岡村 隆 I 東工大理 物理 平成 8年 4月 3 0日 1 I n t r o d u c t i o n 量子論を普遍的な理論と考える立場では、古典論はある条件の下で、そ こか ら導かれるべき近似 理論である。さらにこの立場では、宇宙でさえも量子論に従うと考え られ るが、実際に我々が観測す る宇宙は非常に良い精度で古典論に従 っている。 この " 量子宇宙からの古典的宇宙の出現"など、古典化の問題を説明す るためには、非ユニタリー 発展が必要であるが、宇宙の場合、それは自然に導入 される。 なぜな ら、我 々の観測できる範囲は、 全宇宙の一部であ り、それ以外は環境 ( 熟浴)として働 くか らである。( このことは、古典化の閉篭 に限 らず、実際に我々が観測する事象を記述す るためにも、観測可能な宇宙を開いた系 として記述 し、その縮約 された d yn a mi c sを理解す ることが重要であることを意味す る。 ) " E n v i r o n me n t I n d u c e dS u p e r s e l e c t i o nRu l e s "川 のパラダイムに従 って、t o ymo d e l を通 して宇 宙の古典化を議論する仕事が数々なされてお り、一応の成功が収め られているが、い くつかの問題点 が残 されている.その一つに、pe r f e c t d e c o h e r e n c eの問題がある日 2 , 3 , 4 1これは、環境系が無限自 由度であることか ら、d e n s i t yma t r i xの非対角項が完全に 0となる結果 ( 無限横の発散)を与える もので、これにより、対応す る Wi g n e r関数が p e a kを持てな くな り、古典化の条件の 1 つである、 c l a 缶i c a l c o r r e l a t i o nが満たせな くなるという問題である。 通例は、適当に c u t o f fを導入 して この困難を避 けるが、結果 ( 宇宙が古典化されているか否か) が、この c u t o f Hこ 強 く依存 してしまう。【 2 , 5 , 6 】 またこの発散は通例の繰 り込み処方では取 り除けな いことが知 られている。【 4 】 p er ぬ : td e c o h e r e n c eの閉篭以外に、環境変数の選択の自由度による r e d u c e dd e n si t yma t r i xの 任意性の問題があるol 7 】 例えば、s c a la rf i e l d◎ による、s c a lef a c t o ra ( 宇宙の大きさを表す変数) の d e c o h e r e n c eを議論する際、環境変数 として 中 や α 中 など、様 々な ものを用いることができ、そ れに応 じて aの r e d u c e dd e n s i t yma t r i xは異なるものとなるが、 どの選択が 自然なのだろうか ?一 Pmg ・ Tb e o r ・ Pb y s ・9 5 ( 1 9 9 6 ) , 5 6 5 I Bma i l : o k a mu r a @t h ・ p h y s ・ t i t e c h ・ a c ・ J p
岡村 隆 I 東工大理 物理 平成 8年 4月 3 0日 1 I n t r o d u c t i o n 量子論を普遍的な理論と考える立場では、古典論はある条件の下で、そ こか ら導かれるべき近似 理論である。さらにこの立場では、宇宙でさえも量子論に従うと考え られ るが、実際に我々が観測す る宇宙は非常に良い精度で古典論に従 っている。 この " 量子宇宙からの古典的宇宙の出現"など、古典化の問題を説明す るためには、非ユニタリー 発展が必要であるが、宇宙の場合、それは自然に導入 される。 なぜな ら、我 々の観測できる範囲は、 全宇宙の一部であ り、それ以外は環境 ( 熟浴)として働 くか らである。( このことは、古典化の閉篭 に限 らず、実際に我々が観測する事象を記述す るためにも、観測可能な宇宙を開いた系 として記述 し、その縮約 された d yn a mi c sを理解す ることが重要であることを意味す る。 ) " E n v i r o n me n t I n d u c e dS u p e r s e l e c t i o nRu l e s "川 のパラダイムに従 って、t o ymo d e l を通 して宇 宙の古典化を議論する仕事が数々なされてお り、一応の成功が収め られているが、い くつかの問題点 が残 されている.その一つに、pe r f e c t d e c o h e r e n c eの問題がある日 2 , 3 , 4 1これは、環境系が無限自 由度であることか ら、d e n s i t yma t r i xの非対角項が完全に 0となる結果 ( 無限横の発散)を与える もので、これにより、対応す る Wi g n e r関数が p e a kを持てな くな り、古典化の条件の 1 つである、 c l a 缶i c a l c o r r e l a t i o nが満たせな くなるという問題である。 通例は、適当に c u t o f fを導入 して この困難を避 けるが、結果 ( 宇宙が古典化されているか否か) が、この c u t o f Hこ 強 く依存 してしまう。【 2 , 5 , 6 】 またこの発散は通例の繰 り込み処方では取 り除けな いことが知 られている。【 4 】 p er ぬ : td e c o h e r e n c eの閉篭以外に、環境変数の選択の自由度による r e d u c e dd e n si t yma t r i xの 任意性の問題があるol 7 】 例えば、s c a la rf i e l d◎ による、s c a lef a c t o ra ( 宇宙の大きさを表す変数) の d e c o h e r e n c eを議論する際、環境変数 として 中 や α 中 など、様 々な ものを用いることができ、そ れに応 じて aの r e d u c e dd e n s i t yma t r i xは異なるものとなるが、 どの選択が 自然なのだろうか ?一 Pmg ・ Tb e o r ・ Pb y s ・9 5 ( 1 9 9 6 ) , 5 6 5 I Bma i l : o k a mu r a @t h ・ p h y s ・ t i t e c h ・ a c ・ J p
l は じめ に 決定論 的 な物理系が通常の微分方程式で記述 されるのに対 して,ランダムな揺 らぎを含む 物理系 には確 率微分方程式が用いられる.確率微分方程式論が数学 の一分野 として登場 した のは比較的新 しく 1 9 4 0年代 のことであ り, 伊藤清の業績 にちなんで 「 伊藤解析」 とも呼ば れている.伊藤解析は 1 9 7 0年代には無限変数の超関数のアイデア と融合 し, 現在では 「 確率 解析」 として無限次元解析 の理論的興味か ら諸科学に現れるラ ンダム現象の解析 といった応 用面 にわた り, 広 く研究 され大いに発展 して きている.その中にあって,量子系への応用 とい う点はやや遅 れて, 1 9 8 0年頃か ら伊藤解析の量子版 としての量子確率微分方程式の数学的基 礎づけが研 究 され今 日に至 っている.古典論の場合を振 り返れば, 量子確率微分方程式 を超 関数論的に取 り扱 うこ との実効性が予想 される.この論文では, 数年前か ら著者が展 開 して いるホワイ トノイズ超 関数論 によるアプ ローチを紹介するとともに, 特 に, 量子確率微分方 程式の解の存在 と構成 について論ず る. まず, 簡単 な L a n g e v i n方程式の例 を通 してホワイ トノイズ超 関数論の基本的なア イデア を説明 しよう.速度V-V ( i )の粒子 ( 質量 は 1とする) が粘性抵抗 ( 抵抗係数 k>0 ) のある 媒質の中を外 力 f-I ( i )を受けなが ら運動する系 は Ne w t o n方程式 霊 ニーk v ・J , v l t = 。 -v o , ( 1 ・ 1 ) で記述 される.ここで, 外力 は位置には無関係だが, 時間 とともに変化 して も良い としている.今, i -I ( t )が ( 例 えば) 連続関数であれば, ( 1 . 1 ) は容易 に解けて, V ( i )e 一 如 vo + e -ki l t e kS f ( S ) ds ( 1 ・ 2 ) となる. で は,外力 に揺 らぎのある場合 は どうなるだろうか.この場合 は,各時刻 tで発 生す る外力 f ( i )はある確率分布に従 う確率変数 と考 えられる・( 一般 に, 時間パ ラメー タ付 きの確率変数 は確率過程 と呼ばれる・ ) はっきりさせ るために,確率空 間 ( a, P ) を導入 し, I: R十 × a-I ( i , W )∈R と表示 しよう・たとえ Fが確率過程であって も, 各サ ンプル U∈D に対 して I -I ( 壬 , W )が連続関数であれば, ( 1 .2 ) は定義 され, 解 V ( i ) -V ( t , W)は確率過程 と して得 られ る.確率変数 の基本的な特性量 は平均 と分散である.簡単のため,外力の平均値 -研究会報告 E( I ( i ) )-0を仮定 しよう.このとき, 確率過程 V ( i )の平均 と分散 は, ( 1 .2 ) か ら容易 に求め られ, E ( V ( i ) )e -k t v o ・e -k t lt e h .E( I ( S ) ) d s -e -k t v o ( 1 ・ 3 ) V( V ( i ) ) 千e -2 h〃 e k ' r ' 3 ' E( I ( r ) I ( S ) ) d r d s ( 1 ・ 4 ) となる・分散が ラ ンダムカ f ( i )の時間相関関数 E( I ( r ) I ( S ) )で与 え られることに注意 して お く.時間相 関関数が E ( i ( r ) I ( S ) ) -6 ( r -S )( 1 .5 )o Ie 一 如/ .I e h B d B. のような 「 伊藤型確率積分」で与えられるのである.1 9 7 0年代 になると, 確率微分方程式 に 対す る超関数的アプ ローチが現れて きた.超関数論 によってデ ルタ関数が正当化 され, 微分 方程式論 に大 きな変革が現れたが, 同 じようなことは確率解析 にも期待で きる.Ma l l i a v in解 析 【 2 2 1 や飛 田解析がその代表的なものである・特 に, 飛田解析 は 「 ホワイ トノイズ解析」 と も呼ばれ, 一旦 は d B tとして姿 を消 して しまったホワイトノイズ をあか らさまに数学的対象 「 第 4回 『 非平衡系の統計物理』 シンポジウム」 として捉 える理論である1.これについては,次節以降で詳述するが Ga u s s空間上の超関数空 間 ( E ) 'を導入す ることによって, ホワイトノイズ w t を ( E ) +内の C∞一 級 f l o w として取 り 扱 うことがで きる.そ うす ると, ( 1 .7 ) は再び d v ---k v+ Wt d i と書かれる・形 は もとの ( 1 . 1 )と同一であるが, 解 V-V ( i ) は ( E ) •の中で求めることになる.考 える空間は ( E ) ' の ように無限次元空間になって しまったが, 方程式その ものに特異性は な く, 普通の微積分の規則で解 を求めることがで き, V ( i ) -ek t v o ・e -kl / .ie k s w Sd s となる・これ は, 考 えている空間は違 うのであるが, ( 1 ・ 2 )と形は全 く同 じである.ここで述べて きた ものは簡単 な一例であるが, ホワイ トノイズ解析 によって従来 の形式的計算 に数学的 裏付け を与 え, 揺 らぎの本質 を直に捉 えることがで きるようになった.一方で,1 9 6 0年頃か ら散逸量子系の解析 において量子 L a n g e 血 方程式が議論 されて き た ( L a x[ 2 0 】 , S e n i t z k yl 3 6 】な ど・なお Ac c a r d il 1 】も参照) .それを量子伊藤理論 を定式化 し てユニタリ拡張の問題 として捉 えたのが Hu d s o n -P a r t h a s a r a t h yl 1 6 】であ り, その理論 の後, 若干の超 関数 のアイデア も取 り入れなが ら大いに発展 して今 日に至 っている.最近出版され た教科書 Me y e rl 2 1 1 , P a r t h a s a r a t h yl 3 2 ]はこの方面の必携書 となっている.まず,B r o wn遠 動 を定義す る確率空間 と L 2( A ) 上の B o s o nF o c k空間 ( R が B r o w n 運動 の時間パ ラメータ を与 える)が 同型 になる ( Wi e n e r Jt 6 -S e g a l 同型) .すると Bt をその B o s o nF o c k空間上の かけ算作用素 とみなす ことがで き, Bt -At + A t e の ように,さらに 「 素」な 2つの量子確率過程 に分解す ることがわか る.At , A言はそれぞれ 消滅過程, 生成過程 と呼ばれている.Hu d s o n -P a r t h a s a r a t h y -Me y e r理論 は, それ らの無限小 増分 d At , d AI , 及びゲージ過程の無限小増分 d Atに基づ く伊藤解析 の量子版 とで も言 うべ き ものである.生成・ 消滅過程 によって, 第 3の量子確率過程 tを表す ことは, 彼 らの量子確 率積分で許 される被積分関数の範囲ではで きないが, 応用上極めて重要であるので独立 につ け加 えられている.この ような流れを眺めれば, ホワイトノイズ解析の量子版 を建設 し, 応用面 を探 るのは興 味のあることと言 えよう.このアプローチの一つの特徴 は, デルタ関数 を掌中にす る超関数 論 を基礎 に しているので,「 素」となるべ き量子 ノイズは a , , a t 'の 2つで十分であるとい う ことである・実際, " すべて" の量子確率過程 を a tと a t 'に関する " 量子確率積分" で表現する ことがで きる2.また,このことは, すべての作用素が生成 ・ 消滅作用素で表現で きる とい う 場の理論 における直感 にもあっている3.こうして,我々の立場 を図示 すれば次の ようになる. 1 飛 田 【 1 2 】に興味深い解説記事がある.2ここで … をつけたのは, 数学 として表現するのだか らむろん一定の枠 をはめた り, 概念 を一般化 した りし た上で,との意味.詳しくは本文 § 4を参照されたい.3このこ とを証明す るためには," すべての作用素"に対 して枠 をはめなければな らない.有界作用素に対 し ては B e r e z i n【 3 1 , G e l f a ndt r i p l e tに付随 したものは O b a t a【 2 3 1で証明された・なお, § 3も参照せ よ・ 研究会報告 古典確 率解析 d B t -d A t +d Al ' d Bt -Wt d l Wt-a t +a i ' 量子確率解析 Hu d s o n -P a r t h a r a r a t h y -Me y e r理論 d At , d At ' , d d t d d t -a t d t 量子ホワイ トノイズ解析 ( 提案中) a i ) a t + この論文 では,ホワイ トノイズ起関数論 ( WNDT)を簡単 に紹介 した後, 量子確率過程が どのように して素過程である a ., a t 'で表現 されるかを説明す る・その後, 作用素の Wi c k積 を導入 し, 量子確率微分方程式の解の構成 に応用する.ホワイトノイズ超関数論 については, 最近出版 され た Ku o【 1 9 】は極めて丁寧 に書かれてお り,この方面への格好の入門書である・ また,この論文 ではホワイ トノイズ空間上の作用素論が基礎 になっているが,これ について は Ob a t a【 2 3 】を参照 されたい.量子ホワイ トノイズ解析 については, 本 はまだないが, Ob a t a l 2 7 日 2 8 日 2 9 】に多少 まとまった記述がある・関連す るもの として, Hu a n g【 1 3 】 , Hu a n g -L u o l 1 4 ] , Ob a t al 2 5 】 , 大矢-, ) 、 鴫 [ 3 1 ] なども参照 されたい・ここで展開す る理論 は物理では絶対零 度 の場合 に対応 し, 有限温度の場合 に拡張す ることは極めて興味深い問題 となる.この観点 か ら Hu d s o n -L i n d s a yl 1 5 】 や有光グループ による研究 【 2 日 3 4 】は重要な指針 を与 えるもので ある. 2 ホワイ トノイズ超関数論 2 . 1 Br o wn運動か らホワイ トノイズへ 水 中の花粉粒子のジグザグ運動は, 数学的には確率過程 として定式化 されている.確率変数の 1径数族 f Bt ) t ≧ 。で ( i ) ( B t )は Ga u s s 系, つ まり任意の有限 1 次結合 c I B i l +・-+ c n Bt nが Ga u sS 分布 に従 う; ( i i ) B 0-0 ,E ( B , )-0 ,E ( B s B t ) -mi n ( S , l l ; を満たす もの を B r o wn運動 または Wi e n e r 過程 と呼ぶ.ここでは, 無 限次元 Ga u s s 測度 を 用いて B r o vn運動 を構成す る. 他の方法 については, 【 1 1 日 1 7 】な どを参照 されたい.実 Hi l b e r t空間 H-L 2 ( I R , d i ) の実内積 とノルムを ( i , 7 ) -/ R E ( i ) 7 ( i ) d l , I 引。 -( i , i ) , E , 7 7 ∈H, によって定義す る.( ここで,ノルムの添字 Oは後で便利 なようにつけた・ )有限次元 E u c l i d 空間な らば, Bo c h n e rの定理 によって確率測度 と正定借関数が 1 対 1対応するが, 無限次元 空 間に対 して は Ge l f a n dt r i p l e tを用いなければならない 【 3 8 1 ・さて,無 限回微分可能 な急 減少関数の全 体 を E -S( A) ,その双対空間,つま り E 上の連続線形 ( 帆)関数4 の全体 を 4 E -S( A)の標準的な位相 は,ノルムの系列 = f J L ・ , A-S u p t e Rl t 3
m Th e r moF i e l dDy n a m i c s( NE TF D)[ 1 ] -[ 4 】と名付け られ た,非平衡量子系 を扱 う正準理論を紹介する。 これは,散逸量子系 を扱 う一貫 した ( 非平 衡系統計力学でのすべての基本的概念,すなわち,B o l t z ma nn方程式,F o k k e r -P l a n c k方 程式,L a n g e v i n方程式,確率 L i o u v i l l e方程式'で代表 される見方 を,一つの土俵で議論 で きるとい う意味で) , しかも,量子力学や場の量子論で学んだ,自然認識の基本である 演算子代数 と表現空間 とい う二重構造を供えた理論体系である。 NE TF Dの表現空間 ( 熱空間,t h e r ma l s p a c e ,と名付け られた)は,2つの Hi l b e r t 空 間の直積で構成 されている.1つばn o n -t i l d e場,もう 1つは t i l d e場の H i l b e r t 空間で ある.NE TF Dでは,いかなる演算子 A にもその髄伴演算子 ( t i l d e演算子)A が伴 って いる。t i l d e共役,-,は, ( AI A2 ) --AI A2 , ( c I Al + C 2 A2 ) --C ; il + C ; 12 , ( i) --A, ( AI ) --〟 , p h H 一 G i - ー n u p n u 1 2 3 4 l H I U ■ H t L Hi ヨ l H は ■ 川 U で定義 される。ただ し, c l や C 2 は, c数である.S c h r 6 d i n g e r表現では,t i l d e演算子 と n o 凪 -t i l d e 演算子は,互いに可換である : l A, B ] -0 .( b 5 ) 散逸は,直積 H i l b e r t 空間全体での回転,すなわち,t i l d e 演算子 とn o n -t i l d e 演算子 を 交ぜ るような回転 として捕 らえられることが明 らかになった。無限小時間発展演算子の中 の t i l d eとn o n -t i l d e 場が掛っている項が,散逸 ( すなわち,非可逆)現象 を司っているの である。この点は,NE TF Dが建設 されて初めて認識 された 【 1 , 2 】 。 I ' 古典系での確率 L i o u v i l l e 方程式 は,久保 【 5 , 6 】 により初めて導入 された。 I この認識 は, G i b b Sアンサ ンブルを定式化 した熱平衡系 の T F Dl 7 】にはなか った。そこには,散逸は 現れない。この点が, N B T F DとT F Dとの本質的な違いのひとつである。Z u b a r e v が, N E T F Dの方法を 賞賛 し,非平衡量子現象の研究 に用 い始めたことに,ここで言及 させていただきたい 【 8 】 .-3 1 1 研究会報告 B o l t z ma n nは,微視的で可逆 な Ne wt o n力学か ら出発 して, 自然界 の非可逆性 を導出 しようとした.しか し,B o l t z ma n n方程式 を導 く際 に,分子混沌 と呼 ばれる確率操作 を, 知 らず に導入 していたことが判明 したのである ( その辺のか ら くりの簡単 な解説は,【 9 ] を 参照のこと) 。我 々の新 しい方法が見通 しの良い ものである とい う技術的 な面 ばか りでな く,散逸量子場の理論 としてのその二重構造が,B o l t z ma nnの初め措 いた夢 を,何等かの 意味 で実現 させ るのではないか, とい う期待 が湧いて くる.B o l t z ma n nの時代 には, こ の二重構造 は認識 されていなか ったのである。 詳 しい NE TF D の解説 と参考 文献 は 【 4 ]を参照 して頂 くと して,s e m i -f re e時間発展 演算子 ( 量子 F o k k e r -P l a n c k方程式 と,定常的量子 Wi e n e r 過程 に従 う量子確率 L i o u v i l l e 方程式,それぞれに関する もの)が,い くつかの基本的要請の元 に,如何 に して創 られる かを示す.S e mi -f r e e時間発展演算子は,双線形で大域的ゲージ不変性 を満 たす ものであ る。以下,散逸量子系 の正準理論が,前者の時間発展演算子 によって如何 に創 られるかを 紹介 し,量子系確率微分方程式の一貫 した体系が,如何 に して建設 されるか を示す ( 図 2 参照 ) 。そ うす ると,量子散逸系の方程式 に纏 わる次の ような基本的 な疑問が,解決 され ることが見 えて くる ( 量子系 L a n g e v i n方程式 に対す る問題提起 に関 しては,【 1 0 】も参照 の こと) 0 ql .量子散逸系 を扱 う正準理論 ( つ まり,時間発展が正準変換 で誘起 される)は,建 設可能 だろ うか ?考 え もな しに a ( i ) -a e ( i w+A ) i , a I ( i ) -a † e ( t ' U-A ) i ,の ようにエネルギー ・ スペ ク トルに虚数部 を導入するだけでは,同時刻交換関係 は, け っ して保存 されない : l a ( i ) , a I ( i ) ] -l a , a † 一 e 加 t ( 7 ) Q2 ・ 揺動力演算子 は KMS条件 [ 1 1 , 1 2 】を満 たせ ないので,量子系 では白色過程 は許 されない と言われている。 た とえば,L a n g e v i n方程式 孟 a ( i ) -i d a ( i ) 一項 ・佃 ( 8 ) 孟 a ' ( i ) -i wa t ( i ) -n at ( i ) II-T ( i ) , ( 9 ) を考 えてみ よう。ただ し,f C は,摩擦係数である.また,a( i )ta t ( i ) は,それぞれ Hi l b e r t 空間の消滅,生成確率演算子で,i -0に正準交換関係 を満たす もの とする :( 【 a ( i ) , a I ( i ) ] ) -1 .( 1 5 )S c h r 6 d i n g e r 表現でなされるべ きである。それでは,La n g e v i n方程式に現 れる揺動 力の相関 と して,はた して,S c h r 6 d i n g e r表現 と同 じもの を採用 して長いのであろ うか ?q4 .如何 に して,確率過程の表現空間 を建設 した ら良いのであろ うか ?時間発展演算子の一般形 は,本質的 に L i o u v i l l e方程式 孟 p ( i ) --i L p ( i ) , に関る次の性質か ら導 きだ された。 Dl .L i o u v me演算子のエル ミー ト性 : L f =L.
重 俊 (1 9 8 2年 7月 1 3日受理 ) 講義 ノー ト は じ め に 1 9 71 年 にBa x t e r は 2次元 の 8 -v e r t e xモデルの自由エネルギーを転送行列 の方法で求 めた。 このモデルは特殊 な場合 として I s i n gモデル,d i me rモデル,i c eモデ/ レ ,KDPモデル,Fモ デル等 を含 む一般的 なモデルである。また Ba x t e rはこの転送行列 の固有ベ ク トルが He i s e n b e r g モデルの一般化である 1次元 ⅩYZモデルのハ ミル トニア ンの固有 ベ ク トルになっていること を示 し, これか らその基底 エネルギー を求 めた。 Ba x t e rの論文 は " ama s t e r p i e c eo f1 9 t h -c e n t u r yma t h e ma t i c a la ゎ a l y s i s〝とも言われ ているが,む しろ " ama s t e r p i e c eo f2 0 t h -c e n t u r yma t h e ma t i c a lp h y s i c s〝と言 うべ きで あろ う。P h y s .Re v .L e t t .の論文 3 , 4 ) は勿論, An n .P h y s .の論文 1 , 2 ) も省略 されている部分が多 く, 孤峰 として奪 えたまま登山をす る人は少なかった。 しか し最近量子逆散乱法 が脚光 をあびるに 至 って, 8 -v e r t e xモデルあるいは 1次元 ⅩYZ モデルがその例題 として しば しば誌面 を賑 わ す よ うになった。 Ta k h a d z h a n -F a d d e e vの解説 5 ) を参照に しながら,1 0年前読 もうと思 って途 中でやめた論文 をもう 一度読 もうと思いたった所以 である。今度東京工業大学 において 「 スピン系 の統計力学」 と題す る集 中講義 を行 なったが, 8 -v e r t e xモデルの話 も加 えることとし, これ を機会 にその ノー トをまとめた。 本稿 を草するに当ってE.Ba r o u c h ,和達三樹,および同研究室の方々,広池和夫, 守田徹,鈴 木増雄,宮下精二,小 口武彦 の諸氏6 ・ 7 ) から多 くの御教示を頂いたことを記 して厚 く謝意 を表する。 §1 . 1 6v e r t e x ・ モデル, 8v e r t e xモデル, 6v e r t e xモデル 2次元の正方格子 を考 えて各格子点間 を結ぶ b o n dに上向,下向, または左向,右向,のい づれかの矢 をっ ける。各格子点 とこれに入 る 4本 の b o n dを見 るとこの格子 点 には 1 6個 の状 態がある。 この各状態に el, e2 -・61 6 のエネルギーを割付 けたモデルが 1 6 -v e r t e x モ デ ル である。 この 1 6個の配置 の うち 1つの格子点 に奇数本 の b o n dが入 る状 態 が禁止 され るとす *KATS UR A, S h i g e t o s i 軽 重殴 る と ( e 9 ,e l ° ・ -e 1 6 --) 可能 な状 態 として 8個 の状 態が許 され る。 これが広義 の 8 -v e r t e x モデルである。一つの格子点 に対 して 4つ の b o n dを反転 した もの と, もとの ものの e n e r g y が等 しい とす る。 ( e l -C 2 ,E 3 -e 4 ,e 5 -e 6 ,e 7 -e 8 ) (これ は z e r o f i e l dの条件 である. ) これ が狭義 の 8 -v e r t e xモデル ( Ba x t e rモデル)である。 この内 4本 ともv e r t e x に向 った も の, 4 本 ともv e r t e xか ら出 るものを除 くと ( e 7 -e 8-∞ ) 可態 な状 態 は 6個 となるO これ が 6 -v e r t e xモデルであるoその うちK D Pモデル といわれ るものは T a k a h a s i ,L i e bに よ る強 誘電体 のモデルである* .本稿では狭義 の 8v e r t e xモデル を単 に 8 -V 。 r t 。 Ⅹモデル とい う0 8 -v e r t e xモデルの一つの配置 が与 え られ た とき各格子点 は e l ,e 8 の何れかの状態 をと るo系全体 で e・ のエネル ギー を もつ v e r t e xの数 をNj とすれば系 の状 態和 は ノ 8 zI V m = ∑ e x pト P j S .