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物性研究

非線形減衰振動子に対する量子確率微分方程式の微視的導出(第5回『非平衡系の統計物理』シンポジウム,研究会報告)

健 斎藤, 敏彦 有光

Published Feb 20, 1999• 0 citations
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Abstract

注 目す る系のハ ミル トニアンが Hs-u a † a + 芸 g a t a † a a , で与 えられ る非線形減衰振動子 を考えよ う。α , α I は交換関係 [ α , α † 一 -1 , [ α , α ] -0 , ( 1) ( 2 ) を満 たすボゾン演算子である。減衰理論 にお けるn o n -c o n v e n t i o n a l t j : 取 り扱 い [ 3 日7 ] では,注 目 す る系内の非線形性がその緩和 に与える影響が考慮 され る。その結果系のダイナ ミクスは,注 目 す る系の密度行列p s ( i ) が正 しい終状態であるカノニカル平衡状態の密度行列 e-βHsに収束す るこ とを保証す る。一方,減衰理論 における c o n v e n t i o n a l な取 り扱 いでは,系の非線形性 が緩和に及 ぼす影響は無視 され,p s ( i ) は調和振動子のカ ノニカル平衡状態 e -P ua † a に収束す る。 このことか ら,系の非線形性が緩和に及ぼす影響 は,系の長時間の振 る舞いに重要 な役割 を果た しているこ とが分かる.Ha a k e 等 【 7 】 は減衰理論 にお けるn o n -c o n v e n t i o n a l な取 り扱いによ り,非線形減衰振 動子 に対す る量子マスター方程式を導出 した。 非平衡 Th e r moF i e l dDy n a mi c s( NE TF D) [ 8 日1 2 ] の枠組みにおいて,量子 L a n g e v i n方程式 と 量子確率 L i o u v i l l e 方程式 を含む量子確率微分方程式の系統的な正準演算子形式の体系が構成 され た 【 1 0 日2 3 ] 。この体系において,前述の非線形減衰振動子に対す る量子確率微分方程式が構成 され た [ 2 0 ] 。 Ac c a r d i 等 [ 2 4 日2 8 ] は,量子確率過程 に対 して微視的な基礎付 けを与えた。彼 らは,ボゾン場の 熱浴 と相互作用す る量子系を考察 し,熱浴 のボゾン場 によ り構成 され る集団的ボゾン場 ( c o l l e c t i v e b o s o n丘 e l d )とよばれ る場が,弱結合極限 ( v a nHo v e 極限) 【 2 9 1 で量子 Wi e n e r 過程 に収束す ること 「 第 5回 『 非平衡系の統計物理』シンポジウム」 を示 した。また,相互作用表示における波動関数の時間発展方程式が,無限小時間発展演算子に 量子 Wi e n Q r 過程の増分を含む量子確率微分方程式に収束す ることを示 した。 この論文では,このA c c a r d i 等の手続きをN E T F Dの枠組みで非線形減衰振動子に適用 し,系 の非線形性が緩和に及ぼす影響を考慮 した非線形減衰振動子に対す る量子確率微分方程式を微視 的なモデルか ら導出する。

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クイーンズラン ド大物理 1 は じめに 量子系における微視的なハ ミル トニアンで記述 され るモデルか らL a n g e v i n方程式を導出 す る試みは,古 くか ら行われてきた.特に,射影演算子法によるL a n g e v i n方程式の導出 は,森 【 1 ] によ り始め られ,多 くの研究者によって調べ られてきた.柴 田 ・ 橋爪 [ 2 】 は,熱浴 と相互作用す るスピン系に対 して射影演算子法を適用す ること により,ス ピン緩和に対す る量子 L a n g e v i n方程式を導出 した・その際,注 目す 卑系甲演 算子に対す るHe i ' s e n b e r g方程式か ら出発 し,通常の解析関数 に対す る規則 に したがって 計算を進めている, したがって,導出された量子 L a n g e v i n方程式は,通常の計算規則 に したが うS t r a t o n o v i c h型の確率微分方程式であると理解すべきであろ う. 一方,散逸現象を正準形式の場の理論 として取 り扱 うNo n -E q u i l i b r i u m Th e r moF i e l d Dy n a mi c s ( NE TF D) 【 3 日7 Jの一貫 した体系か ら見 ると,柴 田 ・ 橋爪のL a n g e v i n方程式は I t o 型の確率微分方程式 と理解すべきとい う結論が得 られる.これは先ほどの結果 と矛盾 してお り,微視的に導出されたL a n g e v i n方程式に対 して,その計算則をきちん と定める 必要があるとい う問題が現れた.本論文では,ス ピン緩和 と減衰調和振動子の例 を用いて,射影演算子法によ り導出さ れた量子 L a n g e v i n方程式の確率過程 としての計算則がI t o 型である事を,保存量の微分を 計算す る事によ り具体的に示す [ 8 】 .次章では,NETF DにおけるL a n g e v i n方程式を導出 す る.NE TF Dの体系では,いくつかの公理か らL a n g e v i n方程式の形が決定する.第3 章 では,柴 田 ・ 橋爪の方法に沿って L a ng e v in方程式を導出す る.第 4章では,ス ピン緩和 に対する柴 田 ・ 橋爪のL a n g e v i n方程式に対 して,その計算則がI t o 型になっている事を, 保存量の微分を計算す る事によって示す.また,減衰調和振動子のモデルに対しても,柴 田 ・ 橋爪のL a n g e v i n方程式が I t o 型になっている事を示す・ -8 7 0-「 第 5回 『 非平衡系の統計物理』.シンポジウム」 2 NETFDにおけるL a n g e v i n方程式 柴田・ 橋爪のL a n g e v i n方程式 と比較 しうる,NE TF DにおけるL 弧g e V i n方程式を導出する・ 乱雑力 と相互作用する系を考える・NE TF Dでは,状態 l O f ( i ) ) は確率 L i o u v il l e 方程式, d l O f ( i ) ) --m f , t d tl O f ( i ) ) , に従って時間発展す る.( 1 ) 式の積は,I t o 型の積である.無限小時間発展演算子であるハ ッ ト・ ハ ミル トニアン T t f , t d t は, ( i 7 i f , t d t ) --i 7 1 J , 刺 を満たす.ここで,テイル ド共役-は,任意の演算子 A, Al , A 2 に対 して, ( AI A 2 ) --AI A 2 , ( c I A l +C 2 A2 ) --C ; A l +C ; A 2 , ( A) --A, ( A t ) --( A ) I , で定義 され る.ただ し, c l ,C 2 はc 数である.ハ ッ ト・ ハ ミル トニアン 7 t f , t d l は,注 目す る系に関 して確率の保存を表す式,) ( d F I Z d F 1 7 ) -( d F l f d F I Z ) -6 6 ( i -t ′ ) d t d t ′ , を持つ定常 Wi e n e r 過程 を仮定す る.Wi e n e r 過程の演算子は, ( I d F t '-( l d 育 , ( l d F t z-( I d F t z , を満たす.ハ ッ ト・ ハ ミル トニアン 7 i f , t d t に対 して, ・S 土 , s z , d F t j = , d F t z及びそのテ イル ダ共役 に関 して 2次まで・ .大局的位相変換S -S e i O , d F t -d F re i Oの下で不変.の要請 を仮す.但 し, S 土は S 土-s x士i s yで定義 され る. この要請 の下で得 られ るI t o 型のハ ッ ト・ ハ ミル トニアン 7 tf , t d t は, 7 1 f j d ths d t +i( h R +H D ) d t +d ht , ( 2 4 ) ( 2 5 ) ( 2 6 ) h s -u ( s z -S -X ) +△ 1 ( ( s Z ) 2 -( S -Z ) 2 ) +A2 ( S + S 一一S -+ S --) , ( 2 7 ) h R-芸 ( 7 0 1 -7 1 0 ) ( ( S +-S --) ( p s -+ " 5 ' ) +七 ・ C ・ ) , ( 2 8 )

物性研究•Feb 20, 1999•0 citations

ホワイトノイズと量子確率解析の非線形拡張(第6回『非平衡系の統計物理』シンポジウム,研究会報告)

伸明 尾畑

o b a t a @ m a t h・ n a g o y a -u・ a c ・ J p l は じめに 揺 らぎを含む物理現象の時間発展は確率微分方程式で記述 され る. 確率積分が厳密 に定式 化 され, 確率微分方程式の基礎付 けがな されたのは 1 9 4 0年代のことであ り, 伊藤理論 として 広 く知 られているが,半世紀 を経た今 日では,よ り無限次元解析 としての色彩が強ま りなが ら様 々に発展 している.それらは, 包括的に 「 確率解析」 と呼ばれているが, そ こでは,ラン ダム性 を無限 自由度に言い換 え, 確率的な対象 を無限次元的な対象 に変換 して議論がな され る.この観点に立つことで, 超関数論な どの関数解析的手法が導入 され易 くな り, 理論が大き く発展す るのである.無限次元解析は,理論構成上の 自由度 も大きく, 何 を礎 とす るかによっ て様 々な流儀がある.なかでも Ma l l i aS c h wa r t zの超関数論によっ て, それまでは意味が暖味であった Di r a cのデル タ関数が正 当化 され, 計算ルールが厳密に 与えられたよ うに, ホワイ トノイズに厳密な定式化が与えられ, 文献に散見 され る 「 形式的」 計算 ( 通常の微積分 と同様な計算) が, ホワイ トノイズ解析の枠組みで理解 され るようになる・ 多 くの場合, 形式的計算 を結果的に正 しい と認めることになっても, ホワイ トノイズ解析が理 論 として意味を失 うものではない.' s c h wa r t z超関数論が, 結局は, デル タ関数な どの形式的 計算 を追認す ることになって も, S c h wa r t z超関数論が不要にはな らないの と同 じである, ホワイ トノイズ解析は,当初, 伊藤解析の拡張 としてスター トした 【 1 5 ]ため, 対象は 「 古 典」確率論の範境 を出るものではなかった.一方,量子確率解析 は, その創始 t 2 1 ]の頃か ら, 量子物理の問題意識か らであろ うが,ヒルベル ト空間論か ら離れず に発展 してきた とい う経 緯がある.その両者のアイデアを融合して,さらなる展開を 目指す試みは,ホ ワイ トノイズ 作用素論 [ 3 3 ]の一応の完成 とともに, 1 9 9 2 年 ころか ら開始 したが,目下の状況は発展の好機 を思わせ る.本誌上において も,ホワイ トノイズ解析の基礎理論 とともに,ホワイ トノイズ による量子確率積分, 量子確率過程のホワイ トノイズによる表示, 量子確率微分方程式 とホ ワイ トノイズ方程式の関連な どについて報告 してきた [ 3 5 ] ,岡 ,【 3 9 ] ・本論文では,高次の ホワイ トノイズ ( ホワイ トノイズの非線形関数)をノイズ項 として含む量子確率微分方程式 を, 「 正規積 ホ ワイ トノイズ微分方程式」 として定式化 し, 解の一意存在 を論 じる.その際, Co c h r a n -Ku o -S e n g u p t a[ 1 4 】による一般的な枠組みが有用である.実際,これまでに,空間を 拡張 して解の存在 を保証す るとい う形の定理 ( 超関数的な解の存在) については十分論 じてき た [ 4 0 ] , [ 4 1 日 4 3 日 4 4 ]ので, 本論文では, 解がいつ F o c k空間の ( 非有界) 作用素になるか ( 超 -「 第 6回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 の簡略形であ り,この積分は伊藤型量子確率積分を意味す る.さらに, 方程式 ( 2 .3 ) は, 指数ベ ク ト ル に関す る行列要素 ( これ を作用素 シンボル とい う) に対す る方程式に書 き直せ ば, 《 X擁 , 4 , 刀 ) ) -《 4 , i , 4 , り )+ / E t ( 《に等 しくなる・したがって, ( 2 .5 ) か ら作用素の部分だけを取 り出せ ば, X i -I + / -- とな り, さらに tで微分すれ ば, d Xl d t ( L l a : Xs a s +L 2 Xs a s +L 3 a s * Xs +L 4 Xs ) d s -L l a ; Xt at +L 2 Xt al +L3a ; Xl +L4Xl , X ( 2 .6 ) -I , ( 2 .7 ) となる・最後 に, 場 の理論で使 われ る正規積 ( Wi c k 積)を用いて書 き直す.Wi c k積 を ◇で表 せ ば, a s ◇at-a s a t , a s * ◇at-a s * a t , a s ◇a ;-a i * a s , a s * ◇a l * -a ; a i * ・ また, 一般 の作用素 X に対 しては, ( a ; 1 ・ ・ ・ a s * l a t l-・ a t m )◇ X-a ; 1 -・ a s * , Xa t l・ -ai m なる性質 を持つ.したがって, ( 2 .7 ) は Wi c k積 に関す る線形方程式 ( L l a l * at+ L 2 a t +L 3 a l * +L4)◇Xl , X-I, ( 2 .8 ) に帰着 され る・こ うして, 量子確率微分方程式 ( 2 . 1 ) は, 単純な線形方程式 ( 2 .8 )と同値 となる.

物性研究•Jun 20, 1999•0 citations

9. ミクロから導出されたマスター方程式に基づく速いスピン緩和の解析(第9回『非平衡系の統計物理』シンポジウム,研究会報告)

元 木村, 一哉 湯浅, Kentaro Imafuku

「 第9回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 • • Ra p i d l yd e c a y l n gS p l nS y s t e m b a s e do nt h es t o c h a s t i cl i mi ta p p r o a c h 早稲 田大学 理工学研究科 木村 元, * 1湯浅 一哉* 2 ローマ第二 ヴ オルテラ研 究所 今福 健太郎* 3 散逸現象 な どの不可逆過程 を, 時間反転対称性 をもつ量子論 に基いて記述で きるか否か とい う問題 は, 非平衡統計力学の基礎 のほか量子論 における観測問題 とも係 わ り興味深 く重要なテーマである.この問題 に対す る標準的 なアプローチ としては, 対象系 と相互作用す る環境系 を考慮 に入れる方法 があ る.つ ま り,仝体系一一 " 対 象系" +" 環境系" -を閉 じた系 として量子論 を展 開 し, 改 めて対象系 の ダイナ ミクス ( R e d u c e dD y n a mi c s ) を抽 出す る.この とき環境系の 自由度が無限大であ ることを想 定する と, 対象系の不可逆 な振舞 いが導かれ るのである 川. 量子光学では, 例 えば電磁場 の環境下 にある原子の振舞 いに興味がある.そこで扱 う仝体系ハ ミル トニア ンは Ht .t-Hs+ A V+HB (1) である.ただ し, Hs , HB はそれぞれ原子系, 電磁場のハ ミル トニア ンであ り, 両者 間の相互作用 入 V は電磁相互作用 であるため了トさい結合定数 ( 入≪ 1 ) が想定 される.一方で, 全体系ハ ミル トニア ン が式 ( 1 )とは異 なるスケー リングを持つ Ht .t-' 2 Hs+ A V+HB ( 2 ) とい う系 も興味深 い.ただ し,入 2 Hs , J I B, 入 V はそれぞれ対象系,環境系, 相互作用のハ ミル トニア ンであ り, 入≪ 1 .この系で は,弱相互作用系 である式 ( 1 )のハ ミル トニ ア ンか ら導 かれ る遅 い緩和 に比べ て " 速い緩和 ( R a p i dDe c a y ) "が導かれ ることになる.本稿で着目す るのは この スケー リング の系である.具体的 にス ピン ・ボ ソン系 [ 2 ] を例 にと り,ハ ミル トニ ア ン ( 2 ) の系 に見 られ る興味深 い構造 を紹介 しよう.式 ( 1 ) の系か ら散逸過程 を導 く有力 な手法 としては v a nH o v e 極 限 ( A-0 , T-入 2 t ' 固定)[ 3 ] が 有名である.弱結合極限と時 間の スケール変換 とを同時 に行 な うことで, 指数関数的散逸 を導 くこと がで きる.また,この方法 に基礎 を置 く確率極 限 ( S t o c h a S t i cL i mi t )[ 4 1とい う強力 な手法があるが, 最近我 々は,ハ ミル トニ ア ン ( 2 ) の系 に対す る確率極 限の枠組み を新 たに構築 した 【 5 ト 本稿では,

物性研究•Feb 20, 2002•0 citations

非平衡・量子散逸系の正準理論 : 量子系確率微分方程式の一貫した枠組み(筑波大学開学20周年記念第2回『非平衡系の統計物理-現状と展望』シンポジウム,研究会報告)

敏彦 有光

m Th e r moF i e l dDy n a m i c s( NE TF D)[ 1 ] -[ 4 】と名付け られ た,非平衡量子系 を扱 う正準理論を紹介する。 これは,散逸量子系 を扱 う一貫 した ( 非平 衡系統計力学でのすべての基本的概念,すなわち,B o l t z ma nn方程式,F o k k e r -P l a n c k方 程式,L a n g e v i n方程式,確率 L i o u v i l l e方程式'で代表 される見方 を,一つの土俵で議論 で きるとい う意味で) , しかも,量子力学や場の量子論で学んだ,自然認識の基本である 演算子代数 と表現空間 とい う二重構造を供えた理論体系である。 NE TF Dの表現空間 ( 熱空間,t h e r ma l s p a c e ,と名付け られた)は,2つの Hi l b e r t 空 間の直積で構成 されている.1つばn o n -t i l d e場,もう 1つは t i l d e場の H i l b e r t 空間で ある.NE TF Dでは,いかなる演算子 A にもその髄伴演算子 ( t i l d e演算子)A が伴 って いる。t i l d e共役,-,は, ( AI A2 ) --AI A2 , ( c I Al + C 2 A2 ) --C ; il + C ; 12 , ( i) --A, ( AI ) --〟 , p h H 一 G i - ー n u p n u 1 2 3 4 l H I U ■ H t L Hi ヨ l H は ■ 川 U で定義 される。ただ し, c l や C 2 は, c数である.S c h r 6 d i n g e r表現では,t i l d e演算子 と n o 凪 -t i l d e 演算子は,互いに可換である : l A, B ] -0 .( b 5 ) 散逸は,直積 H i l b e r t 空間全体での回転,すなわち,t i l d e 演算子 とn o n -t i l d e 演算子 を 交ぜ るような回転 として捕 らえられることが明 らかになった。無限小時間発展演算子の中 の t i l d eとn o n -t i l d e 場が掛っている項が,散逸 ( すなわち,非可逆)現象 を司っているの である。この点は,NE TF Dが建設 されて初めて認識 された 【 1 , 2 】 。 I ' 古典系での確率 L i o u v i l l e 方程式 は,久保 【 5 , 6 】 により初めて導入 された。 I この認識 は, G i b b Sアンサ ンブルを定式化 した熱平衡系 の T F Dl 7 】にはなか った。そこには,散逸は 現れない。この点が, N B T F DとT F Dとの本質的な違いのひとつである。Z u b a r e v が, N E T F Dの方法を 賞賛 し,非平衡量子現象の研究 に用 い始めたことに,ここで言及 させていただきたい 【 8 】 .-3 1 1 研究会報告 B o l t z ma n nは,微視的で可逆 な Ne wt o n力学か ら出発 して, 自然界 の非可逆性 を導出 しようとした.しか し,B o l t z ma n n方程式 を導 く際 に,分子混沌 と呼 ばれる確率操作 を, 知 らず に導入 していたことが判明 したのである ( その辺のか ら くりの簡単 な解説は,【 9 ] を 参照のこと) 。我 々の新 しい方法が見通 しの良い ものである とい う技術的 な面 ばか りでな く,散逸量子場の理論 としてのその二重構造が,B o l t z ma nnの初め措 いた夢 を,何等かの 意味 で実現 させ るのではないか, とい う期待 が湧いて くる.B o l t z ma n nの時代 には, こ の二重構造 は認識 されていなか ったのである。 詳 しい NE TF D の解説 と参考 文献 は 【 4 ]を参照 して頂 くと して,s e m i -f re e時間発展 演算子 ( 量子 F o k k e r -P l a n c k方程式 と,定常的量子 Wi e n e r 過程 に従 う量子確率 L i o u v i l l e 方程式,それぞれに関する もの)が,い くつかの基本的要請の元 に,如何 に して創 られる かを示す.S e mi -f r e e時間発展演算子は,双線形で大域的ゲージ不変性 を満 たす ものであ る。以下,散逸量子系 の正準理論が,前者の時間発展演算子 によって如何 に創 られるかを 紹介 し,量子系確率微分方程式の一貫 した体系が,如何 に して建設 されるか を示す ( 図 2 参照 ) 。そ うす ると,量子散逸系の方程式 に纏 わる次の ような基本的 な疑問が,解決 され ることが見 えて くる ( 量子系 L a n g e v i n方程式 に対す る問題提起 に関 しては,【 1 0 】も参照 の こと) 0 ql .量子散逸系 を扱 う正準理論 ( つ まり,時間発展が正準変換 で誘起 される)は,建 設可能 だろ うか ?考 え もな しに a ( i ) -a e ( i w+A ) i , a I ( i ) -a † e ( t ' U-A ) i ,の ようにエネルギー ・ スペ ク トルに虚数部 を導入するだけでは,同時刻交換関係 は, け っ して保存 されない : l a ( i ) , a I ( i ) ] -l a , a † 一 e 加 t ( 7 ) Q2 ・ 揺動力演算子 は KMS条件 [ 1 1 , 1 2 】を満 たせ ないので,量子系 では白色過程 は許 されない と言われている。 た とえば,L a n g e v i n方程式 孟 a ( i ) -i d a ( i ) 一項 ・佃 ( 8 ) 孟 a ' ( i ) -i wa t ( i ) -n at ( i ) II-T ( i ) , ( 9 ) を考 えてみ よう。ただ し,f C は,摩擦係数である.また,a( i )ta t ( i ) は,それぞれ Hi l b e r t 空間の消滅,生成確率演算子で,i -0に正準交換関係 を満たす もの とする :( 【 a ( i ) , a I ( i ) ] ) -1 .( 1 5 )S c h r 6 d i n g e r 表現でなされるべ きである。それでは,La n g e v i n方程式に現 れる揺動 力の相関 と して,はた して,S c h r 6 d i n g e r表現 と同 じもの を採用 して長いのであろ うか ?q4 .如何 に して,確率過程の表現空間 を建設 した ら良いのであろ うか ?時間発展演算子の一般形 は,本質的 に L i o u v i l l e方程式 孟 p ( i ) --i L p ( i ) , に関る次の性質か ら導 きだ された。 Dl .L i o u v me演算子のエル ミー ト性 : L f =L.

物性研究•Apr 20, 1994•0 citations

ホワイトノイズによる量子確率解析(筑波大学開学20周年記念第2回『非平衡系の統計物理-現状と展望』シンポジウム,研究会報告)

伸明 尾畑

ホワイ トノイズによる量子確率解析 名古屋大学理学部数学教室 尾 畑 伸 明 序 よ く知 られているよ うに,ガウス型定常過程 f x ( i ) )で, 平均 と共分散 関数がそれぞれ E( I ( i ) ) -0 , E( I ( a ) I ( i ) ) -6 ( a -i ) , ( 1) で与 え られる もの を ( ガウス型)ホワイ トノイズ と呼ぶ.そのスペ ク トル測度 ( 共分散関数 の逆 フー リエ変換)は全域 でフラットなルペ ック測度 であるか ら, 確 かにホワイ トである・ また,ホワイ トノイズはブ ラウン運動 i B( i ) )の時間微分: 孟B( i ) -I ( 0 ( 2 ) として得 られることも周知であろ う.( もちろん, ブ ラウン運動の軌跡 は時 間微分可能では な く, 有界変動 で さえないが !)ホワイ トノイズは, 数学的には, 超 関数論 を応用 して確率 超過程 として実現 される.一方で, ( 2 )より時間パ ラメー ターを陽 に含 む ( I ( i ) )は時 間発 展 が直感的 に捉 えやす く, ( 1 )より t x ( i ) )はあたか も連続無限個 の直交座標系 であるが ご とく見 える.いわゆる 「 ホワイ トノイズ解析」は,この視点 に立 って s me a rしない t x ( i ) ) を じかに扱 える無 限次元解析 を目指 した ものであ り, 飛 田武華氏が 1 9 7 5年 の レクチ ャー ノー ト 【 1 0 1を皮切 りとして提唱 されて きた ( なお; 【 1 1 】も参照) .その理論の枠組 は, 一言 でい って,ガウス空 間上のシュワルツ型超 関数論 である.ここ数年来,この理論 の基礎 づ けが完成 し, ( 古典的) 確率解析 ・ デ イリク レ形式 ・ファインマ ン積分 な どへの応用 【 1 3 ] に 加 え,ガウス空間上の作用素論 としての観点か らも発展 しつつある.この論文では, 拙著 【 2 4 】に従 って, ホワイ トノイズ解析 の基礎 的事項, 特 に,ガウス空間 上の作用素論 を紹介 し, その ( 将来的) 応用 として量子確率論 ( 【 1 日2 1 , 【 3 】 , 【 8 日2 2 1 , 【 2 6 1 )へ のアプ ローチ を図 ることにある.手始めにすることは, 量子確率過程論 の基礎概念 を我 々 の立場 か ら再考す ることであ り, 本稿 の 目的で もあるが,まだ端初 についたばか りである.従来, 量子確率論 においては古典確率解析 のアイデ ア と相 まって,ヒルベル ト空間上 の有 界作用素のなす作用素環の理論 が主要な道具 となっている.

物性研究•Apr 20, 1994•0 citations

ホワイトノイズ超関数と量子確率微分方程式(第4回『非平衡系の統計物理』シンポジウム,研究会報告)

伸明 尾畑

l は じめ に 決定論 的 な物理系が通常の微分方程式で記述 されるのに対 して,ランダムな揺 らぎを含む 物理系 には確 率微分方程式が用いられる.確率微分方程式論が数学 の一分野 として登場 した のは比較的新 しく 1 9 4 0年代 のことであ り, 伊藤清の業績 にちなんで 「 伊藤解析」 とも呼ば れている.伊藤解析は 1 9 7 0年代には無限変数の超関数のアイデア と融合 し, 現在では 「 確率 解析」 として無限次元解析 の理論的興味か ら諸科学に現れるラ ンダム現象の解析 といった応 用面 にわた り, 広 く研究 され大いに発展 して きている.その中にあって,量子系への応用 とい う点はやや遅 れて, 1 9 8 0年頃か ら伊藤解析の量子版 としての量子確率微分方程式の数学的基 礎づけが研 究 され今 日に至 っている.古典論の場合を振 り返れば, 量子確率微分方程式 を超 関数論的に取 り扱 うこ との実効性が予想 される.この論文では, 数年前か ら著者が展 開 して いるホワイ トノイズ超 関数論 によるアプ ローチを紹介するとともに, 特 に, 量子確率微分方 程式の解の存在 と構成 について論ず る. まず, 簡単 な L a n g e v i n方程式の例 を通 してホワイ トノイズ超 関数論の基本的なア イデア を説明 しよう.速度V-V ( i )の粒子 ( 質量 は 1とする) が粘性抵抗 ( 抵抗係数 k>0 ) のある 媒質の中を外 力 f-I ( i )を受けなが ら運動する系 は Ne w t o n方程式 霊 ニーk v ・J , v l t = 。 -v o , ( 1 ・ 1 ) で記述 される.ここで, 外力 は位置には無関係だが, 時間 とともに変化 して も良い としている.今, i -I ( t )が ( 例 えば) 連続関数であれば, ( 1 . 1 ) は容易 に解けて, V ( i )e 一 如 vo + e -ki l t e kS f ( S ) ds ( 1 ・ 2 ) となる. で は,外力 に揺 らぎのある場合 は どうなるだろうか.この場合 は,各時刻 tで発 生す る外力 f ( i )はある確率分布に従 う確率変数 と考 えられる・( 一般 に, 時間パ ラメー タ付 きの確率変数 は確率過程 と呼ばれる・ ) はっきりさせ るために,確率空 間 ( a, P ) を導入 し, I: R十 × a-I ( i , W )∈R と表示 しよう・たとえ Fが確率過程であって も, 各サ ンプル U∈D に対 して I -I ( 壬 , W )が連続関数であれば, ( 1 .2 ) は定義 され, 解 V ( i ) -V ( t , W)は確率過程 と して得 られ る.確率変数 の基本的な特性量 は平均 と分散である.簡単のため,外力の平均値 -研究会報告 E( I ( i ) )-0を仮定 しよう.このとき, 確率過程 V ( i )の平均 と分散 は, ( 1 .2 ) か ら容易 に求め られ, E ( V ( i ) )e -k t v o ・e -k t lt e h .E( I ( S ) ) d s -e -k t v o ( 1 ・ 3 ) V( V ( i ) ) 千e -2 h〃 e k ' r ' 3 ' E( I ( r ) I ( S ) ) d r d s ( 1 ・ 4 ) となる・分散が ラ ンダムカ f ( i )の時間相関関数 E( I ( r ) I ( S ) )で与 え られることに注意 して お く.時間相 関関数が E ( i ( r ) I ( S ) ) -6 ( r -S )( 1 .5 )o Ie 一 如/ .I e h B d B. のような 「 伊藤型確率積分」で与えられるのである.1 9 7 0年代 になると, 確率微分方程式 に 対す る超関数的アプ ローチが現れて きた.超関数論 によってデ ルタ関数が正当化 され, 微分 方程式論 に大 きな変革が現れたが, 同 じようなことは確率解析 にも期待で きる.Ma l l i a v in解 析 【 2 2 1 や飛 田解析がその代表的なものである・特 に, 飛田解析 は 「 ホワイ トノイズ解析」 と も呼ばれ, 一旦 は d B tとして姿 を消 して しまったホワイトノイズ をあか らさまに数学的対象 「 第 4回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 として捉 える理論である1.これについては,次節以降で詳述するが Ga u s s空間上の超関数空 間 ( E ) 'を導入す ることによって, ホワイトノイズ w t を ( E ) +内の C∞一 級 f l o w として取 り 扱 うことがで きる.そ うす ると, ( 1 .7 ) は再び d v ---k v+ Wt d i と書かれる・形 は もとの ( 1 . 1 )と同一であるが, 解 V-V ( i ) は ( E ) •の中で求めることになる.考 える空間は ( E ) ' の ように無限次元空間になって しまったが, 方程式その ものに特異性は な く, 普通の微積分の規則で解 を求めることがで き, V ( i ) -ek t v o ・e -kl / .ie k s w Sd s となる・これ は, 考 えている空間は違 うのであるが, ( 1 ・ 2 )と形は全 く同 じである.ここで述べて きた ものは簡単 な一例であるが, ホワイ トノイズ解析 によって従来 の形式的計算 に数学的 裏付け を与 え, 揺 らぎの本質 を直に捉 えることがで きるようになった.一方で,1 9 6 0年頃か ら散逸量子系の解析 において量子 L a n g e 血 方程式が議論 されて き た ( L a x[ 2 0 】 , S e n i t z k yl 3 6 】な ど・なお Ac c a r d il 1 】も参照) .それを量子伊藤理論 を定式化 し てユニタリ拡張の問題 として捉 えたのが Hu d s o n -P a r t h a s a r a t h yl 1 6 】であ り, その理論 の後, 若干の超 関数 のアイデア も取 り入れなが ら大いに発展 して今 日に至 っている.最近出版され た教科書 Me y e rl 2 1 1 , P a r t h a s a r a t h yl 3 2 ]はこの方面の必携書 となっている.まず,B r o wn遠 動 を定義す る確率空間 と L 2( A ) 上の B o s o nF o c k空間 ( R が B r o w n 運動 の時間パ ラメータ を与 える)が 同型 になる ( Wi e n e r Jt 6 -S e g a l 同型) .すると Bt をその B o s o nF o c k空間上の かけ算作用素 とみなす ことがで き, Bt -At + A t e の ように,さらに 「 素」な 2つの量子確率過程 に分解す ることがわか る.At , A言はそれぞれ 消滅過程, 生成過程 と呼ばれている.Hu d s o n -P a r t h a s a r a t h y -Me y e r理論 は, それ らの無限小 増分 d At , d AI , 及びゲージ過程の無限小増分 d Atに基づ く伊藤解析 の量子版 とで も言 うべ き ものである.生成・ 消滅過程 によって, 第 3の量子確率過程 tを表す ことは, 彼 らの量子確 率積分で許 される被積分関数の範囲ではで きないが, 応用上極めて重要であるので独立 につ け加 えられている.この ような流れを眺めれば, ホワイトノイズ解析の量子版 を建設 し, 応用面 を探 るのは興 味のあることと言 えよう.このアプローチの一つの特徴 は, デルタ関数 を掌中にす る超関数 論 を基礎 に しているので,「 素」となるべ き量子 ノイズは a , , a t 'の 2つで十分であるとい う ことである・実際, " すべて" の量子確率過程 を a tと a t 'に関する " 量子確率積分" で表現する ことがで きる2.また,このことは, すべての作用素が生成 ・ 消滅作用素で表現で きる とい う 場の理論 における直感 にもあっている3.こうして,我々の立場 を図示 すれば次の ようになる. 1 飛 田 【 1 2 】に興味深い解説記事がある.2ここで … をつけたのは, 数学 として表現するのだか らむろん一定の枠 をはめた り, 概念 を一般化 した りし た上で,との意味.詳しくは本文 § 4を参照されたい.3このこ とを証明す るためには," すべての作用素"に対 して枠 をはめなければな らない.有界作用素に対 し ては B e r e z i n【 3 1 , G e l f a ndt r i p l e tに付随 したものは O b a t a【 2 3 1で証明された・なお, § 3も参照せ よ・ 研究会報告 古典確 率解析 d B t -d A t +d Al ' d Bt -Wt d l Wt-a t +a i ' 量子確率解析 Hu d s o n -P a r t h a r a r a t h y -Me y e r理論 d At , d At ' , d d t d d t -a t d t 量子ホワイ トノイズ解析 ( 提案中) a i ) a t + この論文 では,ホワイ トノイズ起関数論 ( WNDT)を簡単 に紹介 した後, 量子確率過程が どのように して素過程である a ., a t 'で表現 されるかを説明す る・その後, 作用素の Wi c k積 を導入 し, 量子確率微分方程式の解の構成 に応用する.ホワイトノイズ超関数論 については, 最近出版 され た Ku o【 1 9 】は極めて丁寧 に書かれてお り,この方面への格好の入門書である・ また,この論文 ではホワイ トノイズ空間上の作用素論が基礎 になっているが,これ について は Ob a t a【 2 3 】を参照 されたい.量子ホワイ トノイズ解析 については, 本 はまだないが, Ob a t a l 2 7 日 2 8 日 2 9 】に多少 まとまった記述がある・関連す るもの として, Hu a n g【 1 3 】 , Hu a n g -L u o l 1 4 ] , Ob a t al 2 5 】 , 大矢-, ) 、 鴫 [ 3 1 ] なども参照 されたい・ここで展開す る理論 は物理では絶対零 度 の場合 に対応 し, 有限温度の場合 に拡張す ることは極めて興味深い問題 となる.この観点 か ら Hu d s o n -L i n d s a yl 1 5 】 や有光グループ による研究 【 2 日 3 4 】は重要な指針 を与 えるもので ある. 2 ホワイ トノイズ超関数論 2 . 1 Br o wn運動か らホワイ トノイズへ 水 中の花粉粒子のジグザグ運動は, 数学的には確率過程 として定式化 されている.確率変数の 1径数族 f Bt ) t ≧ 。で ( i ) ( B t )は Ga u s s 系, つ まり任意の有限 1 次結合 c I B i l +・-+ c n Bt nが Ga u sS 分布 に従 う; ( i i ) B 0-0 ,E ( B , )-0 ,E ( B s B t ) -mi n ( S , l l ; を満たす もの を B r o wn運動 または Wi e n e r 過程 と呼ぶ.ここでは, 無 限次元 Ga u s s 測度 を 用いて B r o vn運動 を構成す る. 他の方法 については, 【 1 1 日 1 7 】な どを参照 されたい.実 Hi l b e r t空間 H-L 2 ( I R , d i ) の実内積 とノルムを ( i , 7 ) -/ R E ( i ) 7 ( i ) d l , I 引。 -( i , i ) , E , 7 7 ∈H, によって定義す る.( ここで,ノルムの添字 Oは後で便利 なようにつけた・ )有限次元 E u c l i d 空間な らば, Bo c h n e rの定理 によって確率測度 と正定借関数が 1 対 1対応するが, 無限次元 空 間に対 して は Ge l f a n dt r i p l e tを用いなければならない 【 3 8 1 ・さて,無 限回微分可能 な急 減少関数の全 体 を E -S( A) ,その双対空間,つま り E 上の連続線形 ( 帆)関数4 の全体 を 4 E -S( A)の標準的な位相 は,ノルムの系列 = f J L ・ , A-S u p t e Rl t 3

物性研究•Oct 20, 1997•0 citations
注 目す る系のハ ミル トニアンが Hs-u a † a + 芸 g a t a † a a , で与 えられ る非線形減衰振動子 を考えよ う。α , α I は交換関係 [ α , α † 一 -1 , [ α , α ] -0 , ( 1) ( 2 ) を満 たすボゾン演算子である。減衰理論 にお けるn o n -c o n v e n t i o n a l t j : 取 り扱 い [ 3 日7 ] では,注 目 す る系内の非線形性がその緩和 に与える影響が考慮 され る。その結果系のダイナ ミクスは,注 目 す る系の密度行列p s ( i ) が正 しい終状態であるカノニカル平衡状態の密度行列 e-βHsに収束す るこ とを保証す る。一方,減衰理論 における c o n v e n t i o n a l な取 り扱 いでは,系の非線形性 が緩和に及 ぼす影響は無視 され,p s ( i ) は調和振動子のカ ノニカル平衡状態 e -P ua † a に収束す る。 このことか ら,系の非線形性が緩和に及ぼす影響 は,系の長時間の振 る舞いに重要 な役割 を果た しているこ とが分かる.Ha a k e 等 【 7 】 は減衰理論 にお けるn o n -c o n v e n t i o n a l な取 り扱いによ り,非線形減衰振 動子 に対す る量子マスター方程式を導出 した。 非平衡 Th e r moF i e l dDy n a mi c s( NE TF D) [ 8 日1 2 ] の枠組みにおいて,量子 L a n g e v i n方程式 と 量子確率 L i o u v i l l e 方程式 を含む量子確率微分方程式の系統的な正準演算子形式の体系が構成 され た 【 1 0 日2 3 ] 。この体系において,前述の非線形減衰振動子に対す る量子確率微分方程式が構成 され た [ 2 0 ] 。 Ac c a r d i 等 [ 2 4 日2 8 ] は,量子確率過程 に対 して微視的な基礎付 けを与えた。彼 らは,ボゾン場の 熱浴 と相互作用す る量子系を考察 し,熱浴 のボゾン場 によ り構成 され る集団的ボゾン場 ( c o l l e c t i v e b o s o n丘 e l d )とよばれ る場が,弱結合極限 ( v a nHo v e 極限) 【 2 9 1 で量子 Wi e n e r 過程 に収束す ること 「 第 5回 『 非平衡系の統計物理』シンポジウム」 を示 した。また,相互作用表示における波動関数の時間発展方程式が,無限小時間発展演算子に 量子 Wi e n Q r 過程の増分を含む量子確率微分方程式に収束す ることを示 した。 この論文では,このA c c a r d i 等の手続きをN E T F Dの枠組みで非線形減衰振動子に適用 し,系 の非線形性が緩和に及ぼす影響を考慮 した非線形減衰振動子に対す る量子確率微分方程式を微視 的なモデルか ら導出する。
クイーンズラン ド大物理 1 は じめに 量子系における微視的なハ ミル トニアンで記述 され るモデルか らL a n g e v i n方程式を導出 す る試みは,古 くか ら行われてきた.特に,射影演算子法によるL a n g e v i n方程式の導出 は,森 【 1 ] によ り始め られ,多 くの研究者によって調べ られてきた.柴 田 ・ 橋爪 [ 2 】 は,熱浴 と相互作用す るスピン系に対 して射影演算子法を適用す ること により,ス ピン緩和に対す る量子 L a n g e v i n方程式を導出 した・その際,注 目す 卑系甲演 算子に対す るHe i ' s e n b e r g方程式か ら出発 し,通常の解析関数 に対す る規則 に したがって 計算を進めている, したがって,導出された量子 L a n g e v i n方程式は,通常の計算規則 に したが うS t r a t o n o v i c h型の確率微分方程式であると理解すべきであろ う. 一方,散逸現象を正準形式の場の理論 として取 り扱 うNo n -E q u i l i b r i u m Th e r moF i e l d Dy n a mi c s ( NE TF D) 【 3 日7 Jの一貫 した体系か ら見 ると,柴 田 ・ 橋爪のL a n g e v i n方程式は I t o 型の確率微分方程式 と理解すべきとい う結論が得 られる.これは先ほどの結果 と矛盾 してお り,微視的に導出されたL a n g e v i n方程式に対 して,その計算則をきちん と定める 必要があるとい う問題が現れた.本論文では,ス ピン緩和 と減衰調和振動子の例 を用いて,射影演算子法によ り導出さ れた量子 L a n g e v i n方程式の確率過程 としての計算則がI t o 型である事を,保存量の微分を 計算す る事によ り具体的に示す [ 8 】 .次章では,NETF DにおけるL a n g e v i n方程式を導出 す る.NE TF Dの体系では,いくつかの公理か らL a n g e v i n方程式の形が決定する.第3 章 では,柴 田 ・ 橋爪の方法に沿って L a ng e v in方程式を導出す る.第 4章では,ス ピン緩和 に対する柴 田 ・ 橋爪のL a n g e v i n方程式に対 して,その計算則がI t o 型になっている事を, 保存量の微分を計算す る事によって示す.また,減衰調和振動子のモデルに対しても,柴 田 ・ 橋爪のL a n g e v i n方程式が I t o 型になっている事を示す・ -8 7 0-「 第 5回 『 非平衡系の統計物理』.シンポジウム」 2 NETFDにおけるL a n g e v i n方程式 柴田・ 橋爪のL a n g e v i n方程式 と比較 しうる,NE TF DにおけるL 弧g e V i n方程式を導出する・ 乱雑力 と相互作用する系を考える・NE TF Dでは,状態 l O f ( i ) ) は確率 L i o u v il l e 方程式, d l O f ( i ) ) --m f , t d tl O f ( i ) ) , に従って時間発展す る.( 1 ) 式の積は,I t o 型の積である.無限小時間発展演算子であるハ ッ ト・ ハ ミル トニアン T t f , t d t は, ( i 7 i f , t d t ) --i 7 1 J , 刺 を満たす.ここで,テイル ド共役-は,任意の演算子 A, Al , A 2 に対 して, ( AI A 2 ) --AI A 2 , ( c I A l +C 2 A2 ) --C ; A l +C ; A 2 , ( A) --A, ( A t ) --( A ) I , で定義 され る.ただ し, c l ,C 2 はc 数である.ハ ッ ト・ ハ ミル トニアン 7 t f , t d l は,注 目す る系に関 して確率の保存を表す式,) ( d F I Z d F 1 7 ) -( d F l f d F I Z ) -6 6 ( i -t ′ ) d t d t ′ , を持つ定常 Wi e n e r 過程 を仮定す る.Wi e n e r 過程の演算子は, ( I d F t '-( l d 育 , ( l d F t z-( I d F t z , を満たす.ハ ッ ト・ ハ ミル トニアン 7 i f , t d t に対 して, ・S 土 , s z , d F t j = , d F t z及びそのテ イル ダ共役 に関 して 2次まで・ .大局的位相変換S -S e i O , d F t -d F re i Oの下で不変.の要請 を仮す.但 し, S 土は S 土-s x士i s yで定義 され る. この要請 の下で得 られ るI t o 型のハ ッ ト・ ハ ミル トニアン 7 tf , t d t は, 7 1 f j d ths d t +i( h R +H D ) d t +d ht , ( 2 4 ) ( 2 5 ) ( 2 6 ) h s -u ( s z -S -X ) +△ 1 ( ( s Z ) 2 -( S -Z ) 2 ) +A2 ( S + S 一一S -+ S --) , ( 2 7 ) h R-芸 ( 7 0 1 -7 1 0 ) ( ( S +-S --) ( p s -+ " 5 ' ) +七 ・ C ・ ) , ( 2 8 )
o b a t a @ m a t h・ n a g o y a -u・ a c ・ J p l は じめに 揺 らぎを含む物理現象の時間発展は確率微分方程式で記述 され る. 確率積分が厳密 に定式 化 され, 確率微分方程式の基礎付 けがな されたのは 1 9 4 0年代のことであ り, 伊藤理論 として 広 く知 られているが,半世紀 を経た今 日では,よ り無限次元解析 としての色彩が強ま りなが ら様 々に発展 している.それらは, 包括的に 「 確率解析」 と呼ばれているが, そ こでは,ラン ダム性 を無限 自由度に言い換 え, 確率的な対象 を無限次元的な対象 に変換 して議論がな され る.この観点に立つことで, 超関数論な どの関数解析的手法が導入 され易 くな り, 理論が大き く発展す るのである.無限次元解析は,理論構成上の 自由度 も大きく, 何 を礎 とす るかによっ て様 々な流儀がある.なかでも Ma l l i aS c h wa r t zの超関数論によっ て, それまでは意味が暖味であった Di r a cのデル タ関数が正 当化 され, 計算ルールが厳密に 与えられたよ うに, ホワイ トノイズに厳密な定式化が与えられ, 文献に散見 され る 「 形式的」 計算 ( 通常の微積分 と同様な計算) が, ホワイ トノイズ解析の枠組みで理解 され るようになる・ 多 くの場合, 形式的計算 を結果的に正 しい と認めることになっても, ホワイ トノイズ解析が理 論 として意味を失 うものではない.' s c h wa r t z超関数論が, 結局は, デル タ関数な どの形式的 計算 を追認す ることになって も, S c h wa r t z超関数論が不要にはな らないの と同 じである, ホワイ トノイズ解析は,当初, 伊藤解析の拡張 としてスター トした 【 1 5 ]ため, 対象は 「 古 典」確率論の範境 を出るものではなかった.一方,量子確率解析 は, その創始 t 2 1 ]の頃か ら, 量子物理の問題意識か らであろ うが,ヒルベル ト空間論か ら離れず に発展 してきた とい う経 緯がある.その両者のアイデアを融合して,さらなる展開を 目指す試みは,ホ ワイ トノイズ 作用素論 [ 3 3 ]の一応の完成 とともに, 1 9 9 2 年 ころか ら開始 したが,目下の状況は発展の好機 を思わせ る.本誌上において も,ホワイ トノイズ解析の基礎理論 とともに,ホワイ トノイズ による量子確率積分, 量子確率過程のホワイ トノイズによる表示, 量子確率微分方程式 とホ ワイ トノイズ方程式の関連な どについて報告 してきた [ 3 5 ] ,岡 ,【 3 9 ] ・本論文では,高次の ホワイ トノイズ ( ホワイ トノイズの非線形関数)をノイズ項 として含む量子確率微分方程式 を, 「 正規積 ホ ワイ トノイズ微分方程式」 として定式化 し, 解の一意存在 を論 じる.その際, Co c h r a n -Ku o -S e n g u p t a[ 1 4 】による一般的な枠組みが有用である.実際,これまでに,空間を 拡張 して解の存在 を保証す るとい う形の定理 ( 超関数的な解の存在) については十分論 じてき た [ 4 0 ] , [ 4 1 日 4 3 日 4 4 ]ので, 本論文では, 解がいつ F o c k空間の ( 非有界) 作用素になるか ( 超 -「 第 6回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 の簡略形であ り,この積分は伊藤型量子確率積分を意味す る.さらに, 方程式 ( 2 .3 ) は, 指数ベ ク ト ル に関す る行列要素 ( これ を作用素 シンボル とい う) に対す る方程式に書 き直せ ば, 《 X擁 , 4 , 刀 ) ) -《 4 , i , 4 , り )+ / E t ( 《に等 しくなる・したがって, ( 2 .5 ) か ら作用素の部分だけを取 り出せ ば, X i -I + / -- とな り, さらに tで微分すれ ば, d Xl d t ( L l a : Xs a s +L 2 Xs a s +L 3 a s * Xs +L 4 Xs ) d s -L l a ; Xt at +L 2 Xt al +L3a ; Xl +L4Xl , X ( 2 .6 ) -I , ( 2 .7 ) となる・最後 に, 場 の理論で使 われ る正規積 ( Wi c k 積)を用いて書 き直す.Wi c k積 を ◇で表 せ ば, a s ◇at-a s a t , a s * ◇at-a s * a t , a s ◇a ;-a i * a s , a s * ◇a l * -a ; a i * ・ また, 一般 の作用素 X に対 しては, ( a ; 1 ・ ・ ・ a s * l a t l-・ a t m )◇ X-a ; 1 -・ a s * , Xa t l・ -ai m なる性質 を持つ.したがって, ( 2 .7 ) は Wi c k積 に関す る線形方程式 ( L l a l * at+ L 2 a t +L 3 a l * +L4)◇Xl , X-I, ( 2 .8 ) に帰着 され る・こ うして, 量子確率微分方程式 ( 2 . 1 ) は, 単純な線形方程式 ( 2 .8 )と同値 となる.
「 第9回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 • • Ra p i d l yd e c a y l n gS p l nS y s t e m b a s e do nt h es t o c h a s t i cl i mi ta p p r o a c h 早稲 田大学 理工学研究科 木村 元, * 1湯浅 一哉* 2 ローマ第二 ヴ オルテラ研 究所 今福 健太郎* 3 散逸現象 な どの不可逆過程 を, 時間反転対称性 をもつ量子論 に基いて記述で きるか否か とい う問題 は, 非平衡統計力学の基礎 のほか量子論 における観測問題 とも係 わ り興味深 く重要なテーマである.この問題 に対す る標準的 なアプローチ としては, 対象系 と相互作用す る環境系 を考慮 に入れる方法 があ る.つ ま り,仝体系一一 " 対 象系" +" 環境系" -を閉 じた系 として量子論 を展 開 し, 改 めて対象系 の ダイナ ミクス ( R e d u c e dD y n a mi c s ) を抽 出す る.この とき環境系の 自由度が無限大であ ることを想 定する と, 対象系の不可逆 な振舞 いが導かれ るのである 川. 量子光学では, 例 えば電磁場 の環境下 にある原子の振舞 いに興味がある.そこで扱 う仝体系ハ ミル トニア ンは Ht .t-Hs+ A V+HB (1) である.ただ し, Hs , HB はそれぞれ原子系, 電磁場のハ ミル トニア ンであ り, 両者 間の相互作用 入 V は電磁相互作用 であるため了トさい結合定数 ( 入≪ 1 ) が想定 される.一方で, 全体系ハ ミル トニア ン が式 ( 1 )とは異 なるスケー リングを持つ Ht .t-' 2 Hs+ A V+HB ( 2 ) とい う系 も興味深 い.ただ し,入 2 Hs , J I B, 入 V はそれぞれ対象系,環境系, 相互作用のハ ミル トニア ンであ り, 入≪ 1 .この系で は,弱相互作用系 である式 ( 1 )のハ ミル トニ ア ンか ら導 かれ る遅 い緩和 に比べ て " 速い緩和 ( R a p i dDe c a y ) "が導かれ ることになる.本稿で着目す るのは この スケー リング の系である.具体的 にス ピン ・ボ ソン系 [ 2 ] を例 にと り,ハ ミル トニ ア ン ( 2 ) の系 に見 られ る興味深 い構造 を紹介 しよう.式 ( 1 ) の系か ら散逸過程 を導 く有力 な手法 としては v a nH o v e 極 限 ( A-0 , T-入 2 t ' 固定)[ 3 ] が 有名である.弱結合極限と時 間の スケール変換 とを同時 に行 な うことで, 指数関数的散逸 を導 くこと がで きる.また,この方法 に基礎 を置 く確率極 限 ( S t o c h a S t i cL i mi t )[ 4 1とい う強力 な手法があるが, 最近我 々は,ハ ミル トニ ア ン ( 2 ) の系 に対す る確率極 限の枠組み を新 たに構築 した 【 5 ト 本稿では,
m Th e r moF i e l dDy n a m i c s( NE TF D)[ 1 ] -[ 4 】と名付け られ た,非平衡量子系 を扱 う正準理論を紹介する。 これは,散逸量子系 を扱 う一貫 した ( 非平 衡系統計力学でのすべての基本的概念,すなわち,B o l t z ma nn方程式,F o k k e r -P l a n c k方 程式,L a n g e v i n方程式,確率 L i o u v i l l e方程式'で代表 される見方 を,一つの土俵で議論 で きるとい う意味で) , しかも,量子力学や場の量子論で学んだ,自然認識の基本である 演算子代数 と表現空間 とい う二重構造を供えた理論体系である。 NE TF Dの表現空間 ( 熱空間,t h e r ma l s p a c e ,と名付け られた)は,2つの Hi l b e r t 空 間の直積で構成 されている.1つばn o n -t i l d e場,もう 1つは t i l d e場の H i l b e r t 空間で ある.NE TF Dでは,いかなる演算子 A にもその髄伴演算子 ( t i l d e演算子)A が伴 って いる。t i l d e共役,-,は, ( AI A2 ) --AI A2 , ( c I Al + C 2 A2 ) --C ; il + C ; 12 , ( i) --A, ( AI ) --〟 , p h H 一 G i - ー n u p n u 1 2 3 4 l H I U ■ H t L Hi ヨ l H は ■ 川 U で定義 される。ただ し, c l や C 2 は, c数である.S c h r 6 d i n g e r表現では,t i l d e演算子 と n o 凪 -t i l d e 演算子は,互いに可換である : l A, B ] -0 .( b 5 ) 散逸は,直積 H i l b e r t 空間全体での回転,すなわち,t i l d e 演算子 とn o n -t i l d e 演算子 を 交ぜ るような回転 として捕 らえられることが明 らかになった。無限小時間発展演算子の中 の t i l d eとn o n -t i l d e 場が掛っている項が,散逸 ( すなわち,非可逆)現象 を司っているの である。この点は,NE TF Dが建設 されて初めて認識 された 【 1 , 2 】 。 I ' 古典系での確率 L i o u v i l l e 方程式 は,久保 【 5 , 6 】 により初めて導入 された。 I この認識 は, G i b b Sアンサ ンブルを定式化 した熱平衡系 の T F Dl 7 】にはなか った。そこには,散逸は 現れない。この点が, N B T F DとT F Dとの本質的な違いのひとつである。Z u b a r e v が, N E T F Dの方法を 賞賛 し,非平衡量子現象の研究 に用 い始めたことに,ここで言及 させていただきたい 【 8 】 .-3 1 1 研究会報告 B o l t z ma n nは,微視的で可逆 な Ne wt o n力学か ら出発 して, 自然界 の非可逆性 を導出 しようとした.しか し,B o l t z ma n n方程式 を導 く際 に,分子混沌 と呼 ばれる確率操作 を, 知 らず に導入 していたことが判明 したのである ( その辺のか ら くりの簡単 な解説は,【 9 ] を 参照のこと) 。我 々の新 しい方法が見通 しの良い ものである とい う技術的 な面 ばか りでな く,散逸量子場の理論 としてのその二重構造が,B o l t z ma nnの初め措 いた夢 を,何等かの 意味 で実現 させ るのではないか, とい う期待 が湧いて くる.B o l t z ma n nの時代 には, こ の二重構造 は認識 されていなか ったのである。 詳 しい NE TF D の解説 と参考 文献 は 【 4 ]を参照 して頂 くと して,s e m i -f re e時間発展 演算子 ( 量子 F o k k e r -P l a n c k方程式 と,定常的量子 Wi e n e r 過程 に従 う量子確率 L i o u v i l l e 方程式,それぞれに関する もの)が,い くつかの基本的要請の元 に,如何 に して創 られる かを示す.S e mi -f r e e時間発展演算子は,双線形で大域的ゲージ不変性 を満 たす ものであ る。以下,散逸量子系 の正準理論が,前者の時間発展演算子 によって如何 に創 られるかを 紹介 し,量子系確率微分方程式の一貫 した体系が,如何 に して建設 されるか を示す ( 図 2 参照 ) 。そ うす ると,量子散逸系の方程式 に纏 わる次の ような基本的 な疑問が,解決 され ることが見 えて くる ( 量子系 L a n g e v i n方程式 に対す る問題提起 に関 しては,【 1 0 】も参照 の こと) 0 ql .量子散逸系 を扱 う正準理論 ( つ まり,時間発展が正準変換 で誘起 される)は,建 設可能 だろ うか ?考 え もな しに a ( i ) -a e ( i w+A ) i , a I ( i ) -a † e ( t ' U-A ) i ,の ようにエネルギー ・ スペ ク トルに虚数部 を導入するだけでは,同時刻交換関係 は, け っ して保存 されない : l a ( i ) , a I ( i ) ] -l a , a † 一 e 加 t ( 7 ) Q2 ・ 揺動力演算子 は KMS条件 [ 1 1 , 1 2 】を満 たせ ないので,量子系 では白色過程 は許 されない と言われている。 た とえば,L a n g e v i n方程式 孟 a ( i ) -i d a ( i ) 一項 ・佃 ( 8 ) 孟 a ' ( i ) -i wa t ( i ) -n at ( i ) II-T ( i ) , ( 9 ) を考 えてみ よう。ただ し,f C は,摩擦係数である.また,a( i )ta t ( i ) は,それぞれ Hi l b e r t 空間の消滅,生成確率演算子で,i -0に正準交換関係 を満たす もの とする :( 【 a ( i ) , a I ( i ) ] ) -1 .( 1 5 )S c h r 6 d i n g e r 表現でなされるべ きである。それでは,La n g e v i n方程式に現 れる揺動 力の相関 と して,はた して,S c h r 6 d i n g e r表現 と同 じもの を採用 して長いのであろ うか ?q4 .如何 に して,確率過程の表現空間 を建設 した ら良いのであろ うか ?時間発展演算子の一般形 は,本質的 に L i o u v i l l e方程式 孟 p ( i ) --i L p ( i ) , に関る次の性質か ら導 きだ された。 Dl .L i o u v me演算子のエル ミー ト性 : L f =L.
ホワイ トノイズによる量子確率解析 名古屋大学理学部数学教室 尾 畑 伸 明 序 よ く知 られているよ うに,ガウス型定常過程 f x ( i ) )で, 平均 と共分散 関数がそれぞれ E( I ( i ) ) -0 , E( I ( a ) I ( i ) ) -6 ( a -i ) , ( 1) で与 え られる もの を ( ガウス型)ホワイ トノイズ と呼ぶ.そのスペ ク トル測度 ( 共分散関数 の逆 フー リエ変換)は全域 でフラットなルペ ック測度 であるか ら, 確 かにホワイ トである・ また,ホワイ トノイズはブ ラウン運動 i B( i ) )の時間微分: 孟B( i ) -I ( 0 ( 2 ) として得 られることも周知であろ う.( もちろん, ブ ラウン運動の軌跡 は時 間微分可能では な く, 有界変動 で さえないが !)ホワイ トノイズは, 数学的には, 超 関数論 を応用 して確率 超過程 として実現 される.一方で, ( 2 )より時間パ ラメー ターを陽 に含 む ( I ( i ) )は時 間発 展 が直感的 に捉 えやす く, ( 1 )より t x ( i ) )はあたか も連続無限個 の直交座標系 であるが ご とく見 える.いわゆる 「 ホワイ トノイズ解析」は,この視点 に立 って s me a rしない t x ( i ) ) を じかに扱 える無 限次元解析 を目指 した ものであ り, 飛 田武華氏が 1 9 7 5年 の レクチ ャー ノー ト 【 1 0 1を皮切 りとして提唱 されて きた ( なお; 【 1 1 】も参照) .その理論の枠組 は, 一言 でい って,ガウス空 間上のシュワルツ型超 関数論 である.ここ数年来,この理論 の基礎 づ けが完成 し, ( 古典的) 確率解析 ・ デ イリク レ形式 ・ファインマ ン積分 な どへの応用 【 1 3 ] に 加 え,ガウス空間上の作用素論 としての観点か らも発展 しつつある.この論文では, 拙著 【 2 4 】に従 って, ホワイ トノイズ解析 の基礎 的事項, 特 に,ガウス空間 上の作用素論 を紹介 し, その ( 将来的) 応用 として量子確率論 ( 【 1 日2 1 , 【 3 】 , 【 8 日2 2 1 , 【 2 6 1 )へ のアプ ローチ を図 ることにある.手始めにすることは, 量子確率過程論 の基礎概念 を我 々 の立場 か ら再考す ることであ り, 本稿 の 目的で もあるが,まだ端初 についたばか りである.従来, 量子確率論 においては古典確率解析 のアイデ ア と相 まって,ヒルベル ト空間上 の有 界作用素のなす作用素環の理論 が主要な道具 となっている.
l は じめ に 決定論 的 な物理系が通常の微分方程式で記述 されるのに対 して,ランダムな揺 らぎを含む 物理系 には確 率微分方程式が用いられる.確率微分方程式論が数学 の一分野 として登場 した のは比較的新 しく 1 9 4 0年代 のことであ り, 伊藤清の業績 にちなんで 「 伊藤解析」 とも呼ば れている.伊藤解析は 1 9 7 0年代には無限変数の超関数のアイデア と融合 し, 現在では 「 確率 解析」 として無限次元解析 の理論的興味か ら諸科学に現れるラ ンダム現象の解析 といった応 用面 にわた り, 広 く研究 され大いに発展 して きている.その中にあって,量子系への応用 とい う点はやや遅 れて, 1 9 8 0年頃か ら伊藤解析の量子版 としての量子確率微分方程式の数学的基 礎づけが研 究 され今 日に至 っている.古典論の場合を振 り返れば, 量子確率微分方程式 を超 関数論的に取 り扱 うこ との実効性が予想 される.この論文では, 数年前か ら著者が展 開 して いるホワイ トノイズ超 関数論 によるアプ ローチを紹介するとともに, 特 に, 量子確率微分方 程式の解の存在 と構成 について論ず る. まず, 簡単 な L a n g e v i n方程式の例 を通 してホワイ トノイズ超 関数論の基本的なア イデア を説明 しよう.速度V-V ( i )の粒子 ( 質量 は 1とする) が粘性抵抗 ( 抵抗係数 k>0 ) のある 媒質の中を外 力 f-I ( i )を受けなが ら運動する系 は Ne w t o n方程式 霊 ニーk v ・J , v l t = 。 -v o , ( 1 ・ 1 ) で記述 される.ここで, 外力 は位置には無関係だが, 時間 とともに変化 して も良い としている.今, i -I ( t )が ( 例 えば) 連続関数であれば, ( 1 . 1 ) は容易 に解けて, V ( i )e 一 如 vo + e -ki l t e kS f ( S ) ds ( 1 ・ 2 ) となる. で は,外力 に揺 らぎのある場合 は どうなるだろうか.この場合 は,各時刻 tで発 生す る外力 f ( i )はある確率分布に従 う確率変数 と考 えられる・( 一般 に, 時間パ ラメー タ付 きの確率変数 は確率過程 と呼ばれる・ ) はっきりさせ るために,確率空 間 ( a, P ) を導入 し, I: R十 × a-I ( i , W )∈R と表示 しよう・たとえ Fが確率過程であって も, 各サ ンプル U∈D に対 して I -I ( 壬 , W )が連続関数であれば, ( 1 .2 ) は定義 され, 解 V ( i ) -V ( t , W)は確率過程 と して得 られ る.確率変数 の基本的な特性量 は平均 と分散である.簡単のため,外力の平均値 -研究会報告 E( I ( i ) )-0を仮定 しよう.このとき, 確率過程 V ( i )の平均 と分散 は, ( 1 .2 ) か ら容易 に求め られ, E ( V ( i ) )e -k t v o ・e -k t lt e h .E( I ( S ) ) d s -e -k t v o ( 1 ・ 3 ) V( V ( i ) ) 千e -2 h〃 e k ' r ' 3 ' E( I ( r ) I ( S ) ) d r d s ( 1 ・ 4 ) となる・分散が ラ ンダムカ f ( i )の時間相関関数 E( I ( r ) I ( S ) )で与 え られることに注意 して お く.時間相 関関数が E ( i ( r ) I ( S ) ) -6 ( r -S )( 1 .5 )o Ie 一 如/ .I e h B d B. のような 「 伊藤型確率積分」で与えられるのである.1 9 7 0年代 になると, 確率微分方程式 に 対す る超関数的アプ ローチが現れて きた.超関数論 によってデ ルタ関数が正当化 され, 微分 方程式論 に大 きな変革が現れたが, 同 じようなことは確率解析 にも期待で きる.Ma l l i a v in解 析 【 2 2 1 や飛 田解析がその代表的なものである・特 に, 飛田解析 は 「 ホワイ トノイズ解析」 と も呼ばれ, 一旦 は d B tとして姿 を消 して しまったホワイトノイズ をあか らさまに数学的対象 「 第 4回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 として捉 える理論である1.これについては,次節以降で詳述するが Ga u s s空間上の超関数空 間 ( E ) 'を導入す ることによって, ホワイトノイズ w t を ( E ) +内の C∞一 級 f l o w として取 り 扱 うことがで きる.そ うす ると, ( 1 .7 ) は再び d v ---k v+ Wt d i と書かれる・形 は もとの ( 1 . 1 )と同一であるが, 解 V-V ( i ) は ( E ) •の中で求めることになる.考 える空間は ( E ) ' の ように無限次元空間になって しまったが, 方程式その ものに特異性は な く, 普通の微積分の規則で解 を求めることがで き, V ( i ) -ek t v o ・e -kl / .ie k s w Sd s となる・これ は, 考 えている空間は違 うのであるが, ( 1 ・ 2 )と形は全 く同 じである.ここで述べて きた ものは簡単 な一例であるが, ホワイ トノイズ解析 によって従来 の形式的計算 に数学的 裏付け を与 え, 揺 らぎの本質 を直に捉 えることがで きるようになった.一方で,1 9 6 0年頃か ら散逸量子系の解析 において量子 L a n g e 血 方程式が議論 されて き た ( L a x[ 2 0 】 , S e n i t z k yl 3 6 】な ど・なお Ac c a r d il 1 】も参照) .それを量子伊藤理論 を定式化 し てユニタリ拡張の問題 として捉 えたのが Hu d s o n -P a r t h a s a r a t h yl 1 6 】であ り, その理論 の後, 若干の超 関数 のアイデア も取 り入れなが ら大いに発展 して今 日に至 っている.最近出版され た教科書 Me y e rl 2 1 1 , P a r t h a s a r a t h yl 3 2 ]はこの方面の必携書 となっている.まず,B r o wn遠 動 を定義す る確率空間 と L 2( A ) 上の B o s o nF o c k空間 ( R が B r o w n 運動 の時間パ ラメータ を与 える)が 同型 になる ( Wi e n e r Jt 6 -S e g a l 同型) .すると Bt をその B o s o nF o c k空間上の かけ算作用素 とみなす ことがで き, Bt -At + A t e の ように,さらに 「 素」な 2つの量子確率過程 に分解す ることがわか る.At , A言はそれぞれ 消滅過程, 生成過程 と呼ばれている.Hu d s o n -P a r t h a s a r a t h y -Me y e r理論 は, それ らの無限小 増分 d At , d AI , 及びゲージ過程の無限小増分 d Atに基づ く伊藤解析 の量子版 とで も言 うべ き ものである.生成・ 消滅過程 によって, 第 3の量子確率過程 tを表す ことは, 彼 らの量子確 率積分で許 される被積分関数の範囲ではで きないが, 応用上極めて重要であるので独立 につ け加 えられている.この ような流れを眺めれば, ホワイトノイズ解析の量子版 を建設 し, 応用面 を探 るのは興 味のあることと言 えよう.このアプローチの一つの特徴 は, デルタ関数 を掌中にす る超関数 論 を基礎 に しているので,「 素」となるべ き量子 ノイズは a , , a t 'の 2つで十分であるとい う ことである・実際, " すべて" の量子確率過程 を a tと a t 'に関する " 量子確率積分" で表現する ことがで きる2.また,このことは, すべての作用素が生成 ・ 消滅作用素で表現で きる とい う 場の理論 における直感 にもあっている3.こうして,我々の立場 を図示 すれば次の ようになる. 1 飛 田 【 1 2 】に興味深い解説記事がある.2ここで … をつけたのは, 数学 として表現するのだか らむろん一定の枠 をはめた り, 概念 を一般化 した りし た上で,との意味.詳しくは本文 § 4を参照されたい.3このこ とを証明す るためには," すべての作用素"に対 して枠 をはめなければな らない.有界作用素に対 し ては B e r e z i n【 3 1 , G e l f a ndt r i p l e tに付随 したものは O b a t a【 2 3 1で証明された・なお, § 3も参照せ よ・ 研究会報告 古典確 率解析 d B t -d A t +d Al ' d Bt -Wt d l Wt-a t +a i ' 量子確率解析 Hu d s o n -P a r t h a r a r a t h y -Me y e r理論 d At , d At ' , d d t d d t -a t d t 量子ホワイ トノイズ解析 ( 提案中) a i ) a t + この論文 では,ホワイ トノイズ起関数論 ( WNDT)を簡単 に紹介 した後, 量子確率過程が どのように して素過程である a ., a t 'で表現 されるかを説明す る・その後, 作用素の Wi c k積 を導入 し, 量子確率微分方程式の解の構成 に応用する.ホワイトノイズ超関数論 については, 最近出版 され た Ku o【 1 9 】は極めて丁寧 に書かれてお り,この方面への格好の入門書である・ また,この論文 ではホワイ トノイズ空間上の作用素論が基礎 になっているが,これ について は Ob a t a【 2 3 】を参照 されたい.量子ホワイ トノイズ解析 については, 本 はまだないが, Ob a t a l 2 7 日 2 8 日 2 9 】に多少 まとまった記述がある・関連す るもの として, Hu a n g【 1 3 】 , Hu a n g -L u o l 1 4 ] , Ob a t al 2 5 】 , 大矢-, ) 、 鴫 [ 3 1 ] なども参照 されたい・ここで展開す る理論 は物理では絶対零 度 の場合 に対応 し, 有限温度の場合 に拡張す ることは極めて興味深い問題 となる.この観点 か ら Hu d s o n -L i n d s a yl 1 5 】 や有光グループ による研究 【 2 日 3 4 】は重要な指針 を与 えるもので ある. 2 ホワイ トノイズ超関数論 2 . 1 Br o wn運動か らホワイ トノイズへ 水 中の花粉粒子のジグザグ運動は, 数学的には確率過程 として定式化 されている.確率変数の 1径数族 f Bt ) t ≧ 。で ( i ) ( B t )は Ga u s s 系, つ まり任意の有限 1 次結合 c I B i l +・-+ c n Bt nが Ga u sS 分布 に従 う; ( i i ) B 0-0 ,E ( B , )-0 ,E ( B s B t ) -mi n ( S , l l ; を満たす もの を B r o wn運動 または Wi e n e r 過程 と呼ぶ.ここでは, 無 限次元 Ga u s s 測度 を 用いて B r o vn運動 を構成す る. 他の方法 については, 【 1 1 日 1 7 】な どを参照 されたい.実 Hi l b e r t空間 H-L 2 ( I R , d i ) の実内積 とノルムを ( i , 7 ) -/ R E ( i ) 7 ( i ) d l , I 引。 -( i , i ) , E , 7 7 ∈H, によって定義す る.( ここで,ノルムの添字 Oは後で便利 なようにつけた・ )有限次元 E u c l i d 空間な らば, Bo c h n e rの定理 によって確率測度 と正定借関数が 1 対 1対応するが, 無限次元 空 間に対 して は Ge l f a n dt r i p l e tを用いなければならない 【 3 8 1 ・さて,無 限回微分可能 な急 減少関数の全 体 を E -S( A) ,その双対空間,つま り E 上の連続線形 ( 帆)関数4 の全体 を 4 E -S( A)の標準的な位相 は,ノルムの系列 = f J L ・ , A-S u p t e Rl t 3