「 第4 4 回 物性若手夏の学校」 ( 1 9 9 9 年度 ) 量子 ゆ らぎが大 きな系での量子ダ イナ ミックス と緩和現象 東大・ 工・ 物工 宮下精二 最近 、興味 を持たれているナ ノスケール系での動的現象 を紹介 し、それ らを解析する 量子力学 、統計力学的方法 をいろいろ調べ 、それぞれの特徴 を議論する。また、量子ゆ ら ぎが大 きな系での外場-の応答の新 しい特徴 を考察する。 それぞれの解析 における数値計 算の具体的手法 について も触 れる。 1 I m t r o d u c t i o n 具体的な講義 は以下 に述べ る ような内容 を考 えてい る。( 1 ) 非平衡統計力 学の基礎 ,つ ま り線形応答理論や確率過程 について触 れ,量子 ダイナ ミッ クスが重要な役割 をす る現象 に関する統計力学的手法 をの紹介 を行 う。( 2 ) 量子効果がその緩和現象 に顕著 な役割 をす るナ ノスケール分子磁性の実験 の紹介 をす る。( 3 ) 量子ダイナ ミクスの大 きな特徴である非断熱遷移 によっ て生 じる典型的な現象 とその機構の説明 し,上のナ ノスケール分子磁性 に おける現象の説明 を試みる。 ( 4 ) 周期的変動 をす る外場 の もとでの興味深 い現象 として,系の固有振動や外場の高調波 な どではない非 自明な周期 を 持つ振動現象がある。 それをいわゆるF l o q u e t 演算子の固有状態の として 解析 も紹介す る。 2 非平衡統計力学 オンサーガーの相反定理,揺動散逸定理 な ど線形応答理論の一般論 と久保 公式や森公式の導出。その応用 として,最近我 々が行 っている電子 ス ピン 共鳴 ( E S R ) の直接数値解析の方法 【 1 】 を紹介す る。 また,確率過程 につい てはマルコフ過程 の一般論 とWi e n e r 過程 ( wh i t e -g a u s s i a nn o i s e )によるラ ンジェバ ン方程式, さらにそれ とのフォツカープ ランク方程式の関係等 と の説明 をす る。 熟浴 と接 している量子系の運動 を記述する方法 として量子マスター方程 式 ( 資料参照)と量子 ランジェヴァン方程式 ( 文献 [ 3 】 参照)の方法 を紹介す る。 ここでは mi c r oc a v i t yの中で原子系 と相互作用する光子系の非古典状 態の解析 [ 2
近年,多体摂動論に基づく連続時間量子モンテカルロ法のアルゴリズムが提出され,強相関電子系の動的平均場近似における有力な不純物(クラスター)ソルバーとして広く用いられるようになってきた.本稿では,不純物Anderson模型を主な題材として,相互作用および混成(運動エネルギー)項に関する展開アルゴリズムを解説する.また,実際にプログラムを作成する際の注意点や計算効率について述べる.電子-格子相互作用系への適用など,最近の発展についても簡単に紹介する.
この稿では,スペクトル散乱理論の視点に立って,量子ウォークにおける弱収束定理 の概説を試みる.量子ウォークには,大きく分けて,連続時間のものと離散時間のものの2種類がある.連続時間の場合は,グラフ上のラプラシアンをハミルトニアンにもつ量子力学系に他ならず,離散シュレディンガー作用素の研究の射程に入る [6].離散時間の場 合は,時間発展がハミルトニアンから定まらないので,それ特有の扱いが必要になる.この稿では,離散時間量子ウォークに焦点を絞り,単にそれを量子ウォークという.量子ウオークの起源については諸説あるが,古くは1960年代のFeynmanとHibbsに よる経路積分の教科書 [10] にその原型がみらる.80年代には,Gudderの著書 [15] の中 で,Dirac 方程式の離散版として登場する.その後,2000年に前後して,量子アルゴリズムへの応用 [14, 1, 32] の道が開かれると,量子ウォークの研究はいよいよ盛んになる.2002年,今野 [20] が量子ウォークに対する弱収束定理をはじめて証明すると,多くの数 学者が研究に加わるようになる.量子ウォークの理論やアルゴリズムへの応用に関する比較的最近までの結果については,[22, 27, 33] などが参考になる.量子ウォークが実験室レベルで実現できていることは,特筆すべき点である.しかも,さまざまな実現方法があ り,それらをまとめたものが,既に成書として出版されている [24].以下,本稿のテーマである弱収束定理を少し詳しくみていこう.量子ウォーカーの時間発展は,状態のヒルベルト空間 \ma t hc a l { H} 上のユニタリ作用素 U を用いて表される.量子ウォー2017年 86-108 でいえば \ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } \ ma t h r m{ E} ( e {i $ \ x i $ X_ { \ ma t h r m{ t } } / t } ) = \ ma t h r m{ E} ( e {i $ \ x i $ V} ) , $ \ x i $ \ i n \ ma t h b b { R} となる.これが,ランダムウォークにおけるdeMoivre-Laplace の定理,または中心極限 定理の量子版とみなせることを2節で説明する.今野が最初に示した弱収束定理 [20, 21] では,空間一様なコインをもつ1次元量子ウオー クを考え,量子ウォーカーは初期時刻で原点にのみ存在すると仮定された.証明は,組合せ論的手法を用いて行われた.この場合は,状態のヒルベルト空間は\mat hcal { H} =\el l ^{ 2} ( \mat hbb{ Z} ; \mat hbb{ C} ^{ 2} ) で与 えられ,時間発展のユニタリ作用素は U=SC と表せる.ここで,S はシフト作用素, C はコイン作用素と呼ばれるユニタリ作用素であ る.一般に , コイン作用素は,ユニタリ行列値の関数 \mathbb{Z}\ni x\mapsto C(x)\in U(2) による掛け 算作用素である.\ri ght arrowt)/t} の t\rightarrow\infty の極限で得られる ユニタリ群の生成子 \hat { v} の分布を,フーリエ表示で求めた.\hat { v} は速度作用素とか漸近速度作 用素と呼ばれる.このとき,X_{t}/t の弱極限分布は,漸近速度 \hat { v} のスペクトル測度をもち いて, \Ver t E_{ \hat { v} } ( \cdot ) $\Psi $_{ 0} \Ver t ^{ 2} と表せる.彼らが用いた手法は,GJS法と呼ばれ,今野の定理の証明 の簡略化に貢献した.また,今野の定理[20, 21] における初期状態に関する制限も除か れた.GJS 法については,本稿でも重要な地位を占めるので,3節でやや詳しく触れる.GJS 法の肝は,時間スケールされた位置作用素 \hat{x}(t)/t は, t\rightarrow\infty のとき,フーリエ変 換によって,漸近速度のに対角化される ということである.コインが空間に依存する場合は,並進対称性が失われるので,GJS 法はうまく機能しな い.原点でのみでコインが異なる one defectモデルや,原点を境に右と左でコインが異 なる2相系の量子ウォークでは,母関数法を用いた弱収束定理の証明法が開発されている [23, 7, 8].より一般の空間依存があるコインに対しては,スペクトル散乱理論の考え方 が有効である [31].そのために,あるユニタリ行列 C_{\infty}\in U(2) が存在して \di spl ayst yl e \l i m_{ x\r i ght ar r ow\i nf t y} C( x) =C_{ \i nf t y} , x\i n \mat hbb{ Z} (1.2) となる場合を考える.先に紹介したone defectモデルや,有限の点でのみコインが異な る量子ウォークは,当然この範躊に入る.量子ウオークにおけるスペクトル・散乱理論の有効性を概説するのが,本稿の主目的である.射影で, $\Pi $_ { \ma t hr m{ a } \ma t hr m{ c } } ( U) は, U の絶対連続部分空間 \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) への射影である.量子ウオークの弱収束定理がその古典版である中心極限定理と違うのは,線形的広がり と局在化といわれるの2つの性質が表れる点にある.弱収束定理により, X_{t}/t が V に法 則収束することがいえると, t\rightarrow\infty で,形式的に X_{t}\sim tV と表せる.このことを,線形的広がりという.定義によって,V の分布は, t\rightarrow\infty にお ける量子ウォーカーの速度分布と考えるのが自然である.従って,量子ウォークの弱収束 定理は,量子ウォークの時間漸近的な速度分布の存在定理といえる.一方,局在化とは,V の分布が原点に台をもつ Dirac 測度をもつことをいう.すなわち,P(V=0)>0 である.つまり, t\rightarrow\infty では,速度ゼロになる確率 P(V=0) は,ゼロでない 線形的広がりには,絶対連続部分 e^{ i $\xi $\hat { x} ( t ) /t } $\Pi $_{ \mat hr m{ a} \mat hr m{ c} } ( U) が寄与する.条件(1.3) の下では,加 藤Rosenblum の定理 [28, Theorem XI.8] の離散版 [18, 19, 31] を考えると,ユニタリ作 用素 U=SC と U_{\infty}=SC_{\infty} に対する波動作用素s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } U{-t } U_ { \ i n f t y } {t } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U_ { \ i n f t y } ) , s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w \ i n f t y } U _ { \ i n f t y } {-t } U {t } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U ) (1.4) が存在する.波動作用素に対する一般論によって,(1.4) の最初の極限を W_{+} とおくと, 2番目の極限は W_{+}^{* } に等しい.また,W_{+} は \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U_ { \ i nf t y } ) から \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) へのユニタリ作用素 になる.以上のことから, t\rightarrow\infty のとき,s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } e {i $ \ x i $ \ h a t { x } ( t ) / t } = $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ p } } ( U) + e {i $ \ x i $ \ h a t { v } } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) .$\xi $\i n \mat hbb{ R} が成り立つ.これを用いると, X_{t}/t の弱極限分布が得られる.$ \ d e l t a $ _ { 0 } は原点における Dirac 測度とし, E_{ \hat { v} } を \hat { v} のスペクトル測度とする.Corollary I.2.X_{t}/t の分布は, t\rightarrow\infty のとき,確率分布
μ=\Ver t \mat hr m{ I } \mat hr m{ I } _ { \mat hr m{ p} } ( U) $\Ps i $_ { 0} \Ver t {2} $\del t a$_ { 0} +\Ver t E_ { \hat { v} } ( \cdot ) $\Pi $_ { \mat hr m{ a} \mat hr m{ c} } ( U) $\Ps i $_ { 0} \Ver t {2} (1.5) に弱収束する. 4節では,仮定 (1.3) の下で,量子ウォークのスペクトル・散乱理論を説明し,Theorem1.1を証明する.また,Theorem1.1の系として,弱収束定理も証明する.5節では,分布のより具体的な形を計算する.Corollary 1.2により, X_{t}/t は(1.5) を 分布にもつ確率変数 V に法則収束するので P(V=0)=\Vert$\Pi
p(U)\Psi$_{0}\Vert^{2} (1.6)
量子ホワイ トノイズの数学的基礎 名古屋大学大学院 多元数理科学研究科 尾 畑 伸 明 はじめに 圭子系の " 雑音" は, 量子光学や散逸量子系の研究 など理論物理か ら応用工学 にわたる分 野で盛 んに研究 されて きた ( 例 えば 【 2 日 5 日 2 1 1やそこに引用 されている文献) .一方で,この 1 0年来, Ac c a r d i達の一連の報告集 【 1 1 , Hu d s o n -P a r t h a S a r a t h yによる量子確率微分 方程式の基礎づけ 【 1 1 】 ,Me y e rl 1 2 1や P a r t h a s a r a t h yl 2 0 1による量子確率過程の教科書, Oh y a ・ -P e t zの量子エ ン トロピー理論 【 1 9 】などを通 して数学者の関心 も高 まって きている・ なかで も F o c k空間上の量子確率過程は, 減衰過程のノイズ項のモデルなどに現れ, 数学的 にも興味深い研究対象 となっている.量子確率論の起源は, 量子力学における波動関数の確 率解釈や位置 と運動量の不確定性 などにある.したがって,数学的定式化 として Hi l b e r t空 間上の作用素環論が広 く用い られ, 実際,それは強力 な手段 を提供 している.ただし, 物理 的に興味のある作用素はしば しば非有界作用素 となるので, 情況 に応 じて理希 を工夫す る 必要がある.その意味で,確率解析 といわれている " 無限変数" の超関数論のアイデ アを導 入す ることは一つの研究方向ではなかろうか.この論文では, ホワイ トノイズ解析 ( 飛田解析)と呼ばれている確率解析の方法 を量子確 率過程の研究に導入 し, 理論 を再構成す るとい う最近の試みの一端 を紹介す る.ホワイトノ イズ解析は, その著 しい特徴 ( a ) 通常は確率超過程 として扱 われているホワイ トノイズを, 各時点毎にガウス空間上の 超関数が対応するような超関数空間内の連続 な ( 実際は C∞一 級) 流れ として定式化 し ていること; ( b ) 通常は作用素借超関数 として敵 われている生成 ・ 消滅作用素 を, 各点毎 に意味のある 連続作用素 として定式化 していること; を生か して, 古典的確率過程の問題 に応用 されて きた 【 1 0 1 .-万で,ホワイ トノイズ解析の 超関数論的側面か らの研究は F o c k空間上の作用素理革へ と進展 している ( 理論 の詳細 は 【 1 3 日 1 4 1 ; 概略は 【 1 5 1など) .したがって,これまで古典論に終始 して きたホワイ トノイズ解 析 を, 作用素 レベルに引 き上げ ることによって, 各点毎の生成 ・ 消滅作用素を基本的な量子 確率過程 とす る理論が構築で きるはずである.また,この観点は物理学に現れる量子確率微分方程式 ( 【 2 日5 1など)の基礎づけにも有効であると思われる.むろん, 量子確率過程 を議論す るにあたって, ホワイトノイズ解析 は唯一の選択肢ではな い し,この論文で提起す るアプ ローチ 自体 も発展途上 にある.ただ,これまでの ところ, 量 子確率論 の研究 に超関数論的なアイデ アはそれほ ど積極的には現れていないので, 本論 は 「 第 3回 『 非平衡系 の統計物理』 シンポジウム」 ( その 1 ) 確率解析の非可換版 を構成す る上でたた き台 ともなるだろ う.まだ関連す る論文 も少 ない が, 【 1 5 日1 6 1 , 【 1 7 日1 8 】も参照 されたい. 1 ホワイ トノイズ解析 と f bc k空間上の作用素論 この報告では, .Ge l f a n dの三つ組 E-S ( R) ⊂H-L 2 ( A , d t ) ⊂F -S ' ( I R ) ( 1 . 1 ) に基礎 にして話 を進める.ここでR は, 後で議論す る量子確率 " 過程" の時間軸 に相当す る. ただ し,この章で述べ る主要 な結果のためには E として急減少関数の空間 S ( A)をとる必 然性 もなければ, R上の関数空間にこだわる必要 もない.実際,Rをかなり一般の位相空間 ( t o p o l o g i C a ls p a c e )にとりかえて理論 を構成す ることがで き, その方が応用上 も有利である [ 1 3 ] .このことについては,この論文の最後( § 3 .3 .5 ) で少 し触 れる.なお, ( 1 . 1 )に現れている 3つの空間はいずれも実空間である.H の実内積 と E'×E上 の標準双線形形式は, 整合 しているので同 じ記号 ( ・ , ・ )で表す.またH とその複素化 Hcの ノルムを同 じ記号 日 。で表す ( 添字 Oは後の都合 による) .さて,E昌×Ec上の標準複素双 線形形式は, H の実内積 を拡張 した
近年、量子コンピューティング関連技術の研究開発が急ピッチで進められている。本講演ではその現状を概観すると共に、これを将来の生命科学研究、ひいては精神医学研究において活用する見通しについて検討を行う。まず、量子コンピュータで用いられる計算アルゴリズムをベースとして、内積計算や固有値分解などの基本的な線形代数演算、ないし主成分分析・正準相関分析を、古典コンピュータにおいても高速近似する量子インスパイアドアルゴリズム(量子着想アルゴリズム)を紹介する。通常手法による主成分分析・正準相関分析では、取り扱うデータの次元数Dの3乗に比例する計算時間を要するが、量子インスパイアドアルゴリズムを用いると計算時間が対数(log D)程度まで低減できる。従って、これまでは実現困難だった超高次元データの要約や特徴抽出に活用できる可能性が示されている。次に、量子コンピュータの開発状況と今後の活用が期待される分野を概観する。量子コンピュータはゲート方式とアニーリング方式に大別される。ゲート方式の方が高い汎用性が期待されるが、現段階で実現されているビット数は限定的であり、これを利用した生命科学研究は本格化するに至っていない。将来的に量子化学や創薬分野で見込まれている活用方法についてまとめる。一方、アニーリング方式の量子コンピュータや、この動作を古典コンピュータ上で模倣するイジングマシンについては実装化が進んでおり、有償での一般利用が可能となっている。その設計上の制約から適用できる問題は限定的であるものの、本講演では幾つかの実施例を、生命科学分野の研究にも応用可能と思われるものを織り交ぜつつ紹介する。
最近, 著者は実際の実験と対応付けられる範囲に制限した量子統計的決定理論を提案した. そこでは, 実験で可能な範囲でベイズ決定POVMやミニマックス決定POVMが定義され, ミニマックス定理などの基本的な定理も成立する. 本発表では, この制限された枠組みで許容性を新たに定義し, 端点定理を用いて, 決定POVMの端点と許容性との関係を明らかにした. また, 漸近リスク関数を定義し, 許容性の観点から射影測定の比較が可能であることを示した. 応用例として2次元パラメータモデルをとりあげ, 2種類の直交する射影測定は4種類の射影測定に優越され, 非許容的になることを示した. このように, 制限した枠組みでの許容性は推定精度の向上に直接, 役立つ結果を与えることができる.