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マクロ化創発のパラドックス(第62回物性若手夏の学校 講義)

泉 小嶋

Published Nov 1, 2017• 0 citations
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Abstract

ミクロ/マクロ, 量子/古典の相互関係は, 前者での物理量の非可換性が「古典極限」ℏ→ 0 で消えて可換変数を持つ古典論が現れ, 逆に後者を「量子化」し正準交換関係で量子論的非可換性を持込めば量子論が得られる, というのが常識的・標準的な「量子古典対応」の理解だろう。こういう常識的想定が崩れ, ミクロレベルに存在しなかった物理的自由度, 物理変数がマクロレベルで物理的自由度に「化ける」状況とそこではどんなメカニズムが働くのか? をここでは論じたい。典型例は量子電気力学における縦波Coulombモード : 量子論的ミクロレベルにCoulombモードは存在せず, 縦波光子はたとえ「存在」しても観測に掛からない「非物理的モード」だというのが「ゲージ場の共変的演算子形式」の結論だが, しかしマクロレベルには立派にCoulombモードが存在して電荷間のポテンシャルを記述する。この見方でBCS超伝導理論とHigg機構とを比較すれば, 前者に存在するCooper対が後者では「非物理的モード」として消去され, 両者の間には重要な食い違いが残る。ここで重要な役割を担うのは長らく「悪者扱い」されてきた「不定計量」だが, 実は, 熱力学, 統計力学の文脈も踏まえて見直せば, そこからはもっとダイナミックな物理が展開する! 無限自由度系の統計力学や超伝導モデル等々の例を通して, 鞍点法との面白いつながりを読み解くことを試みよう。

DOI
10.14989/229043

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にある物理に関する新たな知見を得るための強力な実験的手段となるであろう.また,量子物質設計や量子化学 計算などのように潜在的に「量子」の言語で定義された問題を解く上で量子コンピュータが役に立つことは言うま でもなく,今後,機械学習などの一見量子とは関係のない分野においても量子コンピュータがその実現の困難性を 引いても余りあるような貢献をする可能性もある. 一方,情報や計算といった概念は,通常の物理系学部の学生はあまり触れてこなかったと思う.よって,一通り 慣れてしまうまでは,議論の展開が殺伐としていて(それが良いところでもあるのだが)物理とのつながりが感 じにくく思われるかもしれない.最近では,小さいサイズではあるが万能性がある真の量子コンピュータ(IBM quantum experience)がウェブ上で公開されており,誰でも(今のところ)無料で利用することができる.この テキストに書かれていることを自分でサーバー上の量子コンピュータを使って確認してみるのもよいであろう. 今回は,量子デバイスの物理には踏み込む余裕はないが,量子コンピュータの理論は,それを支える量子デバイ スの物理や実験技術の蓄積に支えられている(従来のコンピュータが固体物理学や半導体技術の蓄積によって支 えられているように) .量子コンピュータを実現するためには,超伝導量子ビットに代表されるような量子情報デ バイスの物理をよりよく理解し,それを制御するための技術も重要な鍵となってくる.実験に興味がある意欲的 な学生は,量子情報デバイスの物理にも挑戦してもらいたい. 《講義ノート》 物性研究・電子版 Vol. 6, No. 4, 064217(2017年11月号) * 1 内積とは,線型空間の任意の2つの元 |ψ⟩ と |ϕ⟩ と複素数 (|ψ⟩, |ϕ⟩) ∈ C に対応させたものである. * 2 完備性とは,コーシー列 ∥|ψ⟩n -|ϕ⟩m∥ → 0 が空間の元 |ψ⟩ に収束する ∥|ψ⟩n -
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単独の電子は,質量・電荷・スピンで特徴付けられ,その性質は定量的によくわかっている。しかし,このような電子が多数集まると,非常に豊かで思いがけない性質を示す。固体中に凝縮した電子が示す超伝導,強磁性,分数量子ホール効果などはその例である。単独の電子の固有状態は,自由空間では平面波であるが,多数の電子の固有状態は必ずしも平面波ではない。すなわち斥力相互作用が強いと,平面波状態は不安定になり,多数の電子は自発的に局在する。この状態は,電子の結晶とみなせる。それでは逆に,平面波状態(フェルミ液体状態)は電子間の相互作用があっても生き残れるか,と問うこともできる。実はこの答えは単純ではない。その際,系の次元性が本質的に重要になる。この講義では,量子多体系としての電子系が示す興味ある性質を理解するために,単純な例から出発して重要な基本概念を説明する。特に,近藤効果,朝永・ラッティンジャー流体,モット絶縁体,動的有効場などを直感的に理解できるようにしたい。また,できるだけ最近の実験結果を含む新しい例題を選んで,量子多体系に関する最先端研究の現状がわかるようにしたい。