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Journal of the Spectroscopical Society of Japan

総説

Ryugo Hayano

Published Jan 1, 2010• 0 citations
Publisher

Abstract

1) もちろん,反陽子の電荷が負であるから,反陽子ヘリウム原 子と通常の分子とは非常に異なる.しかし,後に述べる理由 で反陽子ヘリウム原子の準安定状態では反陽子が非常に大き な角運動量を持つため,クーロンポテンシャルと遠心力ポテ ンシャルとの和が二原子分子の原子間の相互作用ポテンシャ ルエネルギーに類似したものになり,分子的な描像も成り立 つのである. (2) ASACUSA は ``Atomic Spectroscopy And Collisions Using Slow Antiprotons'' の頭文字ではあるが,日本を中心とする チームであることを示すべく,アサクサ(=浅草)と発音す る. (3) C 変換(粒子と反粒子の入れ替え) ,P 変換(空間反転) ,T 変換(時間反転)を同時に行えば,相互作用の如何によらず, 物理法則は不変に保たれるという定理. (4) 陽子・電子質量比は,ペニングトラップを用いて決定されて いる.CODATA 2002に採用された最新値(マインツ大とド イツ GSI 研究所の実験グループによるもの)は, 12 C 5+ イオ ンをペニングトラップで捕獲して,そのサイクロトロン周波

DOI
10.5111/bunkou.59.1_3

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量子動力学シミュレーション入門 --量子ウォークを例にして-- (第61回物性若手夏の学校 集中ゼミ)

Yutaka Shikano

動的な物理現象への理解に向けた取り組みは、個々の豊かな物性現象を調べるだけではなく、数学的なトイモデルの性質を活かしたトップダウン的アプローチも試みられている。中でも量子現象の動的な性質は理論的には干渉効果をきちんと議論しなければならず、実験的には量子現象だけを純粋に取り出すことが極めて難しい。本ゼミでは、量子動力学現象を記述するための道具である「量子ウォーク」に関して、その理論的性質と実験による実装方法とその困難さに関して解説を行う。量子ウォークとは名前が示す通り、物理現象を説明する道具として使われているランダムウォークを量子力学の公理系の中で定義しようとした際に自然に定義されるものである。だがしかし、シンプルな定義からでは一見想像できないような多彩なダイナミクスを模写することが出来る。Schr odinger 方程式、Dirac 方程式やKlein-Gordon 方程式をトイモデルから統一的に理解することが出来るという点において、「量子動力学シミュレーション」と呼ぶ。また、近年の実験技術の飛躍的な向上により、数学的なトイモデルとして扱われてきた量子ウォークが中性原子・イオン・光の物理系において実装可能となり、量子効果を巧みに組合わせた実験系を構築することで量子情報科学や多体系量子論の問題へのアプローチも試みられている。

•Nov 1, 2017•0 citations

Atomic collisions with ultra slow antiprotons

Y. Yamazaki

Recently, a new project, ASACUSA (Atomic Spectroscopy And Collisions Using Slow Antiprotons), has started, which aims at studying collision dynamics with slow antiprotons and high precision spectroscopy of antiprotonic atoms. It is expected that the ultra slow monoenergetic antiproton beams will open a new physics regime relating to antimatter science under very well controlled conditions. In the present report, several research plans, which includes ionization, excitation, stopping power, channeling, antiprotonic atom formation, high resolution antiprotonic atom spectroscopy, etc. are discussed. The way to prepare ultra slow antiprotons is also presented.

AIP conference proceedings•Jan 1, 2000•0 citations

Trapping, cooling and extraction of antiprotons, and the ASACUSA project

Y. Yamazaki

Ultra slow mono-energetic antiproton beams are under preparation combining novel techniques to decelerate antiprotons with an RFQD (Radio Frequency Quadrupole Decelerator), to trap, cool, and compress in an electromagnetic trap, and finally to extract as an ultra slow mono-energetic beam. This unique beam will make it possible to study the ionization processes around adiabatic energy regions, channeling, stopping power, antiprotonic atom formation processes under single collision conditions, to prepare metastable antiprotonic atoms such as p̄p, p̄He+, p̄He++, p̄Li+ in vacuum, and to make high precision laser spectroscopy of them. This project named ASACUSA (Atomic Spectroscopy And Collisions Using Slow Antiprotons) is expected to open a new physics regime in antimatter science under well controlled conditions.

AIP conference proceedings•Jan 1, 1999•3 citations

古典力学的手法による原子・分子の探求(修士論文(1993年度))

知幸 山本

この研究で扱うような原子・分子の古典モデルの歴史は1920年代にまで遡る。その発端は、Bohrの水素原子のモデルでは成立した量子古典対応がヘリウムでは成立しないことだった。量子論の前夜の事件であるが、それは今なお未解決の部分を多く含む問題なのである。量子と古典の間の深い溝は、その両者が異質なものであるということである。しかし、同じ自然に対する複数の記述方法である以上、それらの適用範囲が広がるにつれ交錯する分野が現われるのは必然である。その領域においては、何らかの橋渡しが出来ていなければならない。だがそれはそれぞれに関する深い知識がなければ構築できない類のものである。量子カオスという研究分野はおもにその橋渡しを追求するが、この研究はむしろ古典系側の基盤を探るものである。古典系に話を限っても、ヘリウム原子ですら三体問題であり、カオス的な性質を持つハミルトン系(保存力学系)である。運動を決定する積分が足りないために、系の運動を統一的に記述することは未だなされていない。ハミルトン系の相空間の構造は非常に複雑であるので、高い解像度で観察する必要がある。つまり、これらの系における困難とは、広大な初期条件空間をくまなく探索しなければならないということなのである。そうしてはじめて量子系との対応を議論できるようになる。そのような作業の結果としてこの研究で見出されたことは、1)カオス的な軌道は全て原子から無限遠へ飛び出す(イオン化を起こす)、2)相空間には非自明なトーラスが埋め込まれている、3)カオスとトーラスの織りなす非常に複雑な構造が見出されたことである。また、それらを応用して原子や分子の古典力学的な表現を探求している。原子や分子のモデルを、クーロン力によって相互作用する独立した粒子のシステムとして扱う場合、ほとんど単純化をせずに相空間を広汎に調べた研究というものはあまり例がない。そして、その結果として幾つか重要と思われる知見が得られている。単純化したモデルにおいて量子古典対応を研究した例は非常に多いが、それでだけでは量子古典対応などの問題の未解決な点をあらわにすることは出来ないのではないかと考えられる。なお、この論文内での約束事は次の通りである。1)軌道の初期条件で、とくに記していない変数はその配置で決まっているか、そうでなければ0である。2)先に刊行されている論文[1]との用語の統一を図るため、トーラスの名称などはとくに英語で記した。3)物性研究版では、本文と図の一部が省略されている。

Bussei Kenkyu•Jul 20, 1994•0 citations

多次元振動分光スペクトルによる散逸性量子トンネル過程の理論的解析(修士論文(2004年度))

Akihito Ishizaki

散逸の影響を受ける量子トンネル過程は、物理学から化学そして生命現象に至るまで多くの分野において重要な役割を果たしており、これまでにも精力的に調べられてきた。しかし、その理論的取扱いや実験的観測の難しさが、多くの興味ある問題の解決を困難なものにしている。本研究では、有色ノイズを生む調和振動子熱浴と結合した1次元対称二連井戸ポテンシァル系を考察する。この系は、分光学的にも興味が持たれている凝縮相中のプロトン移動異性化反応を記述するモデルである。系と熱浴の相互作用としては、散逸(縦緩和と横緩和)を引き起こす従来の線形-線形結合だけでなく、周波数揺動による純粋位相緩和を誘起する非線形-線形結合をも考慮する。このような系に対して、久保の確率過程的Liouville方程式を拡張したGauss-Markov量子Fokker-Planck方程式を解き、双極子μ(Q^^^)の四体相関関数で定義される二次元赤外シグナルを計算した。その結果、入射レーザーパルスの位相整合条件で決まる特定の方向で観測される二次元赤外シグナルの非対角ピークから、トンネル分裂準位間の熱的励起・緩和過程が分離されて観測できることが示される。トンネル分裂準位という真に量子的な系に対する凝縮相の散逸効果を視覚的に捕らえることができるのである。また、従来の実験技術では測定が困難であった凝縮相中のプロトン移動反応の速度定数が、二次元赤外スペクトルからは簡単に評価できる可能性が示される。多次元振動分光法は、凝縮相化学反応の速度定数を測定する新しい技術であると言えよう。

Bussei Kenkyu•Nov 20, 2005•0 citations

Antiproton Interferometry and Aharonov–Bohm Effect (AIABE)

Andrey Alexandrov, Takashi Asada, Matías Bayo +22 more

The Aharonov–Bohm (AB) effect is one of the most striking features of quantum physics, and it is of critical importance to elucidate the role of the electromagnetic potential and its physical meaning. In spite of the fact that it was first proposed in 1949, up to now it has only been demonstrated for electrons and neutrons. We propose the realization of an experiment to study the AB effect for the antiproton, which will have the double feature of being a non-elementary charged particle and at the same time an antiparticle. The experiment will be conducted in collaboration with the ASACUSA (Atomic Spectroscopy And Collisions Using Slow Antiprotons) group at the CERN AD (Antiproton Decelerator), making use of a slow antiproton beam.

Symmetry•Jul 1, 2026•0 citations
  1. もちろん,反陽子の電荷が負であるから,反陽子ヘリウム原 子と通常の分子とは非常に異なる.しかし,後に述べる理由 で反陽子ヘリウム原子の準安定状態では反陽子が非常に大き な角運動量を持つため,クーロンポテンシャルと遠心力ポテ ンシャルとの和が二原子分子の原子間の相互作用ポテンシャ ルエネルギーに類似したものになり,分子的な描像も成り立 つのである. (2) ASACUSA は ``Atomic Spectroscopy And Collisions Using Slow Antiprotons'' の頭文字ではあるが,日本を中心とする チームであることを示すべく,アサクサ(=浅草)と発音す る. (3) C 変換(粒子と反粒子の入れ替え) ,P 変換(空間反転) ,T 変換(時間反転)を同時に行えば,相互作用の如何によらず, 物理法則は不変に保たれるという定理. (4) 陽子・電子質量比は,ペニングトラップを用いて決定されて いる.CODATA 2002に採用された最新値(マインツ大とド イツ GSI 研究所の実験グループによるもの)は, 12 C 5+ イオ ンをペニングトラップで捕獲して,そのサイクロトロン周波
動的な物理現象への理解に向けた取り組みは、個々の豊かな物性現象を調べるだけではなく、数学的なトイモデルの性質を活かしたトップダウン的アプローチも試みられている。中でも量子現象の動的な性質は理論的には干渉効果をきちんと議論しなければならず、実験的には量子現象だけを純粋に取り出すことが極めて難しい。本ゼミでは、量子動力学現象を記述するための道具である「量子ウォーク」に関して、その理論的性質と実験による実装方法とその困難さに関して解説を行う。量子ウォークとは名前が示す通り、物理現象を説明する道具として使われているランダムウォークを量子力学の公理系の中で定義しようとした際に自然に定義されるものである。だがしかし、シンプルな定義からでは一見想像できないような多彩なダイナミクスを模写することが出来る。Schr odinger 方程式、Dirac 方程式やKlein-Gordon 方程式をトイモデルから統一的に理解することが出来るという点において、「量子動力学シミュレーション」と呼ぶ。また、近年の実験技術の飛躍的な向上により、数学的なトイモデルとして扱われてきた量子ウォークが中性原子・イオン・光の物理系において実装可能となり、量子効果を巧みに組合わせた実験系を構築することで量子情報科学や多体系量子論の問題へのアプローチも試みられている。
Recently, a new project, ASACUSA (Atomic Spectroscopy And Collisions Using Slow Antiprotons), has started, which aims at studying collision dynamics with slow antiprotons and high precision spectroscopy of antiprotonic atoms. It is expected that the ultra slow monoenergetic antiproton beams will open a new physics regime relating to antimatter science under very well controlled conditions. In the present report, several research plans, which includes ionization, excitation, stopping power, channeling, antiprotonic atom formation, high resolution antiprotonic atom spectroscopy, etc. are discussed. The way to prepare ultra slow antiprotons is also presented.
Ultra slow mono-energetic antiproton beams are under preparation combining novel techniques to decelerate antiprotons with an RFQD (Radio Frequency Quadrupole Decelerator), to trap, cool, and compress in an electromagnetic trap, and finally to extract as an ultra slow mono-energetic beam. This unique beam will make it possible to study the ionization processes around adiabatic energy regions, channeling, stopping power, antiprotonic atom formation processes under single collision conditions, to prepare metastable antiprotonic atoms such as p̄p, p̄He+, p̄He++, p̄Li+ in vacuum, and to make high precision laser spectroscopy of them. This project named ASACUSA (Atomic Spectroscopy And Collisions Using Slow Antiprotons) is expected to open a new physics regime in antimatter science under well controlled conditions.
この研究で扱うような原子・分子の古典モデルの歴史は1920年代にまで遡る。その発端は、Bohrの水素原子のモデルでは成立した量子古典対応がヘリウムでは成立しないことだった。量子論の前夜の事件であるが、それは今なお未解決の部分を多く含む問題なのである。量子と古典の間の深い溝は、その両者が異質なものであるということである。しかし、同じ自然に対する複数の記述方法である以上、それらの適用範囲が広がるにつれ交錯する分野が現われるのは必然である。その領域においては、何らかの橋渡しが出来ていなければならない。だがそれはそれぞれに関する深い知識がなければ構築できない類のものである。量子カオスという研究分野はおもにその橋渡しを追求するが、この研究はむしろ古典系側の基盤を探るものである。古典系に話を限っても、ヘリウム原子ですら三体問題であり、カオス的な性質を持つハミルトン系(保存力学系)である。運動を決定する積分が足りないために、系の運動を統一的に記述することは未だなされていない。ハミルトン系の相空間の構造は非常に複雑であるので、高い解像度で観察する必要がある。つまり、これらの系における困難とは、広大な初期条件空間をくまなく探索しなければならないということなのである。そうしてはじめて量子系との対応を議論できるようになる。そのような作業の結果としてこの研究で見出されたことは、1)カオス的な軌道は全て原子から無限遠へ飛び出す(イオン化を起こす)、2)相空間には非自明なトーラスが埋め込まれている、3)カオスとトーラスの織りなす非常に複雑な構造が見出されたことである。また、それらを応用して原子や分子の古典力学的な表現を探求している。原子や分子のモデルを、クーロン力によって相互作用する独立した粒子のシステムとして扱う場合、ほとんど単純化をせずに相空間を広汎に調べた研究というものはあまり例がない。そして、その結果として幾つか重要と思われる知見が得られている。単純化したモデルにおいて量子古典対応を研究した例は非常に多いが、それでだけでは量子古典対応などの問題の未解決な点をあらわにすることは出来ないのではないかと考えられる。なお、この論文内での約束事は次の通りである。1)軌道の初期条件で、とくに記していない変数はその配置で決まっているか、そうでなければ0である。2)先に刊行されている論文[1]との用語の統一を図るため、トーラスの名称などはとくに英語で記した。3)物性研究版では、本文と図の一部が省略されている。
散逸の影響を受ける量子トンネル過程は、物理学から化学そして生命現象に至るまで多くの分野において重要な役割を果たしており、これまでにも精力的に調べられてきた。しかし、その理論的取扱いや実験的観測の難しさが、多くの興味ある問題の解決を困難なものにしている。本研究では、有色ノイズを生む調和振動子熱浴と結合した1次元対称二連井戸ポテンシァル系を考察する。この系は、分光学的にも興味が持たれている凝縮相中のプロトン移動異性化反応を記述するモデルである。系と熱浴の相互作用としては、散逸(縦緩和と横緩和)を引き起こす従来の線形-線形結合だけでなく、周波数揺動による純粋位相緩和を誘起する非線形-線形結合をも考慮する。このような系に対して、久保の確率過程的Liouville方程式を拡張したGauss-Markov量子Fokker-Planck方程式を解き、双極子μ(Q^^^)の四体相関関数で定義される二次元赤外シグナルを計算した。その結果、入射レーザーパルスの位相整合条件で決まる特定の方向で観測される二次元赤外シグナルの非対角ピークから、トンネル分裂準位間の熱的励起・緩和過程が分離されて観測できることが示される。トンネル分裂準位という真に量子的な系に対する凝縮相の散逸効果を視覚的に捕らえることができるのである。また、従来の実験技術では測定が困難であった凝縮相中のプロトン移動反応の速度定数が、二次元赤外スペクトルからは簡単に評価できる可能性が示される。多次元振動分光法は、凝縮相化学反応の速度定数を測定する新しい技術であると言えよう。
The Aharonov–Bohm (AB) effect is one of the most striking features of quantum physics, and it is of critical importance to elucidate the role of the electromagnetic potential and its physical meaning. In spite of the fact that it was first proposed in 1949, up to now it has only been demonstrated for electrons and neutrons. We propose the realization of an experiment to study the AB effect for the antiproton, which will have the double feature of being a non-elementary charged particle and at the same time an antiparticle. The experiment will be conducted in collaboration with the ASACUSA (Atomic Spectroscopy And Collisions Using Slow Antiprotons) group at the CERN AD (Antiproton Decelerator), making use of a slow antiproton beam.