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数理解析研究所講究録

量子ウォークの弱収束定理とスペクトル・散乱理論 (スペクトル・散乱理論とその周辺)

章斗 鈴木

Published Apr 1, 2017• 0 citations
OpenAlex

Abstract

この稿では,スペクトル散乱理論の視点に立って,量子ウォークにおける弱収束定理 の概説を試みる.量子ウォークには,大きく分けて,連続時間のものと離散時間のものの2種類がある.連続時間の場合は,グラフ上のラプラシアンをハミルトニアンにもつ量子力学系に他ならず,離散シュレディンガー作用素の研究の射程に入る [6].離散時間の場 合は,時間発展がハミルトニアンから定まらないので,それ特有の扱いが必要になる.この稿では,離散時間量子ウォークに焦点を絞り,単にそれを量子ウォークという.量子ウオークの起源については諸説あるが,古くは1960年代のFeynmanとHibbsに よる経路積分の教科書 [10] にその原型がみらる.80年代には,Gudderの著書 [15] の中 で,Dirac 方程式の離散版として登場する.その後,2000年に前後して,量子アルゴリズムへの応用 [14, 1, 32] の道が開かれると,量子ウォークの研究はいよいよ盛んになる.2002年,今野 [20] が量子ウォークに対する弱収束定理をはじめて証明すると,多くの数 学者が研究に加わるようになる.量子ウォークの理論やアルゴリズムへの応用に関する比較的最近までの結果については,[22, 27, 33] などが参考になる.量子ウォークが実験室レベルで実現できていることは,特筆すべき点である.しかも,さまざまな実現方法があ り,それらをまとめたものが,既に成書として出版されている [24].以下,本稿のテーマである弱収束定理を少し詳しくみていこう.量子ウォーカーの時間発展は,状態のヒルベルト空間 \ma t hc a l { H} 上のユニタリ作用素 U を用いて表される.量子ウォー2017年 86-108 でいえば \ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } \ ma t h r m{ E} ( e {i $ \ x i $ X_ { \ ma t h r m{ t } } / t } ) = \ ma t h r m{ E} ( e {i $ \ x i $ V} ) , $ \ x i $ \ i n \ ma t h b b { R} となる.これが,ランダムウォークにおけるdeMoivre-Laplace の定理,または中心極限 定理の量子版とみなせることを2節で説明する.今野が最初に示した弱収束定理 [20, 21] では,空間一様なコインをもつ1次元量子ウオー クを考え,量子ウォーカーは初期時刻で原点にのみ存在すると仮定された.証明は,組合せ論的手法を用いて行われた.この場合は,状態のヒルベルト空間は\mat hcal { H} =\el l ^{ 2} ( \mat hbb{ Z} ; \mat hbb{ C} ^{ 2} ) で与 えられ,時間発展のユニタリ作用素は U=SC と表せる.ここで,S はシフト作用素, C はコイン作用素と呼ばれるユニタリ作用素であ る.一般に , コイン作用素は,ユニタリ行列値の関数 \mathbb{Z}\ni x\mapsto C(x)\in U(2) による掛け 算作用素である.\ri ght arrowt)/t} の t\rightarrow\infty の極限で得られる ユニタリ群の生成子 \hat { v} の分布を,フーリエ表示で求めた.\hat { v} は速度作用素とか漸近速度作 用素と呼ばれる.このとき,X_{t}/t の弱極限分布は,漸近速度 \hat { v} のスペクトル測度をもち いて, \Ver t E_{ \hat { v} } ( \cdot ) $\Psi $_{ 0} \Ver t ^{ 2} と表せる.彼らが用いた手法は,GJS法と呼ばれ,今野の定理の証明 の簡略化に貢献した.また,今野の定理[20, 21] における初期状態に関する制限も除か れた.GJS 法については,本稿でも重要な地位を占めるので,3節でやや詳しく触れる.GJS 法の肝は,時間スケールされた位置作用素 \hat{x}(t)/t は, t\rightarrow\infty のとき,フーリエ変 換によって,漸近速度のに対角化される ということである.コインが空間に依存する場合は,並進対称性が失われるので,GJS 法はうまく機能しな い.原点でのみでコインが異なる one defectモデルや,原点を境に右と左でコインが異 なる2相系の量子ウォークでは,母関数法を用いた弱収束定理の証明法が開発されている [23, 7, 8].より一般の空間依存があるコインに対しては,スペクトル散乱理論の考え方 が有効である [31].そのために,あるユニタリ行列 C_{\infty}\in U(2) が存在して \di spl ayst yl e \l i m_{ x\r i ght ar r ow\i nf t y} C( x) =C_{ \i nf t y} , x\i n \mat hbb{ Z} (1.2) となる場合を考える.先に紹介したone defectモデルや,有限の点でのみコインが異な る量子ウォークは,当然この範躊に入る.量子ウオークにおけるスペクトル・散乱理論の有効性を概説するのが,本稿の主目的である.射影で, $\Pi $_ { \ma t hr m{ a } \ma t hr m{ c } } ( U) は, U の絶対連続部分空間 \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) への射影である.量子ウオークの弱収束定理がその古典版である中心極限定理と違うのは,線形的広がり と局在化といわれるの2つの性質が表れる点にある.弱収束定理により, X_{t}/t が V に法 則収束することがいえると, t\rightarrow\infty で,形式的に X_{t}\sim tV と表せる.このことを,線形的広がりという.定義によって,V の分布は, t\rightarrow\infty にお ける量子ウォーカーの速度分布と考えるのが自然である.従って,量子ウォークの弱収束 定理は,量子ウォークの時間漸近的な速度分布の存在定理といえる.一方,局在化とは,V の分布が原点に台をもつ Dirac 測度をもつことをいう.すなわち,P(V=0)>0 である.つまり, t\rightarrow\infty では,速度ゼロになる確率 P(V=0) は,ゼロでない 線形的広がりには,絶対連続部分 e^{ i $\xi $\hat { x} ( t ) /t } $\Pi $_{ \mat hr m{ a} \mat hr m{ c} } ( U) が寄与する.条件(1.3) の下では,加 藤Rosenblum の定理 [28, Theorem XI.8] の離散版 [18, 19, 31] を考えると,ユニタリ作 用素 U=SC と U_{\infty}=SC_{\infty} に対する波動作用素s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } U{-t } U_ { \ i n f t y } {t } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U_ { \ i n f t y } ) , s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w \ i n f t y } U _ { \ i n f t y } {-t } U {t } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U ) (1.4) が存在する.波動作用素に対する一般論によって,(1.4) の最初の極限を W_{+} とおくと, 2番目の極限は W_{+}^{* } に等しい.また,W_{+} は \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U_ { \ i nf t y } ) から \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) へのユニタリ作用素 になる.以上のことから, t\rightarrow\infty のとき,s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } e {i $ \ x i $ \ h a t { x } ( t ) / t } = $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ p } } ( U) + e {i $ \ x i $ \ h a t { v } } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) .$\xi $\i n \mat hbb{ R} が成り立つ.これを用いると, X_{t}/t の弱極限分布が得られる.$ \ d e l t a $ _ { 0 } は原点における Dirac 測度とし, E_{ \hat { v} } を \hat { v} のスペクトル測度とする.Corollary I.2.X_{t}/t の分布は, t\rightarrow\infty のとき,確率分布 $\mu$=\Ver t \mat hr m{ I } \mat hr m{ I } _ { \mat hr m{ p} } ( U) $\Ps i $_ { 0} \Ver t {2} $\del t a$_ { 0} +\Ver t E_ { \hat { v} } ( \cdot ) $\Pi $_ { \mat hr m{ a} \mat hr m{ c} } ( U) $\Ps i $_ { 0} \Ver t {2} (1.5) に弱収束する. 4節では,仮定 (1.3) の下で,量子ウォークのスペクトル・散乱理論を説明し,Theorem1.1を証明する.また,Theorem1.1の系として,弱収束定理も証明する.5節では,分布のより具体的な形を計算する.Corollary 1.2により, X_{t}/t は(1.5) を 分布にもつ確率変数 V に法則収束するので P(V=0)=\Vert$\Pi$_{\mathrm{p}}(U)$\Psi$_{0}\Vert^{2} (1.6)

Related papers

非平衡・量子散逸系の正準理論 : 量子系確率微分方程式の一貫した枠組み(筑波大学開学20周年記念第2回『非平衡系の統計物理-現状と展望』シンポジウム,研究会報告)

敏彦 有光

m Th e r moF i e l dDy n a m i c s( NE TF D)[ 1 ] -[ 4 】と名付け られ た,非平衡量子系 を扱 う正準理論を紹介する。 これは,散逸量子系 を扱 う一貫 した ( 非平 衡系統計力学でのすべての基本的概念,すなわち,B o l t z ma nn方程式,F o k k e r -P l a n c k方 程式,L a n g e v i n方程式,確率 L i o u v i l l e方程式'で代表 される見方 を,一つの土俵で議論 で きるとい う意味で) , しかも,量子力学や場の量子論で学んだ,自然認識の基本である 演算子代数 と表現空間 とい う二重構造を供えた理論体系である。 NE TF Dの表現空間 ( 熱空間,t h e r ma l s p a c e ,と名付け られた)は,2つの Hi l b e r t 空 間の直積で構成 されている.1つばn o n -t i l d e場,もう 1つは t i l d e場の H i l b e r t 空間で ある.NE TF Dでは,いかなる演算子 A にもその髄伴演算子 ( t i l d e演算子)A が伴 って いる。t i l d e共役,-,は, ( AI A2 ) --AI A2 , ( c I Al + C 2 A2 ) --C ; il + C ; 12 , ( i) --A, ( AI ) --〟 , p h H 一 G i - ー n u p n u 1 2 3 4 l H I U ■ H t L Hi ヨ l H は ■ 川 U で定義 される。ただ し, c l や C 2 は, c数である.S c h r 6 d i n g e r表現では,t i l d e演算子 と n o 凪 -t i l d e 演算子は,互いに可換である : l A, B ] -0 .( b 5 ) 散逸は,直積 H i l b e r t 空間全体での回転,すなわち,t i l d e 演算子 とn o n -t i l d e 演算子 を 交ぜ るような回転 として捕 らえられることが明 らかになった。無限小時間発展演算子の中 の t i l d eとn o n -t i l d e 場が掛っている項が,散逸 ( すなわち,非可逆)現象 を司っているの である。この点は,NE TF Dが建設 されて初めて認識 された 【 1 , 2 】 。 I ' 古典系での確率 L i o u v i l l e 方程式 は,久保 【 5 , 6 】 により初めて導入 された。 I この認識 は, G i b b Sアンサ ンブルを定式化 した熱平衡系 の T F Dl 7 】にはなか った。そこには,散逸は 現れない。この点が, N B T F DとT F Dとの本質的な違いのひとつである。Z u b a r e v が, N E T F Dの方法を 賞賛 し,非平衡量子現象の研究 に用 い始めたことに,ここで言及 させていただきたい 【 8 】 .-3 1 1 研究会報告 B o l t z ma n nは,微視的で可逆 な Ne wt o n力学か ら出発 して, 自然界 の非可逆性 を導出 しようとした.しか し,B o l t z ma n n方程式 を導 く際 に,分子混沌 と呼 ばれる確率操作 を, 知 らず に導入 していたことが判明 したのである ( その辺のか ら くりの簡単 な解説は,【 9 ] を 参照のこと) 。我 々の新 しい方法が見通 しの良い ものである とい う技術的 な面 ばか りでな く,散逸量子場の理論 としてのその二重構造が,B o l t z ma nnの初め措 いた夢 を,何等かの 意味 で実現 させ るのではないか, とい う期待 が湧いて くる.B o l t z ma n nの時代 には, こ の二重構造 は認識 されていなか ったのである。 詳 しい NE TF D の解説 と参考 文献 は 【 4 ]を参照 して頂 くと して,s e m i -f re e時間発展 演算子 ( 量子 F o k k e r -P l a n c k方程式 と,定常的量子 Wi e n e r 過程 に従 う量子確率 L i o u v i l l e 方程式,それぞれに関する もの)が,い くつかの基本的要請の元 に,如何 に して創 られる かを示す.S e mi -f r e e時間発展演算子は,双線形で大域的ゲージ不変性 を満 たす ものであ る。以下,散逸量子系 の正準理論が,前者の時間発展演算子 によって如何 に創 られるかを 紹介 し,量子系確率微分方程式の一貫 した体系が,如何 に して建設 されるか を示す ( 図 2 参照 ) 。そ うす ると,量子散逸系の方程式 に纏 わる次の ような基本的 な疑問が,解決 され ることが見 えて くる ( 量子系 L a n g e v i n方程式 に対す る問題提起 に関 しては,【 1 0 】も参照 の こと) 0 ql .量子散逸系 を扱 う正準理論 ( つ まり,時間発展が正準変換 で誘起 される)は,建 設可能 だろ うか ?考 え もな しに a ( i ) -a e ( i w+A ) i , a I ( i ) -a † e ( t ' U-A ) i ,の ようにエネルギー ・ スペ ク トルに虚数部 を導入するだけでは,同時刻交換関係 は, け っ して保存 されない : l a ( i ) , a I ( i ) ] -l a , a † 一 e 加 t ( 7 ) Q2 ・ 揺動力演算子 は KMS条件 [ 1 1 , 1 2 】を満 たせ ないので,量子系 では白色過程 は許 されない と言われている。 た とえば,L a n g e v i n方程式 孟 a ( i ) -i d a ( i ) 一項 ・佃 ( 8 ) 孟 a ' ( i ) -i wa t ( i ) -n at ( i ) II-T ( i ) , ( 9 ) を考 えてみ よう。ただ し,f C は,摩擦係数である.また,a( i )ta t ( i ) は,それぞれ Hi l b e r t 空間の消滅,生成確率演算子で,i -0に正準交換関係 を満たす もの とする :( 【 a ( i ) , a I ( i ) ] ) -1 .( 1 5 )S c h r 6 d i n g e r 表現でなされるべ きである。それでは,La n g e v i n方程式に現 れる揺動 力の相関 と して,はた して,S c h r 6 d i n g e r表現 と同 じもの を採用 して長いのであろ うか ?q4 .如何 に して,確率過程の表現空間 を建設 した ら良いのであろ うか ?時間発展演算子の一般形 は,本質的 に L i o u v i l l e方程式 孟 p ( i ) --i L p ( i ) , に関る次の性質か ら導 きだ された。 Dl .L i o u v me演算子のエル ミー ト性 : L f =L.

物性研究•Apr 20, 1994•0 citations

線形リスト探索に対する量子質問計算量の下界

裕太郎 酒井

近年,量子コンピュータに関する研究が盛んに進められている.量子コンピュータとは,量子を用いて状態を操作する,現行のコンピュータとは異なる動作方式のコンピュータである.量子とは電子や光子のようなミクロな世界の粒子である.量子は量子力学と呼ばれる物理法則に従うことが知られている.量子コンピュータは量子力学の持つ不思議な性質を利用することで,特定の問題に対し漸近的な改善が期待される量子アルゴリズムを構成することができる. ある問題を解くために最適なアルゴリズムの計算量を, N を入力サイズとしてT(N) としたとき,あるアルゴリズムはT(N) の上界を与える手続きである.一方でT(N) の下界を知ることもまた重要である.計算量の下界を示すことができればアルゴリズムの改良の限界を示すことが可能である.また,定量的な観点から問題の難しさを捉える指標にもなる.計算量下界の証明は量子コンピュータの計算能力の可能性と限界を理論的に知ることに繋がる重要な問題である[H˘S05]. 量子アルゴリズムに対する計算量下界の証明は様々な問題に対して行われている[MBT18, CJR21].例えば前述の非構造探索に対してはΩ(√N) の下界が知られており,Grover のアルゴリズムが漸近的に最適であることが分かっている[Amb02, BBC+01, Zha19].一方で,二分探索は量子計算を利用したとしても漸近的な改善が見られない例である.古典計算においてN 要素の整列された列に対する二分探索はO(logN) の時間計算量で動作する.これに対して量子計算を利用する二分探索はΩ(logN) 回のクエリが必要であることが分かっている[HNS02].このように,問題によって量子計算を利用したとしても漸近的な改善が見られない場合もある. 線形リストは基本的なデータ構造として広く用いられており,古典計算において探索にかかる時間計算量はN を要素数としてΘ(N) である.ここで,量子計算を用いた場合に計算量の上界を示す方法としては古典計算の模倣やアドレス空間全体をGrover のアルゴリズムで探索するなどが考えられるが,下界についての結果は知られていない. 本研究はアドレス空間のサイズをN,リスト長をℓ として,リスト探索を高い確率で成功させる任意の量子アルゴリズムは,量子クエリを少なくともmin(ℓ − 1,Ω(√N))回は必要であることをある仮定のもとで示した.また,末尾要素探索を高い確率で成功させる任意の量子アルゴリズムについても同様にmin(ℓ − 2,Ω(√N))回のクエリが少なくとも必要であることをある仮定のもとで示した.

•Mar 1, 2023•0 citations

量子動力学シミュレーション入門 --量子ウォークを例にして-- (第61回物性若手夏の学校 集中ゼミ)

Yutaka Shikano

動的な物理現象への理解に向けた取り組みは、個々の豊かな物性現象を調べるだけではなく、数学的なトイモデルの性質を活かしたトップダウン的アプローチも試みられている。中でも量子現象の動的な性質は理論的には干渉効果をきちんと議論しなければならず、実験的には量子現象だけを純粋に取り出すことが極めて難しい。本ゼミでは、量子動力学現象を記述するための道具である「量子ウォーク」に関して、その理論的性質と実験による実装方法とその困難さに関して解説を行う。量子ウォークとは名前が示す通り、物理現象を説明する道具として使われているランダムウォークを量子力学の公理系の中で定義しようとした際に自然に定義されるものである。だがしかし、シンプルな定義からでは一見想像できないような多彩なダイナミクスを模写することが出来る。Schr odinger 方程式、Dirac 方程式やKlein-Gordon 方程式をトイモデルから統一的に理解することが出来るという点において、「量子動力学シミュレーション」と呼ぶ。また、近年の実験技術の飛躍的な向上により、数学的なトイモデルとして扱われてきた量子ウォークが中性原子・イオン・光の物理系において実装可能となり、量子効果を巧みに組合わせた実験系を構築することで量子情報科学や多体系量子論の問題へのアプローチも試みられている。

•Nov 1, 2017•0 citations

サイトによらない行列積型ベクトルの再構成法(基研研究会 確率モデルの統計力学,研究会報告)

泰啓 日永田, 智弘 笹本

サイ トあた りⅣ 状態を取 り得る 1 次元確率過程模型 ( 以後、「 1 次元 Ⅳ 状態確率過程模型」と呼 ぶ) 回 には、厳密な 「 ( サイ トによらない) 行列積型定常状態ベク トル」( ma t r i x -p r o d u c t s t a t i o n a r y s t a t e ; 以下では MPS Sと略す)【 2 】 を持つ ものがある。 このタイプの定常状態 を使 うと、カ レン ト や相関関数を比較的簡単に、しかも厳密に求めることが可能 となる。この時、q直交多項式の理論 が役立つ事 も明 らかにされている [ 3 , 4 , 5 ] 。最近では、MPS Sが非平衡統計力学での 「 自由エネル ギー」 の計算 [ 6 ] にも用 いられた。 行列積型ベク トルそのものは、あちこちに現れる。確率過程模型での最初の発見 [ 7 】 よ りも先 に、( 行列積型基底状態ベク トルとして) 量子スピン模型で発見されてお り、 基底状態での厳密な物 理量の計算を可能 としていた 【 8 】 。 その後に登場 した密度行列 くりこみ群 の方法 ( De n s i t yMa t r i x Re n o r ma l i z a t i o nGr o u p ; DMRG と略される事が多い) [ 9 ] においては、 近似的な行列横型ベク ト ルが重要な役割 を果た している事が明 らかにされている ( DMRG の高次元模型への拡張 [ 1 0 】 にお いては、行列積をテンソル積へ と拡張 したものが用いられる事 もある) 。 話を厳密な MPS Sに戻すと、 1 次元 Ⅳ 状態確率過程模型の厳密な MPS Sをシステマティック に求める方法は明 らかでなか った。 これ故 に、厳密な MPS Sは ごく少数知 られているに過 ぎな い。システマティックに求める上での、数値的なヒン トを得る方法は P e s c h e lとⅠ く a u l k eらによっ て与え られていた t l l い 彼等は DMRG における密度行列のスペク トラムを観察することが厳密な MPS Sを数値的に発見するのに重要だとだけ主張 していた。我々は彼等の主張について考え、ま ず数値的な厳密解 を構成する方法を作 った。そ して数式処理の助けも借 りると厳密解を求めるこ ともできることに気付き、さらに方法を少 し見通 しよ くできることが分か った。本稿で述べるの は、その厳密解 を求める方法である。 本研究の目的は MPS Sをシステマティックに求める方法を明らかにすることである。現在 まで

物性研究•May 20, 2004•0 citations

非線形減衰振動子に対する量子確率微分方程式の微視的導出(第5回『非平衡系の統計物理』シンポジウム,研究会報告)

健 斎藤, 敏彦 有光

注 目す る系のハ ミル トニアンが Hs-u a † a + 芸 g a t a † a a , で与 えられ る非線形減衰振動子 を考えよ う。α , α I は交換関係 [ α , α † 一 -1 , [ α , α ] -0 , ( 1) ( 2 ) を満 たすボゾン演算子である。減衰理論 にお けるn o n -c o n v e n t i o n a l t j : 取 り扱 い [ 3 日7 ] では,注 目 す る系内の非線形性がその緩和 に与える影響が考慮 され る。その結果系のダイナ ミクスは,注 目 す る系の密度行列p s ( i ) が正 しい終状態であるカノニカル平衡状態の密度行列 e-βHsに収束す るこ とを保証す る。一方,減衰理論 における c o n v e n t i o n a l な取 り扱 いでは,系の非線形性 が緩和に及 ぼす影響は無視 され,p s ( i ) は調和振動子のカ ノニカル平衡状態 e -P ua † a に収束す る。 このことか ら,系の非線形性が緩和に及ぼす影響 は,系の長時間の振 る舞いに重要 な役割 を果た しているこ とが分かる.Ha a k e 等 【 7 】 は減衰理論 にお けるn o n -c o n v e n t i o n a l な取 り扱いによ り,非線形減衰振 動子 に対す る量子マスター方程式を導出 した。 非平衡 Th e r moF i e l dDy n a mi c s( NE TF D) [ 8 日1 2 ] の枠組みにおいて,量子 L a n g e v i n方程式 と 量子確率 L i o u v i l l e 方程式 を含む量子確率微分方程式の系統的な正準演算子形式の体系が構成 され た 【 1 0 日2 3 ] 。この体系において,前述の非線形減衰振動子に対す る量子確率微分方程式が構成 され た [ 2 0 ] 。 Ac c a r d i 等 [ 2 4 日2 8 ] は,量子確率過程 に対 して微視的な基礎付 けを与えた。彼 らは,ボゾン場の 熱浴 と相互作用す る量子系を考察 し,熱浴 のボゾン場 によ り構成 され る集団的ボゾン場 ( c o l l e c t i v e b o s o n丘 e l d )とよばれ る場が,弱結合極限 ( v a nHo v e 極限) 【 2 9 1 で量子 Wi e n e r 過程 に収束す ること 「 第 5回 『 非平衡系の統計物理』シンポジウム」 を示 した。また,相互作用表示における波動関数の時間発展方程式が,無限小時間発展演算子に 量子 Wi e n Q r 過程の増分を含む量子確率微分方程式に収束す ることを示 した。 この論文では,このA c c a r d i 等の手続きをN E T F Dの枠組みで非線形減衰振動子に適用 し,系 の非線形性が緩和に及ぼす影響を考慮 した非線形減衰振動子に対す る量子確率微分方程式を微視 的なモデルか ら導出する。

物性研究•Feb 20, 1999•0 citations

古典力学的手法による原子・分子の探求(修士論文(1993年度))

知幸 山本

この研究で扱うような原子・分子の古典モデルの歴史は1920年代にまで遡る。その発端は、Bohrの水素原子のモデルでは成立した量子古典対応がヘリウムでは成立しないことだった。量子論の前夜の事件であるが、それは今なお未解決の部分を多く含む問題なのである。量子と古典の間の深い溝は、その両者が異質なものであるということである。しかし、同じ自然に対する複数の記述方法である以上、それらの適用範囲が広がるにつれ交錯する分野が現われるのは必然である。その領域においては、何らかの橋渡しが出来ていなければならない。だがそれはそれぞれに関する深い知識がなければ構築できない類のものである。量子カオスという研究分野はおもにその橋渡しを追求するが、この研究はむしろ古典系側の基盤を探るものである。古典系に話を限っても、ヘリウム原子ですら三体問題であり、カオス的な性質を持つハミルトン系(保存力学系)である。運動を決定する積分が足りないために、系の運動を統一的に記述することは未だなされていない。ハミルトン系の相空間の構造は非常に複雑であるので、高い解像度で観察する必要がある。つまり、これらの系における困難とは、広大な初期条件空間をくまなく探索しなければならないということなのである。そうしてはじめて量子系との対応を議論できるようになる。そのような作業の結果としてこの研究で見出されたことは、1)カオス的な軌道は全て原子から無限遠へ飛び出す(イオン化を起こす)、2)相空間には非自明なトーラスが埋め込まれている、3)カオスとトーラスの織りなす非常に複雑な構造が見出されたことである。また、それらを応用して原子や分子の古典力学的な表現を探求している。原子や分子のモデルを、クーロン力によって相互作用する独立した粒子のシステムとして扱う場合、ほとんど単純化をせずに相空間を広汎に調べた研究というものはあまり例がない。そして、その結果として幾つか重要と思われる知見が得られている。単純化したモデルにおいて量子古典対応を研究した例は非常に多いが、それでだけでは量子古典対応などの問題の未解決な点をあらわにすることは出来ないのではないかと考えられる。なお、この論文内での約束事は次の通りである。1)軌道の初期条件で、とくに記していない変数はその配置で決まっているか、そうでなければ0である。2)先に刊行されている論文[1]との用語の統一を図るため、トーラスの名称などはとくに英語で記した。3)物性研究版では、本文と図の一部が省略されている。

Bussei Kenkyu•Jul 20, 1994•0 citations
この稿では,スペクトル散乱理論の視点に立って,量子ウォークにおける弱収束定理 の概説を試みる.量子ウォークには,大きく分けて,連続時間のものと離散時間のものの2種類がある.連続時間の場合は,グラフ上のラプラシアンをハミルトニアンにもつ量子力学系に他ならず,離散シュレディンガー作用素の研究の射程に入る [6].離散時間の場 合は,時間発展がハミルトニアンから定まらないので,それ特有の扱いが必要になる.この稿では,離散時間量子ウォークに焦点を絞り,単にそれを量子ウォークという.量子ウオークの起源については諸説あるが,古くは1960年代のFeynmanとHibbsに よる経路積分の教科書 [10] にその原型がみらる.80年代には,Gudderの著書 [15] の中 で,Dirac 方程式の離散版として登場する.その後,2000年に前後して,量子アルゴリズムへの応用 [14, 1, 32] の道が開かれると,量子ウォークの研究はいよいよ盛んになる.2002年,今野 [20] が量子ウォークに対する弱収束定理をはじめて証明すると,多くの数 学者が研究に加わるようになる.量子ウォークの理論やアルゴリズムへの応用に関する比較的最近までの結果については,[22, 27, 33] などが参考になる.量子ウォークが実験室レベルで実現できていることは,特筆すべき点である.しかも,さまざまな実現方法があ り,それらをまとめたものが,既に成書として出版されている [24].以下,本稿のテーマである弱収束定理を少し詳しくみていこう.量子ウォーカーの時間発展は,状態のヒルベルト空間 \ma t hc a l { H} 上のユニタリ作用素 U を用いて表される.量子ウォー2017年 86-108 でいえば \ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } \ ma t h r m{ E} ( e {i  xi\ x i xi X_ { \ ma t h r m{ t } } / t } ) = \ ma t h r m{ E} ( e {i  xi\ x i xi V} ) ,  xi\ x i xi \ i n \ ma t h b b { R} となる.これが,ランダムウォークにおけるdeMoivre-Laplace の定理,または中心極限 定理の量子版とみなせることを2節で説明する.今野が最初に示した弱収束定理 [20, 21] では,空間一様なコインをもつ1次元量子ウオー クを考え,量子ウォーカーは初期時刻で原点にのみ存在すると仮定された.証明は,組合せ論的手法を用いて行われた.この場合は,状態のヒルベルト空間は\mat hcal { H} =\el l ^{ 2} ( \mat hbb{ Z} ; \mat hbb{ C} ^{ 2} ) で与 えられ,時間発展のユニタリ作用素は U=SC と表せる.ここで,S はシフト作用素, C はコイン作用素と呼ばれるユニタリ作用素であ る.一般に , コイン作用素は,ユニタリ行列値の関数 \mathbb{Z}\ni x\mapsto C(x)\in U(2) による掛け 算作用素である.\ri ght arrowt)/t} の t\rightarrow\infty の極限で得られる ユニタリ群の生成子 \hat { v} の分布を,フーリエ表示で求めた.\hat { v} は速度作用素とか漸近速度作 用素と呼ばれる.このとき,X_{t}/t の弱極限分布は,漸近速度 \hat { v} のスペクトル測度をもち いて, \Ver t E_{ \hat { v} } ( \cdot ) Ψ\Psi Ψ{ 0} \Ver t ^{ 2} と表せる.彼らが用いた手法は,GJS法と呼ばれ,今野の定理の証明 の簡略化に貢献した.また,今野の定理[20, 21] における初期状態に関する制限も除か れた.GJS 法については,本稿でも重要な地位を占めるので,3節でやや詳しく触れる.GJS 法の肝は,時間スケールされた位置作用素 \hat{x}(t)/t は, t\rightarrow\infty のとき,フーリエ変 換によって,漸近速度のに対角化される ということである.コインが空間に依存する場合は,並進対称性が失われるので,GJS 法はうまく機能しな い.原点でのみでコインが異なる one defectモデルや,原点を境に右と左でコインが異 なる2相系の量子ウォークでは,母関数法を用いた弱収束定理の証明法が開発されている [23, 7, 8].より一般の空間依存があるコインに対しては,スペクトル散乱理論の考え方 が有効である [31].そのために,あるユニタリ行列 C{\infty}\in U(2) が存在して \di spl ayst yl e \l i m_{ x\r i ght ar r ow\i nf t y} C( x) =C_{ \i nf t y} , x\i n \mat hbb{ Z} (1.2) となる場合を考える.先に紹介したone defectモデルや,有限の点でのみコインが異な る量子ウォークは,当然この範躊に入る.量子ウオークにおけるスペクトル・散乱理論の有効性を概説するのが,本稿の主目的である.射影で, Π\Pi Π_ { \ma t hr m{ a } \ma t hr m{ c } } ( U) は, U の絶対連続部分空間 \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) への射影である.量子ウオークの弱収束定理がその古典版である中心極限定理と違うのは,線形的広がり と局在化といわれるの2つの性質が表れる点にある.弱収束定理により, X_{t}/t が V に法 則収束することがいえると, t\rightarrow\infty で,形式的に X_{t}\sim tV と表せる.このことを,線形的広がりという.定義によって,V の分布は, t\rightarrow\infty にお ける量子ウォーカーの速度分布と考えるのが自然である.従って,量子ウォークの弱収束 定理は,量子ウォークの時間漸近的な速度分布の存在定理といえる.一方,局在化とは,V の分布が原点に台をもつ Dirac 測度をもつことをいう.すなわち,P(V=0)>0 である.つまり, t\rightarrow\infty では,速度ゼロになる確率 P(V=0) は,ゼロでない 線形的広がりには,絶対連続部分 e^{ i ξ\xi ξ\hat { x} ( t ) /t } Π\Pi Π{ \mat hr m{ a} \mat hr m{ c} } ( U) が寄与する.条件(1.3) の下では,加 藤Rosenblum の定理 [28, Theorem XI.8] の離散版 [18, 19, 31] を考えると,ユニタリ作 用素 U=SC と U{\infty}=SC_{\infty} に対する波動作用素s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } U{-t } U_ { \ i n f t y } {t }  Pi\ P i Pi _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U_ { \ i n f t y } ) , s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w \ i n f t y } U _ { \ i n f t y } {-t } U {t }  Pi\ P i Pi _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U ) (1.4) が存在する.波動作用素に対する一般論によって,(1.4) の最初の極限を W_{+} とおくと, 2番目の極限は W_{+}^{* } に等しい.また,W_{+} は \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U_ { \ i nf t y } ) から \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) へのユニタリ作用素 になる.以上のことから, t\rightarrow\infty のとき,s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } e {i  xi\ x i xi \ h a t { x } ( t ) / t } =  Pi\ P i Pi _ { \ ma t h r m{ p } } ( U) + e {i  xi\ x i xi \ h a t { v } }  Pi\ P i Pi _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) .ξ\xi ξ\i n \mat hbb{ R} が成り立つ.これを用いると, X_{t}/t の弱極限分布が得られる. delta\ d e l t a delta _ { 0 } は原点における Dirac 測度とし, E_{ \hat { v} } を \hat { v} のスペクトル測度とする.Corollary I.2.X_{t}/t の分布は, t\rightarrow\infty のとき,確率分布 μ\muμ=\Ver t \mat hr m{ I } \mat hr m{ I } _ { \mat hr m{ p} } ( U) \Psi\Ps i \Psi_ { 0} \Ver t {2} \delta\del t a\delta_ { 0} +\Ver t E_ { \hat { v} } ( \cdot ) Π\Pi Π_ { \mat hr m{ a} \mat hr m{ c} } ( U) \Psi\Ps i \Psi_ { 0} \Ver t {2} (1.5) に弱収束する. 4節では,仮定 (1.3) の下で,量子ウォークのスペクトル・散乱理論を説明し,Theorem1.1を証明する.また,Theorem1.1の系として,弱収束定理も証明する.5節では,分布のより具体的な形を計算する.Corollary 1.2により, X_{t}/t は(1.5) を 分布にもつ確率変数 V に法則収束するので P(V=0)=\VertΠ\PiΠ{\mathrm{p}}(U)Ψ\PsiΨ{0}\Vert^{2} (1.6)
m Th e r moF i e l dDy n a m i c s( NE TF D)[ 1 ] -[ 4 】と名付け られ た,非平衡量子系 を扱 う正準理論を紹介する。 これは,散逸量子系 を扱 う一貫 した ( 非平 衡系統計力学でのすべての基本的概念,すなわち,B o l t z ma nn方程式,F o k k e r -P l a n c k方 程式,L a n g e v i n方程式,確率 L i o u v i l l e方程式'で代表 される見方 を,一つの土俵で議論 で きるとい う意味で) , しかも,量子力学や場の量子論で学んだ,自然認識の基本である 演算子代数 と表現空間 とい う二重構造を供えた理論体系である。 NE TF Dの表現空間 ( 熱空間,t h e r ma l s p a c e ,と名付け られた)は,2つの Hi l b e r t 空 間の直積で構成 されている.1つばn o n -t i l d e場,もう 1つは t i l d e場の H i l b e r t 空間で ある.NE TF Dでは,いかなる演算子 A にもその髄伴演算子 ( t i l d e演算子)A が伴 って いる。t i l d e共役,-,は, ( AI A2 ) --AI A2 , ( c I Al + C 2 A2 ) --C ; il + C ; 12 , ( i) --A, ( AI ) --〟 , p h H 一 G i - ー n u p n u 1 2 3 4 l H I U ■ H t L Hi ヨ l H は ■ 川 U で定義 される。ただ し, c l や C 2 は, c数である.S c h r 6 d i n g e r表現では,t i l d e演算子 と n o 凪 -t i l d e 演算子は,互いに可換である : l A, B ] -0 .( b 5 ) 散逸は,直積 H i l b e r t 空間全体での回転,すなわち,t i l d e 演算子 とn o n -t i l d e 演算子 を 交ぜ るような回転 として捕 らえられることが明 らかになった。無限小時間発展演算子の中 の t i l d eとn o n -t i l d e 場が掛っている項が,散逸 ( すなわち,非可逆)現象 を司っているの である。この点は,NE TF Dが建設 されて初めて認識 された 【 1 , 2 】 。 I ' 古典系での確率 L i o u v i l l e 方程式 は,久保 【 5 , 6 】 により初めて導入 された。 I この認識 は, G i b b Sアンサ ンブルを定式化 した熱平衡系 の T F Dl 7 】にはなか った。そこには,散逸は 現れない。この点が, N B T F DとT F Dとの本質的な違いのひとつである。Z u b a r e v が, N E T F Dの方法を 賞賛 し,非平衡量子現象の研究 に用 い始めたことに,ここで言及 させていただきたい 【 8 】 .-3 1 1 研究会報告 B o l t z ma n nは,微視的で可逆 な Ne wt o n力学か ら出発 して, 自然界 の非可逆性 を導出 しようとした.しか し,B o l t z ma n n方程式 を導 く際 に,分子混沌 と呼 ばれる確率操作 を, 知 らず に導入 していたことが判明 したのである ( その辺のか ら くりの簡単 な解説は,【 9 ] を 参照のこと) 。我 々の新 しい方法が見通 しの良い ものである とい う技術的 な面 ばか りでな く,散逸量子場の理論 としてのその二重構造が,B o l t z ma nnの初め措 いた夢 を,何等かの 意味 で実現 させ るのではないか, とい う期待 が湧いて くる.B o l t z ma n nの時代 には, こ の二重構造 は認識 されていなか ったのである。 詳 しい NE TF D の解説 と参考 文献 は 【 4 ]を参照 して頂 くと して,s e m i -f re e時間発展 演算子 ( 量子 F o k k e r -P l a n c k方程式 と,定常的量子 Wi e n e r 過程 に従 う量子確率 L i o u v i l l e 方程式,それぞれに関する もの)が,い くつかの基本的要請の元 に,如何 に して創 られる かを示す.S e mi -f r e e時間発展演算子は,双線形で大域的ゲージ不変性 を満 たす ものであ る。以下,散逸量子系 の正準理論が,前者の時間発展演算子 によって如何 に創 られるかを 紹介 し,量子系確率微分方程式の一貫 した体系が,如何 に して建設 されるか を示す ( 図 2 参照 ) 。そ うす ると,量子散逸系の方程式 に纏 わる次の ような基本的 な疑問が,解決 され ることが見 えて くる ( 量子系 L a n g e v i n方程式 に対す る問題提起 に関 しては,【 1 0 】も参照 の こと) 0 ql .量子散逸系 を扱 う正準理論 ( つ まり,時間発展が正準変換 で誘起 される)は,建 設可能 だろ うか ?考 え もな しに a ( i ) -a e ( i w+A ) i , a I ( i ) -a † e ( t ' U-A ) i ,の ようにエネルギー ・ スペ ク トルに虚数部 を導入するだけでは,同時刻交換関係 は, け っ して保存 されない : l a ( i ) , a I ( i ) ] -l a , a † 一 e 加 t ( 7 ) Q2 ・ 揺動力演算子 は KMS条件 [ 1 1 , 1 2 】を満 たせ ないので,量子系 では白色過程 は許 されない と言われている。 た とえば,L a n g e v i n方程式 孟 a ( i ) -i d a ( i ) 一項 ・佃 ( 8 ) 孟 a ' ( i ) -i wa t ( i ) -n at ( i ) II-T ( i ) , ( 9 ) を考 えてみ よう。ただ し,f C は,摩擦係数である.また,a( i )ta t ( i ) は,それぞれ Hi l b e r t 空間の消滅,生成確率演算子で,i -0に正準交換関係 を満たす もの とする :( 【 a ( i ) , a I ( i ) ] ) -1 .( 1 5 )S c h r 6 d i n g e r 表現でなされるべ きである。それでは,La n g e v i n方程式に現 れる揺動 力の相関 と して,はた して,S c h r 6 d i n g e r表現 と同 じもの を採用 して長いのであろ うか ?q4 .如何 に して,確率過程の表現空間 を建設 した ら良いのであろ うか ?時間発展演算子の一般形 は,本質的 に L i o u v i l l e方程式 孟 p ( i ) --i L p ( i ) , に関る次の性質か ら導 きだ された。 Dl .L i o u v me演算子のエル ミー ト性 : L f =L.
近年,量子コンピュータに関する研究が盛んに進められている.量子コンピュータとは,量子を用いて状態を操作する,現行のコンピュータとは異なる動作方式のコンピュータである.量子とは電子や光子のようなミクロな世界の粒子である.量子は量子力学と呼ばれる物理法則に従うことが知られている.量子コンピュータは量子力学の持つ不思議な性質を利用することで,特定の問題に対し漸近的な改善が期待される量子アルゴリズムを構成することができる. ある問題を解くために最適なアルゴリズムの計算量を, N を入力サイズとしてT(N) としたとき,あるアルゴリズムはT(N) の上界を与える手続きである.一方でT(N) の下界を知ることもまた重要である.計算量の下界を示すことができればアルゴリズムの改良の限界を示すことが可能である.また,定量的な観点から問題の難しさを捉える指標にもなる.計算量下界の証明は量子コンピュータの計算能力の可能性と限界を理論的に知ることに繋がる重要な問題である[H˘S05]. 量子アルゴリズムに対する計算量下界の証明は様々な問題に対して行われている[MBT18, CJR21].例えば前述の非構造探索に対してはΩ(√N) の下界が知られており,Grover のアルゴリズムが漸近的に最適であることが分かっている[Amb02, BBC+01, Zha19].一方で,二分探索は量子計算を利用したとしても漸近的な改善が見られない例である.古典計算においてN 要素の整列された列に対する二分探索はO(logN) の時間計算量で動作する.これに対して量子計算を利用する二分探索はΩ(logN) 回のクエリが必要であることが分かっている[HNS02].このように,問題によって量子計算を利用したとしても漸近的な改善が見られない場合もある. 線形リストは基本的なデータ構造として広く用いられており,古典計算において探索にかかる時間計算量はN を要素数としてΘ(N) である.ここで,量子計算を用いた場合に計算量の上界を示す方法としては古典計算の模倣やアドレス空間全体をGrover のアルゴリズムで探索するなどが考えられるが,下界についての結果は知られていない. 本研究はアドレス空間のサイズをN,リスト長をℓ として,リスト探索を高い確率で成功させる任意の量子アルゴリズムは,量子クエリを少なくともmin(ℓ − 1,Ω(√N))回は必要であることをある仮定のもとで示した.また,末尾要素探索を高い確率で成功させる任意の量子アルゴリズムについても同様にmin(ℓ − 2,Ω(√N))回のクエリが少なくとも必要であることをある仮定のもとで示した.
動的な物理現象への理解に向けた取り組みは、個々の豊かな物性現象を調べるだけではなく、数学的なトイモデルの性質を活かしたトップダウン的アプローチも試みられている。中でも量子現象の動的な性質は理論的には干渉効果をきちんと議論しなければならず、実験的には量子現象だけを純粋に取り出すことが極めて難しい。本ゼミでは、量子動力学現象を記述するための道具である「量子ウォーク」に関して、その理論的性質と実験による実装方法とその困難さに関して解説を行う。量子ウォークとは名前が示す通り、物理現象を説明する道具として使われているランダムウォークを量子力学の公理系の中で定義しようとした際に自然に定義されるものである。だがしかし、シンプルな定義からでは一見想像できないような多彩なダイナミクスを模写することが出来る。Schr odinger 方程式、Dirac 方程式やKlein-Gordon 方程式をトイモデルから統一的に理解することが出来るという点において、「量子動力学シミュレーション」と呼ぶ。また、近年の実験技術の飛躍的な向上により、数学的なトイモデルとして扱われてきた量子ウォークが中性原子・イオン・光の物理系において実装可能となり、量子効果を巧みに組合わせた実験系を構築することで量子情報科学や多体系量子論の問題へのアプローチも試みられている。
サイ トあた りⅣ 状態を取 り得る 1 次元確率過程模型 ( 以後、「 1 次元 Ⅳ 状態確率過程模型」と呼 ぶ) 回 には、厳密な 「 ( サイ トによらない) 行列積型定常状態ベク トル」( ma t r i x -p r o d u c t s t a t i o n a r y s t a t e ; 以下では MPS Sと略す)【 2 】 を持つ ものがある。 このタイプの定常状態 を使 うと、カ レン ト や相関関数を比較的簡単に、しかも厳密に求めることが可能 となる。この時、q直交多項式の理論 が役立つ事 も明 らかにされている [ 3 , 4 , 5 ] 。最近では、MPS Sが非平衡統計力学での 「 自由エネル ギー」 の計算 [ 6 ] にも用 いられた。 行列積型ベク トルそのものは、あちこちに現れる。確率過程模型での最初の発見 [ 7 】 よ りも先 に、( 行列積型基底状態ベク トルとして) 量子スピン模型で発見されてお り、 基底状態での厳密な物 理量の計算を可能 としていた 【 8 】 。 その後に登場 した密度行列 くりこみ群 の方法 ( De n s i t yMa t r i x Re n o r ma l i z a t i o nGr o u p ; DMRG と略される事が多い) [ 9 ] においては、 近似的な行列横型ベク ト ルが重要な役割 を果た している事が明 らかにされている ( DMRG の高次元模型への拡張 [ 1 0 】 にお いては、行列積をテンソル積へ と拡張 したものが用いられる事 もある) 。 話を厳密な MPS Sに戻すと、 1 次元 Ⅳ 状態確率過程模型の厳密な MPS Sをシステマティック に求める方法は明 らかでなか った。 これ故 に、厳密な MPS Sは ごく少数知 られているに過 ぎな い。システマティックに求める上での、数値的なヒン トを得る方法は P e s c h e lとⅠ く a u l k eらによっ て与え られていた t l l い 彼等は DMRG における密度行列のスペク トラムを観察することが厳密な MPS Sを数値的に発見するのに重要だとだけ主張 していた。我々は彼等の主張について考え、ま ず数値的な厳密解 を構成する方法を作 った。そ して数式処理の助けも借 りると厳密解を求めるこ ともできることに気付き、さらに方法を少 し見通 しよ くできることが分か った。本稿で述べるの は、その厳密解 を求める方法である。 本研究の目的は MPS Sをシステマティックに求める方法を明らかにすることである。現在 まで
注 目す る系のハ ミル トニアンが Hs-u a † a + 芸 g a t a † a a , で与 えられ る非線形減衰振動子 を考えよ う。α , α I は交換関係 [ α , α † 一 -1 , [ α , α ] -0 , ( 1) ( 2 ) を満 たすボゾン演算子である。減衰理論 にお けるn o n -c o n v e n t i o n a l t j : 取 り扱 い [ 3 日7 ] では,注 目 す る系内の非線形性がその緩和 に与える影響が考慮 され る。その結果系のダイナ ミクスは,注 目 す る系の密度行列p s ( i ) が正 しい終状態であるカノニカル平衡状態の密度行列 e-βHsに収束す るこ とを保証す る。一方,減衰理論 における c o n v e n t i o n a l な取 り扱 いでは,系の非線形性 が緩和に及 ぼす影響は無視 され,p s ( i ) は調和振動子のカ ノニカル平衡状態 e -P ua † a に収束す る。 このことか ら,系の非線形性が緩和に及ぼす影響 は,系の長時間の振 る舞いに重要 な役割 を果た しているこ とが分かる.Ha a k e 等 【 7 】 は減衰理論 にお けるn o n -c o n v e n t i o n a l な取 り扱いによ り,非線形減衰振 動子 に対す る量子マスター方程式を導出 した。 非平衡 Th e r moF i e l dDy n a mi c s( NE TF D) [ 8 日1 2 ] の枠組みにおいて,量子 L a n g e v i n方程式 と 量子確率 L i o u v i l l e 方程式 を含む量子確率微分方程式の系統的な正準演算子形式の体系が構成 され た 【 1 0 日2 3 ] 。この体系において,前述の非線形減衰振動子に対す る量子確率微分方程式が構成 され た [ 2 0 ] 。 Ac c a r d i 等 [ 2 4 日2 8 ] は,量子確率過程 に対 して微視的な基礎付 けを与えた。彼 らは,ボゾン場の 熱浴 と相互作用す る量子系を考察 し,熱浴 のボゾン場 によ り構成 され る集団的ボゾン場 ( c o l l e c t i v e b o s o n丘 e l d )とよばれ る場が,弱結合極限 ( v a nHo v e 極限) 【 2 9 1 で量子 Wi e n e r 過程 に収束す ること 「 第 5回 『 非平衡系の統計物理』シンポジウム」 を示 した。また,相互作用表示における波動関数の時間発展方程式が,無限小時間発展演算子に 量子 Wi e n Q r 過程の増分を含む量子確率微分方程式に収束す ることを示 した。 この論文では,このA c c a r d i 等の手続きをN E T F Dの枠組みで非線形減衰振動子に適用 し,系 の非線形性が緩和に及ぼす影響を考慮 した非線形減衰振動子に対す る量子確率微分方程式を微視 的なモデルか ら導出する。
この研究で扱うような原子・分子の古典モデルの歴史は1920年代にまで遡る。その発端は、Bohrの水素原子のモデルでは成立した量子古典対応がヘリウムでは成立しないことだった。量子論の前夜の事件であるが、それは今なお未解決の部分を多く含む問題なのである。量子と古典の間の深い溝は、その両者が異質なものであるということである。しかし、同じ自然に対する複数の記述方法である以上、それらの適用範囲が広がるにつれ交錯する分野が現われるのは必然である。その領域においては、何らかの橋渡しが出来ていなければならない。だがそれはそれぞれに関する深い知識がなければ構築できない類のものである。量子カオスという研究分野はおもにその橋渡しを追求するが、この研究はむしろ古典系側の基盤を探るものである。古典系に話を限っても、ヘリウム原子ですら三体問題であり、カオス的な性質を持つハミルトン系(保存力学系)である。運動を決定する積分が足りないために、系の運動を統一的に記述することは未だなされていない。ハミルトン系の相空間の構造は非常に複雑であるので、高い解像度で観察する必要がある。つまり、これらの系における困難とは、広大な初期条件空間をくまなく探索しなければならないということなのである。そうしてはじめて量子系との対応を議論できるようになる。そのような作業の結果としてこの研究で見出されたことは、1)カオス的な軌道は全て原子から無限遠へ飛び出す(イオン化を起こす)、2)相空間には非自明なトーラスが埋め込まれている、3)カオスとトーラスの織りなす非常に複雑な構造が見出されたことである。また、それらを応用して原子や分子の古典力学的な表現を探求している。原子や分子のモデルを、クーロン力によって相互作用する独立した粒子のシステムとして扱う場合、ほとんど単純化をせずに相空間を広汎に調べた研究というものはあまり例がない。そして、その結果として幾つか重要と思われる知見が得られている。単純化したモデルにおいて量子古典対応を研究した例は非常に多いが、それでだけでは量子古典対応などの問題の未解決な点をあらわにすることは出来ないのではないかと考えられる。なお、この論文内での約束事は次の通りである。1)軌道の初期条件で、とくに記していない変数はその配置で決まっているか、そうでなければ0である。2)先に刊行されている論文[1]との用語の統一を図るため、トーラスの名称などはとくに英語で記した。3)物性研究版では、本文と図の一部が省略されている。