaAs(110)中の単一等電子トラップによる発光の時間分解測定を行った。Z2とラベルされた等電子トラップの発光減衰時間はτ(X)=11 ns、τ(XX)=5 nsであった。2τ(XX)≒τ(X)の関係であったことからこれらの発光が励起子、励起子分子発光であることが確かめられた。励起子分子発光の減衰時間は励起強度を上げると速い減衰時間成分が現れた。これは励起子分子発光がある程度強くなることで誘導放出効果が現れ減衰時間が速まったためと考えられる。また等電子トラップの種類によって減衰時間τが異なることを確認した。 以上のように本研究によって、GaAs中の窒素原子対による単一等電子トラップから励起子分子発光を確認し、量子情報技術の分野で用いる単一光子源応用に向けて重要な知見が得られた。

DOI
10.24561/00010312

Related papers

量子スピン鎖における新しい相関関数-emptiness formation probability-に関する最近の発展

正弘 城石, 由弘 西山

量子XXZスピン鎖は厳密に解けることはよく知られているが、相関関数を計算することは、特別な場合(XX0スピン鎖)を除いて依然として困難な問題である.ただし、よく知られているように、絶対零度でmasslessの臨界領域では共形場の理論を援用することによって非常に遠方の二点相関関数の漸近形の情報を引き出すことはできる。ところが、最近、Emptiness Formation Probability (EFP)とよばれる、ある長さnにわたってスピンの縦成分が強磁性的になる確率P(n)について様々な発展が報告されている。これは今まであまり考察されてこなかった新しい相関関数であり、元来はより物理的な相関関数を厳密に計算するためのファーストステップとして導入されたものである。しかし、最近ではP(n)それ自体、多くの興味深い性質を持つことが認識されつつある.特に、臨界領域では通常の二点相関関数は絶対零度で代数的に減衰するのに対して、P(n)はガウシアン的に減衰すると議論されている.また、有限温度ではP(n)は指数的に減衰し、その"相関距離"は1サイト当たりの自由エネルギーで表わされると考えられている。本レビューでは、現在までのXXZスピン鎖のEFPに関連する発展をまとめた後、その特別な場合であるXX0スピン鎖で、P(n)を厳密に計算し、上の漸近予想が正しいことを示す.また、XXXスピン鎖やXXZスピン鎖の特別な場合(Δ=1/2)で最近、報告されている解析的な結果について紹介する。また、同時に、絶対零度では密度行列繰り込み群を、有限温度では連続時間量子モンテカルロを用いてP(n)を直接数値的に評価して、上記の漸近形の予想が肯定的に支持されることをみた。

物性研究•Oct 20, 2002•0 citations

ダイヤモンドSnV中心を用いた電気機械結合によるマイクロ波–光インターフェイス

関口雄平, ナースィル アブドゥル, 黒川穂高 +16 more

近年、超伝導量子ビットに代表される光に直接結合しない量子デバイスを光量子系と接続するため、ダイヤモンド中の色中心をマイクロ波光子と光学光子の量子インターフェイスとして用いる試みが注目されている。マイクロ波光子は熱雑音の影響を強く受けるため、極低温下での動作を前提に、低いポンプ光強度での動作が重要となる。我々は、色中心をオプトメカニカル結晶中に配置する手法を提案し、理論計算により低ポンプ動作に向けて有望であることを示した。一方で、ダイヤモンドは圧電性を持たないため、機械モード励起に圧電材料を用いると、プロセスの複雑化や損失増加を招く可能性がある。そこで本研究では、圧電材料を用いずに静電力で機械モードの励起を試みた。実験では、SiN 光導波上のダイヤモンドナノフォトニック構造中の単一SnV中心を用いて、約 1.8 GHz の機械共鳴に対応する光学遷移のサイドバンドを観測した。さらに、2 経路同時のサイドバンド遷移によりマイクロ波と光の位相に依存した干渉が確認され、両者が機械モードを介して結合していることが示唆された。本成果は、ダイヤモンド色中心を用いた低雑音量子トランスデューサ実現に向けた基盤的ステップである。

•Mar 18, 2026•0 citations

有限時間間隔の場の理論 : 場の理論におけるシュレーディンガー描像の因果律について(基研長期研究計画「進化の力学への場の理論的アプローチ」報告,研究会報告)

Kazumasa Nomoto, R. Fukuda

場の理論における因果律の歴史は長く,色々な側面を持っている.特に,それは量子力学の非局所的な性質と深く関わっていて観測問題との関連でも興味深い.因果律の場の量子論的記述(微視的因果律)は,しばしばハイゼンベルグ描像で次の様に表現される1).[φ^<(H)>(x),φ^<(H)>(y)]=0 if (x-y)^2<0 x=(x^0,x),x^2≡x^μx_μ≡x_0^2-x^2 (1.1)ここで,φ(x)は場の演算子であり,それがボーズ場(フェルミオン場)ならば[,]は交換子(反交換子)である.つまり(1.1)は「互いに空間的な2点にある場の演算子は可換である」ということを表している.これは,自由な場のみでなく,局所的な相互作用が存在する場合にも成り立つ.また,このことは局所場の理論の最も本質的な要請のひとつにもなっている.量子力学では,可換な物理量は,互いに影響を及ぼさずに観測できるという原理が存在するので(1.1)は,空間的に離れた2点の観測は互いに影響を及ぼし合わないということを示している.つまり,いかなる場の擾乱(信号)も光速を超えて伝わらないということである.しかし,これは抽象的な演算子の関係であって,いかに信号が伝わるかなどということは判りにくい.そこで,別の描像-シュレーディンガー描像-で因果律がいかに表現されるか調べた.はじめに,初期状態の波動関数が時空の原点に局在したデルタ関数で表されるような一粒子の非相対論的・相対論的な量子拡散(quantum diffusion)について調べた.その結果,非相対論的には局在した次の瞬間には粒子は無限遠方まで場所に依らない確率で拡散してしまい,光速を超えて粒子が運動し得るということがわかる.しかし,非相対論では,光速を無限大と近似しているので当然の結果である.相対論的には,その状況はやや改善され,空間的である領域のうち十分遠方である位置に拡散する確率は殆どゼロになる.しかし,相対論にさえも光円錐の外側のコンプトン波長程度の領域には無視できない確率で粒子を見い出すことができることが,簡単な計算からわかる.したがって,この場合も因果律が破れているといえる.この原因については,現在検討中であるが,一つは初期にデルタ関数の波動関数を用意することが非局所的な操作であることに起因していると考えられる.この問題を避けるために,次に局所的な操作により場に擾乱を与え,それが時間とともに場の中をどのように伝わるかを調べた.先ず,自由な場において時空の原点に擾乱を与えるようなラグランジアンとして次のモデルを考えた.*_0=1/2(∂_μφ(x))(∂^μφ(x))-1/2m^2φ^2(x)+jδ^4(x)φ(x) (1.2)ここで,φ(x)はボーズ場(質量mのスカラーボゾン場)の変数である.時刻t<0で任意の初期状態を用意して(1.2)の系で時間発展させt>0での波動(汎)関数をΨ_F[φ]とする.そこで,終状態の空間的領域の密度行列ρ[φ_s,φ_s]を次の様に定義する.ρ[φ_s,φ_s]=∫[dφ_t]Ψ_F^*[φ]Ψ_F[φ]|_φ_t=φ_t [dφ_t]≡II 0|dφ(x) (1.3)φ_t: 時空の原点(擾乱が加わった点)に対して時間的な領域にある場の変数.φ_s: 時空の原点(擾乱が加わった点)に対して空間的な領域にある場の変数.このとき「ρ[φ_s,φ_s]は,Jに依らない」ということを示すことができる.このことは,場に擾乱が加わった点に対し,空間的な領域の状態はその影響を全く受けないということであり,完全に因果律を満していることがわかる.相互作用が存在しても,局所的であるならば同様のことを示すことができる.つまり,シュレーディンガー描像での因果律は「場の擾乱が加わった点に対して空間的な点における密度行列は場の擾乱の影響を受けない」と表現される.さらに,シュレーディンガー描像の因果律の表現からハイゼンベルグの因果律の表現を導くことができる.このことからシュレーディンガー描像の因果律の表現は,ハイゼンベルグ描像のそれと少なくとも等価,又はそれよりも広い概念を含んでいると考えられる.なお,本文中では自然単位系c=h=1を用いる.

•Aug 20, 1990•0 citations

量子ウォーク -ダイナミクスと幾何構造-

要 松江

者は局在化に寄与し、さらに固有関数がグラフのホモロジーに付随するものである 事が示唆されている。本研究は「高次元量子ウォーク」を提案し、そのダイナミクス と幾何構造の関連を調べる試みである。 単体複体とは、辺や三角形を一般化した単体の集まりで、全ての単体の境界と共通 部分をまた構成要素に持つものである。 を単体複体とする。単体は頂点でラベル 付けされ、 通常その順序には依らないが、ここでは順序の違いにより単体を区別す る: 2次元S-量子ウォーク。グラフ上のQW(右図)のように、 波の「透過」(青)と「反射」(赤)が表現されている。

•Jun 19, 2015•0 citations

量子相認識に向けた量子畳み込みニューラルネットワークのチャネル注意機構の提案

Gekko Budiutama, 大門 俊介, 西 紘史 +3 more

量子畳み込みニューラルネットワーク(QCNNs)は、量子コンピュータ上での機械学習アルゴリ ズムとして有望なアプローチの一つである[1]。QCNNsは量子位相認識といった様々な学習タスク で成功を収めており[2]、勾配消失問題に耐性があるため、トレーニングが容易である。しかし、 QCNNsの実用性を向上させるためには、トレーニングコストの削減と性能の向上が不可欠である。 本研究では、QCNNsに向けたチャネル注意機構を提案する[3]。このチャネル注意機構では、従 来のQCNNsで破棄される量子ビットを測定することにより出力状態のチャネルを生成し、各チャ ネルに重要性を示す重みパラメータが割り当てられる(図 a)。基底状態から量子相を予測する 量子相認識タスクにおいて、チャネル注意機構を導入したQCNNと従来のQCNNを比較した。 その結果、チャネル注意機構を導入した QCNN は、正しい状態の確率を高め、予測結果を理想 的な解に近づけた(図 b)。さらに、チャネル注意機構は QCNN の訓練エポック数を大幅に削減 し、訓練コストを抑えることができた。また、QCNN−古典ニューラルネットワークの従来のハイ ブリッドモデルに比較した結果、 チャネル注意機構を導入した QCNN はより少ないパラメータ かつ高精度で量子相を認識する ことができた。したがって、提案 したチャネル注意機構は QCNNs の実用性、汎用性、および使いや すさを向上する高効率かつ低コ ストな手法である。

•Mar 25, 2024•0 citations

窒化ガリウム中の単一希土類元素からの発光観測を目指したイオン注入法および熱処理条件の検討

真一郎 佐藤, 浩 岡田, 真斗 出来 +3 more

光子を1個ずつ任意のタイミングで発生させることのできる単一光子源は、量子情報通信や量子コンピューターといった量子エレクトロニクスの実現において不可欠な要素であり、実用化にあたっては、さらに、室温で電気的に(デバイス)駆動できることが重要となる。窒化ガリウム半導体(GaN)中の孤立した希土類元素では、4f殻内で電子の発光遷移が起こり、狭い線幅で高強度の発光を示すことから、デバイス駆動型単一光子源にとって望ましい性質を有しているといえる。しかし、GaN中の単一希土類元素からの発光を観測した例はこれまでになく、まずは単一光子源の実現のために必要となる条件を明らかにする必要がある。そこで今回は、GaN基板の選定、希土類イオン注入とその後の熱処理条件についての検討を行った。本研究はJSPS科研費JP16K17507の助成を受けたものである。

•Sep 8, 2017•0 citations
量子情報技術分野において重要な役割を担う単一光子発生源への応用のために単一量子ドット,GaP中の等電子トラップやダイヤモンド中のNV中心などに対して様々な研究が行われている。GaAs中の窒素原子対による等電子トラップからの発光は、発光線幅が狭いことや、窒素原子対の配列に対応した発光エネルギー値が再現性良く得られることなどから単一光子源への応用が大いに期待されている。しかし、窒素δドープGaAs中の単一等電子トラップによる発光は発光強度が弱いことや、発光ピークが二つに分裂しそれぞれが直交する直線偏光であることなど、単一光子源に不向きな特性も報告されている。そこで本論文では単一光子発生源の実現に向けてGaAs中の窒素原子対による単一等電子トラップからの非古典光(単一光子や量子もつれ光子対)の特性の改善を目的として、窒素δドープGaAs(001)試料、窒素δドープGaAs(110)試料や窒素δドープGaAs/AlGaAs試料中の単一等電子トラップからの発光特性評価を行った。 窒素δドープGaAs、窒素δドープGaAs/AlGaAsヘテロ構造は有機金属気相エピタキシー法を用いて作製した。δドーピングは、Ga源の供給を5秒間止めて成長中断を行っている間にN原子を供給し作製を行った。単一等電子トラップによる発光を観測する為に顕微フォトルミネッセンス測定、発光特性評価を行うために顕微フォトルミネッセンス励起分光測定、時間分解フォトルミネッセンス測定を行った。 窒素δドープGaAs(001)中の単一等電子トラップによる発光の励起強度依存性から発光再結合確率を求めた。等電子トラップの種類によって発光再結合確率1/τが異なることがわかった。GaAs中の等電子トラップによる発光では高エネルギー側の発光ほど発光再結合確率が高い傾向にあることがわかった。 窒素δドープGaAs/AlGaAs中の単一等電子トラップからの発光特性評価を行ったところ、発光ピークが単峰でランダム偏光の発光を得ることができた。また、窒素δドープGaAs中の単一等電子トラップによる発光と比べると等電子トラップへのキャリアの供給効率が約8倍程度向上した。これらの特性はAlGaAs層を用いることにより、窒素混入によって生じる面内歪の異方性を解消し、さらにバンドギャップの大きいAlGaAs層が障壁層となってキャリアの閉じ込め効果が生じることで供給効率を上げることに成功したために得られたと考えられる。 窒素δドープGaAs(110)から同時に観測される二つの発光(X発光、XX発光)に対して励起強度依存性を測定したところ、励起強度の増加に対してX発光は線形に、XX発光は二乗の関係で発光強度が増加した。また二次元マッピングを測定したところX、XX発光それぞれ同じ場所からの局所的な発光で、発光中心が同じであることを確認した。これらの結果からX発光が励起子、XX発光が励起子分子による発光であることがわかった。本論文で初めてGaAs中の単一等電子トラップから励起子分子発光の観測に成功した。さらに、励起子、励起子分子発光に対して偏光特性を調べた結果、量子暗号通信に用いるのに適したランダム偏光であることが観測された。 GaAs中の単一等電子トラップからの発光に対してフォトルミネッセンス励起(PLE)分光測定を行った。励起子分子発光に対するPLEスペクトルではGaAs自由励起子より4meV程度高エネルギー側に2つの鋭い吸収ピークがあることがわかった。また、励起子発光に対するPLEスペクトルでは励起子分子発光で観測された2つの鋭い吸収ピークと同じ位置ではPLEスペクトルが下に凸になることがわかった。これは励起子分子発光が共鳴吸収により増大することでキャリアが励起子分子発光に選択的に寄与してしまい励起子発光が下がったためと考えられる。 窒素δドープGaAs(110)中の単一等電子トラップによる発光の時間分解測定を行った。Z2とラベルされた等電子トラップの発光減衰時間はτ(X)=11 ns、τ(XX)=5 nsであった。2τ(XX)≒τ(X)の関係であったことからこれらの発光が励起子、励起子分子発光であることが確かめられた。励起子分子発光の減衰時間は励起強度を上げると速い減衰時間成分が現れた。これは励起子分子発光がある程度強くなることで誘導放出効果が現れ減衰時間が速まったためと考えられる。また等電子トラップの種類によって減衰時間τが異なることを確認した。 以上のように本研究によって、GaAs中の窒素原子対による単一等電子トラップから励起子分子発光を確認し、量子情報技術の分野で用いる単一光子源応用に向けて重要な知見が得られた。
量子XXZスピン鎖は厳密に解けることはよく知られているが、相関関数を計算することは、特別な場合(XX0スピン鎖)を除いて依然として困難な問題である.ただし、よく知られているように、絶対零度でmasslessの臨界領域では共形場の理論を援用することによって非常に遠方の二点相関関数の漸近形の情報を引き出すことはできる。ところが、最近、Emptiness Formation Probability (EFP)とよばれる、ある長さnにわたってスピンの縦成分が強磁性的になる確率P(n)について様々な発展が報告されている。これは今まであまり考察されてこなかった新しい相関関数であり、元来はより物理的な相関関数を厳密に計算するためのファーストステップとして導入されたものである。しかし、最近ではP(n)それ自体、多くの興味深い性質を持つことが認識されつつある.特に、臨界領域では通常の二点相関関数は絶対零度で代数的に減衰するのに対して、P(n)はガウシアン的に減衰すると議論されている.また、有限温度ではP(n)は指数的に減衰し、その"相関距離"は1サイト当たりの自由エネルギーで表わされると考えられている。本レビューでは、現在までのXXZスピン鎖のEFPに関連する発展をまとめた後、その特別な場合であるXX0スピン鎖で、P(n)を厳密に計算し、上の漸近予想が正しいことを示す.また、XXXスピン鎖やXXZスピン鎖の特別な場合(Δ=1/2)で最近、報告されている解析的な結果について紹介する。また、同時に、絶対零度では密度行列繰り込み群を、有限温度では連続時間量子モンテカルロを用いてP(n)を直接数値的に評価して、上記の漸近形の予想が肯定的に支持されることをみた。
近年、超伝導量子ビットに代表される光に直接結合しない量子デバイスを光量子系と接続するため、ダイヤモンド中の色中心をマイクロ波光子と光学光子の量子インターフェイスとして用いる試みが注目されている。マイクロ波光子は熱雑音の影響を強く受けるため、極低温下での動作を前提に、低いポンプ光強度での動作が重要となる。我々は、色中心をオプトメカニカル結晶中に配置する手法を提案し、理論計算により低ポンプ動作に向けて有望であることを示した。一方で、ダイヤモンドは圧電性を持たないため、機械モード励起に圧電材料を用いると、プロセスの複雑化や損失増加を招く可能性がある。そこで本研究では、圧電材料を用いずに静電力で機械モードの励起を試みた。実験では、SiN 光導波上のダイヤモンドナノフォトニック構造中の単一SnV中心を用いて、約 1.8 GHz の機械共鳴に対応する光学遷移のサイドバンドを観測した。さらに、2 経路同時のサイドバンド遷移によりマイクロ波と光の位相に依存した干渉が確認され、両者が機械モードを介して結合していることが示唆された。本成果は、ダイヤモンド色中心を用いた低雑音量子トランスデューサ実現に向けた基盤的ステップである。
場の理論における因果律の歴史は長く,色々な側面を持っている.特に,それは量子力学の非局所的な性質と深く関わっていて観測問題との関連でも興味深い.因果律の場の量子論的記述(微視的因果律)は,しばしばハイゼンベルグ描像で次の様に表現される1).[φ^<(H)>(x),φ^<(H)>(y)]=0 if (x-y)^2<0 x=(x^0,x),x^2≡x^μx_μ≡x_0^2-x^2 (1.1)ここで,φ(x)は場の演算子であり,それがボーズ場(フェルミオン場)ならば[,]は交換子(反交換子)である.つまり(1.1)は「互いに空間的な2点にある場の演算子は可換である」ということを表している.これは,自由な場のみでなく,局所的な相互作用が存在する場合にも成り立つ.また,このことは局所場の理論の最も本質的な要請のひとつにもなっている.量子力学では,可換な物理量は,互いに影響を及ぼさずに観測できるという原理が存在するので(1.1)は,空間的に離れた2点の観測は互いに影響を及ぼし合わないということを示している.つまり,いかなる場の擾乱(信号)も光速を超えて伝わらないということである.しかし,これは抽象的な演算子の関係であって,いかに信号が伝わるかなどということは判りにくい.そこで,別の描像-シュレーディンガー描像-で因果律がいかに表現されるか調べた.はじめに,初期状態の波動関数が時空の原点に局在したデルタ関数で表されるような一粒子の非相対論的・相対論的な量子拡散(quantum diffusion)について調べた.その結果,非相対論的には局在した次の瞬間には粒子は無限遠方まで場所に依らない確率で拡散してしまい,光速を超えて粒子が運動し得るということがわかる.しかし,非相対論では,光速を無限大と近似しているので当然の結果である.相対論的には,その状況はやや改善され,空間的である領域のうち十分遠方である位置に拡散する確率は殆どゼロになる.しかし,相対論にさえも光円錐の外側のコンプトン波長程度の領域には無視できない確率で粒子を見い出すことができることが,簡単な計算からわかる.したがって,この場合も因果律が破れているといえる.この原因については,現在検討中であるが,一つは初期にデルタ関数の波動関数を用意することが非局所的な操作であることに起因していると考えられる.この問題を避けるために,次に局所的な操作により場に擾乱を与え,それが時間とともに場の中をどのように伝わるかを調べた.先ず,自由な場において時空の原点に擾乱を与えるようなラグランジアンとして次のモデルを考えた.*_0=1/2(∂_μφ(x))(∂^μφ(x))-1/2m^2φ^2(x)+jδ^4(x)φ(x) (1.2)ここで,φ(x)はボーズ場(質量mのスカラーボゾン場)の変数である.時刻t<0で任意の初期状態を用意して(1.2)の系で時間発展させt>0での波動(汎)関数をΨ_F[φ]とする.そこで,終状態の空間的領域の密度行列ρ[φ_s,φ_s]を次の様に定義する.ρ[φ_s,φ_s]=∫[dφ_t]Ψ_F^*[φ]Ψ_F[φ]|_φ_t=φ_t [dφ_t]≡II 0|dφ(x) (1.3)φ_t: 時空の原点(擾乱が加わった点)に対して時間的な領域にある場の変数.φ_s: 時空の原点(擾乱が加わった点)に対して空間的な領域にある場の変数.このとき「ρ[φ_s,φ_s]は,Jに依らない」ということを示すことができる.このことは,場に擾乱が加わった点に対し,空間的な領域の状態はその影響を全く受けないということであり,完全に因果律を満していることがわかる.相互作用が存在しても,局所的であるならば同様のことを示すことができる.つまり,シュレーディンガー描像での因果律は「場の擾乱が加わった点に対して空間的な点における密度行列は場の擾乱の影響を受けない」と表現される.さらに,シュレーディンガー描像の因果律の表現からハイゼンベルグの因果律の表現を導くことができる.このことからシュレーディンガー描像の因果律の表現は,ハイゼンベルグ描像のそれと少なくとも等価,又はそれよりも広い概念を含んでいると考えられる.なお,本文中では自然単位系c=h=1を用いる.
者は局在化に寄与し、さらに固有関数がグラフのホモロジーに付随するものである 事が示唆されている。本研究は「高次元量子ウォーク」を提案し、そのダイナミクス と幾何構造の関連を調べる試みである。 単体複体とは、辺や三角形を一般化した単体の集まりで、全ての単体の境界と共通 部分をまた構成要素に持つものである。 を単体複体とする。単体は頂点でラベル 付けされ、 通常その順序には依らないが、ここでは順序の違いにより単体を区別す る: 2次元S-量子ウォーク。グラフ上のQW(右図)のように、 波の「透過」(青)と「反射」(赤)が表現されている。
量子畳み込みニューラルネットワーク(QCNNs)は、量子コンピュータ上での機械学習アルゴリ ズムとして有望なアプローチの一つである[1]。QCNNsは量子位相認識といった様々な学習タスク で成功を収めており[2]、勾配消失問題に耐性があるため、トレーニングが容易である。しかし、 QCNNsの実用性を向上させるためには、トレーニングコストの削減と性能の向上が不可欠である。 本研究では、QCNNsに向けたチャネル注意機構を提案する[3]。このチャネル注意機構では、従 来のQCNNsで破棄される量子ビットを測定することにより出力状態のチャネルを生成し、各チャ ネルに重要性を示す重みパラメータが割り当てられる(図 a)。基底状態から量子相を予測する 量子相認識タスクにおいて、チャネル注意機構を導入したQCNNと従来のQCNNを比較した。 その結果、チャネル注意機構を導入した QCNN は、正しい状態の確率を高め、予測結果を理想 的な解に近づけた(図 b)。さらに、チャネル注意機構は QCNN の訓練エポック数を大幅に削減 し、訓練コストを抑えることができた。また、QCNN−古典ニューラルネットワークの従来のハイ ブリッドモデルに比較した結果、 チャネル注意機構を導入した QCNN はより少ないパラメータ かつ高精度で量子相を認識する ことができた。したがって、提案 したチャネル注意機構は QCNNs の実用性、汎用性、および使いや すさを向上する高効率かつ低コ ストな手法である。
光子を1個ずつ任意のタイミングで発生させることのできる単一光子源は、量子情報通信や量子コンピューターといった量子エレクトロニクスの実現において不可欠な要素であり、実用化にあたっては、さらに、室温で電気的に(デバイス)駆動できることが重要となる。窒化ガリウム半導体(GaN)中の孤立した希土類元素では、4f殻内で電子の発光遷移が起こり、狭い線幅で高強度の発光を示すことから、デバイス駆動型単一光子源にとって望ましい性質を有しているといえる。しかし、GaN中の単一希土類元素からの発光を観測した例はこれまでになく、まずは単一光子源の実現のために必要となる条件を明らかにする必要がある。そこで今回は、GaN基板の選定、希土類イオン注入とその後の熱処理条件についての検討を行った。本研究はJSPS科研費JP16K17507の助成を受けたものである。