数理解析研究所講究録
Boson-Fermion Fock 空間上の無限次元解析(ホワイトノイズ解析と量子確率論)
Asao Arai
Abstract
Boson-Fermion Fock空間上のあるクラスの Dirac 型作用素に対し ては, 汎関数積分 (径路積分) 表示による指数定理を確立することができ た [7,13,15].上述の研究には実は物理的な背景と動機づけがある. これを以下簡単 に説明しておこう.よく知られているように, 物質を構成する究極的な要 素は "素粒子" とよばれる.素粒子は, 粒子とはいっても, 古典力学的な意 味での粒子ではなく, "波動一粒子の 2 重性" を有し, 生成したり, 消滅し たりすることが可能である.このような, 古典物理学ではとらえられない, 素粒子の世界の法則を記述するためのひとっの理論として構想されたのが 場の量子論であった.この理論では, 各素粒子に付随する "量子場 $\circ$ ' なる概 念を用いて, 素粒子の諸々の特性が記述される.素粒子問の相互作用は量 子場どうしの相互作用として表現される.各素粒子は, ある内部自由度をもち, この自由度に関する "回転" の角 運動量として " スピ $\sqrt[\backslash ]{}$ とよばれる特性量を担っている.スピンの値は整数 $(0,1,2, \cdots)$ または半整数 $($ 1/2, 3/2, $\cdots)$ のいずれかである.スピンが整数 の素粒子はボソン (boson) , 半整数 $($ 1/2, 3/2, $\cdots)$ の素粒子はフェルミオン (fermion) とよばれる.ボソンとフェルミオンは互いに異なる性質をもち, このことは理論的にも異なる形式となって現われる.