「 非平衡系の統計物理」 ( その 2 ) 量子確率微分方程式の系統的体系 有光 敏彦 筑波大物理 斎藤 健 筑波大物理 概要 N o n -E q u i l i b r i u m Th e r moF i e l dDy n a m i c s( NETFD)の枠組みで著者の一人 ( T. A. )により定式化された量子系確率 リウヴ ィユ方程式を拡張す ることにより、皇 子系に対 して、白色雑音を もった確率微分方程式の系統的な体系を構成できること を示す。熟空間で構成されたこの皇子系確率微分方程式の体系では、孟子系 ラ ンジュ ヴァン方程式に伴 う困兼か現れない。 1 .序論 1905年 にアイ ンシュタイ ン 【 1 1 が熱揺 らぎの確率解釈 を提唱 し熱統計 力学 の基礎を築いて以来、確率過程による自然 ( 巨視 的現象)の記述 は、散逸系の動 的振 舞いを理解す
「 非平衡系の統計物理」 ( その 2 ) 量子確率微分方程式の系統的体系 有光 敏彦 筑波大物理 斎藤 健 筑波大物理 概要 N o n -E q u i l i b r i u m Th e r moF i e l dDy n a m i c s( NETFD)の枠組みで著者の一人 ( T. A. )により定式化された量子系確率 リウヴ ィユ方程式を拡張す ることにより、皇 子系に対 して、白色雑音を もった確率微分方程式の系統的な体系を構成できること を示す。熟空間で構成されたこの皇子系確率微分方程式の体系では、孟子系 ラ ンジュ ヴァン方程式に伴 う困兼か現れない。 1 .序論 1905年 にアイ ンシュタイ ン 【 1 1 が熱揺 らぎの確率解釈 を提唱 し熱統計 力学 の基礎を築いて以来、確率過程による自然 ( 巨視 的現象)の記述 は、散逸系の動 的振 舞いを理解す
m Th e r moF i e l dDy n a m i c s( NE TF D)[ 1 ] -[ 4 】と名付け られ た,非平衡量子系 を扱 う正準理論を紹介する。 これは,散逸量子系 を扱 う一貫 した ( 非平 衡系統計力学でのすべての基本的概念,すなわち,B o l t z ma nn方程式,F o k k e r -P l a n c k方 程式,L a n g e v i n方程式,確率 L i o u v i l l e方程式'で代表 される見方 を,一つの土俵で議論 で きるとい う意味で) , しかも,量子力学や場の量子論で学んだ,自然認識の基本である 演算子代数 と表現空間 とい う二重構造を供えた理論体系である。 NE TF Dの表現空間 ( 熱空間,t h e r ma l s p a c e ,と名付け られた)は,2つの Hi l b e r t 空 間の直積で構成 されている.1つばn o n -t i l d e場,もう 1つは t i l d e場の H i l b e r t 空間で ある.NE TF Dでは,いかなる演算子 A にもその髄伴演算子 ( t i l d e演算子)A が伴 って いる。t i l d e共役,-,は, ( AI A2 ) --AI A2 , ( c I Al + C 2 A2 ) --C ; il + C ; 12 , ( i) --A, ( AI ) --〟 , p h H 一 G i - ー n u p n u 1 2 3 4 l H I U ■ H t L Hi ヨ l H は ■ 川 U で定義 される。ただ し, c l や C 2 は, c数である.S c h r 6 d i n g e r表現では,t i l d e演算子 と n o 凪 -t i l d e 演算子は,互いに可換である : l A, B ] -0 .( b 5 ) 散逸は,直積 H i l b e r t 空間全体での回転,すなわち,t i l d e 演算子 とn o n -t i l d e 演算子 を 交ぜ るような回転 として捕 らえられることが明 らかになった。無限小時間発展演算子の中 の t i l d eとn o n -t i l d e 場が掛っている項が,散逸 ( すなわち,非可逆)現象 を司っているの である。この点は,NE TF Dが建設 されて初めて認識 された 【 1 , 2 】 。 I ' 古典系での確率 L i o u v i l l e 方程式 は,久保 【 5 , 6 】 により初めて導入 された。 I この認識 は, G i b b Sアンサ ンブルを定式化 した熱平衡系 の T F Dl 7 】にはなか った。そこには,散逸は 現れない。この点が, N B T F DとT F Dとの本質的な違いのひとつである。Z u b a r e v が, N E T F Dの方法を 賞賛 し,非平衡量子現象の研究 に用 い始めたことに,ここで言及 させていただきたい 【 8 】 .-3 1 1 研究会報告 B o l t z ma n nは,微視的で可逆 な Ne wt o n力学か ら出発 して, 自然界 の非可逆性 を導出 しようとした.しか し,B o l t z ma n n方程式 を導 く際 に,分子混沌 と呼 ばれる確率操作 を, 知 らず に導入 していたことが判明 したのである ( その辺のか ら くりの簡単 な解説は,【 9 ] を 参照のこと) 。我 々の新 しい方法が見通 しの良い ものである とい う技術的 な面 ばか りでな く,散逸量子場の理論 としてのその二重構造が,B o l t z ma nnの初め措 いた夢 を,何等かの 意味 で実現 させ るのではないか, とい う期待 が湧いて くる.B o l t z ma n nの時代 には, こ の二重構造 は認識 されていなか ったのである。 詳 しい NE TF D の解説 と参考 文献 は 【 4 ]を参照 して頂 くと して,s e m i -f re e時間発展 演算子 ( 量子 F o k k e r -P l a n c k方程式 と,定常的量子 Wi e n e r 過程 に従 う量子確率 L i o u v i l l e 方程式,それぞれに関する もの)が,い くつかの基本的要請の元 に,如何 に して創 られる かを示す.S e mi -f r e e時間発展演算子は,双線形で大域的ゲージ不変性 を満 たす ものであ る。以下,散逸量子系 の正準理論が,前者の時間発展演算子 によって如何 に創 られるかを 紹介 し,量子系確率微分方程式の一貫 した体系が,如何 に して建設 されるか を示す ( 図 2 参照 ) 。そ うす ると,量子散逸系の方程式 に纏 わる次の ような基本的 な疑問が,解決 され ることが見 えて くる ( 量子系 L a n g e v i n方程式 に対す る問題提起 に関 しては,【 1 0 】も参照 の こと) 0 ql .量子散逸系 を扱 う正準理論 ( つ まり,時間発展が正準変換 で誘起 される)は,建 設可能 だろ うか ?考 え もな しに a ( i ) -a e ( i w+A ) i , a I ( i ) -a † e ( t ' U-A ) i ,の ようにエネルギー ・ スペ ク トルに虚数部 を導入するだけでは,同時刻交換関係 は, け っ して保存 されない : l a ( i ) , a I ( i ) ] -l a , a † 一 e 加 t ( 7 ) Q2 ・ 揺動力演算子 は KMS条件 [ 1 1 , 1 2 】を満 たせ ないので,量子系 では白色過程 は許 されない と言われている。 た とえば,L a n g e v i n方程式 孟 a ( i ) -i d a ( i ) 一項 ・佃 ( 8 ) 孟 a ' ( i ) -i wa t ( i ) -n at ( i ) II-T ( i ) , ( 9 ) を考 えてみ よう。ただ し,f C は,摩擦係数である.また,a( i )ta t ( i ) は,それぞれ Hi l b e r t 空間の消滅,生成確率演算子で,i -0に正準交換関係 を満たす もの とする :( 【 a ( i ) , a I ( i ) ] ) -1 .( 1 5 )S c h r 6 d i n g e r 表現でなされるべ きである。それでは,La n g e v i n方程式に現 れる揺動 力の相関 と して,はた して,S c h r 6 d i n g e r表現 と同 じもの を採用 して長いのであろ うか ?q4 .如何 に して,確率過程の表現空間 を建設 した ら良いのであろ うか ?時間発展演算子の一般形 は,本質的 に L i o u v i l l e方程式 孟 p ( i ) --i L p ( i ) , に関る次の性質か ら導 きだ された。 Dl .L i o u v me演算子のエル ミー ト性 : L f =L.
遠藤幸夫 ( Yd k i oE NDO)千 , 有光敏彦 ( T o s h i h i c oAR I MI T S U)辛 l 導入 量子非破壊測定 ( Qu a n t u m No n -De mo l i t i o nMe a S u r e mも , 以下 QND測定)とは,被測定量に 共役な物理量の不確定 さを増加 させるとい う犠牲 を払 う変わ りに, / 被測定量の自由な時間発展ところが,我々が 目にする測定装置は,全 く光吸収のない媒質は存在せず,必ず入射光の強 度の一部を吸収する.つまり,物理的実現性 を考えるのであれば,少な くとも光Ke r r 媒質によ る散逸の効果 を考慮 しなければならない.そこで,井元らは,入射光の一部のみを通過させる 損失板 ( l o s sp l a t e )を便宜上考え,それを用いることで,媒質による散逸効果を取 り入れた 【 6 1 .この損失板は,簡単 に散逸効果を表す意味で有効的であるが,系のダイナ ミックスをきちんと 与えていない.Th e r moF i e l dDy n a mi c s ( NE TF D)【 7 日9 】は,非平衡散逸系を正準 演算子形式の場の理論 として記述で きることが知 られている.そこで我々は,井元らが提案 した 光Ke r r 媒質による光子数のQND測定問題 を,散逸のあるKe r r 媒質の問題に拡張 し,NE TF D の体系で定式化 した.その結果 として,井元 らが提案 した測定装置では散逸による測定精度の 限界が現れるため,光子数のQND測定は不可能であることが示せた.2 散逸 を考慮 しない場合の QND測定 まず,s i g n a l 光 とp r o b e 光 とを相互作用 させるKe r r 媒質の部分を考察する.散逸効果を考慮しない場合,全系 ( s i g n a l 光 とp r o b e 光)のHa mi l t o n i a n( A-1 ) は H -Hs+ Hp+ HI , ' I n s t i t u t e o f P h y s i c s , U n i v e r s i t yo f T s u k u b a , I b a r a k i 3 0 5 -8 5 7 1 , J a p a n f e n d o @ c m・ p h ・ t s u k u b a ・ a c ・ J P i a r i mi t s u @ c m. p h .t s u k u b a .a c .j p -76 2-(1 )
注 目す る系のハ ミル トニアンが Hs-u a † a + 芸 g a t a † a a , で与 えられ る非線形減衰振動子 を考えよ う。α , α I は交換関係 [ α , α † 一 -1 , [ α , α ] -0 , ( 1) ( 2 ) を満 たすボゾン演算子である。減衰理論 にお けるn o n -c o n v e n t i o n a l t j : 取 り扱 い [ 3 日7 ] では,注 目 す る系内の非線形性がその緩和 に与える影響が考慮 され る。その結果系のダイナ ミクスは,注 目 す る系の密度行列p s ( i ) が正 しい終状態であるカノニカル平衡状態の密度行列 e-βHsに収束す るこ とを保証す る。一方,減衰理論 における c o n v e n t i o n a l な取 り扱 いでは,系の非線形性 が緩和に及 ぼす影響は無視 され,p s ( i ) は調和振動子のカ ノニカル平衡状態 e -P ua † a に収束す る。 このことか ら,系の非線形性が緩和に及ぼす影響 は,系の長時間の振 る舞いに重要 な役割 を果た しているこ とが分かる.Ha a k e 等 【 7 】 は減衰理論 にお けるn o n -c o n v e n t i o n a l な取 り扱いによ り,非線形減衰振 動子 に対す る量子マスター方程式を導出 した。 非平衡 Th e r moF i e l dDy n a mi c s( NE TF D) [ 8 日1 2 ] の枠組みにおいて,量子 L a n g e v i n方程式 と 量子確率 L i o u v i l l e 方程式 を含む量子確率微分方程式の系統的な正準演算子形式の体系が構成 され た 【 1 0 日2 3 ] 。この体系において,前述の非線形減衰振動子に対す る量子確率微分方程式が構成 され た [ 2 0 ] 。 Ac c a r d i 等 [ 2 4 日2 8 ] は,量子確率過程 に対 して微視的な基礎付 けを与えた。彼 らは,ボゾン場の 熱浴 と相互作用す る量子系を考察 し,熱浴 のボゾン場 によ り構成 され る集団的ボゾン場 ( c o l l e c t i v e b o s o n丘 e l d )とよばれ る場が,弱結合極限 ( v a nHo v e 極限) 【 2 9 1 で量子 Wi e n e r 過程 に収束す ること 「 第 5回 『 非平衡系の統計物理』シンポジウム」 を示 した。また,相互作用表示における波動関数の時間発展方程式が,無限小時間発展演算子に 量子 Wi e n Q r 過程の増分を含む量子確率微分方程式に収束す ることを示 した。 この論文では,このA c c a r d i 等の手続きをN E T F Dの枠組みで非線形減衰振動子に適用 し,系 の非線形性が緩和に及ぼす影響を考慮 した非線形減衰振動子に対す る量子確率微分方程式を微視 的なモデルか ら導出する。
クイーンズラン ド大物理 1 は じめに 量子系における微視的なハ ミル トニアンで記述 され るモデルか らL a n g e v i n方程式を導出 す る試みは,古 くか ら行われてきた.特に,射影演算子法によるL a n g e v i n方程式の導出 は,森 【 1 ] によ り始め られ,多 くの研究者によって調べ られてきた.柴 田 ・ 橋爪 [ 2 】 は,熱浴 と相互作用す るスピン系に対 して射影演算子法を適用す ること により,ス ピン緩和に対す る量子 L a n g e v i n方程式を導出 した・その際,注 目す 卑系甲演 算子に対す るHe i ' s e n b e r g方程式か ら出発 し,通常の解析関数 に対す る規則 に したがって 計算を進めている, したがって,導出された量子 L a n g e v i n方程式は,通常の計算規則 に したが うS t r a t o n o v i c h型の確率微分方程式であると理解すべきであろ う. 一方,散逸現象を正準形式の場の理論 として取 り扱 うNo n -E q u i l i b r i u m Th e r moF i e l d Dy n a mi c s ( NE TF D) 【 3 日7 Jの一貫 した体系か ら見 ると,柴 田 ・ 橋爪のL a n g e v i n方程式は I t o 型の確率微分方程式 と理解すべきとい う結論が得 られる.これは先ほどの結果 と矛盾 してお り,微視的に導出されたL a n g e v i n方程式に対 して,その計算則をきちん と定める 必要があるとい う問題が現れた.本論文では,ス ピン緩和 と減衰調和振動子の例 を用いて,射影演算子法によ り導出さ れた量子 L a n g e v i n方程式の確率過程 としての計算則がI t o 型である事を,保存量の微分を 計算す る事によ り具体的に示す [ 8 】 .次章では,NETF DにおけるL a n g e v i n方程式を導出 す る.NE TF Dの体系では,いくつかの公理か らL a n g e v i n方程式の形が決定する.第3 章 では,柴 田 ・ 橋爪の方法に沿って L a ng e v in方程式を導出す る.第 4章では,ス ピン緩和 に対する柴 田 ・ 橋爪のL a n g e v i n方程式に対 して,その計算則がI t o 型になっている事を, 保存量の微分を計算す る事によって示す.また,減衰調和振動子のモデルに対しても,柴 田 ・ 橋爪のL a n g e v i n方程式が I t o 型になっている事を示す・ -8 7 0-「 第 5回 『 非平衡系の統計物理』.シンポジウム」 2 NETFDにおけるL a n g e v i n方程式 柴田・ 橋爪のL a n g e v i n方程式 と比較 しうる,NE TF DにおけるL 弧g e V i n方程式を導出する・ 乱雑力 と相互作用する系を考える・NE TF Dでは,状態 l O f ( i ) ) は確率 L i o u v il l e 方程式, d l O f ( i ) ) --m f , t d tl O f ( i ) ) , に従って時間発展す る.( 1 ) 式の積は,I t o 型の積である.無限小時間発展演算子であるハ ッ ト・ ハ ミル トニアン T t f , t d t は, ( i 7 i f , t d t ) --i 7 1 J , 刺 を満たす.ここで,テイル ド共役-は,任意の演算子 A, Al , A 2 に対 して, ( AI A 2 ) --AI A 2 , ( c I A l +C 2 A2 ) --C ; A l +C ; A 2 , ( A) --A, ( A t ) --( A ) I , で定義 され る.ただ し, c l ,C 2 はc 数である.ハ ッ ト・ ハ ミル トニアン 7 t f , t d l は,注 目す る系に関 して確率の保存を表す式,) ( d F I Z d F 1 7 ) -( d F l f d F I Z ) -6 6 ( i -t ′ ) d t d t ′ , を持つ定常 Wi e n e r 過程 を仮定す る.Wi e n e r 過程の演算子は, ( I d F t '-( l d 育 , ( l d F t z-( I d F t z , を満たす.ハ ッ ト・ ハ ミル トニアン 7 i f , t d t に対 して, ・S 土 , s z , d F t j = , d F t z及びそのテ イル ダ共役 に関 して 2次まで・ .大局的位相変換S -S e i O , d F t -d F re i Oの下で不変.の要請 を仮す.但 し, S 土は S 土-s x士i s yで定義 され る. この要請 の下で得 られ るI t o 型のハ ッ ト・ ハ ミル トニアン 7 tf , t d t は, 7 1 f j d ths d t +i( h R +H D ) d t +d ht , ( 2 4 ) ( 2 5 ) ( 2 6 ) h s -u ( s z -S -X ) +△ 1 ( ( s Z ) 2 -( S -Z ) 2 ) +A2 ( S + S 一一S -+ S --) , ( 2 7 ) h R-芸 ( 7 0 1 -7 1 0 ) ( ( S +-S --) ( p s -+ " 5 ' ) +七 ・ C ・ ) , ( 2 8 )
量子ホワイ トノイズの数学的基礎 名古屋大学大学院 多元数理科学研究科 尾 畑 伸 明 はじめに 圭子系の " 雑音" は, 量子光学や散逸量子系の研究 など理論物理か ら応用工学 にわたる分 野で盛 んに研究 されて きた ( 例 えば 【 2 日 5 日 2 1 1やそこに引用 されている文献) .一方で,この 1 0年来, Ac c a r d i達の一連の報告集 【 1 1 , Hu d s o n -P a r t h a S a r a t h yによる量子確率微分 方程式の基礎づけ 【 1 1 】 ,Me y e rl 1 2 1や P a r t h a s a r a t h yl 2 0 1による量子確率過程の教科書, Oh y a ・ -P e t zの量子エ ン トロピー理論 【 1 9 】などを通 して数学者の関心 も高 まって きている・ なかで も F o c k空間上の量子確率過程は, 減衰過程のノイズ項のモデルなどに現れ, 数学的 にも興味深い研究対象 となっている.量子確率論の起源は, 量子力学における波動関数の確 率解釈や位置 と運動量の不確定性 などにある.したがって,数学的定式化 として Hi l b e r t空 間上の作用素環論が広 く用い られ, 実際,それは強力 な手段 を提供 している.ただし, 物理 的に興味のある作用素はしば しば非有界作用素 となるので, 情況 に応 じて理希 を工夫す る 必要がある.その意味で,確率解析 といわれている " 無限変数" の超関数論のアイデ アを導 入す ることは一つの研究方向ではなかろうか.この論文では, ホワイ トノイズ解析 ( 飛田解析)と呼ばれている確率解析の方法 を量子確 率過程の研究に導入 し, 理論 を再構成す るとい う最近の試みの一端 を紹介す る.ホワイトノ イズ解析は, その著 しい特徴 ( a ) 通常は確率超過程 として扱 われているホワイ トノイズを, 各時点毎にガウス空間上の 超関数が対応するような超関数空間内の連続 な ( 実際は C∞一 級) 流れ として定式化 し ていること; ( b ) 通常は作用素借超関数 として敵 われている生成 ・ 消滅作用素 を, 各点毎 に意味のある 連続作用素 として定式化 していること; を生か して, 古典的確率過程の問題 に応用 されて きた 【 1 0 1 .-万で,ホワイ トノイズ解析の 超関数論的側面か らの研究は F o c k空間上の作用素理革へ と進展 している ( 理論 の詳細 は 【 1 3 日 1 4 1 ; 概略は 【 1 5 1など) .したがって,これまで古典論に終始 して きたホワイ トノイズ解 析 を, 作用素 レベルに引 き上げ ることによって, 各点毎の生成 ・ 消滅作用素を基本的な量子 確率過程 とす る理論が構築で きるはずである.また,この観点は物理学に現れる量子確率微分方程式 ( 【 2 日5 1など)の基礎づけにも有効であると思われる.むろん, 量子確率過程 を議論す るにあたって, ホワイトノイズ解析 は唯一の選択肢ではな い し,この論文で提起す るアプ ローチ 自体 も発展途上 にある.ただ,これまでの ところ, 量 子確率論 の研究 に超関数論的なアイデ アはそれほ ど積極的には現れていないので, 本論 は 「 第 3回 『 非平衡系 の統計物理』 シンポジウム」 ( その 1 ) 確率解析の非可換版 を構成す る上でたた き台 ともなるだろ う.まだ関連す る論文 も少 ない が, 【 1 5 日1 6 1 , 【 1 7 日1 8 】も参照 されたい. 1 ホワイ トノイズ解析 と f bc k空間上の作用素論 この報告では, .Ge l f a n dの三つ組 E-S ( R) ⊂H-L 2 ( A , d t ) ⊂F -S ' ( I R ) ( 1 . 1 ) に基礎 にして話 を進める.ここでR は, 後で議論す る量子確率 " 過程" の時間軸 に相当す る. ただ し,この章で述べ る主要 な結果のためには E として急減少関数の空間 S ( A)をとる必 然性 もなければ, R上の関数空間にこだわる必要 もない.実際,Rをかなり一般の位相空間 ( t o p o l o g i C a ls p a c e )にとりかえて理論 を構成す ることがで き, その方が応用上 も有利である [ 1 3 ] .このことについては,この論文の最後( § 3 .3 .5 ) で少 し触 れる.なお, ( 1 . 1 )に現れている 3つの空間はいずれも実空間である.H の実内積 と E'×E上 の標準双線形形式は, 整合 しているので同 じ記号 ( ・ , ・ )で表す.またH とその複素化 Hcの ノルムを同 じ記号 日 。で表す ( 添字 Oは後の都合 による) .さて,E昌×Ec上の標準複素双 線形形式は, H の実内積 を拡張 した
東京都文京区大塚 2 -1 -1 電子メール:h i r o ◎p h y s .o c h a .舵. j p Ab s t r a c t 何ら窓意的な粗視化を導入せずに不安定 L e eモデルに対する散逸効果を含んだ有効ハ ミ ル ト ニアンを構成する.in -i n形式の場の理論に基づいた一般化された拓射補正は自動的に不可逆性 と量子相関の自発的崩壊を導 く.特に,この方法を用いた記述によれば,根源的に散逸的な系を 記述するために通常のヒルベル ト 空間を拡張する必要が無い事が分かる. 1 導入 物理学において,マ クロな世界の不可逆性 の理解は最 も魅力的なテーマの 1つである.特に基本的な ミクロな法則か ら不可逆性を整合的に導 くことは物理学の中心的な課題 になっている.不幸にし てほとん どすべての ミクロの法則は厳密 に可逆であって,それ らの単純 な適用か らは不可逆性は決 して得 られない.マクロな不可逆性を導 くよ くある方法 は,は じめか ら外に開いた系 を考えることである 【 1 1 ・つ ま り全体 としては閉 じた系を,着 目す る重要な系 と残 りの環境系に分散す る.そ して この環境系に 関 して粗視化を して着 目す る系の運動を得 るのである.不可逆性 は着 目系か ら環境系-