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物性研究

量子系のモンテカルロ・シミュレーション(物性研究と計算物理,研究会報告)

Masuo Suzuki

Published Feb 20, 1984• 0 citations
OpenAlex

Abstract

T-(T-T c ) -A(2 .1) のよ うな異常性 によって特徴づけ られ る。 ここに, 』は,臨界緩和指数 と呼ばれ る指標である。 動的 な分子場理論 1 7 )では, 』-1であ り,v a n Ho v e のc o n v e n t i o n a lt h e o r yでは, 』 -γ( 但 し, 再 ま秩序パ ラメタの応答 の臨界指数 )で ある。実際 は,例 えば,動的 イジング模型 1 7 ) , 1 8 )このことは確 かめ られ ている。 いずれに して も, この よ うに,臨界点近傍 では,平衡 に近づ く時間が極 めて長 いため,モ ン テカル ロ ・シ ミュレーシ ョンで研究す る場合,計算時間が長 くかか り過 ぎるとい う問題 が起 る。 これ を克服す るには,有 限サイズ ・スケー リング理論2 3 ) , 2 4 )を用 いて,モ ンテカル ロ ・シ ミュレ ーシ ョンの結果 を解析す るか,モ ンテカル ロ・くり 込み群 の方法9 ) , 2 5 )を用い るのが有効 である。 a ) 有限サイズ ・スケー リング理論 2 3 ) , 2 4 ) これ は,秩序 パ ラメタ,例 えば,磁性体 の磁化 7 7 t が,それ に共役 な外場,例えば,磁場 kと 温度差 6-(T-T c) /T c, 及 び体系のサイズ Lとの関数 として,次のよ うなスケー リング則 2 4 ) 7 n(E ,A ,L,i )-LI Py f( k6 -P∂ , e Ll / y ,t L l ( 2 ・ 3) を充 す とい うことを主張す るものである。 但 し, ここに,P,♂ , U , Zは, 通 常 の臨界 指数 で あ る2 1 )特に,動的 臨界指数 Zは,( 2 .1)の Aと,A-リ Zによって関係 している。 (2 .3)を数 値計算 の結果 に フイッ トさせて,P / U ,P∂ ,y , Z等 を決定す ることが出来 る。例 えば,サイズ Lの体系では,臨界点 T 。 上 での磁化 M ( L) ,比熱 C,磁化率 x o( すべて 1ス ピン当 り )t ま, M( L) -Ld -A / V ,C-L2/y-a,x o -L2 -か (2 ・ 4) となる。(2 .4)の最後 の式か ら,相 関の臨界指数 符を求 めることが出来 る。また緩和時間 T は, 7 .-上 Z -3 9 4-(2 .5) 量子系のモンテカルロ・シミュレーション によって,計算す るこ とがで きる。 b ) モ ンテカル ロ ・く り込み群 の方法 これ は, くり込み群 の理論 におけ る自由度 の消去,す なわ ち,セル内のス ピンの トレースを, モ ンテカル ロ法 を用 いて計算機 で実行す る方法であ り,大変有効 である。 この方法は,a ) の方法 と共 に今後大 いに利用 され るであろ う。特 に,量子 ス ピン系に も有効に 利用 され るよ うになってきた9 .)ノルムを表 わすo したが って, ‖ A j 日 が有 限な らば, P ・ i -( 岩 e x p( 三A , ) ) n -e x p( j; l A j ) (3 ・ 2) n → ∞) = 1 が成 り立っoす なわち,非可換 な演算子 A jの和 の指数 関数 を,そ れ ぞれ の指数 関数 の積 で近 似す るこ とが出来 る。そ の精度 は一般 に,1 / nのオー ダで,nの増 加 と共 に よ くなる。(3 .2) 式 の両辺 を,適 当な表示 を用 いて,行列要素で表現す ると,左辺には, 中間状態が n-1個現 れ るため,く く n一方向 D に次元が一つ増 した体系に変換 され る。 も し,ノ 、ミル トニア ンが,短距 離カ の局所的な相互作用 の和で表わ され るな らば,上 の公式 (3 .2)で,左辺の等価な相互作用 は,や は り,局所的な ものにな ることが容 易にわか る3 .)こ うして, d次元量子 系の状 態和 は, 適 当な (a +1)次元の古典系の状態和 と等 しくな り,結局,量子系 のモ ンテカル ロ法が可能 と なる2 .) -4 ) 以下に, この方法に基づ く研究の要点 と問題点 を列挙 したい。 a ) s u z u k i -Mi y a s h i t a -Ku r o d a 4 ) これ は,

Related papers

ホワイトノイズ超関数と量子確率微分方程式(第4回『非平衡系の統計物理』シンポジウム,研究会報告)

伸明 尾畑

l は じめ に 決定論 的 な物理系が通常の微分方程式で記述 されるのに対 して,ランダムな揺 らぎを含む 物理系 には確 率微分方程式が用いられる.確率微分方程式論が数学 の一分野 として登場 した のは比較的新 しく 1 9 4 0年代 のことであ り, 伊藤清の業績 にちなんで 「 伊藤解析」 とも呼ば れている.伊藤解析は 1 9 7 0年代には無限変数の超関数のアイデア と融合 し, 現在では 「 確率 解析」 として無限次元解析 の理論的興味か ら諸科学に現れるラ ンダム現象の解析 といった応 用面 にわた り, 広 く研究 され大いに発展 して きている.その中にあって,量子系への応用 とい う点はやや遅 れて, 1 9 8 0年頃か ら伊藤解析の量子版 としての量子確率微分方程式の数学的基 礎づけが研 究 され今 日に至 っている.古典論の場合を振 り返れば, 量子確率微分方程式 を超 関数論的に取 り扱 うこ との実効性が予想 される.この論文では, 数年前か ら著者が展 開 して いるホワイ トノイズ超 関数論 によるアプ ローチを紹介するとともに, 特 に, 量子確率微分方 程式の解の存在 と構成 について論ず る. まず, 簡単 な L a n g e v i n方程式の例 を通 してホワイ トノイズ超 関数論の基本的なア イデア を説明 しよう.速度V-V ( i )の粒子 ( 質量 は 1とする) が粘性抵抗 ( 抵抗係数 k>0 ) のある 媒質の中を外 力 f-I ( i )を受けなが ら運動する系 は Ne w t o n方程式 霊 ニーk v ・J , v l t = 。 -v o , ( 1 ・ 1 ) で記述 される.ここで, 外力 は位置には無関係だが, 時間 とともに変化 して も良い としている.今, i -I ( t )が ( 例 えば) 連続関数であれば, ( 1 . 1 ) は容易 に解けて, V ( i )e 一 如 vo + e -ki l t e kS f ( S ) ds ( 1 ・ 2 ) となる. で は,外力 に揺 らぎのある場合 は どうなるだろうか.この場合 は,各時刻 tで発 生す る外力 f ( i )はある確率分布に従 う確率変数 と考 えられる・( 一般 に, 時間パ ラメー タ付 きの確率変数 は確率過程 と呼ばれる・ ) はっきりさせ るために,確率空 間 ( a, P ) を導入 し, I: R十 × a-I ( i , W )∈R と表示 しよう・たとえ Fが確率過程であって も, 各サ ンプル U∈D に対 して I -I ( 壬 , W )が連続関数であれば, ( 1 .2 ) は定義 され, 解 V ( i ) -V ( t , W)は確率過程 と して得 られ る.確率変数 の基本的な特性量 は平均 と分散である.簡単のため,外力の平均値 -研究会報告 E( I ( i ) )-0を仮定 しよう.このとき, 確率過程 V ( i )の平均 と分散 は, ( 1 .2 ) か ら容易 に求め られ, E ( V ( i ) )e -k t v o ・e -k t lt e h .E( I ( S ) ) d s -e -k t v o ( 1 ・ 3 ) V( V ( i ) ) 千e -2 h〃 e k ' r ' 3 ' E( I ( r ) I ( S ) ) d r d s ( 1 ・ 4 ) となる・分散が ラ ンダムカ f ( i )の時間相関関数 E( I ( r ) I ( S ) )で与 え られることに注意 して お く.時間相 関関数が E ( i ( r ) I ( S ) ) -6 ( r -S )( 1 .5 )o Ie 一 如/ .I e h B d B. のような 「 伊藤型確率積分」で与えられるのである.1 9 7 0年代 になると, 確率微分方程式 に 対す る超関数的アプ ローチが現れて きた.超関数論 によってデ ルタ関数が正当化 され, 微分 方程式論 に大 きな変革が現れたが, 同 じようなことは確率解析 にも期待で きる.Ma l l i a v in解 析 【 2 2 1 や飛 田解析がその代表的なものである・特 に, 飛田解析 は 「 ホワイ トノイズ解析」 と も呼ばれ, 一旦 は d B tとして姿 を消 して しまったホワイトノイズ をあか らさまに数学的対象 「 第 4回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 として捉 える理論である1.これについては,次節以降で詳述するが Ga u s s空間上の超関数空 間 ( E ) 'を導入す ることによって, ホワイトノイズ w t を ( E ) +内の C∞一 級 f l o w として取 り 扱 うことがで きる.そ うす ると, ( 1 .7 ) は再び d v ---k v+ Wt d i と書かれる・形 は もとの ( 1 . 1 )と同一であるが, 解 V-V ( i ) は ( E ) •の中で求めることになる.考 える空間は ( E ) ' の ように無限次元空間になって しまったが, 方程式その ものに特異性は な く, 普通の微積分の規則で解 を求めることがで き, V ( i ) -ek t v o ・e -kl / .ie k s w Sd s となる・これ は, 考 えている空間は違 うのであるが, ( 1 ・ 2 )と形は全 く同 じである.ここで述べて きた ものは簡単 な一例であるが, ホワイ トノイズ解析 によって従来 の形式的計算 に数学的 裏付け を与 え, 揺 らぎの本質 を直に捉 えることがで きるようになった.一方で,1 9 6 0年頃か ら散逸量子系の解析 において量子 L a n g e 血 方程式が議論 されて き た ( L a x[ 2 0 】 , S e n i t z k yl 3 6 】な ど・なお Ac c a r d il 1 】も参照) .それを量子伊藤理論 を定式化 し てユニタリ拡張の問題 として捉 えたのが Hu d s o n -P a r t h a s a r a t h yl 1 6 】であ り, その理論 の後, 若干の超 関数 のアイデア も取 り入れなが ら大いに発展 して今 日に至 っている.最近出版され た教科書 Me y e rl 2 1 1 , P a r t h a s a r a t h yl 3 2 ]はこの方面の必携書 となっている.まず,B r o wn遠 動 を定義す る確率空間 と L 2( A ) 上の B o s o nF o c k空間 ( R が B r o w n 運動 の時間パ ラメータ を与 える)が 同型 になる ( Wi e n e r Jt 6 -S e g a l 同型) .すると Bt をその B o s o nF o c k空間上の かけ算作用素 とみなす ことがで き, Bt -At + A t e の ように,さらに 「 素」な 2つの量子確率過程 に分解す ることがわか る.At , A言はそれぞれ 消滅過程, 生成過程 と呼ばれている.Hu d s o n -P a r t h a s a r a t h y -Me y e r理論 は, それ らの無限小 増分 d At , d AI , 及びゲージ過程の無限小増分 d Atに基づ く伊藤解析 の量子版 とで も言 うべ き ものである.生成・ 消滅過程 によって, 第 3の量子確率過程 tを表す ことは, 彼 らの量子確 率積分で許 される被積分関数の範囲ではで きないが, 応用上極めて重要であるので独立 につ け加 えられている.この ような流れを眺めれば, ホワイトノイズ解析の量子版 を建設 し, 応用面 を探 るのは興 味のあることと言 えよう.このアプローチの一つの特徴 は, デルタ関数 を掌中にす る超関数 論 を基礎 に しているので,「 素」となるべ き量子 ノイズは a , , a t 'の 2つで十分であるとい う ことである・実際, " すべて" の量子確率過程 を a tと a t 'に関する " 量子確率積分" で表現する ことがで きる2.また,このことは, すべての作用素が生成 ・ 消滅作用素で表現で きる とい う 場の理論 における直感 にもあっている3.こうして,我々の立場 を図示 すれば次の ようになる. 1 飛 田 【 1 2 】に興味深い解説記事がある.2ここで … をつけたのは, 数学 として表現するのだか らむろん一定の枠 をはめた り, 概念 を一般化 した りし た上で,との意味.詳しくは本文 § 4を参照されたい.3このこ とを証明す るためには," すべての作用素"に対 して枠 をはめなければな らない.有界作用素に対 し ては B e r e z i n【 3 1 , G e l f a ndt r i p l e tに付随 したものは O b a t a【 2 3 1で証明された・なお, § 3も参照せ よ・ 研究会報告 古典確 率解析 d B t -d A t +d Al ' d Bt -Wt d l Wt-a t +a i ' 量子確率解析 Hu d s o n -P a r t h a r a r a t h y -Me y e r理論 d At , d At ' , d d t d d t -a t d t 量子ホワイ トノイズ解析 ( 提案中) a i ) a t + この論文 では,ホワイ トノイズ起関数論 ( WNDT)を簡単 に紹介 した後, 量子確率過程が どのように して素過程である a ., a t 'で表現 されるかを説明す る・その後, 作用素の Wi c k積 を導入 し, 量子確率微分方程式の解の構成 に応用する.ホワイトノイズ超関数論 については, 最近出版 され た Ku o【 1 9 】は極めて丁寧 に書かれてお り,この方面への格好の入門書である・ また,この論文 ではホワイ トノイズ空間上の作用素論が基礎 になっているが,これ について は Ob a t a【 2 3 】を参照 されたい.量子ホワイ トノイズ解析 については, 本 はまだないが, Ob a t a l 2 7 日 2 8 日 2 9 】に多少 まとまった記述がある・関連す るもの として, Hu a n g【 1 3 】 , Hu a n g -L u o l 1 4 ] , Ob a t al 2 5 】 , 大矢-, ) 、 鴫 [ 3 1 ] なども参照 されたい・ここで展開す る理論 は物理では絶対零 度 の場合 に対応 し, 有限温度の場合 に拡張す ることは極めて興味深い問題 となる.この観点 か ら Hu d s o n -L i n d s a yl 1 5 】 や有光グループ による研究 【 2 日 3 4 】は重要な指針 を与 えるもので ある. 2 ホワイ トノイズ超関数論 2 . 1 Br o wn運動か らホワイ トノイズへ 水 中の花粉粒子のジグザグ運動は, 数学的には確率過程 として定式化 されている.確率変数の 1径数族 f Bt ) t ≧ 。で ( i ) ( B t )は Ga u s s 系, つ まり任意の有限 1 次結合 c I B i l +・-+ c n Bt nが Ga u sS 分布 に従 う; ( i i ) B 0-0 ,E ( B , )-0 ,E ( B s B t ) -mi n ( S , l l ; を満たす もの を B r o wn運動 または Wi e n e r 過程 と呼ぶ.ここでは, 無 限次元 Ga u s s 測度 を 用いて B r o vn運動 を構成す る. 他の方法 については, 【 1 1 日 1 7 】な どを参照 されたい.実 Hi l b e r t空間 H-L 2 ( I R , d i ) の実内積 とノルムを ( i , 7 ) -/ R E ( i ) 7 ( i ) d l , I 引。 -( i , i ) , E , 7 7 ∈H, によって定義す る.( ここで,ノルムの添字 Oは後で便利 なようにつけた・ )有限次元 E u c l i d 空間な らば, Bo c h n e rの定理 によって確率測度 と正定借関数が 1 対 1対応するが, 無限次元 空 間に対 して は Ge l f a n dt r i p l e tを用いなければならない 【 3 8 1 ・さて,無 限回微分可能 な急 減少関数の全 体 を E -S( A) ,その双対空間,つま り E 上の連続線形 ( 帆)関数4 の全体 を 4 E -S( A)の標準的な位相 は,ノルムの系列 = f J L ・ , A-S u p t e Rl t 3

物性研究•Oct 20, 1997•0 citations

量子系のモンテカルロ法(基研短期研究会『統計物理の現状と展望』~STATPHYS19に向けて~,研究会報告)

直道 羽田野

高温逓伝萌体 と関係 して 2次元の圭子現象が注 目を集めているが,で きるだけ大 きな有限系をモ ン テカル ロ計芳 しで定丑的忙議論 しようとす る研究が増えてきている.ここでは王子系q ) モ yテカル ロ 法の現状%,その方法論 に焦点を当てつつ述う ろ ことにす る. 本宅に入る前 にモ ンテカル ロ法,特 に重みつきサyプ1 )./グについて復習 してお く.多自由度系の 計井 には広大 な状態空間 にわたる足 し算がつきもので ある.これを部分的な和で済 ませ ようとす る のがモyテカル 。法である.ところで統計力学計井では足 し算の際にボル ツマ ン分布関数がかかって くる.低温では分布関数 は状態空間中のど く一部 にしか値を持たない.したがって全状態空間をただ 漫魚 とサ./プ1 )./グしていたので は,物理量の評価に効いて

物性研究•Aug 20, 1992•0 citations

ホワイトノイズによる量子確率解析(筑波大学開学20周年記念第2回『非平衡系の統計物理-現状と展望』シンポジウム,研究会報告)

伸明 尾畑

ホワイ トノイズによる量子確率解析 名古屋大学理学部数学教室 尾 畑 伸 明 序 よ く知 られているよ うに,ガウス型定常過程 f x ( i ) )で, 平均 と共分散 関数がそれぞれ E( I ( i ) ) -0 , E( I ( a ) I ( i ) ) -6 ( a -i ) , ( 1) で与 え られる もの を ( ガウス型)ホワイ トノイズ と呼ぶ.そのスペ ク トル測度 ( 共分散関数 の逆 フー リエ変換)は全域 でフラットなルペ ック測度 であるか ら, 確 かにホワイ トである・ また,ホワイ トノイズはブ ラウン運動 i B( i ) )の時間微分: 孟B( i ) -I ( 0 ( 2 ) として得 られることも周知であろ う.( もちろん, ブ ラウン運動の軌跡 は時 間微分可能では な く, 有界変動 で さえないが !)ホワイ トノイズは, 数学的には, 超 関数論 を応用 して確率 超過程 として実現 される.一方で, ( 2 )より時間パ ラメー ターを陽 に含 む ( I ( i ) )は時 間発 展 が直感的 に捉 えやす く, ( 1 )より t x ( i ) )はあたか も連続無限個 の直交座標系 であるが ご とく見 える.いわゆる 「 ホワイ トノイズ解析」は,この視点 に立 って s me a rしない t x ( i ) ) を じかに扱 える無 限次元解析 を目指 した ものであ り, 飛 田武華氏が 1 9 7 5年 の レクチ ャー ノー ト 【 1 0 1を皮切 りとして提唱 されて きた ( なお; 【 1 1 】も参照) .その理論の枠組 は, 一言 でい って,ガウス空 間上のシュワルツ型超 関数論 である.ここ数年来,この理論 の基礎 づ けが完成 し, ( 古典的) 確率解析 ・ デ イリク レ形式 ・ファインマ ン積分 な どへの応用 【 1 3 ] に 加 え,ガウス空間上の作用素論 としての観点か らも発展 しつつある.この論文では, 拙著 【 2 4 】に従 って, ホワイ トノイズ解析 の基礎 的事項, 特 に,ガウス空間 上の作用素論 を紹介 し, その ( 将来的) 応用 として量子確率論 ( 【 1 日2 1 , 【 3 】 , 【 8 日2 2 1 , 【 2 6 1 )へ のアプ ローチ を図 ることにある.手始めにすることは, 量子確率過程論 の基礎概念 を我 々 の立場 か ら再考す ることであ り, 本稿 の 目的で もあるが,まだ端初 についたばか りである.従来, 量子確率論 においては古典確率解析 のアイデ ア と相 まって,ヒルベル ト空間上 の有 界作用素のなす作用素環の理論 が主要な道具 となっている.

物性研究•Apr 20, 1994•0 citations

9. ミクロから導出されたマスター方程式に基づく速いスピン緩和の解析(第9回『非平衡系の統計物理』シンポジウム,研究会報告)

元 木村, 一哉 湯浅, Kentaro Imafuku

「 第9回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 • • Ra p i d l yd e c a y l n gS p l nS y s t e m b a s e do nt h es t o c h a s t i cl i mi ta p p r o a c h 早稲 田大学 理工学研究科 木村 元, * 1湯浅 一哉* 2 ローマ第二 ヴ オルテラ研 究所 今福 健太郎* 3 散逸現象 な どの不可逆過程 を, 時間反転対称性 をもつ量子論 に基いて記述で きるか否か とい う問題 は, 非平衡統計力学の基礎 のほか量子論 における観測問題 とも係 わ り興味深 く重要なテーマである.この問題 に対す る標準的 なアプローチ としては, 対象系 と相互作用す る環境系 を考慮 に入れる方法 があ る.つ ま り,仝体系一一 " 対 象系" +" 環境系" -を閉 じた系 として量子論 を展 開 し, 改 めて対象系 の ダイナ ミクス ( R e d u c e dD y n a mi c s ) を抽 出す る.この とき環境系の 自由度が無限大であ ることを想 定する と, 対象系の不可逆 な振舞 いが導かれ るのである 川. 量子光学では, 例 えば電磁場 の環境下 にある原子の振舞 いに興味がある.そこで扱 う仝体系ハ ミル トニア ンは Ht .t-Hs+ A V+HB (1) である.ただ し, Hs , HB はそれぞれ原子系, 電磁場のハ ミル トニア ンであ り, 両者 間の相互作用 入 V は電磁相互作用 であるため了トさい結合定数 ( 入≪ 1 ) が想定 される.一方で, 全体系ハ ミル トニア ン が式 ( 1 )とは異 なるスケー リングを持つ Ht .t-' 2 Hs+ A V+HB ( 2 ) とい う系 も興味深 い.ただ し,入 2 Hs , J I B, 入 V はそれぞれ対象系,環境系, 相互作用のハ ミル トニア ンであ り, 入≪ 1 .この系で は,弱相互作用系 である式 ( 1 )のハ ミル トニ ア ンか ら導 かれ る遅 い緩和 に比べ て " 速い緩和 ( R a p i dDe c a y ) "が導かれ ることになる.本稿で着目す るのは この スケー リング の系である.具体的 にス ピン ・ボ ソン系 [ 2 ] を例 にと り,ハ ミル トニ ア ン ( 2 ) の系 に見 られ る興味深 い構造 を紹介 しよう.式 ( 1 ) の系か ら散逸過程 を導 く有力 な手法 としては v a nH o v e 極 限 ( A-0 , T-入 2 t ' 固定)[ 3 ] が 有名である.弱結合極限と時 間の スケール変換 とを同時 に行 な うことで, 指数関数的散逸 を導 くこと がで きる.また,この方法 に基礎 を置 く確率極 限 ( S t o c h a S t i cL i mi t )[ 4 1とい う強力 な手法があるが, 最近我 々は,ハ ミル トニ ア ン ( 2 ) の系 に対す る確率極 限の枠組み を新 たに構築 した 【 5 ト 本稿では,

物性研究•Feb 20, 2002•0 citations

量子力学の解釈についての覚え書き(量子力学の基礎について,研究会報告)

豊 豊沢

系のノ 、ミル トニア ンを次 のよ うに とる。 < < < H -a.+H' ∧ 〟 H . -c p " ,A , -∑V( 金一, W) " 6 1 ( n ) , T Z = 1 V( x-n a ) ニー V o O ( n a-a ) 0 ( a-( n-1 )a ) この系の相互作用表示での時間発展作用素 は : 1 ) 6 ( i ) 完 e x Pl -( i / i )p -1 2 : T ] , p --V ./ C,会 T -n g 1 9 1 ' n ' / N ( 5 ) の位相のp 7 依存性 と( 1 ) 式 での Zについての積分か ら波束の収縮 が導かれ る. もう少 しくわ しい内容 は次 の文献 1 ) にある。 ( 4 ) ( 5 ) 参考文献 1 ) S .Ma c h i d aa n d M. Na mi k i , Ma c r o s c o p i cNa t u r eo fDe t e c t i n gAp p a r a t u sa n d Re d u c t i o n o fWa v ePa c k e t , P r o c .I n t .S y mp .O n t h eFo u n d a t i o n so fQu a n t u m Me c h a n i c s ( 丁 a p. P h y s .S o c . ) ,1 9 8 4年 3月刊行予定。 量子力学 の解釈 についての覚 え書 き 東大 ・ 物性研 豊 沢 豊 量子系の観測では,観測装置の中で起 る非可逆過程 とそれ に伴 な う量子系の 「 可干渉性 の喪 失」がそ の決定的段階である, とい うH.S .Gr e e n以来の考 え方は次第 に多 くの人々の支持 を 得っっ あ り,実際 これ はv o n Ne u ma n n の逆説的な主張 -観測 され る系 ( S ) と観測装置 ( A) との境界 は任意 に ( a b s t r a c t e st t I c h " にまでも ) 移 し得 るとす るもの -よ りはるかに妥 当で 常識的 にも受 け入れやす い考 え方である。私 もこの線上で,観測に伴な うエ ン トロピー変化, 観測の客観性 と再現性 などについて何度か話 したことはあるが, ここではさらに基本的 な所 ま で掘 りさげて考 えてみたい。 A内の非可逆過程によ りSの可干渉性 が失 なわれ ても,合成系 ( S+A) の波動 関数 はや は り一次結合 のままで あ り,「 観測に よる波束 の収縮 は合成系の S c h r 6 d i n g e r 方程式 か らも出て ー2 6 8 -量子力学の解釈についての覚え書き こない」とい う欲 求不満 は少 しも取 り除かれ ていないのである。波動 関数 を実在 と信 じる限 り 行 きつ く境地 は 「 多世界理論」で あ り, これ とv o n Ne u ma n nの考 え と何れが よ り逆説的 でな いかは,にわかに判断 しがたい。 私 は,「 系の状態 を記述す る最 も基本的 な量 は波動 関数 で な く統計 演算子 ( 密度行列 )βである」と考 えたい。以下それ を具体的に説明 してみ よ う。 ( 1 )波動関数 は純粋状態 ( β 2 -〟 )とい う極 めて特殊 な状況 でだけ定義で きる, また βの行列 表現 の基底 として役立っ,補助的 な概念に過 ぎない。 ( 2 ) 量子統計力学における統計性には,古典統計力学 とも共通 の統計性 (原理的には可知 だが 巨大 自由度 のため実際的には不可知 な要素 )と量子力学特有 の統計性 ( 原理的 な不可知 ) とが, 二重構造 として含 まれてい る, とするのが通説 のよ うだが,両者 は本来一体の もので ある。実 際 この二つ の統計性 を分離 できるよ うな思考実験 は存 在 しない。 ( 3 )Sに起 る変化 を我 々が外 ( A ) か ら観測 しよ うとす る とき,Sは合成系 ( S+A) の部分系に 過 ぎな くなる。合成系が た とえ純粋状態 ( p s 2 .Ap s.A)で あって も部分系 ( p s… T r A( p s .A) ) は一般 に混合状態 ( p 呈≠ p s) であ り,従 って統計演算子 で記述す る しかない。 あ る瞬 間 に p s が純粋状態で あって も, SとAの相互作用 がある限 りそれ は早晩混合状態に陥 る。全宇宙 が純 粋状態か否 かを判断 し得 るのは,その外 にあってそれ と相互作用 しない神 のみで あ り, 内にあ って相互作用の

素粒子論研究•Feb 20, 1984•0 citations

ホワイトノイズと量子確率解析の非線形拡張(第6回『非平衡系の統計物理』シンポジウム,研究会報告)

伸明 尾畑

o b a t a @ m a t h・ n a g o y a -u・ a c ・ J p l は じめに 揺 らぎを含む物理現象の時間発展は確率微分方程式で記述 され る. 確率積分が厳密 に定式 化 され, 確率微分方程式の基礎付 けがな されたのは 1 9 4 0年代のことであ り, 伊藤理論 として 広 く知 られているが,半世紀 を経た今 日では,よ り無限次元解析 としての色彩が強ま りなが ら様 々に発展 している.それらは, 包括的に 「 確率解析」 と呼ばれているが, そ こでは,ラン ダム性 を無限 自由度に言い換 え, 確率的な対象 を無限次元的な対象 に変換 して議論がな され る.この観点に立つことで, 超関数論な どの関数解析的手法が導入 され易 くな り, 理論が大き く発展す るのである.無限次元解析は,理論構成上の 自由度 も大きく, 何 を礎 とす るかによっ て様 々な流儀がある.なかでも Ma l l i aS c h wa r t zの超関数論によっ て, それまでは意味が暖味であった Di r a cのデル タ関数が正 当化 され, 計算ルールが厳密に 与えられたよ うに, ホワイ トノイズに厳密な定式化が与えられ, 文献に散見 され る 「 形式的」 計算 ( 通常の微積分 と同様な計算) が, ホワイ トノイズ解析の枠組みで理解 され るようになる・ 多 くの場合, 形式的計算 を結果的に正 しい と認めることになっても, ホワイ トノイズ解析が理 論 として意味を失 うものではない.' s c h wa r t z超関数論が, 結局は, デル タ関数な どの形式的 計算 を追認す ることになって も, S c h wa r t z超関数論が不要にはな らないの と同 じである, ホワイ トノイズ解析は,当初, 伊藤解析の拡張 としてスター トした 【 1 5 ]ため, 対象は 「 古 典」確率論の範境 を出るものではなかった.一方,量子確率解析 は, その創始 t 2 1 ]の頃か ら, 量子物理の問題意識か らであろ うが,ヒルベル ト空間論か ら離れず に発展 してきた とい う経 緯がある.その両者のアイデアを融合して,さらなる展開を 目指す試みは,ホ ワイ トノイズ 作用素論 [ 3 3 ]の一応の完成 とともに, 1 9 9 2 年 ころか ら開始 したが,目下の状況は発展の好機 を思わせ る.本誌上において も,ホワイ トノイズ解析の基礎理論 とともに,ホワイ トノイズ による量子確率積分, 量子確率過程のホワイ トノイズによる表示, 量子確率微分方程式 とホ ワイ トノイズ方程式の関連な どについて報告 してきた [ 3 5 ] ,岡 ,【 3 9 ] ・本論文では,高次の ホワイ トノイズ ( ホワイ トノイズの非線形関数)をノイズ項 として含む量子確率微分方程式 を, 「 正規積 ホ ワイ トノイズ微分方程式」 として定式化 し, 解の一意存在 を論 じる.その際, Co c h r a n -Ku o -S e n g u p t a[ 1 4 】による一般的な枠組みが有用である.実際,これまでに,空間を 拡張 して解の存在 を保証す るとい う形の定理 ( 超関数的な解の存在) については十分論 じてき た [ 4 0 ] , [ 4 1 日 4 3 日 4 4 ]ので, 本論文では, 解がいつ F o c k空間の ( 非有界) 作用素になるか ( 超 -「 第 6回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 の簡略形であ り,この積分は伊藤型量子確率積分を意味す る.さらに, 方程式 ( 2 .3 ) は, 指数ベ ク ト ル に関す る行列要素 ( これ を作用素 シンボル とい う) に対す る方程式に書 き直せ ば, 《 X擁 , 4 , 刀 ) ) -《 4 , i , 4 , り )+ / E t ( 《に等 しくなる・したがって, ( 2 .5 ) か ら作用素の部分だけを取 り出せ ば, X i -I + / -- とな り, さらに tで微分すれ ば, d Xl d t ( L l a : Xs a s +L 2 Xs a s +L 3 a s * Xs +L 4 Xs ) d s -L l a ; Xt at +L 2 Xt al +L3a ; Xl +L4Xl , X ( 2 .6 ) -I , ( 2 .7 ) となる・最後 に, 場 の理論で使 われ る正規積 ( Wi c k 積)を用いて書 き直す.Wi c k積 を ◇で表 せ ば, a s ◇at-a s a t , a s * ◇at-a s * a t , a s ◇a ;-a i * a s , a s * ◇a l * -a ; a i * ・ また, 一般 の作用素 X に対 しては, ( a ; 1 ・ ・ ・ a s * l a t l-・ a t m )◇ X-a ; 1 -・ a s * , Xa t l・ -ai m なる性質 を持つ.したがって, ( 2 .7 ) は Wi c k積 に関す る線形方程式 ( L l a l * at+ L 2 a t +L 3 a l * +L4)◇Xl , X-I, ( 2 .8 ) に帰着 され る・こ うして, 量子確率微分方程式 ( 2 . 1 ) は, 単純な線形方程式 ( 2 .8 )と同値 となる.

物性研究•Jun 20, 1999•0 citations
T-(T-T c ) -A(2 .1) のよ うな異常性 によって特徴づけ られ る。 ここに, 』は,臨界緩和指数 と呼ばれ る指標である。 動的 な分子場理論 1 7 )では, 』-1であ り,v a n Ho v e のc o n v e n t i o n a lt h e o r yでは, 』 -γ( 但 し, 再 ま秩序パ ラメタの応答 の臨界指数 )で ある。実際 は,例 えば,動的 イジング模型 1 7 ) , 1 8 )このことは確 かめ られ ている。 いずれに して も, この よ うに,臨界点近傍 では,平衡 に近づ く時間が極 めて長 いため,モ ン テカル ロ ・シ ミュレーシ ョンで研究す る場合,計算時間が長 くかか り過 ぎるとい う問題 が起 る。 これ を克服す るには,有 限サイズ ・スケー リング理論2 3 ) , 2 4 )を用 いて,モ ンテカル ロ ・シ ミュレ ーシ ョンの結果 を解析す るか,モ ンテカル ロ・くり 込み群 の方法9 ) , 2 5 )を用い るのが有効 である。 a ) 有限サイズ ・スケー リング理論 2 3 ) , 2 4 ) これ は,秩序 パ ラメタ,例 えば,磁性体 の磁化 7 7 t が,それ に共役 な外場,例えば,磁場 kと 温度差 6-(T-T c) /T c, 及 び体系のサイズ Lとの関数 として,次のよ うなスケー リング則 2 4 ) 7 n(E ,A ,L,i )-LI Py f( k6 -P∂ , e Ll / y ,t L l ( 2 ・ 3) を充 す とい うことを主張す るものである。 但 し, ここに,P,♂ , U , Zは, 通 常 の臨界 指数 で あ る2 1 )特に,動的 臨界指数 Zは,( 2 .1)の Aと,A-リ Zによって関係 している。 (2 .3)を数 値計算 の結果 に フイッ トさせて,P / U ,P∂ ,y , Z等 を決定す ることが出来 る。例 えば,サイズ Lの体系では,臨界点 T 。 上 での磁化 M ( L) ,比熱 C,磁化率 x o( すべて 1ス ピン当 り )t ま, M( L) -Ld -A / V ,C-L2/y-a,x o -L2 -か (2 ・ 4) となる。(2 .4)の最後 の式か ら,相 関の臨界指数 符を求 めることが出来 る。また緩和時間 T は, 7 .-上 Z -3 9 4-(2 .5) 量子系のモンテカルロ・シミュレーション によって,計算す るこ とがで きる。 b ) モ ンテカル ロ ・く り込み群 の方法 これ は, くり込み群 の理論 におけ る自由度 の消去,す なわ ち,セル内のス ピンの トレースを, モ ンテカル ロ法 を用 いて計算機 で実行す る方法であ り,大変有効 である。 この方法は,a ) の方法 と共 に今後大 いに利用 され るであろ う。特 に,量子 ス ピン系に も有効に 利用 され るよ うになってきた9 .)ノルムを表 わすo したが って, ‖ A j 日 が有 限な らば, P ・ i -( 岩 e x p( 三A , ) ) n -e x p( j; l A j ) (3 ・ 2) n → ∞) = 1 が成 り立っoす なわち,非可換 な演算子 A jの和 の指数 関数 を,そ れ ぞれ の指数 関数 の積 で近 似す るこ とが出来 る。そ の精度 は一般 に,1 / nのオー ダで,nの増 加 と共 に よ くなる。(3 .2) 式 の両辺 を,適 当な表示 を用 いて,行列要素で表現す ると,左辺には, 中間状態が n-1個現 れ るため,く く n一方向 D に次元が一つ増 した体系に変換 され る。 も し,ノ 、ミル トニア ンが,短距 離カ の局所的な相互作用 の和で表わ され るな らば,上 の公式 (3 .2)で,左辺の等価な相互作用 は,や は り,局所的な ものにな ることが容 易にわか る3 .)こ うして, d次元量子 系の状 態和 は, 適 当な (a +1)次元の古典系の状態和 と等 しくな り,結局,量子系 のモ ンテカル ロ法が可能 と なる2 .) -4 ) 以下に, この方法に基づ く研究の要点 と問題点 を列挙 したい。 a ) s u z u k i -Mi y a s h i t a -Ku r o d a 4 ) これ は,
l は じめ に 決定論 的 な物理系が通常の微分方程式で記述 されるのに対 して,ランダムな揺 らぎを含む 物理系 には確 率微分方程式が用いられる.確率微分方程式論が数学 の一分野 として登場 した のは比較的新 しく 1 9 4 0年代 のことであ り, 伊藤清の業績 にちなんで 「 伊藤解析」 とも呼ば れている.伊藤解析は 1 9 7 0年代には無限変数の超関数のアイデア と融合 し, 現在では 「 確率 解析」 として無限次元解析 の理論的興味か ら諸科学に現れるラ ンダム現象の解析 といった応 用面 にわた り, 広 く研究 され大いに発展 して きている.その中にあって,量子系への応用 とい う点はやや遅 れて, 1 9 8 0年頃か ら伊藤解析の量子版 としての量子確率微分方程式の数学的基 礎づけが研 究 され今 日に至 っている.古典論の場合を振 り返れば, 量子確率微分方程式 を超 関数論的に取 り扱 うこ との実効性が予想 される.この論文では, 数年前か ら著者が展 開 して いるホワイ トノイズ超 関数論 によるアプ ローチを紹介するとともに, 特 に, 量子確率微分方 程式の解の存在 と構成 について論ず る. まず, 簡単 な L a n g e v i n方程式の例 を通 してホワイ トノイズ超 関数論の基本的なア イデア を説明 しよう.速度V-V ( i )の粒子 ( 質量 は 1とする) が粘性抵抗 ( 抵抗係数 k>0 ) のある 媒質の中を外 力 f-I ( i )を受けなが ら運動する系 は Ne w t o n方程式 霊 ニーk v ・J , v l t = 。 -v o , ( 1 ・ 1 ) で記述 される.ここで, 外力 は位置には無関係だが, 時間 とともに変化 して も良い としている.今, i -I ( t )が ( 例 えば) 連続関数であれば, ( 1 . 1 ) は容易 に解けて, V ( i )e 一 如 vo + e -ki l t e kS f ( S ) ds ( 1 ・ 2 ) となる. で は,外力 に揺 らぎのある場合 は どうなるだろうか.この場合 は,各時刻 tで発 生す る外力 f ( i )はある確率分布に従 う確率変数 と考 えられる・( 一般 に, 時間パ ラメー タ付 きの確率変数 は確率過程 と呼ばれる・ ) はっきりさせ るために,確率空 間 ( a, P ) を導入 し, I: R十 × a-I ( i , W )∈R と表示 しよう・たとえ Fが確率過程であって も, 各サ ンプル U∈D に対 して I -I ( 壬 , W )が連続関数であれば, ( 1 .2 ) は定義 され, 解 V ( i ) -V ( t , W)は確率過程 と して得 られ る.確率変数 の基本的な特性量 は平均 と分散である.簡単のため,外力の平均値 -研究会報告 E( I ( i ) )-0を仮定 しよう.このとき, 確率過程 V ( i )の平均 と分散 は, ( 1 .2 ) か ら容易 に求め られ, E ( V ( i ) )e -k t v o ・e -k t lt e h .E( I ( S ) ) d s -e -k t v o ( 1 ・ 3 ) V( V ( i ) ) 千e -2 h〃 e k ' r ' 3 ' E( I ( r ) I ( S ) ) d r d s ( 1 ・ 4 ) となる・分散が ラ ンダムカ f ( i )の時間相関関数 E( I ( r ) I ( S ) )で与 え られることに注意 して お く.時間相 関関数が E ( i ( r ) I ( S ) ) -6 ( r -S )( 1 .5 )o Ie 一 如/ .I e h B d B. のような 「 伊藤型確率積分」で与えられるのである.1 9 7 0年代 になると, 確率微分方程式 に 対す る超関数的アプ ローチが現れて きた.超関数論 によってデ ルタ関数が正当化 され, 微分 方程式論 に大 きな変革が現れたが, 同 じようなことは確率解析 にも期待で きる.Ma l l i a v in解 析 【 2 2 1 や飛 田解析がその代表的なものである・特 に, 飛田解析 は 「 ホワイ トノイズ解析」 と も呼ばれ, 一旦 は d B tとして姿 を消 して しまったホワイトノイズ をあか らさまに数学的対象 「 第 4回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 として捉 える理論である1.これについては,次節以降で詳述するが Ga u s s空間上の超関数空 間 ( E ) 'を導入す ることによって, ホワイトノイズ w t を ( E ) +内の C∞一 級 f l o w として取 り 扱 うことがで きる.そ うす ると, ( 1 .7 ) は再び d v ---k v+ Wt d i と書かれる・形 は もとの ( 1 . 1 )と同一であるが, 解 V-V ( i ) は ( E ) •の中で求めることになる.考 える空間は ( E ) ' の ように無限次元空間になって しまったが, 方程式その ものに特異性は な く, 普通の微積分の規則で解 を求めることがで き, V ( i ) -ek t v o ・e -kl / .ie k s w Sd s となる・これ は, 考 えている空間は違 うのであるが, ( 1 ・ 2 )と形は全 く同 じである.ここで述べて きた ものは簡単 な一例であるが, ホワイ トノイズ解析 によって従来 の形式的計算 に数学的 裏付け を与 え, 揺 らぎの本質 を直に捉 えることがで きるようになった.一方で,1 9 6 0年頃か ら散逸量子系の解析 において量子 L a n g e 血 方程式が議論 されて き た ( L a x[ 2 0 】 , S e n i t z k yl 3 6 】な ど・なお Ac c a r d il 1 】も参照) .それを量子伊藤理論 を定式化 し てユニタリ拡張の問題 として捉 えたのが Hu d s o n -P a r t h a s a r a t h yl 1 6 】であ り, その理論 の後, 若干の超 関数 のアイデア も取 り入れなが ら大いに発展 して今 日に至 っている.最近出版され た教科書 Me y e rl 2 1 1 , P a r t h a s a r a t h yl 3 2 ]はこの方面の必携書 となっている.まず,B r o wn遠 動 を定義す る確率空間 と L 2( A ) 上の B o s o nF o c k空間 ( R が B r o w n 運動 の時間パ ラメータ を与 える)が 同型 になる ( Wi e n e r Jt 6 -S e g a l 同型) .すると Bt をその B o s o nF o c k空間上の かけ算作用素 とみなす ことがで き, Bt -At + A t e の ように,さらに 「 素」な 2つの量子確率過程 に分解す ることがわか る.At , A言はそれぞれ 消滅過程, 生成過程 と呼ばれている.Hu d s o n -P a r t h a s a r a t h y -Me y e r理論 は, それ らの無限小 増分 d At , d AI , 及びゲージ過程の無限小増分 d Atに基づ く伊藤解析 の量子版 とで も言 うべ き ものである.生成・ 消滅過程 によって, 第 3の量子確率過程 tを表す ことは, 彼 らの量子確 率積分で許 される被積分関数の範囲ではで きないが, 応用上極めて重要であるので独立 につ け加 えられている.この ような流れを眺めれば, ホワイトノイズ解析の量子版 を建設 し, 応用面 を探 るのは興 味のあることと言 えよう.このアプローチの一つの特徴 は, デルタ関数 を掌中にす る超関数 論 を基礎 に しているので,「 素」となるべ き量子 ノイズは a , , a t 'の 2つで十分であるとい う ことである・実際, " すべて" の量子確率過程 を a tと a t 'に関する " 量子確率積分" で表現する ことがで きる2.また,このことは, すべての作用素が生成 ・ 消滅作用素で表現で きる とい う 場の理論 における直感 にもあっている3.こうして,我々の立場 を図示 すれば次の ようになる. 1 飛 田 【 1 2 】に興味深い解説記事がある.2ここで … をつけたのは, 数学 として表現するのだか らむろん一定の枠 をはめた り, 概念 を一般化 した りし た上で,との意味.詳しくは本文 § 4を参照されたい.3このこ とを証明す るためには," すべての作用素"に対 して枠 をはめなければな らない.有界作用素に対 し ては B e r e z i n【 3 1 , G e l f a ndt r i p l e tに付随 したものは O b a t a【 2 3 1で証明された・なお, § 3も参照せ よ・ 研究会報告 古典確 率解析 d B t -d A t +d Al ' d Bt -Wt d l Wt-a t +a i ' 量子確率解析 Hu d s o n -P a r t h a r a r a t h y -Me y e r理論 d At , d At ' , d d t d d t -a t d t 量子ホワイ トノイズ解析 ( 提案中) a i ) a t + この論文 では,ホワイ トノイズ起関数論 ( WNDT)を簡単 に紹介 した後, 量子確率過程が どのように して素過程である a ., a t 'で表現 されるかを説明す る・その後, 作用素の Wi c k積 を導入 し, 量子確率微分方程式の解の構成 に応用する.ホワイトノイズ超関数論 については, 最近出版 され た Ku o【 1 9 】は極めて丁寧 に書かれてお り,この方面への格好の入門書である・ また,この論文 ではホワイ トノイズ空間上の作用素論が基礎 になっているが,これ について は Ob a t a【 2 3 】を参照 されたい.量子ホワイ トノイズ解析 については, 本 はまだないが, Ob a t a l 2 7 日 2 8 日 2 9 】に多少 まとまった記述がある・関連す るもの として, Hu a n g【 1 3 】 , Hu a n g -L u o l 1 4 ] , Ob a t al 2 5 】 , 大矢-, ) 、 鴫 [ 3 1 ] なども参照 されたい・ここで展開す る理論 は物理では絶対零 度 の場合 に対応 し, 有限温度の場合 に拡張す ることは極めて興味深い問題 となる.この観点 か ら Hu d s o n -L i n d s a yl 1 5 】 や有光グループ による研究 【 2 日 3 4 】は重要な指針 を与 えるもので ある. 2 ホワイ トノイズ超関数論 2 . 1 Br o wn運動か らホワイ トノイズへ 水 中の花粉粒子のジグザグ運動は, 数学的には確率過程 として定式化 されている.確率変数の 1径数族 f Bt ) t ≧ 。で ( i ) ( B t )は Ga u s s 系, つ まり任意の有限 1 次結合 c I B i l +・-+ c n Bt nが Ga u sS 分布 に従 う; ( i i ) B 0-0 ,E ( B , )-0 ,E ( B s B t ) -mi n ( S , l l ; を満たす もの を B r o wn運動 または Wi e n e r 過程 と呼ぶ.ここでは, 無 限次元 Ga u s s 測度 を 用いて B r o vn運動 を構成す る. 他の方法 については, 【 1 1 日 1 7 】な どを参照 されたい.実 Hi l b e r t空間 H-L 2 ( I R , d i ) の実内積 とノルムを ( i , 7 ) -/ R E ( i ) 7 ( i ) d l , I 引。 -( i , i ) , E , 7 7 ∈H, によって定義す る.( ここで,ノルムの添字 Oは後で便利 なようにつけた・ )有限次元 E u c l i d 空間な らば, Bo c h n e rの定理 によって確率測度 と正定借関数が 1 対 1対応するが, 無限次元 空 間に対 して は Ge l f a n dt r i p l e tを用いなければならない 【 3 8 1 ・さて,無 限回微分可能 な急 減少関数の全 体 を E -S( A) ,その双対空間,つま り E 上の連続線形 ( 帆)関数4 の全体 を 4 E -S( A)の標準的な位相 は,ノルムの系列 = f J L ・ , A-S u p t e Rl t 3
高温逓伝萌体 と関係 して 2次元の圭子現象が注 目を集めているが,で きるだけ大 きな有限系をモ ン テカル ロ計芳 しで定丑的忙議論 しようとす る研究が増えてきている.ここでは王子系q ) モ yテカル ロ 法の現状%,その方法論 に焦点を当てつつ述う ろ ことにす る. 本宅に入る前 にモ ンテカル ロ法,特 に重みつきサyプ1 )./グについて復習 してお く.多自由度系の 計井 には広大 な状態空間 にわたる足 し算がつきもので ある.これを部分的な和で済 ませ ようとす る のがモyテカル 。法である.ところで統計力学計井では足 し算の際にボル ツマ ン分布関数がかかって くる.低温では分布関数 は状態空間中のど く一部 にしか値を持たない.したがって全状態空間をただ 漫魚 とサ./プ1 )./グしていたので は,物理量の評価に効いて
ホワイ トノイズによる量子確率解析 名古屋大学理学部数学教室 尾 畑 伸 明 序 よ く知 られているよ うに,ガウス型定常過程 f x ( i ) )で, 平均 と共分散 関数がそれぞれ E( I ( i ) ) -0 , E( I ( a ) I ( i ) ) -6 ( a -i ) , ( 1) で与 え られる もの を ( ガウス型)ホワイ トノイズ と呼ぶ.そのスペ ク トル測度 ( 共分散関数 の逆 フー リエ変換)は全域 でフラットなルペ ック測度 であるか ら, 確 かにホワイ トである・ また,ホワイ トノイズはブ ラウン運動 i B( i ) )の時間微分: 孟B( i ) -I ( 0 ( 2 ) として得 られることも周知であろ う.( もちろん, ブ ラウン運動の軌跡 は時 間微分可能では な く, 有界変動 で さえないが !)ホワイ トノイズは, 数学的には, 超 関数論 を応用 して確率 超過程 として実現 される.一方で, ( 2 )より時間パ ラメー ターを陽 に含 む ( I ( i ) )は時 間発 展 が直感的 に捉 えやす く, ( 1 )より t x ( i ) )はあたか も連続無限個 の直交座標系 であるが ご とく見 える.いわゆる 「 ホワイ トノイズ解析」は,この視点 に立 って s me a rしない t x ( i ) ) を じかに扱 える無 限次元解析 を目指 した ものであ り, 飛 田武華氏が 1 9 7 5年 の レクチ ャー ノー ト 【 1 0 1を皮切 りとして提唱 されて きた ( なお; 【 1 1 】も参照) .その理論の枠組 は, 一言 でい って,ガウス空 間上のシュワルツ型超 関数論 である.ここ数年来,この理論 の基礎 づ けが完成 し, ( 古典的) 確率解析 ・ デ イリク レ形式 ・ファインマ ン積分 な どへの応用 【 1 3 ] に 加 え,ガウス空間上の作用素論 としての観点か らも発展 しつつある.この論文では, 拙著 【 2 4 】に従 って, ホワイ トノイズ解析 の基礎 的事項, 特 に,ガウス空間 上の作用素論 を紹介 し, その ( 将来的) 応用 として量子確率論 ( 【 1 日2 1 , 【 3 】 , 【 8 日2 2 1 , 【 2 6 1 )へ のアプ ローチ を図 ることにある.手始めにすることは, 量子確率過程論 の基礎概念 を我 々 の立場 か ら再考す ることであ り, 本稿 の 目的で もあるが,まだ端初 についたばか りである.従来, 量子確率論 においては古典確率解析 のアイデ ア と相 まって,ヒルベル ト空間上 の有 界作用素のなす作用素環の理論 が主要な道具 となっている.
「 第9回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 • • Ra p i d l yd e c a y l n gS p l nS y s t e m b a s e do nt h es t o c h a s t i cl i mi ta p p r o a c h 早稲 田大学 理工学研究科 木村 元, * 1湯浅 一哉* 2 ローマ第二 ヴ オルテラ研 究所 今福 健太郎* 3 散逸現象 な どの不可逆過程 を, 時間反転対称性 をもつ量子論 に基いて記述で きるか否か とい う問題 は, 非平衡統計力学の基礎 のほか量子論 における観測問題 とも係 わ り興味深 く重要なテーマである.この問題 に対す る標準的 なアプローチ としては, 対象系 と相互作用す る環境系 を考慮 に入れる方法 があ る.つ ま り,仝体系一一 " 対 象系" +" 環境系" -を閉 じた系 として量子論 を展 開 し, 改 めて対象系 の ダイナ ミクス ( R e d u c e dD y n a mi c s ) を抽 出す る.この とき環境系の 自由度が無限大であ ることを想 定する と, 対象系の不可逆 な振舞 いが導かれ るのである 川. 量子光学では, 例 えば電磁場 の環境下 にある原子の振舞 いに興味がある.そこで扱 う仝体系ハ ミル トニア ンは Ht .t-Hs+ A V+HB (1) である.ただ し, Hs , HB はそれぞれ原子系, 電磁場のハ ミル トニア ンであ り, 両者 間の相互作用 入 V は電磁相互作用 であるため了トさい結合定数 ( 入≪ 1 ) が想定 される.一方で, 全体系ハ ミル トニア ン が式 ( 1 )とは異 なるスケー リングを持つ Ht .t-' 2 Hs+ A V+HB ( 2 ) とい う系 も興味深 い.ただ し,入 2 Hs , J I B, 入 V はそれぞれ対象系,環境系, 相互作用のハ ミル トニア ンであ り, 入≪ 1 .この系で は,弱相互作用系 である式 ( 1 )のハ ミル トニ ア ンか ら導 かれ る遅 い緩和 に比べ て " 速い緩和 ( R a p i dDe c a y ) "が導かれ ることになる.本稿で着目す るのは この スケー リング の系である.具体的 にス ピン ・ボ ソン系 [ 2 ] を例 にと り,ハ ミル トニ ア ン ( 2 ) の系 に見 られ る興味深 い構造 を紹介 しよう.式 ( 1 ) の系か ら散逸過程 を導 く有力 な手法 としては v a nH o v e 極 限 ( A-0 , T-入 2 t ' 固定)[ 3 ] が 有名である.弱結合極限と時 間の スケール変換 とを同時 に行 な うことで, 指数関数的散逸 を導 くこと がで きる.また,この方法 に基礎 を置 く確率極 限 ( S t o c h a S t i cL i mi t )[ 4 1とい う強力 な手法があるが, 最近我 々は,ハ ミル トニ ア ン ( 2 ) の系 に対す る確率極 限の枠組み を新 たに構築 した 【 5 ト 本稿では,
系のノ 、ミル トニア ンを次 のよ うに とる。 < < < H -a.+H' ∧ 〟 H . -c p " ,A , -∑V( 金一, W) " 6 1 ( n ) , T Z = 1 V( x-n a ) ニー V o O ( n a-a ) 0 ( a-( n-1 )a ) この系の相互作用表示での時間発展作用素 は : 1 ) 6 ( i ) 完 e x Pl -( i / i )p -1 2 : T ] , p --V ./ C,会 T -n g 1 9 1 ' n ' / N ( 5 ) の位相のp 7 依存性 と( 1 ) 式 での Zについての積分か ら波束の収縮 が導かれ る. もう少 しくわ しい内容 は次 の文献 1 ) にある。 ( 4 ) ( 5 ) 参考文献 1 ) S .Ma c h i d aa n d M. Na mi k i , Ma c r o s c o p i cNa t u r eo fDe t e c t i n gAp p a r a t u sa n d Re d u c t i o n o fWa v ePa c k e t , P r o c .I n t .S y mp .O n t h eFo u n d a t i o n so fQu a n t u m Me c h a n i c s ( 丁 a p. P h y s .S o c . ) ,1 9 8 4年 3月刊行予定。 量子力学 の解釈 についての覚 え書 き 東大 ・ 物性研 豊 沢 豊 量子系の観測では,観測装置の中で起 る非可逆過程 とそれ に伴 な う量子系の 「 可干渉性 の喪 失」がそ の決定的段階である, とい うH.S .Gr e e n以来の考 え方は次第 に多 くの人々の支持 を 得っっ あ り,実際 これ はv o n Ne u ma n n の逆説的な主張 -観測 され る系 ( S ) と観測装置 ( A) との境界 は任意 に ( a b s t r a c t e st t I c h " にまでも ) 移 し得 るとす るもの -よ りはるかに妥 当で 常識的 にも受 け入れやす い考 え方である。私 もこの線上で,観測に伴な うエ ン トロピー変化, 観測の客観性 と再現性 などについて何度か話 したことはあるが, ここではさらに基本的 な所 ま で掘 りさげて考 えてみたい。 A内の非可逆過程によ りSの可干渉性 が失 なわれ ても,合成系 ( S+A) の波動 関数 はや は り一次結合 のままで あ り,「 観測に よる波束 の収縮 は合成系の S c h r 6 d i n g e r 方程式 か らも出て ー2 6 8 -量子力学の解釈についての覚え書き こない」とい う欲 求不満 は少 しも取 り除かれ ていないのである。波動 関数 を実在 と信 じる限 り 行 きつ く境地 は 「 多世界理論」で あ り, これ とv o n Ne u ma n nの考 え と何れが よ り逆説的 でな いかは,にわかに判断 しがたい。 私 は,「 系の状態 を記述す る最 も基本的 な量 は波動 関数 で な く統計 演算子 ( 密度行列 )βである」と考 えたい。以下それ を具体的に説明 してみ よ う。 ( 1 )波動関数 は純粋状態 ( β 2 -〟 )とい う極 めて特殊 な状況 でだけ定義で きる, また βの行列 表現 の基底 として役立っ,補助的 な概念に過 ぎない。 ( 2 ) 量子統計力学における統計性には,古典統計力学 とも共通 の統計性 (原理的には可知 だが 巨大 自由度 のため実際的には不可知 な要素 )と量子力学特有 の統計性 ( 原理的 な不可知 ) とが, 二重構造 として含 まれてい る, とするのが通説 のよ うだが,両者 は本来一体の もので ある。実 際 この二つ の統計性 を分離 できるよ うな思考実験 は存 在 しない。 ( 3 )Sに起 る変化 を我 々が外 ( A ) か ら観測 しよ うとす る とき,Sは合成系 ( S+A) の部分系に 過 ぎな くなる。合成系が た とえ純粋状態 ( p s 2 .Ap s.A)で あって も部分系 ( p s… T r A( p s .A) ) は一般 に混合状態 ( p 呈≠ p s) であ り,従 って統計演算子 で記述す る しかない。 あ る瞬 間 に p s が純粋状態で あって も, SとAの相互作用 がある限 りそれ は早晩混合状態に陥 る。全宇宙 が純 粋状態か否 かを判断 し得 るのは,その外 にあってそれ と相互作用 しない神 のみで あ り, 内にあ って相互作用の
o b a t a @ m a t h・ n a g o y a -u・ a c ・ J p l は じめに 揺 らぎを含む物理現象の時間発展は確率微分方程式で記述 され る. 確率積分が厳密 に定式 化 され, 確率微分方程式の基礎付 けがな されたのは 1 9 4 0年代のことであ り, 伊藤理論 として 広 く知 られているが,半世紀 を経た今 日では,よ り無限次元解析 としての色彩が強ま りなが ら様 々に発展 している.それらは, 包括的に 「 確率解析」 と呼ばれているが, そ こでは,ラン ダム性 を無限 自由度に言い換 え, 確率的な対象 を無限次元的な対象 に変換 して議論がな され る.この観点に立つことで, 超関数論な どの関数解析的手法が導入 され易 くな り, 理論が大き く発展す るのである.無限次元解析は,理論構成上の 自由度 も大きく, 何 を礎 とす るかによっ て様 々な流儀がある.なかでも Ma l l i aS c h wa r t zの超関数論によっ て, それまでは意味が暖味であった Di r a cのデル タ関数が正 当化 され, 計算ルールが厳密に 与えられたよ うに, ホワイ トノイズに厳密な定式化が与えられ, 文献に散見 され る 「 形式的」 計算 ( 通常の微積分 と同様な計算) が, ホワイ トノイズ解析の枠組みで理解 され るようになる・ 多 くの場合, 形式的計算 を結果的に正 しい と認めることになっても, ホワイ トノイズ解析が理 論 として意味を失 うものではない.' s c h wa r t z超関数論が, 結局は, デル タ関数な どの形式的 計算 を追認す ることになって も, S c h wa r t z超関数論が不要にはな らないの と同 じである, ホワイ トノイズ解析は,当初, 伊藤解析の拡張 としてスター トした 【 1 5 ]ため, 対象は 「 古 典」確率論の範境 を出るものではなかった.一方,量子確率解析 は, その創始 t 2 1 ]の頃か ら, 量子物理の問題意識か らであろ うが,ヒルベル ト空間論か ら離れず に発展 してきた とい う経 緯がある.その両者のアイデアを融合して,さらなる展開を 目指す試みは,ホ ワイ トノイズ 作用素論 [ 3 3 ]の一応の完成 とともに, 1 9 9 2 年 ころか ら開始 したが,目下の状況は発展の好機 を思わせ る.本誌上において も,ホワイ トノイズ解析の基礎理論 とともに,ホワイ トノイズ による量子確率積分, 量子確率過程のホワイ トノイズによる表示, 量子確率微分方程式 とホ ワイ トノイズ方程式の関連な どについて報告 してきた [ 3 5 ] ,岡 ,【 3 9 ] ・本論文では,高次の ホワイ トノイズ ( ホワイ トノイズの非線形関数)をノイズ項 として含む量子確率微分方程式 を, 「 正規積 ホ ワイ トノイズ微分方程式」 として定式化 し, 解の一意存在 を論 じる.その際, Co c h r a n -Ku o -S e n g u p t a[ 1 4 】による一般的な枠組みが有用である.実際,これまでに,空間を 拡張 して解の存在 を保証す るとい う形の定理 ( 超関数的な解の存在) については十分論 じてき た [ 4 0 ] , [ 4 1 日 4 3 日 4 4 ]ので, 本論文では, 解がいつ F o c k空間の ( 非有界) 作用素になるか ( 超 -「 第 6回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 の簡略形であ り,この積分は伊藤型量子確率積分を意味す る.さらに, 方程式 ( 2 .3 ) は, 指数ベ ク ト ル に関す る行列要素 ( これ を作用素 シンボル とい う) に対す る方程式に書 き直せ ば, 《 X擁 , 4 , 刀 ) ) -《 4 , i , 4 , り )+ / E t ( 《に等 しくなる・したがって, ( 2 .5 ) か ら作用素の部分だけを取 り出せ ば, X i -I + / -- とな り, さらに tで微分すれ ば, d Xl d t ( L l a : Xs a s +L 2 Xs a s +L 3 a s * Xs +L 4 Xs ) d s -L l a ; Xt at +L 2 Xt al +L3a ; Xl +L4Xl , X ( 2 .6 ) -I , ( 2 .7 ) となる・最後 に, 場 の理論で使 われ る正規積 ( Wi c k 積)を用いて書 き直す.Wi c k積 を ◇で表 せ ば, a s ◇at-a s a t , a s * ◇at-a s * a t , a s ◇a ;-a i * a s , a s * ◇a l * -a ; a i * ・ また, 一般 の作用素 X に対 しては, ( a ; 1 ・ ・ ・ a s * l a t l-・ a t m )◇ X-a ; 1 -・ a s * , Xa t l・ -ai m なる性質 を持つ.したがって, ( 2 .7 ) は Wi c k積 に関す る線形方程式 ( L l a l * at+ L 2 a t +L 3 a l * +L4)◇Xl , X-I, ( 2 .8 ) に帰着 され る・こ うして, 量子確率微分方程式 ( 2 . 1 ) は, 単純な線形方程式 ( 2 .8 )と同値 となる.