シリコン空孔量子センサによる基底・励起準位同時共鳴法を用いた磁場・温度同時計測の最適化
田中友晃, 山崎 雄一, 児島 一聡 +1 more
1. 研究背景・目的 炭化ケイ素(SiC)中のシリコン空孔(VSi)は量子センサとして使用可能であり、デバイス中に作製することでデバイス内部の磁場・温度を高精度・高空間分解能で測定できる点から注目されている[1, 2]。VSi量子センサを用いた磁場・温度計測には基底(磁場)および励起(温度)準位の光検出磁気共鳴(ODMR)測定が必要である。測定効率向上のためには、基底・励起状態同時測定が望ましい。しかし、基底準位のODMRコントラスト(感度)と比較して励起準位のコントラストは1桁程度小さいため、温度測定が測定時間を律速してしまう。この問題の解決策として我々は、基底・励起準位の同時共鳴により基底準位側のコントラストが変調されることを利用した新規温度計測手法、同時共鳴(SR)ODMRを提案し、効果を実証した[3]。この方法は基底準位側のコントラストの一部を励起準位側のコントラストに転換するものであるため、SR法を用いた磁場・温度同時計測では測定時間を最小化するための条件最適化が必須である。そこで本研究では、SR ODMRによる同時測定に用いるRFの出力比を最適化することを目的とした。 2. 実験 p型 4H-SiC エピタキシャル薄膜(5.6 µm)付き基板に対して粒子線描画法(イオン種: He, エネルギー: 0.5 MeV, 照射量: 3×105 /dot)を用いてVSiドットを形成した。ドットサイズ、深さはそれぞれ5×5 µm2、~1 µmである。測定には信号発生器3台を使用し、1台はSRの基底準位共鳴用に周波数(70 MHz)に固定、残りの2台を基底及び励起準位の共鳴周波数近傍で掃引させ(20-170, 300-600 MHz)、基底及び励起準位のODMR測定を行った。 3. 結果・考察 図にSR法を用いた基底・励起準位ODMR同時測定のスペクトルを示す。基底・励起準位の共鳴によるODMRコントラスト(図中赤・青矢印)が観察されている。500 MHzにもディップ(緑矢印)が認められる。ここは掃引条件から、基底準位測定側の掃引周波数70MHz前後にあたる周波数領域であり、SRおよび基底準位ODMR測定用RFの両方で基底準位の共鳴が生じている。これらの競合が起きた結果、SR ODMR側の500 MHz前後にディップが現れたと考えられる。基底・励起準位の共鳴による信号強度の大きさ(感度に対応)に着目し、SRおよび基底測定用RFの出力比を変えて測定を行った結果、SR及び基底準位ODMR測定用RFの出力比=1:9でODMRコントラストの大きさがほぼ同等となった。この出力比条件ではSRの信号強度は通常の励起準位測定の4倍以上であり高速化が達成されたと考えられる。当日はその詳細を報告する。 [1] M. Niethammer et al., Phys. Rev. Appl. 6, 034001 (2016). [2] T. M. Hoang et al., Appl. Phys. Lett. 118, 044001 (2021). [3] 山崎 雄一 他, 第69回応用物理学会春季学術講演会 25a-E301-1
•Dec 7, 2022•0 citations