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数理解析研究所講究録

トロイダル量子群とBethe仮設 [仮説] (可積分系数理の現状と展望)

道夫 神保

Published Apr 1, 2018• 0 citations
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Abstract

t hr m{ K} \ma t hr m{ d } \ma t hr m{ V} 方程式の保存量と一致するので、それら が定める量子可積分系を量子 \ma t hr m{ K} \ma t hr m{ d} \ma t hr m{ V} 系ということがある。K} \ ma t h r m{ d } \ ma t h r m{ V} 系の変形 Virasoro アナログを導入した。本来の IM はlocal density (すなわち Virasoro 代数のカレント T(u) の微分多項式) の1重積分の形をしており local IM と よばれるが、[BLZ2] はまた non-local IM とよばれる別の可換な系列 \ma t hr m{ G} _ { 1} , G2, \cdots を T(u) の多重積分の形で導入し ている。local IM と non-local IM どうしもまた互いに可換である。[FKSW] は変形 Virasoro 代数のカレントおよ びスクリーニングカレントを用いてそれぞれ \mat hbb{ I } _ { N} , \mat hr m{ G} _{ N} の類似を定義し、直接計算によってそれらの可換性を示して いる。(なお変形アナログでは \ma t hb b { I } _ { N} はlocal density の積分ではないが、[FKSW] にならって \mat hbb{ I } _ { N} , \mat hr m{ G} _{ N} の類似もそれ ぞれ ( 1 \ ma t h r m{ o } \ ma t h r m{ c } へ" "non-locaJ" とよぶことにする。) 変形アナログの IM の固有値についてはこれまで知見がなかった。その一つの理由は、[FKSW] の時点ではこれ らIM の正体がよくわからなかった点にあると思われる。その後 \mat hr m{ W} 代数の理論や AGT 予想などの進展を経て、 (本来の) IM は適当な量子代数の \ma t hr m{ R} 行列の転送行列から得られるということが認識されるようになった。本稿では[Sa], Ni], [Ng], [FJMM] などを参照していただくことにし、ここでは $ \ v a r e p s i l o n $ _ { n } の特 徴を挙げるにとどめる。 \bul l et \ ma t h c a l { E} _ { n } は量子化のパラメタ q の他にもう一つ独立なパラメタ q_{1} を持つ。以下 q_{1}q_{2} q3= 1 を満たすパラメタ 数理解析研究所講究録 第2071巻 2018年 160-164

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じめに 量子逆散 乱法 の発展 に伴 い, 1 +1次元の場の量子論, 2次元の統計力学, 1次元量子 ス ピ ン系, における解 けるモデルの共通性 が明 らかになって きた.1)量子逆散 乱法 には,連続 型 の 理論 ( T h a c k e re ta l .)2)と離散型の理論 ( F a d e e ve ta l .) 3)が あ る.特 に, 離 散 型 の理 論 は, Ya n g ・ B a x t e r 関係式 を軸 と して,転送行列 の方法, B e t h e仮説法, S行列の因子化理論,等 の量 子完全可積分系の解法 の統一的理解 を与 える.ここでは,従 来 の B e t h e 仮説 法 ( c o o r d i n a t e B e t h ea n s a t z )4)の一般的 な形 を,離散型 の量子逆散乱法から導 く.これは同時 に B e t h e仮 説 の証 明 を与えることになる.以下では,特に任意ス ピンのHe i s e n b e r g モデル 5 ,6)を例 に挙 げて説 明 す る.§2 Ya n g -B a x t e r 関係式 量子逆散乱法の基礎 となるのは,次のYa n g ・ B a x t e r 関係式 ( YBR ) 5 ) であ る.a t ev e r t e x mo d e l 7) ぉ よび,それ と等価 なHe i s e n b e r gXXX 5 ) ,ⅩⅩZ6) mo de l , 8) l a t t i c en o n li n e a rS c h r 6 d i n g e rmo d e l 8) , l a t t i c eS i n e ・ Go r d o n mo d e l8)等 が含 まれ る. 例 )He i s e n b e r gXXX mo d e l( 任意 ス ピン) 5 ) o s RO n ( i)-王二払 z o ㊥In+ 7 0 ㊥ ?n 2 亡± f i s ( 玉 ㊨ 柔 ト -i j = Ok =11 + kl Z 書写 x , ・ x ∠ -3 2-2 ∫ ノ s s RO n( i)--Z : 〈ロ ( 2 ,2) ( 2 ,3)

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量子ウォークの弱収束定理とスペクトル・散乱理論 (スペクトル・散乱理論とその周辺)

章斗 鈴木

この稿では,スペクトル散乱理論の視点に立って,量子ウォークにおける弱収束定理 の概説を試みる.量子ウォークには,大きく分けて,連続時間のものと離散時間のものの2種類がある.連続時間の場合は,グラフ上のラプラシアンをハミルトニアンにもつ量子力学系に他ならず,離散シュレディンガー作用素の研究の射程に入る [6].離散時間の場 合は,時間発展がハミルトニアンから定まらないので,それ特有の扱いが必要になる.この稿では,離散時間量子ウォークに焦点を絞り,単にそれを量子ウォークという.量子ウオークの起源については諸説あるが,古くは1960年代のFeynmanとHibbsに よる経路積分の教科書 [10] にその原型がみらる.80年代には,Gudderの著書 [15] の中 で,Dirac 方程式の離散版として登場する.その後,2000年に前後して,量子アルゴリズムへの応用 [14, 1, 32] の道が開かれると,量子ウォークの研究はいよいよ盛んになる.2002年,今野 [20] が量子ウォークに対する弱収束定理をはじめて証明すると,多くの数 学者が研究に加わるようになる.量子ウォークの理論やアルゴリズムへの応用に関する比較的最近までの結果については,[22, 27, 33] などが参考になる.量子ウォークが実験室レベルで実現できていることは,特筆すべき点である.しかも,さまざまな実現方法があ り,それらをまとめたものが,既に成書として出版されている [24].以下,本稿のテーマである弱収束定理を少し詳しくみていこう.量子ウォーカーの時間発展は,状態のヒルベルト空間 \ma t hc a l { H} 上のユニタリ作用素 U を用いて表される.量子ウォー2017年 86-108 でいえば \ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } \ ma t h r m{ E} ( e {i $ \ x i $ X_ { \ ma t h r m{ t } } / t } ) = \ ma t h r m{ E} ( e {i $ \ x i $ V} ) , $ \ x i $ \ i n \ ma t h b b { R} となる.これが,ランダムウォークにおけるdeMoivre-Laplace の定理,または中心極限 定理の量子版とみなせることを2節で説明する.今野が最初に示した弱収束定理 [20, 21] では,空間一様なコインをもつ1次元量子ウオー クを考え,量子ウォーカーは初期時刻で原点にのみ存在すると仮定された.証明は,組合せ論的手法を用いて行われた.この場合は,状態のヒルベルト空間は\mat hcal { H} =\el l ^{ 2} ( \mat hbb{ Z} ; \mat hbb{ C} ^{ 2} ) で与 えられ,時間発展のユニタリ作用素は U=SC と表せる.ここで,S はシフト作用素, C はコイン作用素と呼ばれるユニタリ作用素であ る.一般に , コイン作用素は,ユニタリ行列値の関数 \mathbb{Z}\ni x\mapsto C(x)\in U(2) による掛け 算作用素である.\ri ght arrowt)/t} の t\rightarrow\infty の極限で得られる ユニタリ群の生成子 \hat { v} の分布を,フーリエ表示で求めた.\hat { v} は速度作用素とか漸近速度作 用素と呼ばれる.このとき,X_{t}/t の弱極限分布は,漸近速度 \hat { v} のスペクトル測度をもち いて, \Ver t E_{ \hat { v} } ( \cdot ) $\Psi $_{ 0} \Ver t ^{ 2} と表せる.彼らが用いた手法は,GJS法と呼ばれ,今野の定理の証明 の簡略化に貢献した.また,今野の定理[20, 21] における初期状態に関する制限も除か れた.GJS 法については,本稿でも重要な地位を占めるので,3節でやや詳しく触れる.GJS 法の肝は,時間スケールされた位置作用素 \hat{x}(t)/t は, t\rightarrow\infty のとき,フーリエ変 換によって,漸近速度のに対角化される ということである.コインが空間に依存する場合は,並進対称性が失われるので,GJS 法はうまく機能しな い.原点でのみでコインが異なる one defectモデルや,原点を境に右と左でコインが異 なる2相系の量子ウォークでは,母関数法を用いた弱収束定理の証明法が開発されている [23, 7, 8].より一般の空間依存があるコインに対しては,スペクトル散乱理論の考え方 が有効である [31].そのために,あるユニタリ行列 C_{\infty}\in U(2) が存在して \di spl ayst yl e \l i m_{ x\r i ght ar r ow\i nf t y} C( x) =C_{ \i nf t y} , x\i n \mat hbb{ Z} (1.2) となる場合を考える.先に紹介したone defectモデルや,有限の点でのみコインが異な る量子ウォークは,当然この範躊に入る.量子ウオークにおけるスペクトル・散乱理論の有効性を概説するのが,本稿の主目的である.射影で, $\Pi $_ { \ma t hr m{ a } \ma t hr m{ c } } ( U) は, U の絶対連続部分空間 \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) への射影である.量子ウオークの弱収束定理がその古典版である中心極限定理と違うのは,線形的広がり と局在化といわれるの2つの性質が表れる点にある.弱収束定理により, X_{t}/t が V に法 則収束することがいえると, t\rightarrow\infty で,形式的に X_{t}\sim tV と表せる.このことを,線形的広がりという.定義によって,V の分布は, t\rightarrow\infty にお ける量子ウォーカーの速度分布と考えるのが自然である.従って,量子ウォークの弱収束 定理は,量子ウォークの時間漸近的な速度分布の存在定理といえる.一方,局在化とは,V の分布が原点に台をもつ Dirac 測度をもつことをいう.すなわち,P(V=0)>0 である.つまり, t\rightarrow\infty では,速度ゼロになる確率 P(V=0) は,ゼロでない 線形的広がりには,絶対連続部分 e^{ i $\xi $\hat { x} ( t ) /t } $\Pi $_{ \mat hr m{ a} \mat hr m{ c} } ( U) が寄与する.条件(1.3) の下では,加 藤Rosenblum の定理 [28, Theorem XI.8] の離散版 [18, 19, 31] を考えると,ユニタリ作 用素 U=SC と U_{\infty}=SC_{\infty} に対する波動作用素s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } U{-t } U_ { \ i n f t y } {t } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U_ { \ i n f t y } ) , s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w \ i n f t y } U _ { \ i n f t y } {-t } U {t } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U ) (1.4) が存在する.波動作用素に対する一般論によって,(1.4) の最初の極限を W_{+} とおくと, 2番目の極限は W_{+}^{* } に等しい.また,W_{+} は \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U_ { \ i nf t y } ) から \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) へのユニタリ作用素 になる.以上のことから, t\rightarrow\infty のとき,s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } e {i $ \ x i $ \ h a t { x } ( t ) / t } = $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ p } } ( U) + e {i $ \ x i $ \ h a t { v } } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) .$\xi $\i n \mat hbb{ R} が成り立つ.これを用いると, X_{t}/t の弱極限分布が得られる.$ \ d e l t a $ _ { 0 } は原点における Dirac 測度とし, E_{ \hat { v} } を \hat { v} のスペクトル測度とする.Corollary I.2.X_{t}/t の分布は, t\rightarrow\infty のとき,確率分布 $\mu$=\Ver t \mat hr m{ I } \mat hr m{ I } _ { \mat hr m{ p} } ( U) $\Ps i $_ { 0} \Ver t {2} $\del t a$_ { 0} +\Ver t E_ { \hat { v} } ( \cdot ) $\Pi $_ { \mat hr m{ a} \mat hr m{ c} } ( U) $\Ps i $_ { 0} \Ver t {2} (1.5) に弱収束する. 4節では,仮定 (1.3) の下で,量子ウォークのスペクトル・散乱理論を説明し,Theorem1.1を証明する.また,Theorem1.1の系として,弱収束定理も証明する.5節では,分布のより具体的な形を計算する.Corollary 1.2により, X_{t}/t は(1.5) を 分布にもつ確率変数 V に法則収束するので P(V=0)=\Vert$\Pi$_{\mathrm{p}}(U)$\Psi$_{0}\Vert^{2} (1.6)

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t hr m{ K} \ma t hr m{ d } \ma t hr m{ V} 方程式の保存量と一致するので、それら が定める量子可積分系を量子 \ma t hr m{ K} \ma t hr m{ d} \ma t hr m{ V} 系ということがある。K} \ ma t h r m{ d } \ ma t h r m{ V} 系の変形 Virasoro アナログを導入した。本来の IM はlocal density (すなわち Virasoro 代数のカレント T(u) の微分多項式) の1重積分の形をしており local IM と よばれるが、[BLZ2] はまた non-local IM とよばれる別の可換な系列 \ma t hr m{ G} _ { 1} , G2, \cdots を T(u) の多重積分の形で導入し ている。local IM と non-local IM どうしもまた互いに可換である。[FKSW] は変形 Virasoro 代数のカレントおよ びスクリーニングカレントを用いてそれぞれ \mat hbb{ I } _ { N} , \mat hr m{ G} { N} の類似を定義し、直接計算によってそれらの可換性を示して いる。(なお変形アナログでは \ma t hb b { I } _ { N} はlocal density の積分ではないが、[FKSW] にならって \mat hbb{ I } _ { N} , \mat hr m{ G} { N} の類似もそれ ぞれ ( 1 \ ma t h r m{ o } \ ma t h r m{ c } へ" "non-locaJ" とよぶことにする。) 変形アナログの IM の固有値についてはこれまで知見がなかった。その一つの理由は、[FKSW] の時点ではこれ らIM の正体がよくわからなかった点にあると思われる。その後 \mat hr m{ W} 代数の理論や AGT 予想などの進展を経て、 (本来の) IM は適当な量子代数の \ma t hr m{ R} 行列の転送行列から得られるということが認識されるようになった。本稿では[Sa], Ni], [Ng], [FJMM] などを参照していただくことにし、ここでは  varepsilon\ v a r e p s i l o n varepsilon _ { n } の特 徴を挙げるにとどめる。 \bul l et \ ma t h c a l { E} _ { n } は量子化のパラメタ q の他にもう一つ独立なパラメタ q{1} を持つ。以下 q{1}q_{2} q3= 1 を満たすパラメタ 数理解析研究所講究録 第2071巻 2018年 160-164
じめに 量子逆散 乱法 の発展 に伴 い, 1 +1次元の場の量子論, 2次元の統計力学, 1次元量子 ス ピ ン系, における解 けるモデルの共通性 が明 らかになって きた.1)量子逆散 乱法 には,連続 型 の 理論 ( T h a c k e re ta l .)2)と離散型の理論 ( F a d e e ve ta l .) 3)が あ る.特 に, 離 散 型 の理 論 は, Ya n g ・ B a x t e r 関係式 を軸 と して,転送行列 の方法, B e t h e仮説法, S行列の因子化理論,等 の量 子完全可積分系の解法 の統一的理解 を与 える.ここでは,従 来 の B e t h e 仮説 法 ( c o o r d i n a t e B e t h ea n s a t z )4)の一般的 な形 を,離散型 の量子逆散乱法から導 く.これは同時 に B e t h e仮 説 の証 明 を与えることになる.以下では,特に任意ス ピンのHe i s e n b e r g モデル 5 ,6)を例 に挙 げて説 明 す る.§2 Ya n g -B a x t e r 関係式 量子逆散乱法の基礎 となるのは,次のYa n g ・ B a x t e r 関係式 ( YBR ) 5 ) であ る.a t ev e r t e x mo d e l 7) ぉ よび,それ と等価 なHe i s e n b e r gXXX 5 ) ,ⅩⅩZ6) mo de l , 8) l a t t i c en o n li n e a rS c h r 6 d i n g e rmo d e l 8) , l a t t i c eS i n e ・ Go r d o n mo d e l8)等 が含 まれ る. 例 )He i s e n b e r gXXX mo d e l( 任意 ス ピン) 5 ) o s RO n ( i)-王二払 z o ㊥In+ 7 0 ㊥ ?n 2 亡± f i s ( 玉 ㊨ 柔 ト -i j = Ok =11 + kl Z 書写 x , ・ x ∠ -3 2-2 ∫ ノ s s RO n( i)--Z : 〈ロ ( 2 ,2) ( 2 ,3)
この稿では,スペクトル散乱理論の視点に立って,量子ウォークにおける弱収束定理 の概説を試みる.量子ウォークには,大きく分けて,連続時間のものと離散時間のものの2種類がある.連続時間の場合は,グラフ上のラプラシアンをハミルトニアンにもつ量子力学系に他ならず,離散シュレディンガー作用素の研究の射程に入る [6].離散時間の場 合は,時間発展がハミルトニアンから定まらないので,それ特有の扱いが必要になる.この稿では,離散時間量子ウォークに焦点を絞り,単にそれを量子ウォークという.量子ウオークの起源については諸説あるが,古くは1960年代のFeynmanとHibbsに よる経路積分の教科書 [10] にその原型がみらる.80年代には,Gudderの著書 [15] の中 で,Dirac 方程式の離散版として登場する.その後,2000年に前後して,量子アルゴリズムへの応用 [14, 1, 32] の道が開かれると,量子ウォークの研究はいよいよ盛んになる.2002年,今野 [20] が量子ウォークに対する弱収束定理をはじめて証明すると,多くの数 学者が研究に加わるようになる.量子ウォークの理論やアルゴリズムへの応用に関する比較的最近までの結果については,[22, 27, 33] などが参考になる.量子ウォークが実験室レベルで実現できていることは,特筆すべき点である.しかも,さまざまな実現方法があ り,それらをまとめたものが,既に成書として出版されている [24].以下,本稿のテーマである弱収束定理を少し詳しくみていこう.量子ウォーカーの時間発展は,状態のヒルベルト空間 \ma t hc a l { H} 上のユニタリ作用素 U を用いて表される.量子ウォー2017年 86-108 でいえば \ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } \ ma t h r m{ E} ( e {i $ \ x i $ X_ { \ ma t h r m{ t } } / t } ) = \ ma t h r m{ E} ( e {i $ \ x i $ V} ) , $ \ x i $ \ i n \ ma t h b b { R} となる.これが,ランダムウォークにおけるdeMoivre-Laplace の定理,または中心極限 定理の量子版とみなせることを2節で説明する.今野が最初に示した弱収束定理 [20, 21] では,空間一様なコインをもつ1次元量子ウオー クを考え,量子ウォーカーは初期時刻で原点にのみ存在すると仮定された.証明は,組合せ論的手法を用いて行われた.この場合は,状態のヒルベルト空間は\mat hcal { H} =\el l ^{ 2} ( \mat hbb{ Z} ; \mat hbb{ C} ^{ 2} ) で与 えられ,時間発展のユニタリ作用素は U=SC と表せる.ここで,S はシフト作用素, C はコイン作用素と呼ばれるユニタリ作用素であ る.一般に , コイン作用素は,ユニタリ行列値の関数 \mathbb{Z}\ni x\mapsto C(x)\in U(2) による掛け 算作用素である.\ri ght arrowt)/t} の t\rightarrow\infty の極限で得られる ユニタリ群の生成子 \hat { v} の分布を,フーリエ表示で求めた.\hat { v} は速度作用素とか漸近速度作 用素と呼ばれる.このとき,X_{t}/t の弱極限分布は,漸近速度 \hat { v} のスペクトル測度をもち いて, \Ver t E_{ \hat { v} } ( \cdot ) $\Psi $_{ 0} \Ver t ^{ 2} と表せる.彼らが用いた手法は,GJS法と呼ばれ,今野の定理の証明 の簡略化に貢献した.また,今野の定理[20, 21] における初期状態に関する制限も除か れた.GJS 法については,本稿でも重要な地位を占めるので,3節でやや詳しく触れる.GJS 法の肝は,時間スケールされた位置作用素 \hat{x}(t)/t は, t\rightarrow\infty のとき,フーリエ変 換によって,漸近速度のに対角化される ということである.コインが空間に依存する場合は,並進対称性が失われるので,GJS 法はうまく機能しな い.原点でのみでコインが異なる one defectモデルや,原点を境に右と左でコインが異 なる2相系の量子ウォークでは,母関数法を用いた弱収束定理の証明法が開発されている [23, 7, 8].より一般の空間依存があるコインに対しては,スペクトル散乱理論の考え方 が有効である [31].そのために,あるユニタリ行列 C_{\infty}\in U(2) が存在して \di spl ayst yl e \l i m_{ x\r i ght ar r ow\i nf t y} C( x) =C_{ \i nf t y} , x\i n \mat hbb{ Z} (1.2) となる場合を考える.先に紹介したone defectモデルや,有限の点でのみコインが異な る量子ウォークは,当然この範躊に入る.量子ウオークにおけるスペクトル・散乱理論の有効性を概説するのが,本稿の主目的である.射影で, $\Pi $_ { \ma t hr m{ a } \ma t hr m{ c } } ( U) は, U の絶対連続部分空間 \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) への射影である.量子ウオークの弱収束定理がその古典版である中心極限定理と違うのは,線形的広がり と局在化といわれるの2つの性質が表れる点にある.弱収束定理により, X_{t}/t が V に法 則収束することがいえると, t\rightarrow\infty で,形式的に X_{t}\sim tV と表せる.このことを,線形的広がりという.定義によって,V の分布は, t\rightarrow\infty にお ける量子ウォーカーの速度分布と考えるのが自然である.従って,量子ウォークの弱収束 定理は,量子ウォークの時間漸近的な速度分布の存在定理といえる.一方,局在化とは,V の分布が原点に台をもつ Dirac 測度をもつことをいう.すなわち,P(V=0)>0 である.つまり, t\rightarrow\infty では,速度ゼロになる確率 P(V=0) は,ゼロでない 線形的広がりには,絶対連続部分 e^{ i $\xi $\hat { x} ( t ) /t } $\Pi $_{ \mat hr m{ a} \mat hr m{ c} } ( U) が寄与する.条件(1.3) の下では,加 藤Rosenblum の定理 [28, Theorem XI.8] の離散版 [18, 19, 31] を考えると,ユニタリ作 用素 U=SC と U_{\infty}=SC_{\infty} に対する波動作用素s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } U{-t } U_ { \ i n f t y } {t } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U_ { \ i n f t y } ) , s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w \ i n f t y } U _ { \ i n f t y } {-t } U {t } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U ) (1.4) が存在する.波動作用素に対する一般論によって,(1.4) の最初の極限を W_{+} とおくと, 2番目の極限は W_{+}^{* } に等しい.また,W_{+} は \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U_ { \ i nf t y } ) から \ ma t h c a l { H} _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) へのユニタリ作用素 になる.以上のことから, t\rightarrow\infty のとき,s-\ d i s p l a y s t y l e \ l i m_ { t \ r i g h t a r r o w\ i n f t y } e {i $ \ x i $ \ h a t { x } ( t ) / t } = $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ p } } ( U) + e {i $ \ x i $ \ h a t { v } } $ \ P i $ _ { \ ma t h r m{ a } \ ma t h r m{ c } } ( U) .$\xi $\i n \mat hbb{ R} が成り立つ.これを用いると, X_{t}/t の弱極限分布が得られる.$ \ d e l t a $ _ { 0 } は原点における Dirac 測度とし, E_{ \hat { v} } を \hat { v} のスペクトル測度とする.Corollary I.2.X_{t}/t の分布は, t\rightarrow\infty のとき,確率分布 μ\muμ=\Ver t \mat hr m{ I } \mat hr m{ I } _ { \mat hr m{ p} } ( U) $\Ps i $_ { 0} \Ver t {2} $\del t a$_ { 0} +\Ver t E_ { \hat { v} } ( \cdot ) $\Pi $_ { \mat hr m{ a} \mat hr m{ c} } ( U) $\Ps i $_ { 0} \Ver t {2} (1.5) に弱収束する. 4節では,仮定 (1.3) の下で,量子ウォークのスペクトル・散乱理論を説明し,Theorem1.1を証明する.また,Theorem1.1の系として,弱収束定理も証明する.5節では,分布のより具体的な形を計算する.Corollary 1.2により, X_{t}/t は(1.5) を 分布にもつ確率変数 V に法則収束するので P(V=0)=\Vert$\Pip(U)_{\mathrm{p}}(U)p​(U)\Psi$_{0}\Vert^{2} (1.6)
,X は決定的なゆ らぎのない変数 になるこ とがわか る. ところが,相対座標 値 l ' ‖ま ,N--で もゆ らぎを失わない.一方友一 0 の古典極限では,( 1 ) 式 をみると,定常位相 を与 える古典的径路のみが 与 し,すべての変数 偏がゆらぎを失ってしまう.I l Td p i ] 積分 に寄 このようにマ クロ変数 と古典変数はともにゆらぎのない変数であるので,従来それ らの 変数の区別があい まいであ り,マクロ系の変数は古典変数であるなどという荒 っぽい言い 方が されて きたが,両者は区別 しなければならない.では一体その違いはどこにあるのだ